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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

子どもたちの命を守るために教育委員会は廃止でなく教育委員公選制に 子ども未来法律事務所通信21

2012年07月09日 | 子ども未来法律事務所通信

 

 大津の中学生がいじめで自殺したことが大変な問題になっていますが、青少年の死因の1番目が自殺であることをご存知でしょうか。

 内閣府共生社会政策はが2012年6月8日に公表した「自殺対策白書」によると、2011年(平成23年)の自殺者数は、3万651人でしたが年齢別では、総数が減少するなか、「19歳以下」および「20歳代」 は、自殺者数が増加しています。また、職業別では、総数が減少するなか、「学生・生徒等」のみ前年より101人(10.9%)増加しているのです。

 そして、年代別の死因順位を見ると、15~39歳の各年代の死因の第1位は、自殺となっています。

 こうした状況は、国際的に見ても深刻であり、15~34歳の若い 世代で死因の第1位が自殺となっているのは先進国7か国では日本のみで、その死亡率も他の国に比べて高いものとなっているのです。

 そもそも、そんなに若くして死んだらあかんのですから、青少年が。その原因が自殺だなんて、いつの間にか、日本はなんと不幸な国になったものではないですか。

 自殺の原因・動機について、「学校問題」は15歳から20歳代で多くなっています。

 「学校は子どもを守らない」どころか「学校で子どもが殺される」と言ってもいい状態です。

 

 さて、大津の事件でも、教育委員会がせっかく取った生徒たちへのアンケート結果をもみ消すなど硬直化した対応が問題になっていますが、子ども未来法律事務所でも、学校長と教育委員会が一体となって、いじめや性的嫌がらせを「ないこと」にしてしまおうとするかのような行動をとるので苦労しています。

 現在進行形の事件が多いのであまり詳しくは述べられませんが、私は和解型の弁護士で、誰とでもできるだけ仲良く話そうとするタイプなのですが、彼らの官僚的な態度はかつて対決してきた外務省や厚労省の官僚に勝るとも劣らない鉄面皮ぶりのことが多いのです。

 教育の主導権を子どもたちと親御さんに取り戻すことが、子どもたちの命を守るうえで最も重要なことでしょう。これについて、大津の事件をきっかけに教育委員会制度の廃止を叫ぶ声が必ず出てくると思いますが、それは教育の政治支配をもたらすだけです。教育現場を知らない行政が教育に直接介入したら、かえって教育現場が荒廃するのは明らかです。

 そこで、私は教育委員の公選制復活を提案したいと思います。

(子どもの命や人権に対する感覚の鈍麻!こういう人は選ばないようにして、万一の場合は選挙で落としてしまえばいいのです。

でも、いじめでなく、リンチでもなく 子ども未来法律事務所通信20

 


 教育委員会は戦前の国家主義的な教育に対する反省に立って戦後、設置されました。教育に関して広大な権限をもっています。そして、その政治的な中立性確保のため、地方自治体の首長から独立した合議制の委員会となっています。

 教育委員が公選される時代もあったのですが、1956年(昭和31年)には、教育委員会に党派的対立が持ち込まれる弊害(日教組の事実上の選挙活動を指す)を解消するためと称して、公選制の廃止と任命制の導入が行われました。同時に教育長の任命承認制度の導入と、一般行政との調和を図るため、教育委員会による予算案・条例案の送付権の廃止を盛り込んだ地方教育行政法が成立したのです。 

 現在は首長が議会の同意を得て任命しており、教育行政に対する知事や市長などの地方自治体の首長の影響力が増したといえます。そして、今の教育委員会は非常勤の委員5人程度で構成され、会議は月1回程度で、実質的には事務局と、その長の教育長が官僚化して実務を取り仕切っているところが多いのです。 

 その後は、むしろ教育委員会の権限縮小が議論され続けているといえるでしょう。



 大津の事件に見られるような、教育の基本中の基本である子どもの安全確保からかけ離れたような教育委員会の現状を変えるためには、教育の主導権を、子どもを見守る親と地域社会に取り戻すことが大切です。そのために、教育委員に住民が立候補し、住民が直接選挙で選べる公選制は理想的だといえます。

 文部科学省でも、教育委員会の組織及び運営の改善の中で、公選制の復活は検討されています。

「公選制は,教育委員の選任に直接民意を反映することができる選任方法ではあるが,その反面,教育委員会の場に党派的対立が持ち込まれるおそれや,投票率が 低い場合には十分に民意を反映した選任がなされないおそれもあるところであり,昭和31年の地教行法制定の際に廃止された経緯もある。今後,これらを踏まえつつ,中長期的な課題として慎重に検討することが必要である」

 ここでも「党派的対立」が言われていますが、今では教員の政治活動の制限は別に法律や条例でやりすぎなくらいに定められているのですから、教育委員の公選制まで否定することはありません。

 文科省は握っている権限を手放したくないだけです。



 ちなみに大阪市の大阪市教育行政基本条例 (pdf, 157.54KB)では、教育行政に民意を反映させるとして、首長が学校の目標を定め、職責を果たさない教育委員を罷免(ひめん)できる権利を明記しています。しかし、民意の反映を言うなら、もちろん住民が直接選挙で選んだ方が民意が反映されるわけです。単に自分が教育をも支配したいというような橋下維新の会の教育基本条例に合理性はありません。

 おまけに、大阪維新の会の選挙公約「船中八策」では、教育委員会を廃止もできる選択制の導入を言いながら、公選制は言わないのですから、これは民意の反映にも教育の地方分権にも矛盾するものです。

(教育委員会の廃止が一番人気とは、はあああ、みなさん、意味がわかって賛成していらっしゃるとは思えない)



 そもそも、中央政府の文部科学省も、地方自治体の長も、教育のことも地域のことも本当にはわかっていません。彼らは現場を知らないのです。

 文科省が教科書検定をするのではなく、子供に一番近いところにいる親と地域社会の住民が教科書を決めたり作ったりすることを認めるべきなのです。親や地域住民の代表である教育委員が、親と教員と一緒に協力して教育内容や教育環境の整備を決めていくべきです。これこそが教育の地方分権化のはずです。

 教育委員会を親や住民が教育に参加していく受け皿にしていくべきです。一時の感情で教育委員会を廃止してしまったら、教育という料理を盛る器がなくなってしまうのです。それでは、結局、教育を文科省と地方自治体がやることになってしまいます。それでは、子どもの教育を親がさらに手放すことになるのです。

 教育委員会は維持しつつ、教育委員は公選制。これが、民主主義教育の復活の第一歩です。

 



教育の議論は愛情を持って。しかし、冷静に。

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中2自殺で市教委に抗議殺到

2012年7月6日 中日新聞

爆破騒ぎで市役所別館前を警戒する警察車両=大津市御陵町で

写真

 大津市の中学二年生の男子生徒=当時(13)=が飛び降り自殺した問題で、「いじめとの因果関係は判断できない」との立場を取り続ける大津市教育 委員会へ抗議が殺到している。五日夕、市教委へは爆弾を仕掛けたとの電話も入り、一時騒然となった。一方、男子生徒の父親(46)の被害届の提出を大津署 が受理しなかったことも明らかとなり、関係者や関係機関の間で混乱が広がっている。

 「爆弾を仕掛けた。午後八時に爆発する。お前らの建物や」。五日午後四時ごろ、市教委学校教育課に男の声で電話がかかった。間もなく警察車両が駆けつけ、市職員や来訪者が避難、隣の大津商業高校の生徒も避難し、周辺はものものしい雰囲気に包まれた。

 不審物は見つからなかったが大津署は威力業務妨害の疑いで調べている。市は職員を退庁させ大津署は八十人体制で警戒を強めた。

 男子生徒の自殺直後の昨年十月に実施した全校アンケートで、「自殺の練習を強要されていた」との同級生らの回答を、市教委が公表しなかったことな どに対し、四日朝から五日夕方までに電話や電子メールで寄せられた抗議は三百件を上回った。多くは「わが子に置き換えると、市教委の対応は心配」などの批 判が大半という。


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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
この記事も転載させて下さい (堺からのアピール事務局・前田純一)
2012-07-09 07:11:45
いつも厚かましく転載のお願いをしています。この記事も転載させて下さい。
返信する
どうぞどうぞ (ray)
2012-07-09 07:17:30
これからは事後報告で結構です。
よろしくお願いいたします。
返信する
ありがとうございます (堺からのアピール事務局・前田純一)
2012-07-09 09:10:41
すみません。以前にもそうおっしゃって頂いていましたのに、失礼しました。
返信する
はじめまして。 (kasumi)
2012-07-09 09:42:10
欲しいと思っていた情報が満載です。
いじめ自殺についても。
ミクシーのKick Nuclearさんから繋がってきました。

トラックバックや記事の転載をお願いしたいと思います。
ブックマークにも、貼りつけたいのですがいかがでしょうか?
返信する
遅くなりましてすみません (ray)
2012-07-10 01:22:53
どうぞどうぞ、ありがとうございます。

これから遠慮なくどうぞ!
返信する
昨日の (浪速姫)
2012-07-10 03:12:12
 お昼の、何でしたか民放のニュースショウで教育評論家の尾木直樹氏が今回の痛ましい事件について、学校・校長初め教師が「事なかれ主義」に奔るとすればその原因として、本来なら学校の閉鎖性を打破し地域・家庭と連携した「開かれた学校」を目指すためとして定められた「学校評価制」・「学校選択制」・「教員評価制」のゆがめられた運営が招いた面があると指摘しておられました。

 それぞれの学校が「イジメがある」という悪い評判を立てられたくない、そんな学校だということで選択する生徒が少なくなり「定員割れ」を起こして評価を下げたくない、「イジメ」があったということで指導力不足を云々され評価を下げられ減給されたくない という方向に向かう したがって「イジメ」ではなく「子どものふざけ合い」と事実を糊塗する。

 教育委員会も学校への指導力不足を責められたくない。

 責任逃れをして「評価」を保とうとする姿勢は確かに自己保身のために他者を見捨てる―それは緊急避難、「カルデアネスの舟板」には当てはまらない―ことですが、それを推進したのは「学校」を「激化する国際経済競争」を勝ち抜くための「人材育成」の機関として競わせる中教審路線の「教育政策」でありそれを実現するための「条例」-大阪の「教育基本条例」であるわけです。 政治の、教育への介入が招いた一つの結果と言えましょう。
 
 「教育基本条例」に強いられた学校間の「競争」が今回のような事態を防ぐどころかむしろ促進すると考えられます。首長の意に添うことを至上命題とする「公募」校長は「評価」を上げるため一層事態を取り繕うでしょう。教員はその顔色を窺わざるを得ず、保護者の「批判」は目の前の個々の教員に向かい、教員を傷つけ意欲を殺ぐ。そんな「学校」で心身ともに健全な社会人の育成が期せるわけはない。

 「学校間競争」を主軸とする「教育基本条例」は、子どもたちの心身を損ない、まっとうな社会人にしないための手段としか思えません。

 「人材」となるための「訓練・競争」を強いられる子どもたちはその「欲求不満」をやわらげ,心の安定を保つ「適応機制」として「攻撃機制」を発動させる。イジメです。

 大津で起こった痛ましい事態は特定の学校に限った話ではありません。これからも全国のいたるところで起こり得る事態です。

 マスコミの扱いは、教育への、政治の介入を防ぐための「教育委員会」の存在を棄損するような扱いです。必要なのは、本来の「教育委員会」の機能を果たせるような改革ですのに。

 


 

 
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なかなか難しい問題ですね (おーちゃん)
2012-07-13 19:24:08
教育委員会の詳しいことはわかりませんが、委員の人たちは「非常勤」で「謝礼程度」の処遇なんじゃないでしょうか!?

すいません、詳しくは知りませんが大阪市の教育委員会のそれを新聞で読んだときそう思ったのです

先生とはまた違った視点で考えたいのですが、大津市の教育委員会や校長や教員の対応に不手際があった背景ってナンだろうかって!?

そう疑問に思います。

最近の教育行政を取り巻く環境を考えると、教員に対する「上位下達」の組織体制、校長の言うことを聞く教員だけが評価される「業績給与体系」、

改善されない教員一人当たりの生徒数の多さ、教員に対する「人権研修の不十分さ」、教育委員会の委員の低待遇など、「責任」に比例しない「処遇」も「ことなかれ主義」をよしとする「組織」の在り方もあるのではないでしょうか!?

それと、

公選制ですが、右派的な人たちがバンバン入ってきたらどうするのでしょうか!?

やっぱり、「教育分野」って素人じゃなくて、プロの世界の人たちが対応できる体制にするべきだと思います。

たとえば、いじめ問題が起きれば「教員一人にまなせるのではなく、チームで対応する」ことや校長や教育委員会は全面的に現場をサポートする体制を取るとか…

実際は、それとは逆の組織体制だと思われます。教員同士は競争にさらされ、同僚の教員の苦悩に見て見ぬふりをする。校長はことなかれ主義なので、知らんぷりみたいな(笑)

大津のそれは本当にひどいと思いますが、昔からある「いじめ問題」で教育員会や学校が機能しない点を分析することなしに、「公選制」だけでは問題を複雑にするような気もしちゃうのですっ。

「公選制」の前にプロセスとして「教員への人事評価の在り方の見直し」や「政治と教育を分離し、上位下達主義をあらためる」ことなどやるべきことが他にあるような気がしますっ





返信する
朝日新聞教育面の劣化が (時々拝見)
2012-07-14 12:44:49
 酷いと思います。国立の小学校に取材に行って、「花マル先生」という記事を連載しているからです。一般的な公立小中学校から目をそむけないで欲しいと思います。
 「花マル先生」の編集者・記者、少しはニュースを見て「教育委員の公選制」について考えて欲しいものです。
返信する
撤回します(笑) (おーちゃん)
2012-07-14 14:22:18
先生、すいません、上の意見を少し撤回します。

知り合いの教員にこう言われてしまいました。
「今の任命制になったのは、世の中が右傾化する過程の中で、政治家に都合の良い人物を教育委員会に入れるために、任命制になったんだ」
と指摘されてしまいました。

僕は教育委員会が「公選制」になったら、そのメンバーが「たかじんの勝手に言って委員会」のメンバーに独占されちゃうと思ってしまったのです(あはははは)

なので、公選制賛成ですっ。

返信する
教育には金が掛かる (通りすがり)
2012-07-25 04:01:48
教育委員を公選にするだけではダメ

教育予算は首長の所管なので、公選された教育委員が御金のコトを考えずに好き放題言い出した場合、首長と教育委員が対立します
この対立をどう解決するかも制度設計に入れないといけませんが、具体的にどうするのでしょうか?

維新の会(維新八策)で教育委員の公選と言わないのは、この問題があるためです。当然御存知ですよね?
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