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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

推定無罪

2010年02月02日 | 映画
 偶然にもいまスターチャンネルで放送が始まってびっくりしました。

 小説や映画で法廷物というと、The Rainmaker、依頼人、評決の時などで知られる弁護士ジョン・グリシャム作品が有名ですが、ハリソン・フォード主演の「推定無罪」は彼の地の検事出身の小説家、スコット・トゥローの作品。ハリソン・フォード主演映画の中でもっとも知性的な一品になっています。

 映画を見ていると、アメリカの検事、裁判官、弁護士の力関係や人間模様がわかってきて大変に興味深いです。
 向こうでは、日本でいうところの検事正は上から任命されるのではなくて、地方検事として弁護士らの選挙で選ばれるんですね。
 当然、党派性もあって、民主党と共和党で争うし、各党の候補者になるのも選挙になったりします。また、ハリソン・フォードたちのようなナンバー2以下の検事補たちは地方検事の交代でどっと入れ替わりますので、アメリカ大統領選挙のミニチュア版になっているわけです。

 地方検事は常に次の選挙のことを考えているので、人気獲りのために無理な捜査や起訴をしますし、逆に自分に打撃となる有力支持者や身内の事件については隠蔽したりするんですね。

 映画では、ある地方検事補殺しの容疑でナンバー2のハリソン・フォードが起訴されます。それを弁護するのが、アダムス・ファミリーの故ラウル・ジュリア。歴代の弁護士役の名演に指折り数えて入れられるような見事な演技です。

 日本のように司法を政治的中立性を重視して上からの人事にするか、民主主義的コントロールを重んじて下からの選挙にゆだねるか。原作も映画も、ミステリーとしても上質だし、法律家のあり方を考えさせられるという点でも優れた作品です。

 今思いつく法廷映画ベストは・・・
「評決」 ポール・ニューマン
「十二人の怒れる男」 ヘンリー・フォンダ
「12人の優しい日本人」 豊川悦司
「レベッカ」 タイロン・パワー
「事件」 
 松阪慶子、大竹しのぶ 松坂慶子の魅力がこの一本で噴火しました。
 これ必見です。
 弁護士役の丹波哲郎はあかんけど。テレビの若山富三郎のほうがずっとよかった。

・・・ジーン・ハックマン、アル・パチーノ、ダスティン・ホフマンなど主演作がゴロゴロあるし、ヒッチコックとか入れだすときりがないな。

 私個人のベストワンは、ジョー・ペシとラルフ・マッチオがいとこで弁護士と被告人役をやる「いとこのビニー」。
 あ、これは、サスペンスじゃなくて、コメディですね。
 何度も司法試験に落ちて(アメリカでは1発合格が当たり前)、今回初めて刑事弁護をやる(自分を見てるようで)危なっかしい弁護士ジョー・ペシの婚約者役をマリッサ・トメイちゃんがキュートに演じ、アカデミー助演女優賞を獲得しました。

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8 コメント

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あった、あった (ray)
2010-02-03 23:15:35
そのウ○チを解剖する話は、星新一と小松左京という2大SF作家と雑談してて出て来た話を小説にしたんですよ。みんな、大人だなあ。
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だって~ (なべび)
2010-02-03 19:25:47
小学校の高学年の時に,自分のお小遣いで,読書感想文の本を買いに行って,なぜか気になったのが筒井康隆の文庫本。
どうしてそれを買ったのかも分からないし,タイトルも分からない。
でも,早速読み始めたら。。。

おい,読書感想文なんて,学校に出せねえし,感想なんて言ったら,変態か??みたいな内容だった。

さわりだけ。
自分の排泄物をみたら,昨夜食べたカレーの具が目に入って,またこの排泄物を食べたら次の日も,そのカレーの具が残っているのであれば,一生排泄物を食べて生きていけるとか。。。

そんな内容だったぜ~~~。
私,時をかける少女を書いた人と同一人物には絶対おもえんけど,京都のはんな~りした感じの文化人やと知って,余計,いやんなったんです。

当然,読書感想文の本は,違うものに変えました。次郎物語にしたっけか?
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 (ray)
2010-02-03 13:41:38
私の一押しは「我が良きウルフ」。往年のヒーローが悪役に思いを馳せる、泣ける小説です。

 
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断然、筒井康隆支持 (ray)
2010-02-03 13:38:49
 はちゃはちゃ小説の雄なんですが、このあたりに住んでるんじゃなかったかな。田辺聖子さん、米朝師匠と並ぶ、このあたりの文化人。関取にずっと追っかけられる話とかね、こわいですよ。女性嫌いで、ウーマン・リブをこき下ろしたような作品とか、差別ちっくな作品も多くて、自分でわかってやってるんですが、楽しいんですよ。七瀬シリーズなど時をかける少女的なちゃんとしたシリアスSFもあるし。
 
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筒井康隆 (スクウォッター)
2010-02-03 02:10:05
「12人の浮かれる男」は小説じゃなく戯曲で、どう見ても無罪の被告を、ひとりのヒーローが大奮闘して、しまいには寄ってたかって有罪にしてしまう話です。
もう何十年も前に書かれた「もし、日本に陪審員制度が出来たら」というIF小説で、私が裁判員制度に反対なのもこれが一因かも知れません。
初期~中期の筒井康隆はシュールなドタバタ的面白さがあって、好きでした。
「東海道戦争」・「トラブル」・「ベトナム観光公社」・「アフリカの爆弾」等々、今読んでも面白いですよ。
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筒井康隆? (なべび)
2010-02-02 23:10:45
えええええ。
そのパロディー全然知らないけれど,
食わず嫌いだな。私は。

なんで,この小説家はそんなに人気があるのかも分からない。
はい,私かなりの常識人なんですわ。明快。
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良くご存知で (ray)
2010-02-02 10:52:53
情婦、あぜんとする展開でしたねえ。
筒井康隆までフォローしてますか。
パロディとしてはこっちが上ですね。切れてたなあ、筒井康隆。怒れる→浮かれるだし。
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検察側の証人 (スクウォッター)
2010-02-02 01:26:13
「情婦」マレーネ・ディートリッヒ&チャールス・ロートン 監督ビリー・ワイルダー 原作アガサ・クリスティ
これを忘れてはいけません。
あと、戯曲ですが、筒井康隆「12人の浮かれる男」怒れる男のパロディとしてはこちらが上だと思います。怒れる男を観たら誰でも考えつくパターンなんですがね。
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