CALL4のサイトより『日本の「黙秘権」を問う訴訟 〜56時間にわたる侮辱的な取調べは違法〜』から
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黙秘権は被疑者・被告人が言いたくないことは言わなくてよい権利であり、憲法38条1項にも
「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」
と規定される憲法上の権利です。
さらに、刑事訴訟法の198条2項は
「前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。」
と規定していて、憲法上は不利益な供述を強要されないとされているのを超えて、有利不利を問わず自己の意思に反して供述をする必要がないこと、そして捜査官はそのことを被疑者に告げないといけないことが明記されています。
ところが、被疑者が取り調べで黙秘を貫いたところ、横浜地検の検事から「ガキ」「お子ちゃま的発想」などと侮辱されたとして元弁護士の男性が国に1100万円の賠償を求めた訴訟で東京地裁(貝阿弥亮裁判長)は2024年7月18日に判決を言い渡し、取り調べの違法性を認め、国に110万円を支払うよう命じました。
原告の江口大和元弁護士は2018年に無免許で交通事故を起こした男性に対し、警察に虚偽の説明をするよう依頼したとして、犯人隠避教唆の疑いで横浜地検特別刑事部に逮捕されました。
江口氏はその後起訴され、無罪を主張して最高裁まで争ったものの懲役2年執行猶予5年の有罪判決が確定しました。
弁護士が弁護士バッジを賭けてこんな軽微な事件でこういう工作をすること自体が不合理で、この事件自体がえん罪である可能性が非常に高いと言われているのです。
そして問題は、この事件の取り調べの中で江口容疑者は逮捕後
「犯人隠避の教唆をしていません」
と述べ、それ以外は黙秘権を行使することを宣言して、翌日から何も話さなかったんですね。
被疑者が黙秘権を行使すると言っているのですから、取調室にそのあと何度呼んでも無駄であり、黙秘権の行使をするなと妨げる黙秘権の侵害にしかならないじゃないですか?
ところが、横浜地検の取り調べは、起訴されるまでほぼ毎日続き、実に21日間で計約56時間に及んだというのです。
これがまず異常だということになっていないのが、この国の刑事司法が「人質司法」「暗黒司法」と言われるゆえんです。
「ガキ」暴言次々、捜査のプロが陥る錯覚 映像が示す密室の取り調べ
— 朝日新聞大阪社会部•NW報道本部【公式】 (@osakashakai) July 13, 2024
検察や警察から違法な取り調べを受けたとして、国などを訴えた民事訴訟の法廷で、取り調べの録画映像が上映される事例が続いています。理由と影響を探りました。 https://t.co/Vn2Jc1y6S9
この朝日新聞の記事に取り調べ動画の一部があります。
そして、この取り調べの中で検察官は、江口氏について
「うっとうしいだけ。イライラさせる」
「元々ウソつきやすい体質なんだから、あなた」
と江口氏の人格を罵倒。
さらに、
「あなたの言ってる黙秘権って何なんですか。
あなた自身も分かってないんじゃないの」
と非難したほか、事件とは無関係の江口氏の弁護活動について
「ガキだよね、あなたって。発想が子どもなんですよね」
などとも述べているんです。
実は、わたくしもこの取り調べを録画したビデオを見たのですが、もう見るに堪えないというか、江口氏が弁護士だから耐えられるというものではなくて、これは辛すぎたろうと思いましたね。
こちらでもう少し長い動画の一部が見られます。
安倍派の国会議員はほとんど見逃すのに、一般市民にはこの苛烈な取り調べをする検察に存在意義はあるのか。
【#自民党は組織的犯罪集団】自民党の裏金作り事件で安倍派幹部の立件見送り報道にネット上でデモ拡大。「#検察仕事しろ」投稿がついに10万超え。検察を動かすのは我々市民の力だ!【#検察は巨悪を眠らせるな】
あとで述べる判決の中で、違法な取り調べと認定された検事の主な発言は以下の通りです。
トイレに行った原告への発言
「『取り調べ中断してすいませんでした』とか言うんじゃねえの、普通。子どもじゃないんだから。あなた被疑者なんだよ、犯罪の」
黙秘する原告への発言
「何なのそれは。それは黙秘権の行使なんですか。あなたの言ってる黙秘権って何なんですか」
「あいさつぐらいしろよ。あいさつ無視するっていうのは良くないっすよ。自分がやられたら嫌だろ。黙秘権と関係ねえじゃん」
原告の資質などに関わる発言
「ガキだよねあなたって。子どもが大きくなっちゃったみたいな」
「こんな弁護士生み出して、どういう教育してんの、司法研修所」
「弁護士自体、資格がないんですよあなたには」
「元々ウソつきやすい体質なんだから、あなた。(中略)はっきり取り調べにおいて明確なウソつくのって、やっぱり特殊な人が多いですよね。詐欺師的な類型の人たちですよ。あなたもちょっとそこに片足突っ込んでると思うな」
検事は国家権力を行使する権力者、取調室という密室では絶対的な権力者、これに対して取り調べ拒否権も体質の権利も弁護人立ち合い権も認められない被疑者は全く無力な存在。
こう考えると、これほどのパワハラはこの地球上で日本にしか、その取調室にしかない、パワーハラスメントの究極形と言えるでしょう。
この取り調べに対する国家賠償請求訴訟で、東京地裁は、黙秘権に関する検察官の発言は
「原告の黙秘に不当な非難を加えるもので、黙秘権の保障の趣旨に反する」
と指摘し、ガキなどという発言についても
「事件とは直接関係ないのに、殊更に侮辱的または揶揄する表現を繰り返し、原告の人格を不当に非難するものと言わざるをえない」
と述べました。
原告と弁護団からすると、「黙秘権の保障の趣旨に反する」からもう一歩踏み出して、「黙秘権を侵害する」とはっきり言ってほしかったそうですが、まずは原告の完勝、国・検察庁の圧敗と言えるでしょう。
黙秘権を行使したからと言ってこれほどの圧迫を加えたら、もう黙秘権が保障されているだなんてこの国では言えませんよ。
この横浜地検の検事は被疑者に対して
「何なのそれは。それは黙秘権の行使なんですか。あなたの言ってる黙秘権って何なんですか」
と述べましたが、我々市民側が、あなたの言っている黙秘権って何なんですか!?と問い詰めないといけないと思います。
CALL4のHPより『日本の「黙秘権」を問う訴訟 〜56時間にわたる侮辱的な取調べは違法〜』
人質司法 (角川新書)
うちの娘が撮影した、司法記者クラブでの判決後記者会見の様子。
実は、私もこの江口弁護士がバッジを失うことになった犯人隠避事件も、国家賠償請求訴訟もその存在さえアンテナに引っかからず知りませんでした。
今、蓮舫さんの記事で出てきたイギリス留学中の娘が私のリモートワーク法律事務所の書斎に合宿して(笑)、都内各地でインターンシップをさせていただいているんです。
そのうち公共訴訟を扱うCALL4というNGOでこの裁判を知り、津田大介さんのネットニュース番組での収録に立ちあったので私も視聴していて、その中でこの取り調べのビデオ録画を見る機会を得たんです。
つまり、今日の判決までこの事件のことはほとんど世間に知られていなかったと思うんですが、弁護士の私も衝撃を受けたのは、この番組の中で、江口氏の代理人弁護士が
「この取り調べが通常より異常かというと、ごく当たり前の取り調べだということがむしろ問題」
「検事は何が問題なんだと思っていると思う」
と述べていたことでした。
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事件・司法
2024年7月18日 11:27 (2024年7月18日 14:10更新)日本経済新聞
取り調べで黙秘を貫いたところ、横浜地検の検事から「ガキ」「お子ちゃま的発想」などと侮辱されたとして元弁護士の男性が国に1100万円の賠償を求めた訴訟で東京地裁(貝阿弥亮裁判長)は18日、取り調べの違法性を認め、国に110万円を支払うよう命じた。
裁判を起こしたのは元弁護士の江口大和さん。判決などによると、江口さんは2018年、交通死亡事故を巡り関係者に虚偽供述させた犯人隠避教唆容疑で横浜地検特別刑事部に逮捕され、後に執行猶予付きの有罪が確定した。
取り調べでは容疑を否認し、黙秘権の行使を告げたが、検事は起訴までの21日間に計56時間の取り調べを行った。黙秘を続けると、「ガキだよね」「短絡的、お子ちゃま的なんですよあなたの発想って」「どうやったらこんな弁護士ができあがるんだ」などの発言を繰り返した。
訴訟で地裁は、一連のやりとりが記録された取り調べの録音・録画データの提出を国側に勧告し、法廷でも動画が流された。
判決は「ガキ」「お子ちゃま的発想」などの発言は「原告の弁護士としての能力や一般的な資質に問題があることを殊更に侮辱的な表現を用いて繰り返し指摘するものだった」と認定。事件とも無関係な内容で「社会通念上相当と認められる範囲を超えて原告の人格権を侵害した」と違法性を認めた。
黙秘を続ける原告に執拗に発言を繰り返した検事の態度についても「黙秘を解いて何らかの供述を得ようとしたもので、黙秘権の保障の趣旨にも反する」とした。
一方、黙秘の意思を示した後に取り調べを継続したことについては、黙秘権そのものの侵害には当たらず、違法とは言えないとの判断を示した。
訴訟では国側は検事の取り調べには、真相解明や反省を促すために説得を尽くす「高度の必要性」があり、全体としてみれば社会通念上相当な範囲を逸脱する内容ではなかったと主張していた。
判決後に江口さんは記者会見し、「黙秘権をばかにしたり、何とかして供述を得ようとしたりする発言は許されないと判断されたのはよかった」とした。その上で黙秘権侵害が認定されなかったのは「納得できない」と述べ、控訴する方針を示した。
逮捕した被疑者の取り調べの録音・録画は10年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を契機に、警察・検察で試行が始まり、19年の改正刑事訴訟法の施行で制度化された。裁判員裁判の対象事件や検察の独自捜査事件が対象となっている。
近年は警察や検察の取り調べの違法性が争われた訴訟で裁判所が取り調べの録音・録画データの開示を求めるケースが出ている。最近も大阪地検特捜部が捜査した業務上横領事件を巡り、無罪が確定した不動産会社の元社長が国に賠償を求めた訴訟で、検事が元社長の元部下に対し、「検察なめんなよ」「あなたは会社の評判をおとしめた大罪人」などと詰問する様子が法廷で流された。
法務省の有識者も入れた協議会では現在、改正刑訴法の見直し議論が進められており、日本弁護士連合会は録音・録画の対象事件は全事件の3%に満たないとして、逮捕前の取り調べや被疑者の聴取も含め全過程の録音・録画を求めている。
取り調べで黙秘したところ、検事から「ガキ」「お子ちゃま」と発言されるなどして精神的苦痛を受けたとして、元弁護士の男性が国に1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が18日、東京地裁であった。貝阿弥亮裁判長は「原告の人格を不当に非難する発言だ」と述べ、国に110万円の賠償を命じた。
判決によると、元弁護士の江口大和さん(38)は2018年、犯人隠避教唆容疑で横浜地検に逮捕、起訴され、執行猶予付きの有罪が確定した。逮捕後の取り調べで「事実無根だ」と告げ黙秘したところ、男性検事から「ガキだよね、あなた」「短絡的、お子ちゃま的なんですよ」などと言われた。
貝阿弥裁判長は、検事の発言は事件と直接関係がなく、人格権の侵害に当たると判断。一方的に非難を繰り返し、黙秘をやめさせる試みだったとして、黙秘権を保障した憲法などの趣旨にも反すると指摘した。
取り調べを計約56時間行ったのが黙秘権の侵害に当たるとの江口さん側の訴えは退けた。
判決後に記者会見した江口さんは、「黙秘権行使をばかにするような発言が許されないとの判断は良かった」と評価。一方で、「取り調べを続けたことが違法ではないというのは納得がいかない」と話し、控訴する意向を示した。
犯人隠避教唆罪で有罪が確定した元弁護士の江口大和さん(37)が、横浜地検の検事から暴言を浴びせられ、違法な取り調べを受けたとして国に1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、江口さん本人への尋問が18日、東京地裁であった。関連証拠として地検が録音・録画した当時の取り調べの映像が上映され、検事が江口さんに対し「ガキ」「お子ちゃま」などと発言する様子が収められていた。
訴状によると、江口さんは2018年10月、死亡交通事故を起こした運転手の知人から弁護士として相談を受け、運転手に虚偽の供述をさせたとして犯人隠避教唆容疑で横浜地検特別刑事部に逮捕された。
黙秘したが、起訴されるまでの計約56時間の取り調べの中で検事から「どうやったらこんな弁護士ができあがるのか」などと暴言を浴びせ続けられ、人格権や黙秘権を侵害されたと訴えている。
18日は法廷で約13分間、取り調べの映像が傍聴席から見えるモニターに映された。検事は江口さんのことを「僕ちゃん」などと呼び、「うっとうしいだけ。いらいらさせる」と発言。取り調べの途中にトイレに行き、戻ってきた江口さんに「『中断してすいませんでした』とか、言うんじゃねえの普通」と責めるような場面もあった。
閉廷後に記者会見した江口さんは「こういう取り調べがあることを社会に知ってほしい」と述べた。国側は訴訟で違法性を否定し、請求棄却を求めている。【巽賢司】
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「法学大学院」
これって、アメリカの命令で設置された制度ですよね
受けた側の日本は、なんのビジョンもなく、親分・アメリカの命令を唯々諾々と受けて曲がりなりにも制度化しましたが…
制度亜kする側にやる気がないのなら、「失敗」と言われも仕方がないですよね。
法曹の方々の多くが、問題意識をもって活動しているのに、弁護士出身というだけで、裁判官、検察のトップ(一部、財界の僕の「弁護士」に最高裁へ、と)になれないのは、おかしいですよね?
いまだに検察は「平沼騏一郎」なのかな、と
法曹一元化を実現し、宮武さんが検察トップにすべきかと
検察の『最良証拠主義』≒『検察が有罪にするのに都合のいい証拠しか提示しない』とか、本当に狂気の沙汰だと思います。
宮武さんのように真実を追求されるブロガー(弁護士)の方がもっともっと増えることが
日本再生のために必須だと強く感じます。
https://bunshun.jp/articles/-/72085
☆法医学者が告発する、ニッポンの“暗黒裁判”の信じがたい実情「科学鑑定はまったく無視された」
NHKスペシャル『法医学者たちの告白』の衝撃
相澤 冬樹2024/07/13 文春オンライン
◎「裁判では科学が都合よく編集されてしまう」
6月30日に放送されたNHKスペシャル『法医学者たちの告白』。犯罪の疑いがある遺体を解剖し死因を調べる法医学者たちが、捜査や裁判の矛盾を告白、というより“告発”している。
核になるのは2005年、栃木県旧今市市(現日光市)で小学1年の女児が行方不明になり、翌日茨城県内の山林で遺体が見つかった「今市事件」だ。事件から9年後に逮捕された勝又拓哉は裁判で「自白を強要された」と無実を訴えた。「遺体の発見現場付近で女児を刺殺した」という自白の信用性が争点になった。
検察は、警察が撮影した現場写真に血液反応を示すとされるルミノール反応が多数見られることから大量の血痕があると主張。しかし、検察に証言を求められた千葉大学法医学教授の岩瀬博太郎は、ルミノールは鉄分さえあれば反応を示すことを前提に慎重な言い回しをした。
「ルミノール反応が本当に血液に反応してるかは問題がありますが、血液だとすれば、それなりに広い範囲に血が落ちてるという印象は受けます」
つまり「これは本当に血液なのか?」と留保を付けたのだが、裁判所は「大量の血痕がある」と解釈して無期懲役の判決に。岩瀬は「裁判では科学が都合よく編集されてしまう」と嘆く。
〇「死刑にしてしまっているから、裁判所は判断から逃げている」
〇「法医学の結論が有罪を導くのに都合よく曲げられたという疑念」
〇この国の裁判(justice)に正義(justice)はない