「日本の首相、スキャンダルになっているシュレッダーを操作していた人物が障害者だったことを明かし、非難される」

 米国時間12月4日付けの米紙ニューヨーク・タイムズや米誌US News and World Reportが、こんなタイトルのロイター電を報じて、「桜を見る会」招待者名簿廃棄問題をめぐって、安倍首相が障害者に言及したことを批判している。

 米紙ワシントン・ポストも11月27日に、安倍政権の公文書廃棄問題を批判したばかり。“安倍政権の汚点”は次々と世界の知るところとなっている。

日本の姿勢を象徴

 記事は、「桜を見る会」の招待者名簿がシュレッダーで廃棄された問題について、安倍首相が、2日の参院本会議で、“資料が要求された日に名簿が廃棄されたのは偶然であり、名簿を廃棄したのが障害者雇用職員で、その職員の仕事のスケジュール上、4月の「桜を見る会」終了後すぐに廃棄できず、資料が要求された日に廃棄された”とコメントしたことに言及。

 安倍首相のこのコメントに対して、ソーシャル・メディアでは大きな議論が起きているとして、以下のツイッターの声を紹介している。

「ねえ、このコメントは、名前は出していないけど、個人情報を暴露しているよね?」

「彼(安倍首相)は最悪だ。彼は職員のスケジュールにだけ言及することができたはず。なぜ、障害者という言葉を入れる必要があったんだ」

「障害者が廃棄したということは、“障害者だから仕方がなかった、障害者だからこういうことが起きた”ということを暗に言っている」

「首相のコメントは、偏見に凝り固まっており、人々を見下している。コメントには、障害者は間違いを犯すものだという首相の考えが現れている」

 また、記事は、

「首相のコメントは、1年前に政府が障害者の雇用数を水増ししていた問題(中央省庁の8割にあたる行政機関で、3460人の障害者雇用が水増しされていた)が発覚し、3年前に男が障害者は生きる権利がないという理由で19人の障害者を刺し殺した事件(相模原障害者施設殺傷事件のこと)が起きた日本の姿勢を象徴している」

という声もあることを指摘、日本政府や日本の障害者に対する姿勢も批判している。

 人権問題に敏感なアメリカである。アメリカのメディアが障害者を差別するような安倍首相の発言を問題視したのは当然だろう。

ローマ教皇の発言

 折しも、問題の安倍首相発言の翌日、12月3日は「国際障害者デー」であった。

 先日、訪日したローマ教皇は、この日、バチカン・シティーで、メジャーとマイナーがあるイタリアのサッカー・リーグに言及しつつ、身体的能力や精神的能力に基づいて、人を“リーグA”や“リーグB”に分別するようなカルチャーを“社会的罪”と批判、「障害者は人類のマイナー・リーグのメンバーではない。しかし、残念なことに、障害者が尊厳を持って対処されていない国もある」と主張した。

 日本の障害者の方々は、社会から尊厳を持って対処されていると考えているのだろうか?

 障がい者総合研究所が2017年8月に障害者に対して行なった「障がい者に対する差別・偏見に関する調査」によると、

・日常生活において、「差別や偏見を受けた」と感じている人は59%。

・障害者差別解消法(国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者が、障害者に対して正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止した2016年4月施行の法律)が社会に「浸透していない」という回答が92%。

・障害者差別解消法の施行以降も、差別・偏見が「改善していない」という回答が89%。

・施行以降も合理的配慮を「受けやすくなったとは思わない」という回答が84%。

 障害者差別解消法以降も、障害者に対する対応が改善されていない現状が明らかにされている。

 そして、今回の安倍首相発言。

 日本が、ローマ教皇が言及した、“障害者が尊厳を持って対処されていない国”であることが証明されてしまったのではないか。