ウクライナ戦争について、今や「両国への即時停戦要求派・ウクライナへの軍事支援原則否定派」の白井邦彦先生と、「ロシアへの即時撤退要求派・ウクライナへの軍事支援限定肯定派」のわたくしとで意見が食い違ってしまいました。
その間に私が失礼な事や誤解して間違ったことを書いた箇所がいくつもあり、2023年4月25日付けの記事でそのことをお詫びしたところ、寛大にも白井先生からお許しを頂きましたので、さっそくうちのブログに白井先生にご寄稿をお願いしました。
玉稿を今朝頂いてみると、今回はさらに物凄い力作でA4版で12ページ!!もあり、このブログに字数制限があるものですから、いつものように絵本形式で挿絵のごとく画像を入れていくことができず、文字ばっかりになることをお許しください。
なお、白井先生のご寄稿をいただきましたが、私が自説を変えたわけではありません、
ちなみに、私がロシアに即時撤退を求め、両国に即時停戦を求めない理由はこれまで書いてきた通り、主に以下の理由からです。
1 ロシアの侵略が国連憲章違反の国際法違反行為で、これまでの1世紀の戦争の違法化の歴史を台無しにするもので、戦争の責任はひとえにロシアにあること
2 現状で即時停戦をすると、ロシア軍による占領地での虐殺・強姦・子どもの連れ去りなどの戦争犯罪行為がし放題になってしまうこと
3 2022年9月のロシアによる4州併合はハーグ陸戦法規などに違反していて国際法違反で無効であるのに、現状で停戦すると4州併合が既成事実化すること
4 特に、2020年にロシアは憲法と刑法を改正して、領土割譲を違憲として禁止し、領土割譲の交渉をするだけで刑罰を科することにしたので、即時停戦して交渉してもロシアの領土となった4州は法理的にロシアがウクライナに返せないようにロシアがしてしまっていること
5 以上のような理由から、ウクライナの主権者である国民が即時停戦を望まず、まだ抗戦を望んでいて、その意思を尊重するのは民族自決権・国民主権・国家主権という現代の国際社会の常識から当然であること
6 ウクライナがロシアを撤退するところまで押し返すと核戦争の危険があると即時停戦派は言うが、その危険を招いているのはプーチン大統領であり、批判すべきはプーチン大統領とロシアに対してであるし、ベトナム戦争でも何度もアメリカは核兵器を使うという威嚇をしたが、だからと言ってベトナム人民に抵抗はやめろとは言えなかったようにウクライナの市民に停戦しろとは言えない事
7 国際社会も、国連総会で国連加盟国の4分の3という大多数の国が、ロシアに対して「即時・完全・無条件」の撤退を決議で求め、日本の衆議院でもロシアに即時撤退を求める非難決議が採択されているように、圧倒的にロシアの非を認めていること
8 第二次大戦後のベトナム戦争やアフガン紛争を見ると、大国が小国に攻め入った場合、小国側が大国に抵抗し続けて戦況を有利にしないと結局和平会談も実現していないこと
があります。
また、私が憲法9条護憲派の平和主義者でありながら、軍事同盟であるNATOによるウクライナへの軍事支援を武器の種類を限定するものの肯定するのは
9 欧米によるウクライナに支援がないと、ロシア軍がウクライナ軍を押し返し、その過程で市民に対する虐殺・強姦などの戦争犯罪が起こる可能性が高いこと
10 ロシアが首都キーウを再び攻撃してゼレンスキー政権を打倒して傀儡政権樹立を狙う可能性もあること
11 ロシアによる侵略は国際法違反だが、ウクライナの防衛戦争は国際法に適合しており、それに対する軍事支援も国際法的には適法であること
12 第二次大戦で、旧日本軍の南京入城やナチスのポーランド侵略などに抵抗するレジスタンスに連合軍が軍事支援をしたとしてもそれは大量殺人を防ぐためであり、国際人道法にむしろかなうと言え、今回のNATOによるウクライナへの軍事支援も同じことがいえること
などがあげられます。
また、伊勢崎賢治氏らが呼びかけた即時停戦署名「今こそ停戦を」を特に批判する理由は、
13 ウクライナ戦争について、「ロシアのウクライナへの侵攻」というだけで、一回もロシア軍が侵略したとは書いていないこと
14 同時に「いまやNATO諸国が供与した兵器が戦場の趨勢を左右するにいたり、戦争は代理戦争の様相を呈しています」と表現しているように、明らかにロシアの主張に沿った内容になっていること
15 「ウクライナ戦争では開戦5日目にウクライナ、ロシア二国間の協議がはじめられ、ほぼ一カ月後にウクライナから停戦の条件が提案されると、ロシア軍はキーウ方面から撤退しました。」という明らかなロシア擁護の虚偽の主張が書いてあること
16 2022年3月の両国の停戦協議がとん挫した理由について「現実的な解決案を含むこの停戦協議は4月はじめに吹き飛ばされてしまい、戦争は本格化しました。」と、本当はロシアの蛮行でとん挫した1年前の停戦協議が自然災害で挫折したかのように、ロシアに有利に書いていること
があげられます。
以上のいくつかの点については、白井先生が以下のご寄稿で反論・説明もされています。
特に15・16についてはドイツの文献やウクライナ語のNEWSまで調べてくださり、白井先生のその研究者らしい真摯さ、徹底ぶりには本当に頭が下がる思いです。
前振りが長くなりましたが、それでは白井先生の力作をお読みください。
再度「即時停戦・和平交渉による解決」を強く訴えます
ー「今こそ停戦を」に賛同する一市民の立場から-
1、 はじめに
ロシア政権による侵略によって始まったロシア・ウクライナ戦争においてこの間数多くの尊い命が失われました。お亡くなりになられた方々のご冥福を心からお祈りいたします。
また心身に傷を負った方も数多くいます。その方々の1日も早い回復を心から願っております。
この記事は「今こそ停戦を」に賛同する一市民の立場から、「今こそ停戦を」あるいは「停戦論」に寄せられている批判に対する私見を述べることを中心に、「今こそ停戦を」、「即時停戦・和平交渉による解決」の必要性を訴えていこうとするものです。
筆者はあくまで「今こそ停戦を」の一賛同者にすぎません。ですからこれから述べる意見は筆者個人の私見であり、「今こそ停戦を」の意見を代表するものでも、それをよびかけている人たち、あるいは多くの賛同者の見解を代弁するものでもない、という点はご理解のほどお願いいたします。
また「今こそ停戦を」に関する方々と筆者はすべての点で意見を同じくするものでもありません。例えば伊勢崎先生の新9条論には決して賛成はできない、という立場です。こうした点はその他各論者ともありうると思います。その点もご理解のほどお願いいたします。
ロシア・ウクライナ戦争の言論状況に関しては困惑させられることがあります。
インタビュー完全版「岸田政権は停戦仲介に動け、資源国と水素外交にシフトせよ」今井尚哉・元安倍内閣首相補佐官
ウクライナの人々の尊厳を認めること(昨年8月 杉原浩司)
ロシアとウクライナの“即時停戦”を求める、日本国内の声に感じる違和感(4月14日 志葉玲)
最初の安倍元政権を支えた今井氏など、正直護憲リベラルとは程遠い方が強く停戦を主張する一方、護憲リベラルの立場にあったと思われる方が、「軍事支援容認」「停戦論への批判」という状況もみられます。
こうした点も考慮しつつ、以下本記事の趣旨に従って展開していきたく思います。
2、 停戦とロシア占領地での虐殺・子供連れ去り等ロシア軍の各種蛮行の問題
即時停戦論への批判と「停戦してもロシアの占領地では虐殺・子供の連れ去り等ロシア軍による各種蛮行は続くだろう、停戦によって命が救われるわけではない」というものがあります。
筆者はこの間報道されているロシア占領地での虐殺・子供の連れ去り、その他数多くの蛮行は実際にロシア軍によってなされた、とみる立場です。ごく一部で「フェイク説」などもありますが、筆者は「フェイク説」は全く受け入れることはできません。そしてロシア軍の虐殺・子供連れ去り、その他各種蛮行は全く許容できない、それに対して強い怒りを感じる、という立場です。この点はまず強調していきます。
そのうえで、それらの行為をできる限り防ぐためにはやはりまず停戦ではないかと考えます。理由は以下四点からです。
第一に停戦論を批判し、「ロシア軍の占領地での虐殺行為を防ぐためには、ロシア軍の占領地の奪還、ロシア軍が自発的に撤退しない限り武力奪還しかない」という見解は、結局「武力奪還するまでの間は、そして武力奪還できない占領地については、ロシア軍による虐殺等は黙認する」ということになってしまうのではないか、という疑問があります。
一瞬にすべての占領地を武力奪還できる、わけではありません。武力奪還するにしても長い時間がかかります。またすべての占領地の武力奪還が可能なのでしょうか。確かに一部地域は武力奪還はなされましたが、全体からすれば多いとはいえません。
今後についても武力奪還が可能か、もわかりません。武力奪還されるまで、また武力奪還できなかった場合どうするのでしょうか。その場合は「虐殺はやむをえない」となるのでしょうか。筆者は停戦論に関するこの点の批判については何よりもこうした疑問をもちます。
第二に、戦闘状態と停戦状態ではおかれている状況が異なり、同じことがなされるとは限らない、という点です。停戦は「和平交渉→和平合意により終戦」へと至るプロセスの出発点です。対立からとにかく対立を解消するするプロセスの入り口にあるとき、対立時と同じことがなされるのでしょうか。戦闘時と停戦時の質的相違を考えるべきではないか、と思います。
第三に、停戦監視体制の構築によって、停戦時の「占領地での虐殺行為は防げる可能性はある」という点です。「武力奪還」方針では、結局「奪還しない限り虐殺行為を防ぐ方法はない」ということになってしまいます。停戦による監視体制の構築で「占領地の虐殺を防ぐようにする」の方が虐殺を防ぐ可能性は高いのではないでしょうか。
なお監視体制といっても「それがロシア政権寄りの国々に担われたらロシア軍の行為は黙認される、逆に米欧諸国によって担われたら、虐殺を止めようとしたらロシア対米欧の直接的軍事対立となってしまうおそれもある」「その恐れから米欧も監視体制を担うことに躊躇する」といった反批判もあります。この点は2、の点とも関連しますが、戦闘時と停戦時とのそれぞれの国のスタンスの違いを無視した議論に思います。
戦闘時ととにかく対立から対立の解消の入り口の停戦時とでも、それぞれの国のスタンス・立ち位置は全く変わらないのでしょうか?戦闘から停戦になっても、それ以外は現状の戦闘状態のまま変化なし、というわけではないと思いますがいかがでしょうか?
第四に「なぜ虐殺が生じるか」という点に関してです。先日下記のような報道がなされました。
親ロシアに転じた警察署長、爆弾で暗殺か ウクライナで抵抗が活発化
これを「抵抗」とみるか、「テロ虐殺」とみるか?ただこうしたこともロシア占領地ではしばしば起こっているようです。この件で引っかかるのは正規の本来の市長の「メリトポリを脱出しているイヴァン・フェドロフ市長は、死亡した警察署長は裏切り者だったとテレグラムで主張。「協力者が通る道は予測できる:昨日は裏切り、今日はパニック、明日は虐殺だ」と書き込んだ」という点です。こうした行為を煽ってしまっており、公的立場にいる者としていかがか、と思います。
ただこうしたことが報復としての虐殺を生み、それがまた報復を生み・・・・という連鎖の存在はどうでしょうか?それを根本的に絶つためにも「停戦から和平へ」というプロセスが必要ではないか、と考えます。
ロシア軍による占領地の虐殺を防ぐためにも停戦を、「武力奪還」方針では、「武力奪還までの、そして武力奪還できなかった占領地の虐殺を黙認することになってしまう」と私は考えます。
3、 キーウからのロシア軍撤退と和平協議
「今こそ停戦を」の声明文に対しても、さまざまな批判がなされています。実は筆者も「ロシア政権による侵略」という文言と「ロシア軍による数々の蛮行への批判ないし指摘」はしっかり入れるべきではないか、とは思いました。ただ前者については「侵略」ではなく「侵攻」という言葉が一般的に使われている点から許容範囲、後者に関しては「ウクライナ側の戦争犯罪行為も否定できない」だからといってそれをも声明文にいれるべきか、などから声明文のようにならざるをえなかったのでは、考えました。とはいえ「ロシア軍による各種蛮行の批判ないし指摘」は入れるべきではなかったか、との思いはあります(上述のように筆者はそれらを防ぐためにも「停戦を」という立場であるため)。
そのほか宮武先生からは「ウクライナ戦争では開戦5日目にウクライナ、ロシア二国間の協議がはじめられ、ほぼ一カ月後にウクライナから停戦の条件が提案されると、ロシア軍はキーウ方面から撤退しました。」という文言への疑問もいただきました。この点に関していうと、下記の元連邦軍総監・NATO軍事委員会議長クヤット氏(インタビューにもあるように過去にロシア政権側との交渉経験もある)・当時イスラエル首相のベネット氏の下記のインタビューをもとにした記事の内容を考慮すればこうした表現となるのではないか、と思います。
クヤット氏インタビュー
へネット氏インタビューをもとにした記事
クヤット氏はインタビューで、イスタンブールの和平交渉で「ロシアはウクライナのNATO非加盟などの措置と引き換えに、2月23日(日本時間24日)時点まで軍を撤退させることに明らかに合意していた」と述べています。
さらにベネット氏のインタビューではもっと注目すべきことが語られています。
ベネット氏は当時の和平交渉の舞台裏を担い、「ゼレンスキー・プーチン両氏と電話連絡」したりクレムリンでプーチン氏と会談をしたりした人物です。
ベネット氏によれば、ロシア軍が当初キーウに迫った際ゼレンスキー氏は自らの生命を心配した、ベネット氏はゼレンスキー・プーチン両氏と連絡をとりあい、ベネット氏を介してのやり取りが続いた、その後3/5、イスラエルの防諜機関(モサド?)のジェット機でモスクワにとびクレムリンでプーチン氏と会談、そこでプーチン氏はかなり譲歩し、ゼレンスキー氏の生命を明確に保証するとともにウクライナの非武装化も放棄する、とした、帰りのジェット機でベネット氏はゼレンスキー氏に電話して結果を報告、ゼレンスキー氏はこうした譲歩への見返りに「NATO非加盟に同意」その後ゼレンスキー氏は「NATOに入らない(入れない)」ことをしばらくの間公の場で繰り返した、とのことです。
ベネット氏は「双方とも停戦に強い関心をもっているとの印象をもった」とものべています。
両氏のインタビュー結果によれば「ウクライナはNATO非加盟、かわりにロシア軍は2月24日のラインまで撤兵し、ウクライナの非武装化は求めない」までは当時合意がなされていた、といえるのではないでしょうか。
こうした点まで合意が当時なされていたとしたら、ロシア政権による侵略の最大の要因である「NATO東方拡大、ウクライナまでもの拡大」そのものは阻止できた(ベネット氏はゼレンスキー氏が当時NATO非加盟を表明したことで、「停戦の最大の障害は取り除かれた」とまで述べている)、またロシア政権側がゼレンスキー氏の生命保証を明確に約束し、ウクライナの非武装化も放棄した以上、ロシア政権側としては、キーウからの撤兵は必然の行動であった(それを行わなかったら、ゼレンスキー氏の生命の保証の約束もウクライナの非武装化の放棄も空約束とみなされてしまう、そうなると最大の目的であるウクライナのNATO非加盟という「成果」も確保できない)、と考えます。
なおクヤット氏の発言で以下のものがあります。
Eine positive Ausgangslage für eine Verhandlungslösung hatte sich beispielsweise Ende
März vergangenen Jahres ergeben, als die Russen entschieden, vor Kiew abzudrehen und
sich auf den Osten und den Donbas zu konzentrieren.
時系列的に考えて疑問ですが、「キーウ撤退と停戦和平の前進」を結びつける発言と思います。
こうした面から筆者は声明文の「ウクライナ戦争では開戦5日目にウクライナ、ロシア二国間の協議がはじめられ、ほぼ一カ月後にウクライナから停戦の条件が提案されると、ロシア軍はキーウ方面から撤退しました。」の部分には不自然さは感じていません。ただしそれはクヤット・ベネット両氏のインタビュー内容を信じるか、という点とともに、ロシア政権の侵略の要因として「NATO東方拡大、とりわけウクライナまでの拡大主因論」の立場にたつかどうか(ちなみに筆者もこのように考えます)、にもよると思います。
(付記 NATO東方拡大の過程をみると、ロシア政権としては、「西からはNATOが自国にどんどん迫る、一方太平洋側の日本には米軍基地がある、で確かに軍事的脅威は感じると思います。ただそれを「軍事力」でウクライナに攻め入って阻止しようとしたのは、明らかに侵略でその行為は全く正当化できない、と考えています。なおNATO拡大自体は事実でNATOは軍事同盟、軍事同盟の拡大そのものは批判すべきことなのに、その点があいまい化されている状況には危惧しています)。
4、 合意寸前の停戦和平合意がなされなかったのはなぜか?
ロシア・ウクライナ戦争は昨年三月末合意一歩手前までいった、といわれています。なぜ合意に至らなかったか?それについてはロシア軍によるブチャ虐殺要因説とジョンソン元イギリス首相などによる米英妨害説が主張されています。その検討としてまずブチャ虐殺発覚直後のゼレンスキー氏の発言をみてみたいと思います。
なお最初にお断りしておきますが、私は「ブチャ虐殺自体は存在した」と認識する立場です。ロシア政府だけでなくそれ以外から「ブチャ虐殺フェイク説」が流布されていることも承知しています。しかしフェイク説と虐殺があったとする主張を比べた場合、信頼性から「虐殺はなされた」とみるべきと思います。ですから「ブチャ虐殺フェイク説」には全く組しない、「ブチャ虐殺自体は確かに存在した」という立場からの展開である点は重ねて強調しておきます。そしてこの件に関するロシア政権・ロシア軍の責任は極めて重いし強く非難されるべき、その責任についてはしっかり追及されるべき、という立場です。
ただ一歩手前までいった和平合意が壊れた要因としてブチャの虐殺をあげていいのか、それについては検討が必要と思います。
ブチャ虐殺発覚直後に報道されたゼレンスキー氏の対ロ交渉についての発言です。
①ロシアとの和平交渉、「残虐行為」でより困難=
「ロシア軍がここで行ったことを見ると、対話を行うのは極めて難しい。ロシアが対話プロセスを引き延ばせば引き延ばすほど、ロシア、およびこの戦争の状況は悪化する」と述べた。」(上記記事より直接引用)
②ゼレンスキー氏、ブチャ訪れ怒りあらわに 和平協議は継続する考え - BBCニュース
「なおもロシアと和平協議を続けることが可能かとBBC記者が質問すると、「可能だ。ウクライナには和平が必要だからだ。私たちは21世紀のヨーロッパにいる。外交および軍事による努力を続ける」と答えた。」(上記記事より直接引用)
③露外相、ブチャ虐殺は「捏造」「交渉破綻の狙い」
「ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、「戦争終結には(露側と)交渉を続けるしかない」と述べている。」(上記記事より直接引用)
4/4ロイター配信の記事では、「(ロシアと)対話を行うのは極めて難しい」と述べている、とされていますが、BBCの記事によれば記者に「ロシアと和平協議を続けることは可能」と語り、4/6配信の産経新聞記事では、5日に「戦争終結にはロシア側と和平協議を続けるしかない」とのべている、とされています。
これらからみると、ブチャ虐殺発覚直後5日まではゼレンスキー氏は「ロシアとの和平協議継続は否定していなかった」といわざるをえないと思います。なお22年4/4にはオンライン形式での協議がなされる予定であったが開催されなかった、しかし5日の時点でも産経新聞によれば「ロシアとの和平協議継続」と述べています。
ゼレンスキー氏は、ブチャの虐殺発覚直後は「ブチャでの虐殺に強い怒りをもちながらも戦争終結のためには和平協議を継続せざるをえない」と考えていたと思われます。ゼレンスキー・ジョンソン会談がなされたのは4/9、わたしの検索能力からはそれまでにゼレンスキー氏が「交渉はできない」と明言した証拠はみつけられませんでした。ここまででとりあえずは「ブチャ虐殺発覚直後でもゼレンスキー氏は戦争終結のため対ロ和平協議継続のスタンスであり、それを明確に否定する発言はしなかった」といえると思います。
ではなぜ合意がなされなかったのか。「ジョンソン元首相の介入を要因」とあげるもので、最も初期のものは私が知る限り、昨年5月の「ウクライナ・プラウダ」に掲載された下記の記事です。ただしこの記事では「ブチャの虐殺」とともに「ジョンソン氏介入」双方を要因としてあげています。
Від "капітуляції" Зеленського до капітуляції Путіна. Як ідуть переговори з Росією
この記事はウクライナ語で書かれているために、私は自動翻訳でしか内容を知るこができず、その翻訳自体が正しいか、の判断はこの記事についてはできません。ただ自動翻訳の部分をそのまま引用させていただくとして、その中には下記の記述がなされています(明らかに誤訳と思われる個所もありますが自動翻訳のままです)。
「ボリス・ジョンソン、またはプーチンを「絞る」
ロシア側は、誰が何を言おうと、信号の読み方を知っており、実際にゼレンスキーとプーチンの会談の準備ができていました。しかし、2つのことが起こり、その後、ウクライナの代表団のメンバーであるミハイロ・ポドリャクは、大統領の会議が「もはや時間通りではない」ことを公然と認めなければなりませんでした。
一つ目は、一時的に占領されたウクライナの領土でロシア軍が犯した残虐行為、レイプ、殺人、虐殺、略奪、無差別爆撃、その他何百、何千もの戦争犯罪を暴露することです。
ブチャ、イルピン、ボロジャンカ、アゾフスタリについてプーチンと話さない場合、プーチンとどのように、そして何について話すことができますか?..
プーチンと世界の間の道徳的、価値に基づくギャップは非常に大きいので、クレムリンでさえそれを埋めるためのそのような交渉のテーブルを持っていないでしょう。
ロシア人との合意に対する2番目の-はるかに予想外の-障害は、4月9日にキーウに到着しました。
ウクライナの交渉担当者とアブラモビッチ/メジンスキーがイスタンブールに続く将来の可能な合意の設計に合意するとすぐに、英国のボリス・ジョンソン首相はほとんど警告なしにキーウに現れました。
「ジョンソンはキーウに2つの簡単なメッセージをもたらしました。プーチンは戦争犯罪者であり、彼と交渉するのではなく、圧力をかけられなければなりません。そして第二に、あなたが彼との保証に関する合意に署名する準備ができているなら、私たちはそうではありません。私たちはあなたとそれをすることができますが、彼とはそうではありません、彼はまだみんなを捨てるでしょう」
とゼレンスキーの仲間の一人はジョンソンの訪問の本質を要約します。
この訪問とジョンソンの言葉には、ロシアとの取引に関与することを単に躊躇する以上のものがあります。
2月にゼレンスキーが降伏して逃げることを提案した集団西側は、プーチンが想像したほど全能ではないと感じた。
さらに、今は「彼を絞る」チャンスがあります。そして西側はそれを利用したいと思っています。
ヴァシルコフスキーのおんどりジョンソンの幸せな所有者がアルビオンに戻ってから3日後、プーチンは公開され、ウクライナとの交渉は「行き詰まった」と述べた。」
「ウクライナ・プラウダ」のこの記事では、合意がなされなかった要因として「ブチャの虐殺」とともに「ジョンソン氏(その背後にある米英など)介入」が確かに指摘されています。ウクライナ側のメディアでこうした記事が昨年5月段階で配信されていた、は意外です。ただこうした記事がすでに昨年5月段階でウクライナ側から配信されていた、は特筆すべきと思います。
次に注目すべきは、水島先生が紹介したワーグナー氏の下記の論考です。
Informationsstelle Militarisierung (IMI) » Der Ukraine-Krieg (imi-online.de)
(23年2月23日)
この論考の特に以下の部分の指摘が重要と思います。
「Torpedo gegen die Istanbul-Verhandlungen
・・・・・
Eine entscheidende Rolle spielte dabei wohl der damalige britische Premier Boris Johnson,
auch wenn mit Sicherheit anzunehmen ist, dass er nicht ohne Rückendeckung aus
Washington agierte. Er soll laut Guardian Anfang April 2022 zu einem Treffen mit dem
ukrainischen Präsidenten Selenski gefahren sein und von ihm verlangt haben, „keine
Zugeständnisse an Putin zu machen“.[11] Auch der ehemalige Bundeswehr-
Generalinspekteur und Vorsitzende des NATO-Militärausschusses, Harald Kujat, bestätigt
dies: „Russland hatte sich in den Istanbul-Verhandlungen offensichtlich dazu bereit erklärt,
seine Streitkräfte auf den Stand vom 23. Februar zurückzuziehen, also vor Beginn des
Angriffs auf die Ukraine. […] Nach zuverlässigen Informationen hat der damalige britische
Premierminister Boris Johnson am 9. April in Kiew interveniert und eine Unterzeichnung
verhindert. Seine Begründung war, der Westen sei für ein Kriegsende nicht bereit.“[12]
Diese Angaben werden inzwischen auch durch Aussagen des damaligen israelischen
Premiers Naftali Bennett betätigt, der im Februar 2023 folgendermaßen zitiert wurde: „Ein
Waffenstillstand sei damals, so Bennett, in greifbarer Nähe gewesen, beide Seiten waren
zu erheblichen Zugeständnissen bereit. Doch vor allem Großbritannien und die USA hätten
den Prozess beendet und auf eine Fortsetzung des Krieges gesetzt. […] Auf die Frage, ob
die westlichen Verbündeten die Initiative letztlich blockiert hätten, antwortete Bennett: ‚Im
Grunde genommen, ja. Sie haben es blockiert, und ich dachte, sie hätten unrecht.‘ Sein
Fazit: ‚Ich behaupte, dass es eine gute Chance auf einen Waffenstillstand gab, wenn sie
ihn nicht verhindert hätten.‘“[13]」
一読して明らかなようにワーグナー氏は根拠なしに「ジョンソン氏(ないし米英)介入要因論」を指摘されているのではなく、先にみた元クヤット氏へのインタビュー・ベネット氏のインタビューをもとにした記事、を根拠にしています。
まずクヤット議長のインタビュー記事です。特に注目すべきは以下のやりとりです。
「Warum kam der Vertrag nicht zustande, der Zehntausenden das Leben gerettet und den
Ukrainern die Zerstörung ihres Landes erspart hätte?
Nach zuverlässigen Informationen hat der damalige britische Premierminister Boris
Johnson am 9. April in Kiew interveniert und eine Unterzeichnung verhindert. Seine
Begründung war, der Westen sei für ein Kriegsende nicht bereit」
ここでのやりとりからわかるようにクヤット氏はインタビューの質問に「4/9のジョンソン氏の介入」をはっきり指摘しています。ただそのもととなる情報については語られていないことは確かです。守秘義務その他あるかと思いますがこの点はやはり知りたく思います。
次にベネット氏へのインタビューをもとにした記事で注目すべきは下記の点です。
「Ein Waffenstillstand sei damals, so Bennett, in greifbarer Nähe gewesen, beide Seiten
waren zu erheblichen Zugeständnissen bereit. Doch vor allem Großbritannien und die USA
hätten den Prozess beendet und auf eine Fortsetzung des Krieges gesetzt.」
ロシア・ウクライナとも一定の譲歩することをいとわなかったし、停戦・和平は手の届くところにあったが、米英は戦争の継続を望んでいた、との指摘です。
そして次にベネット氏とのやりとりについての以下の記述に注目すべきでしょう。
「・・・Auf die Frage, ob die westlichen Verbündeten die Initiative letztlich blockiert hätten,
antwortete Bennett: „Im Grunde genommen, ja. Sie haben es blockiert, und ich dachte, sie
hätten unrecht.“ Sein Fazit: „Ich behaupte, dass es eine gute Chance auf einen
Waffenstillstand gab, wenn sie ihn nicht verhindert hätten.“」
ベネット氏は「西側の介入がなければ、当時停戦は成立していた、可能性は十分あった」としています。
以上のうちやはり「ウクライナ・プラウダ」の記事が一番目を引きます。「ジョンソン氏介入要因論」(といっても「ブチャの虐殺」とともに双方を主張するものだが)の根拠は何か、もちろんニュースソースについては明かせないし、特に戦争継続中であれば当然ですが、気になります。ただウクライナ国内からの報道ですから信頼性は高いと思います。
またクヤット氏・ベネット氏についてはそれなりの立場にあり、さらにベネット氏は停戦交渉の裏舞台で実際に動いていた方のものです。もちろんそうであるからといって事実を語っているとは限らず、推論のところもあります。それを差し引いてもやはり信頼性は否定できないのではないでしょうか。
以上紹介した記事を読む限り、合意寸前であった停戦・和平合意がなされなかったのは、「ジョンソン氏ないし米英などの介入があったため」という指摘はそれなりに信頼できるもの、「少なくともジョンソン氏・米英などの介入ということも要因であったことは完全には否定できない」と言っていいのではないでしょうか。
もちろん限られた文献からのものですし、ウクライナ語のものは自動翻訳、ドイツ語記事は私の乏しいドイツ語能力という、制約の上でのこと、という点はおことわりしておきます。
5、 ウクライナ市民の気持ちとは?
「停戦論」への批判として「ウクライナ市民の気持ちを無視している」ということがよく言われます。しかしウクライナ市民の気持ちとは単一なものなのでしょうか?
「徴兵を逃れるため…」父の決断でウクライナの少年は国境を渡った
このように徴兵を逃れる人たちも少なくありませんでした。
さらに下記のような報道もなされています(22分ごろから)
ウクライナ軍が抱える“弱点”/横行する「徴兵逃れ」の実態・・・【4月13日(木)報道1930】
ウクライナでも、ロシア政権による侵略がなされた当時は、軍に志願する人たちが列をなしていた、しかし現在はその列はない、事実上の強制動員がなされている、一方徴兵逃れは20万人から50万人に達している、政府も対策せざるをない、などという現実があります(ロシアの話ではなくウクライナの話です)。
「ロシア政権による侵略は容認できない、すぐに出て行ってほしい」という点では一致しているとは思います。ただし「そのために自分や親族が戦場に行き命を懸けて戦う」ということに関しては当然葛藤があると思います。とりわけ長期化して戦場の様子などが耳に入ってくると、侵略された当初のように「戦場に行って命を懸けて戦う」とは簡単に考えられない、は人間として当然の感情と思います。
もちろん公的に聞かれれば、あるいは外国から来たジャーナリストに聞かれれば、「ロシア軍を撤兵させるまで戦う」と答えるでしょう。しかし本心から皆がそう思っている、といえるでしょうか?上記の報道はそうした表面的な回答とは異なる本心もありうることを示していると思います。なお侵略されたからといって、皆が皆本心から「侵略軍を撤兵させるまで命を懸けて戦う」となる国や社会はかえって恐ろしい、と思います。
あとウクライナ市民の気持ちとして興味深いアンケート結果があります。
「ミュンヘン安全保障会議」の事務局は13日、ウクライナ国内で昨年11月に実施した世論調査の結果を明らかにしました。回答者の93%が「クリミア半島奪還まで戦うべきだ」と考えており、ロシアの占領を拒否する国民の姿勢が鮮明に表れています。短い拙稿。 https://t.co/S7eWl8ae2Z #ウクライナ情勢
— 国末憲人 Kunisue Norito (@KunisueNorito) February 13, 2023
国末氏が引用するアンケートでは国内に残ったウクライナ市民の93%が「クリミア奪還まで戦うべき」と答えています。
しかしウクライナの国営通信社Ukrinformは国内にいるウクライナ市民に対する興味深いアンケート結果を配信しています。
ウクライナ国民の過半数、軍事手段でのクリミア解放を支持 (ukrinform.jp)(3/13)
「西側の軍事支援が減ることになっても」という制約条件を付けると、「クリミアまでの軍事奪還」の支持は64%に減ります。そして何らかの譲歩を認める回答も一定数出てくることがわかります(「西側の軍事支援がなくなっても」という制約条件を付けたアンケート結果も知りたいところです、その場合肯定比率はどうなるでしょうか)。
あと下記の点はどうでしょうか?
昨年2月の侵攻開始時点の境界へのロシア軍退却を停戦条件としたのは7%、ロシア軍が占領したままの停戦を求めたのは1%にとどまりました。95%は「通常兵器の攻撃が続いても戦う」と回答。89%は「ウクライナの戦場や都市で核兵器が使われても戦い続ける」と答えました。
— 国末憲人 Kunisue Norito (@KunisueNorito) February 13, 2023
ここで国末氏が紹介しているアンケート結果では回答者のほぼ90%が「核使用されても戦う」と回答しています。万が一これがウクライナ市民9割の気持ちだとしても、それに寄り添うべきでしようか?
「ウクライナ市民の気持ち」といっても、その本心は表面に出ているとおりなのか、また制約条件によってどうなのか、さらにたとえそれが本心であってもすべてに寄り添うべきなのか、そうした吟味が必要と思います。
6、 ウクライナの反転攻勢は?
特に「今こそ停戦を」に対しては、「ウクライナ軍がこれから反転攻勢に出るところだ」
という批判もなされます。
下記のウクライ国防省次官が昨年11月に述べた点をどう考えるでしょうか?
「ウクライナ国防省のハヴリロフ次官(元少将)は2022年11月19日、英SkyNewsに対して「年内にクリミアを解放して春先までにはウクライナ全土を解放するだろう」と発言←後知恵で批判せず、なぜ予測が外れたか、プロパガンダだったのか等々、専門家はキチンと検証すべきでしょう。」(野口和彦先生の4/28ツイートより引用)
明らかにこのようになっていません。単なるプロパガンダだったことも考えられます。ただ昨年11月時点では、一定の占領地奪還が進んでいましたから、一定の根拠もあったのかもしれません。なぜこうならなかったのか、その点の解明とともに、戦況の予想は困難、という点も述べておきたく思います。
反転攻勢といっても必ず成功するとは限りません。領土はほとんど取り返せない、もしかしたら再奪還されてしまう、そして確実なことは、多数の死傷者が出る、ということです。「これから反転攻勢だ」という批判については、ではこのようなリスクはどう考えているのか、その点を知りたく思います。
反転攻勢については、次のような現実もあります。
「ウクライナのレズニコフ国防相は「我々の計算では戦闘任務を成功させるのに最低でも月36.6万発の砲弾を必要としているが、供給不足のため砲兵部隊は発射可能な砲弾量の20%分しか使用しておらず、これはロシア軍が使用する量の1/4だ」とEUに訴えた。
EUは3月『今後12ヶ月間で100万発の155mm砲弾をウクライナに供給する』と合意したが、21日時点で2.8万発しかウクライナに到着していない。もうウの反攻作戦に必要な砲弾供給は『米国(年間16.8万発)』と『韓国(推定年間20万発以上)』に依存しているが、尹大統領はウへの軍事支援に言及しなかった」(4/29、野口和彦先生ツイートから引用)
ウクライナを守る女性兵士、5000人以上が前線に 男性に総動員令の一方で…
「ロシアの侵攻を受けるウクライナでは5万人以上の女性が従軍している。同国国防省によると、そのうち5000人以上は兵士として前線に立つ。軍での女性比率は約2割に達し、欧州各国の中でも高い。男性に総動員令が敷かれてもなお兵力が不足しており、女性も従軍せざるを得ないためだ。」(上記記事より直接引用)
武器、兵力ともに不足している、という指摘です。もちろんあくまで現実のひとつです。しかしかこの現実からすれば上記のリスクを考えなければならない、ということになります。その点にはどうこたえるのでしょうか?
7、 ウクライナ軍側の死傷者数と死傷者の属性は?
5月2日に朝日新聞の報道です。
ロシア側、昨年12月以降に2万人以上死亡 ウクライナ戦闘で米推計
ロシア軍側の死傷者数は発表されていますが、ウクライナ軍側の死傷者数は発表されません。全く把握されていなかったら作戦のたてようがないわけですから、把握されているはずです。なぜウクライナ軍側の死傷者数は発表・報道されないのでしょうか?
「ウクライナ軍の攻勢により〇〇地域奪還、その過程での死傷者数はロシア軍側X名、ウクライナ軍側X名」と把握できる限り正確(正直)に報道されていたら、私たちはその「成果」をどうとらえるでしょうか。反転攻勢についても、「~の成果が予想される、同時にその過程でロシア軍側X名、ウクライナ軍側X名の死傷者も予想される」と推計できる限り正確に(正直に)報道されるなら、反転攻勢なるものをどのように認識するでしょうか?
同時に、戦場で死傷している人たちはどのような社会的経済的属性を持った人たちなのか、についてもぜひ知りたいと同時に、私たちはそれを踏まえて考えるべきではないでしょうか?
ウクライナとの戦争があぶり出した「多民族国家・ロシア」の暗部 動員されやすい“貧しい少数民族”(まいどなニュース) - Yahoo!ニュース(3/8)
ロシア側の戦場での死傷者に「少数民族」が突出しているはよく言われていることですが、私はそれは事実と思います。特に「貧しい」とよりその比率は高いと思います。
ウクライナで徴兵逃れ横行 「富裕層にあっせん」(共同通信) - Yahoo!ニュース(22年12/9)
「徴兵を逃れるため…」
(記事は再録です)
ここで注目すべきは、ウクライナでも「徴兵逃れ」は少ないとはいえないということばかりではなく、「そのためにはまとまった金銭が必要」、つまり「まとまった金銭を支払えない層は徴兵に応じざるをえない」という点です。つまりウクライナ側でも「戦場での死傷者は社会的経済的属層により偏りがあり、戦場での死傷者は社会的経済的に周辺に置かれている層ほど多い」とも予想されます。
この点も踏まえ「〇〇地域奪還、その過程でのロシア軍側・ウクライナ軍側死傷者それぞれX名、所得層別に見た場合、貧困層が死傷者全体の・・%」といった報道がなされたとしたら、私たちは戦争継続をどう考えるでしょうか?簡単に受け入れられるでしょうか。
「戦争での犠牲も皆が平等ではない、社会的経済的属性によりそれは偏りがあり、周辺部分にいくほど、犠牲は増える」と考えます。私はそうした観点からも戦争自体に反対ですし、「即時停戦」を強く主張します。
8、 世界大戦・核戦争の危機をどうとらえるか?
4月25日に「この2月にウクライナはモスクワを攻撃する計画をしていた」との報道がなされました。
2月に「モスクワ攻撃」計画 米の自制要請で延期 ウクライナ(時事通信) - Yahoo!ニュース(4/25)
ウクライナ、2月にモスクワ攻撃計画か 米要請で中止、機密文書 - 産経ニュース(sankei.com)(4/25)
ウクライナ モスクワ大規模攻撃計画 米軍の機密文書で判明|FNNプライムオンライン(4/25)
『ワシントン・ポストは24日、ロシアのウクライナ侵攻から1年にあたる2023年2月24日に合わせ、ウクライナ国防省情報総局が、モスクワへの大規模攻撃を計画していたと報じた。アメリカ軍から流出した機密文書から、明らかになったとしている。
アメリカ政府は、「プーチン大統領が核兵器の使用に踏み切る可能性がある」として、自制を求め、攻撃直前の22日に計画は延期され、その判断のくわしい経緯は不明としている。
アメリカは2月13日に、国民に対してロシアからの退避を勧告していて、ウクライナの攻撃計画との関係も指摘されている。』(FNNの記事より直接引用)
2/24にモスクワ攻撃を計画していて、「計画の延期」がなされたのは直前の22日、2/13にはアメリカ政府はアメリカ国民のロシアからの退避を勧告しており、「計画の延期」がなされず実行される可能性がかなり高かったのではないか、とも思われます。
万が一これが実行されてしまったらそのあとはどう展開していったか?「ロシアの核使用→NATOなどの参戦により世界大戦→核戦争」となっていった恐れも否定できません。なおNATOなどの参戦となったら「日本はNATOには入っていませんから関係
ありません」とはいかず、当然日本もそれへの参加もしたことでしょう。その場合、今頃私たちはどうなっていたのでしょうか?
「ある朝起きたら世界大戦・核戦争になっていた」も杞憂とはいえない、「ぞっとする」話です。
ロシア・ウクライナ戦争を続けたら、世界大戦・核戦争の恐れがある、というと、「そんなことはほとんどありえない」という反論もなされます。しかし私も下記の野口先生のツイートの中で紹介されているミアシャイマー教授のように考えます。
ウクライナ戦争でロシアが核を使用するリスクについて、ミアシャイマー氏は、薬室が100あるレボルバー銃が自分に向けられ、そこに5発(あるいは1発)の弾をこめられて引き金を引かれることを考えれば、よく分かるはずだと語っている。核戦争のリスクは甘く見るべきではない。 https://t.co/JUY6j4s9Oz
— 野口和彦(Kazuhiko Noguchi) (@kazzubc) April 12, 2023
ミアシャイマー教授が出されている例では、自分に向けて引き金を引かれても、95%ないし99%は安全です。だからといって「自分に向けて引き金を引いていい」となど言えるでしょうか。それはリスクを考えるとき「起こる確率」だけでなく、「起こったときの被害の重大さ」をも当然考慮に入れるからです。
世界大戦・核戦争など生じたらその被害は甚大、想像もつかないほどです。単なる「起こる確率」だけでは論じられません。さらに「モスクワ攻撃」がなされていたら、その「起こる確率」自体も高まっていたでしょう。それが2月時点で私たちが全く知らないところで生じていたわけです。
なおこれらの報道で気になったのは「計画の延期」と書かれている報道もある点です。ということはこうした計画は、完全になくなったのではなく、今後も実行に移される恐れある、ということではないでしょうか。もちろん計画は秘密裏にすすめられるでしょうから、突然「モスクワ攻撃→ロシアの核使用→NATOの参戦→核戦争」とあっという間になってしまう、そして「その後は・・・」、という危険は戦争が継続する限り常にあることになります。
「世界大戦・核戦争」は「起こる確率」ではなく「起こった場合の被害の甚大さ」で考えるべき、そして「起こる確率」も戦争継続で高まっている、ということは深刻に考えるべきでしょう。
ロシア政権による侵略は不当で全く許容される余地はない、その点は強調します。しかし「世界大戦・核戦争」は絶対避けなければなりません。このままウクライナに軍事支援をして抗戦を支援する、でいいのか、その先の「世界大戦・核戦争の危険」をも考えるべきではないか、と思います。そうした観点からも「今こそ停戦を」と強く主張します。
なお、この「モスクワ攻撃」計画は中止とは限らず「延期」されたにすぎない、今もその実行の計画がなされているかもしれない、という点は強調しておきます。
9、おわりに-なぜウクライナ「だけには」なのか?-
3月22日に出されたアムネスティの22年の報告書についての記事です。
「国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は28日に公表した2022年の年報で、ロシアのウクライナ侵攻を受け各国は怒りの声を上げたが、他の地域での人権侵害には沈黙しており、西側諸国の「二重基準」が鮮明になったとの見方を示した。
中略
アムネスティのアニェス・カラマール(Agnes Callamard)事務総長は「ロシアのウクライナ侵攻に際しての西側諸国の見事な対応は二重基準を際立たせた。他の多くの国連憲章(UN Charter)違反への対応を見ると、筋が通っていないことが鮮明になった」と述べた。」(上記記事より直接引用)
実はウクライナ問題に関して、ここで指摘されている米欧日の「二重基準」は筆者も強く感じます。ロシア政権による侵略はまったく許されないし強く非難否定されるべき、その点での合意はほぼ形成されました。その点は当然と思います。しかしイラク戦争で、アフガン戦争でそうした合意はこれほど広く形成されたでしょうか?
下記のような記事もあります。
誰もプーチンを擁護しないが、欧米諸国も支持しない──グローバルサウスが冷ややかに見て取る「偽善」と2つの溝
「だが、欧米諸国以外の世界の考えは違う。もちろん、ロシアのウクライナ侵攻や、ウラジーミル・プーチン大統領を擁護するリーダーはいなかった。だが、インドやブラジル、サウジアラビアをはじめとする「それ以外の国々」は、欧米主導の対ロシア制裁に参加していないし、この戦争をさほど終末論的に見ていない。
これはそんなに意外な反応ではない。彼らにしてみれば、法の支配や国際法の遵守を強いる欧米諸国の態度は偽善にほかならず、自分たちが道徳的優位にあるかのような押し付けに憤慨している。
そもそも、欧米諸国が遵守を強いる国際法は、欧米諸国が作ったものであり、都合が悪いときは平気で踏みにじってきた。2003年のアメリカのイラク侵攻がいい例だ。あのとき法の支配に基づく秩序はどこにあったのかと、欧米以外の国は考えているのだ。」
(上記記事より直接引用、筆者のウォルト教授はハーバード大教授)
ロシア政権による侵略は全く支持しない、しかし「なぜウクライナに対して『だけには』なのか」という疑問を筆者も持ちます。
ロシア・ウクライナ戦争だけが、軍事紛争ではありません。イエメンでは軍事紛争により今世紀最大といわれる人道危機が言われています。スーダンでも内戦がおこっています。イスラエルパレスチナ関係は軍事的緊張が高まっています。それらに対してはなぜなぜウクライナ問題に対するほど関心がもたれず支援がなされないのでしょうか。また軍事紛争だけでなく、「明日にも飢え死にする」という飢餓が直面している人々が世界に多数います。そちらにはなぜウクライナに対するほどの支援が向けられないのでしょうか。
ウクライナ「だけには」という米欧日の対応を冷ややかにみている国々人々は多数いると同時に「戦争自体やめてほしい」と望む国々人々も世界には多数です。
「今こそ停戦を」という訴えはそうした点も考慮してのもの、と私は考えます。
もし「今こそ停戦を」への署名賛同していただけるなら、ぜひ署名のほどぜひお願いいたします。最後まで読んでいただきありがとうございました。
(一部はnoteに書いたものに修正を加えたものであることを述べておきます)
白井先生の原稿がメールで届いたのが、連休中の2023年5月3日の午前4時!!
日本でこれほど真剣に、ウクライナ戦争のことを考え、即時停戦による人命尊重を突き詰めて探究されている方は少ないのではないでしょうか。
白井先生、本当にありがとうございました!
The Talks That Could Have Ended the War in Ukraine
https://www.foreignaffairs.com/ukraine/talks-could-have-ended-war-ukraine
1,ウクライナへの安全保障について-
・4月12日の草案は、ウクライナが攻撃された場合に支援に参加するかどうかを保障国が独自に決定することを明確にしていたが、4月15日の草案では、ロシアはそのような行動は ロシアを含むすべての保障国が合意した決定に基づいてのみ行われると主張し、侵略者となりそうなロシアに拒否権を与えて、この重要な条項を破壊しようとした。
・元米国高官は、コミュニケが発表されるまでウクライナ側は米国と協議しなかったと語った。米国にとって新たな法的コミットメントを生み出すもの(ウクライナに安全保障を提供する)であったにもかかわらず。(米国の反応が大きくならなかったのは交渉が成功する見通しがなかったためだと私は思う。ロシアの壮絶な砲弾の嵐を見れば交渉不成立を容易に想像できるのだが、反米拗らせ論者には理解できないようだ。)
2,歴史認識に対するロシアの介入
・ロシアは、ウクライナに「ファシズム、ナチズム、ネオ・ナチズム、攻撃的ナショナリズム」を禁止することを求めており、そのために、ソ連時代の歴史、特に第二次世界大戦中のウクライナのナショナリストの役割など、争点となる部分を大まかに扱ったウクライナの6つの法律を(全部または一部)廃止することを求めた。(ロシアの覇権主義ぶりがよくわかる。)
今後は将来の安全保障と合わせ、停戦に向けた当面の具体的取り決めも平行して行うべきとしている。
平和への最大のチャンス、ウクライナ和平合意を壊したのは誰か
「平和への最大のチャンス、ウクライナ和平合意を壊したのは誰か」で検索してください。47NEWSの記事です。
記事を書いた共同通信の太田清氏は”「英国はロシアとどんな合意も調印する気はない。共にロシアと戦おう」と主張したことが交渉崩壊の一因だったことを明らかにした。”と書いているが、独立系ニュースサイト「メドゥーザ」の記事を恣意的に一部のみを引用してウクライナの交渉当事者の発言を歪曲している。
合意できなかった理由で最も重要な点が省略された。それは、「2度目(の侵攻)はないという100パーセントの確証があって初めて、私たちは動くことができたのです。しかし、そのような確証はない。」という点。ウクライナが西側諸国やトルコを含めた多国間による安全保障を求めていたことは当時も報道されており、これはどの国がウクライナの安全保障をするか不透明で長引きそうだと思ったが、ジョンソン伝説はそんな詳細は無視をして、欧米が合意をぶち壊したとプーチンのプロパガンダを垂れ流している。
4/12には次の報道も。
プーチン大統領、2年前の停戦交渉合意案に同意の意向示す ロシアメディア報道
https://news.ntv.co.jp/category/international/5fdeac2bcd5340a9aa18053e9cf2ab04
”ロシアのプーチン大統領は11日、ウクライナ侵攻をめぐり、2年前にトルコで行われた停戦交渉の合意案に、同意する意向を示したとロシアメディアが報じました。” とされるロシアのメディアはスプートニクだった。プーチンが同意の意向を示した事実はなく(ロシアの大手メディアもそんな報道はしていない)、ペスコフやラブロフも交渉に際しては「新たな現実をふまえよ」としている。
ろくに活字を見ない親プーチンの反米拗らせ論者は、このような記事にパクつき、プーチンのプロパガンダにどっぷり浸かっている。
良い子は決して真似しないでください
なお、リンク先に飛ぶとまさかのウイルスがあったりするかもしれませんので、私も見に行っていませんしお勧めしません。
■エヴァ・バートレット
何年にもわたってドンバスの民間人に対するウクライナの戦争犯罪について私が見たことhttps://ingaza.wordpress.com/2022/08/10/what-ive-seen-of-ukraines-war-crimes-against-civilians-in-the-donbass-over-the-years/
心の底から「最後の一人になっても、ロシアに勝つまで戦い続けるぞ」と皆さん思っているのでしょうか。
かつての日本の戦争からは、なかなかそのように想像することはできません。
特攻隊員が「天皇陛下万歳」と叫んで敵艦に突っ込んでいったなどという作文は、「お母さん!」と叫んで突っ込んだんだというお話にかき消されるでしょう。
1945年8月15日に玉音放送が流され、それが終戦を告げるものだと知らされたとき、「ほっとした」が日本国内にいた国民の大半の思いだったのではないですか。
本当の当事者こそが、停戦の是非を決められるのだと思います。
アメリカの覇権の終了を象徴するように“中東最大の親米国”だったサウジアラビアや北米NAFTAのパートナーだったメキシコなどの影響力の大きな国々が『BRICSへの加盟』に舵を切っています。
※今回は“経済視点”のみでコメントさせていただいています。
“武器による侵略”は当然アウトで、宮武さん、白井氏はじめ、多くの人達がロシアを厳しく非難するのは当然過ぎる話です。
しかし、“経済制裁”=経済戦争で、経済制裁によっても多くの人達の生活や命を簡単に奪えるのですから、武器使用同様に厳しく制限されるのが筋なはずです。
今回は戦争だけでも世界中に与える悪影響はひどいのに、“経済制裁”の悪影響も世界中に広がっていることもしっかり周知する必要があると思います。
※※“多くの国々のドル離れ”は『アメリカの身勝手な経済制裁』に嫌気が差した…と判断しています。
世界中の3/4の国々が経済制裁に参加していないのはその証拠でしょう。
☆☆習近平の「中国通貨覇権」が本格始動していた…!中国が世界で巻き起こす「次の戦争」のヤバすぎる中身
2023.05.10 藤 和彦 現代ビジネス
◎ウクライナ戦争を契機に中国人民元による国際決済が大幅に増加している。
人民元決済が最も増えているのは、エネルギー大国ロシアとの間の貿易だが、サウジアラビア、ブラジル、アルゼンチンなどにも人民元決裁が広がり、中国が関与しない取引でも人民元決済が行われ始めている。
これに神経をとがらせているのは、基軸通貨ドルの地位を棄損されかねないアメリカだ。
◎「アメリカに代わって通貨覇権を握る」との野望を中国が抱いているのかもしれないが、足元のドル離れはアメリカ自身に問題があると言わざるを得ない。イエレン米財務長官は4月15日「アメリカの金融制裁の実施がドルの国際的覇権を弱体化させつつある」と述べたように、ロシアへの経済制裁が災いしている。
https://shuchi.php.co.jp/article/9199
☆借金大国の通貨(アメリカ・ドル)が世界の基軸通貨であり続ける理由
2022年03月15日 PHPオンライン 大村大次郎(元国税調査官)
From Zelenskyy's "surrender" to Putin's surrender: how the negotiations with Russia are going
pravda.com.ua/eng/articles/2022/05/5/7344096/
([https://www.]を冒頭に付けてください)
引用開始----
Johnson’s position was that the collective West, which back in February had suggested Zelenskyy should surrender and flee, now felt that Putin was not really as powerful as they had previously imagined.
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ジョンソンの立場は、2月に「ゼレンスキーは降伏して逃げるべきだ」と提案していた西側諸国は、今やプーチンは以前彼らが想像していたほど強力ではないと感じているというものだった。
引用終わり----
この点について Schäfer は次のように注意を促している。
引用開始----
Wenn man die Vermutung darauf gründen will, dass die Ukraine und der Westen aufgrund der für sie günstigen Entwicklung auf dem Kriegsschauplatz verhandlungsunwillig geworden seien, so ist auch zu bedenken, dass es in der Woche vom 17.-23.
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ウクライナと西側が、有利な戦況によって交渉を拒否するようになった、という推測をする場合、3月17日から23日の週にロシア軍が国の南東部で大幅な土地の獲得があったことも考慮する必要があります。
引用終わり----
キーウ撤退後、東部に兵力を再配置したロシアは猛攻撃をかける。Schäfer は”ngesichts der ausgreifenden Eroberungspolitik des Kreml im Osten des Landes sah die ukrainische Führung keinen Sinn darin, mit der Pistole an der Schläfe sich auf Friedensgespräche einzulassen.(クレムリンが国の東部で拡大する征服政策を受けて、ウクライナの指導部は、拳銃を頭に突きつけられながら平和交渉に臨む意味がないと考えました。)”と解釈する。ロシアの猛攻撃は、交渉に臨む姿勢ではなく、無条件降伏を迫ったものと言えるだろう。ハイマースが来る前のことで、ロシアも武器支援がわかっていたから、その前に決着をつけるべく、交渉よりも猛攻撃を選択したのだろう。交渉に当たり、ウクライナはロシア軍の撤退を求めていたが、ロシアの回答はこれだった。ウクライナは毎日100人以上の兵士が死んでいると窮状を訴えていたが、民間人に対する無差別攻撃・戦争犯罪をはじめ、そのすさまじい攻撃、さらに、4州併合の住民投票実施が5月の時点で出ていたことが、ウクライナをさらに硬化させたと言える。
2022/6/7のゼレンシキーは「現在の戦争におけるウクライナの勝利は戦場で達成されねばならず、」としており、停戦について記者から問われ「どのような合意もウクライナ抜きの協議で達成されてはならないとし、同様に、無条件の停戦というものもあってはならない、停止されるべきはロシアの侵攻である」と述べた。ここが転換点ではないかと私は思う。
ウクライナの勝利は戦場で達成されねばならない」=ゼレンシキー宇大統領
ukrinform.jp/rubric-ato/3502289-ukurainano-sheng-liha-zhan-changde-da-chengsarenebanaranaizerenshiki-yu-da-tong-ling.html
ちょうど今から娘とロンドンに旅立つところです
白井先生にも凄いコメントが来てると書いておきました〜
皆さん、白井先生が見にこられると思いますので、思い思いの感想をお願いいたします🤲
それではGoogleの使えない世界に丸一日行って参ります
引用開始----
Grundsätzlich scheint es mir so zu sein, dass all diejenigen, die die Schuld für den Verhandlungsabbruch der ukrainischen Seite bzw. dem Westen zuschreiben, den springenden Punkt übersehen: Die Weigerung Russlands, seine Aggression zu beenden, die Truppen zurückzuziehen und das Recht der Ukraine auf territoriale Unversehrtheit anzuerkennen, ist bis heute die Klippe für einen fairen Verhandlungsprozess.
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基本的に、ウクライナ側や西側が交渉を中断した原因を責める人たちは、重要な点を見落としているように思われます。それは、ロシアがその侵略をやめ、軍隊を撤退し、ウクライナの領土保全の主権を認めることを拒否していることが今日まで公正な交渉プロセスの障害となっていることです。
引用終わり----
一方、私にはこうにも見える。ジョンソン伝説を信じる人は、ウクライナはロシアに敗北するのだから領土割譲を(半ば?)当然視しているためではないか。ロシアを交渉の席に着かせるためだからだ。交渉でロシアから譲歩を引き出せると反論する人もいるだろうが、その人たちはロシアを甘く見ている。広範囲に占領地を確保し、西側世論が不安定な一方、グローバルサウスを味方につけ、経済制裁にも限界があり、資源を豊富に持つロシアは簡単に妥協はしない。核兵器を使うまでもなく優位な状況にある。それを最も理解しているのはウクライナ人である。そのことを忘れてはならないと思う。
No, the West Didn`t Halt Ukraine`s Peace Talks.
novaramedia.com/2022/10/17/no-the-west-didnt-halt-ukraines-peace-talks-with-russia/
さらに、続けると
引用開始----
Zelensky, Romaniuk says, had been sceptical about Russia’s willingness to stick to any peace agreements from the start. Evidence suggests this concern was justified. The very decision to start the war, the way in which it was fought and the Kremlin’s assumptions that underlay its military planning - too often ignored in leftwing debate - are crucial to estimating the chances of diplomatic settlements and the behaviour of all parties.
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Romaniuk によると、ゼレンシキー大統領は当初から、ロシアが和平合意に忠実に従うことに懐疑的だった。この懸念が正しかったことを示す証拠がある。戦争を開始するという決断そのもの、戦争がどのように行われたか、そして軍事計画の根底にあるクレムリンの思い込み (左翼の議論ではあまりにもしばしば無視される) は、外交的解決の可能性とすべての当事者の行動を見積もる上で極めて重要である。
引用終わり----
プーチンは開戦の理由を、ロシア人が虐待されている、ウクライナは核兵器を作っているなどと言った。その前にはウクライナを攻撃することはないと明言もしていた。そしてミンスク合意を後戻りできない破棄をして東部2州の「独立国家」を承認した。こんな人物をどこまで信用できるか、という話でもある。(いずれは終戦にあたり向き合わねばならないが)
・ロシアによるシリアでの空爆を称賛した。
・ロシアが資金提供する文明の対話研究所( Dialogue of Civilizations Research Institute)の監督委員会メンバー
・アルヌスラ戦線を米国の同盟国と表現
こうした背景を持つ人物がロシアを批判することはないだろう。彼はこの戦争の主役が米国とロシアであるとしている。ウクライナも米国の地政学的利益のために戦っている、とも。
そんな彼がジョンソン元首相を悪役とみなすのも当然の成り行きである。次のインタビュー記事にジョンソン伝説を説いている。
Ukrainekonflikt: «Jetzt wäre der richtige Zeitpunkt, die abgebrochenen Verhandlungen wieder aufzunehmen»
zeitgeschehen-im-fokus.ch/de/newspaper-ausgabe/nr-1-vom-18-januar-2023.html
Kujat は Foreign Affairs の記事も論拠にしている。Foreign Affairs の記事はこちら。
The World Putin Wants
foreignaffairs.com/russian-federation/world-putin-wants-fiona-hill-angela-stent?gad=1&gclid=Cj0KCQjwr82iBhCuARIsAO0EAZwTQnapDNAdJXmlAt-Bw4OCM_0d205jsfYPpc6w45Kp37Fe8-WawaIaArv2EALw_wcB
([htpps://www.]を冒頭に追加してください)
注意すべきは次の記事の文言。”Russian and Ukrainian negotiators appeared to have tentatively agreed on the outlines of a negotiated interim settlement:(ロシアとウクライナの交渉者は、暫定的な合意の概要について仮に合意したようです。)” 合意は暫定的なものだった。なぜかは、ウクライナが”receive security guarantees from a number of countries(複数の国からの安全保障を受け取ることになっていた。)”とされているから。当時(今も?)、西側諸国がウクライナに安全保障を約束した国はなかったので暫定的なものだった。”guarantees ”なので、ブダペスト覚え書きのような曖昧なものではない。この段階では「概要は合意できました。細部を詰めるため、交渉の継続をしましょう」という程度の「合意」だろう。 Schäfer は 同じくジャーナリストのMajid Sattar の的確な指摘を引用している。
引用開始----
„Man muss nur auf „Umrisse“, „vorläufig“ und „Übergang“ verzichten sowie den politischen Kontext ausblenden, die Frage nämlich, ob Putin sich einer solchen Vereinbarung seiner Unterhändler wirklich verpflichtet gefühlt hätte - und schon ist die Basis gelegt, um den Westen anzuprangern.“
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『概要』、『暫定的』、『移行』を省略し、政治的文脈を無視するだけで、つまり、プーチンがその交渉者のこのような合意に本当に義務を感じていたかどうかという問題を無視するだけで、西側を非難する基盤が築かれます。
引用終わり----
Kujat の解釈は恣意的に過ぎる。彼は真偽不明の推測に過ぎない「情報」を流した。その顛末は情報の受け手に混乱をもたらした。これはロシアの期待するプロパガンダと言っていい。私たちがプロパガンダに踊らないためには、明確な事実から判断すること。以前にも述べたように、ウクライナ側はジョンソンとの会談後も交渉継続の意思を示していた。
Ukraine-Russia Ceasefire Negotiations: Chapter II
parleypolicy.com/post/ukraine-russia-ceasefire-negotiations-chapter-ii
([htpps://www.]を冒頭に追加してください)
では、ウクライナが交渉に活路を見いだせなくなったのはどういう経緯か。
Die Johnson-Legende, oder: Wie der Westen den Frieden verhinderte
europa.blog/de/die-johnson-legende-oder-wie-der-westen-den-frieden-verhinderte/
(htpps://を冒頭に追加してください。以下同様。)
はじめに、元イスラエル首相のベネット発言について。「西側諸国が和平を妨害した」と明確に述べたのは事実。しかし、その後、新たに加えたものがある。Schäfer は、4時間半のポッドキャストの会話からそれを得た。停戦が手の届くところにあったとする評価に加え、次のように指摘する。
引用開始----
die auch schon die Einschränkung enthielten, dass es möglicherweise legitim gewesen sei, weiterzukämpfen. Er fügt auch hinzu, dass die Enthüllungen über die russischen Kriegsverbrechen in Butscha die Lage gravierend verändert hätten.
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それらはすでに制限を含んでおり、戦い続けることが正当だったかもしれないと述べています。彼はまた、ブチャでのロシアの戦争犯罪に関する暴露が状況を深刻に変えたことも付け加えています。
引用終わり----
ベネットも、その時点での「合意」には制限があったとしている。それは交渉の細部に至るずっと前の漠然としたものに過ぎないことを意味していよう。つまり、「ベネットはとにかく停戦の計画を持っていませんでした。」という南ドイツ新聞の指摘を Schäfer は引用している。
同様の「合意=和平」幻想を Kujat も見ている。
は?! 卑怯な! というのが率直な感想です。もちろん、非奪還地域を守ることはできません。でも、守らなくてよいなんて誰が思うのですか。この言い草はないでしょうと思います。
3の段落からは分析が続きますが、申し訳ないですが、そのソースの検証等、さらに困難な作業が伴うことになるので、この感想を持ったまま真面目に読む気になれません。そして、検証なら、チェチェンは?という思いが湧きました。ページ検索をかけましたが、一言も触れられてないようですね。