被害が深刻なヘイトスピーチには刑事罰で対処する神奈川県川崎市の条例が2019年12月12日、市議会本会議で全会一致で可決、成立しました。
罰則は条例が全面施行される来年7月1日から適用されます。
この「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(差別根絶条例)」は全ての市民が差別を受けることなく暮らせるまちづくりをうたい、国籍や人種、性的指向、出身、障害などを理由にしたあらゆる差別的取り扱いを禁じています。
いわゆるヘイトスピーチについては、市の勧告、命令に従わずに3回目の差別的言動が認められた場合、氏名を公表し、捜査機関に告発します。
この告発をもとに、検察庁に起訴され、刑事裁判で有罪になると最高で50万円の罰金が科せられることになります。前科がつくわけです。
罰則対象は、市内の道路や公園など公共の場で拡声器やプラカードなどを使った言動について
1 居住する地域から退去させることを扇動、告知する
2 生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加えることを扇動、告知する
3 人以外のものにたとえるなど、著しく侮辱する
ものと定めています。
この条例は一応表現活動にあたるものに対して、その内容に着目して刑罰まで科するというものです。
そこで、条例では、市からの勧告・命令・公表に当たって市長は有識者でつくる審査会に意見を聴くなど、権力の恣意(しい)的な乱用を防ぎ、憲法で保障された表現の自由を侵害しない仕組みを設けています。
さて、ご存じ、安倍政権と右翼の味方で、中国や韓国を蔑視する言動には親和性のある産経新聞が、この条例の事をどう報じたか。
『ヘイトスピーチ(憎悪表現)対策として全国初の刑事罰を盛り込んだ差別禁止条例が12日、川崎市議会で成立した。条例をめぐっては、識者の間で歓迎の声が上がる一方、表現の自由を萎縮させかねないと懸念する指摘もある。
(中略)
28年6月に施行された国のヘイトスピーチ解消法は国民の啓発、教育を目的とした理念法で、どのような言動がヘイトに当たるのか曖昧だった。このため、川崎市の条例では具体的な禁止行為を明示。(1)日本以外の出身者に対し居住地域から退去させることを扇動、告知する(2)生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加えることを扇動、告知する(3)人以外のものにたとえるなど著しく侮辱する-と規定した。
だが、条例は特定の国や地域の出身者に差別的な言動を禁じる一方、日本人を刑事罰の対象から外した。
麗澤大の八木秀次教授(憲法学)は「構成要件は限定しているが、なお不明確なところがあり、正当な言論に対する萎縮効果を持つ可能性がある」と語る。拡大解釈の余地が残り、南京事件や慰安婦問題などをめぐる日本側の正当な主張が「差別的言動」と取られる恐れもあるためだ。
(後略)』
産経新聞は日本語がちょっと不自由なのですが、
「条例は特定の国や地域の出身者に差別的な言動を禁じる一方、日本人を刑事罰の対象から外した。」
とあるのは、条例が特定の国や地域の出身者に「対する」差別的な言動を禁じる一方で、日本人「に対する言動」を刑事罰の対象から外した、と言いたいのだと思われます。
これは外国人や被差別の方々などに対する差別的言動をヘイトスピーチと呼ぶのですから当然のことです。
そして、さらに猛烈に意味不明なのは、産経新聞が
「川崎市の条例では具体的な禁止行為を明示。(1)日本以外の出身者に対し居住地域から退去させることを扇動、告知する(2)生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加えることを扇動、告知する(3)人以外のものにたとえるなど著しく侮辱する-と規定した。」
としておきながら、
「南京事件や慰安婦問題などをめぐる日本側の正当な主張が「差別的言動」と取られる恐れもあるためだ」
としていることです。
たとえば、南京事件や慰安婦問題について、
(1)中国の方に、「日本から出ていけ」と叫んだり
(2)韓国の方に、「殺すぞ」「火をつけるぞ」と言ったり
(3)「犬畜生」、と言ったり
する言動が、「日本側の正当な主張」になりうるとでもいうのでしょうか?
この条例は、どんなに妄言で間違っていても、それ自体を罰するものではありません。
極右が、南京大虐殺はなかったとか、「慰安婦」の方は自主的に職業として「慰安婦」を選んだと主張しても、それ自体が歴史修正主義だからと言って罰則を与えるというものではないのです。
産経新聞が、(1)から(3)にあたるけれども、従前の日本の正当な主張にあたるものがあるというのなら、具体的に例を挙げてほしいものです。
というか、火をつけるぞと脅迫された愛知のトリエンナーレ側の表現の自由については一顧だにしなかったくせに、「韓国人殺せ」と大音量で言って回る人たちの表現の自由だけ、ものすごく気にするって、産経新聞のバランス感覚・人権感覚ってどうなっているんでしょうか。
そもそも、この条例がなぜ作られたか。
川崎市内では在日コリアンの殺害を呼び掛けるへイトデモが2013年5月から始まりました。
2015年11月、16年1月には在日集住地区の川崎区桜本が標的とされ、街宣や選挙演説の名を借りた差別扇動による人権侵害が川崎市内で横行し、市は実効性の確保には刑事罰を導入する必要があると判断したというのが、根絶条例制定の経緯です。
採決では出席議員57人全てが賛成しました。
福田紀彦市長は
「総員起立による可決は非常に重い。市と市民、事業者の皆で取り組み、このまちから差別をなくすという決意を新たにしている」
と話しています。
私は差別的表現は表現ではないから表現の自由の適用がそもそもない、という立場はとりません。
しかし、表現の自由は最大限尊重すべき基本的人権とはいえ、それは絶対無制約ではなく、他人の人権を侵害しない限りにおいて保障されるものです。
名誉毀損や犯罪の扇動などの表現はこれまでも刑罰で罰せられてきました。上の(2)はもともと脅迫罪、(3)は侮辱罪にあたるものです
ヘイトスピーチは、中国・韓国などの方々を精神的・肉体的・経済的・社会的に痛めつけ、日本で平穏に生きられないようにしてしまいます。
それが表現行為であったとしても、表現の自由の保障を受けられないのは当然なのです。
兵庫県明石市は隣の神戸市から人口が流入するくらいの人気の街になっているのですが、それは例えば離婚調停で決めた養育費を支払わない夫から市が代わって取り立ててシンママに支給するというような斬新な政策を出して、住みやすい街づくりをしているからなんですね。
川崎市も少数者が住みやすい街づくりをして、カジノを誘致しているような横浜市からどんどん人が移り住みようにしたらいいと思います。
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川崎の差別根絶条例成立
全国初、ヘイトに刑事罰 全会一致で可決
政治行政 神奈川新聞 2019年12月13日 05:00
差別の禁止と根絶を掲げ、特に被害が深刻なヘイトスピーチに刑事罰で対処する川崎市の条例が12日、市議会本会議で全会一致で可決、成立した。国の法律に先んじ、外国にルーツのある市民に対する差別的言動を犯罪と定め、全国で初めて刑事規制に踏み切る。自治体が差別撤廃の前面に立つという人権行政の歴史的転換は、他の自治体や国の法改正への波及も期待される。
罰則は条例が全面施行される来年7月1日から適用される。
「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(差別根絶条例)」は全ての市民が差別を受けることなく暮らせるまちづくりをうたい、国籍や人種、性的指向、出身、障害などを理由にしたあらゆる差別的取り扱いを禁じた。ヘイトスピーチについては、市の勧告、命令に従わずに3回目の差別的言動が認められた場合、氏名を公表し、捜査機関に告発する。検察庁に起訴され、刑事裁判で有罪になると最高で50万円の罰金が科せられる。
罰則対象は、市内の道路や公園など公共の場で拡声器やプラカードなどを使った言動で、▽居住する地域から退去させることを扇動、告知する▽生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加えることを扇動、告知する▽人以外のものにたとえるなど、著しく侮辱する─ものと定めた。勧告、命令、公表に当たって市長は有識者でつくる審査会に意見を聴くなど、権力の恣意(しい)的な乱用を防ぎ、憲法で保障された表現の自由を侵害しない仕組みを設けた。
差別の根絶に向けた施策の計画的、総合的な実施や人権侵害の被害者支援を市が行うことも義務づけ、罰則対象から外れたインターネット上のヘイトスピーチについても削除要請などの拡散防止措置を講じる。
市内では在日コリアンの殺害を呼び掛けるへイトデモが2013年5月から始まった。15年11月、16年1月には在日集住地区の川崎区桜本が標的とされ、同年6月施行のヘイトスピーチ解消法の立法事実になった。同法が禁止・罰則規定のない理念法にとどまったため、その後も街宣や選挙演説の名を借りた差別扇動による人権侵害が市内で横行。市は実効性の確保には刑事罰を導入する必要があると判断した。
採決ではチーム無所属の重冨達也、秋田恵の両氏が退席したが、議長を除く出席議員57人全てが賛成。福田紀彦市長は「総員起立による可決は非常に重い。市と市民、事業者の皆で取り組み、このまちから差別をなくすという決意を新たにしている」と話した。
ヘイトスピーチ(憎悪表現)対策として全国初の刑事罰を盛り込んだ差別禁止条例が12日、川崎市議会で成立した。条例をめぐっては、識者の間で歓迎の声が上がる一方、表現の自由を萎縮させかねないと懸念する指摘もある。</figcaption> </figure>
ヘイトスピーチを規制する条例は平成28年7月施行の大阪市を皮切りに、今年4月には東京都でも施行された。いずれも川崎市と同様、「朝鮮人は出て行け」などと叫ぶヘイトデモが社会問題となった自治体だ。
この日の条例制定を受け、在日韓国・朝鮮人らでつくる市民団体は記者会見し、「差別で人を傷つけることの責任が明確化された」などと評価した。
東京造形大の前田朗(あきら)教授(刑事人権論)は「ヘイト処罰は国際人権法の要請。憲法に従ってヘイトを処罰するべきだ」と川崎市の条例制定を評価する。
28年6月に施行された国のヘイトスピーチ解消法は国民の啓発、教育を目的とした理念法で、どのような言動がヘイトに当たるのか曖昧だった。このため、川崎市の条例では具体的な禁止行為を明示。(1)日本以外の出身者に対し居住地域から退去させることを扇動、告知する(2)生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加えることを扇動、告知する(3)人以外のものにたとえるなど著しく侮辱する-と規定した。
だが、条例は特定の国や地域の出身者に差別的な言動を禁じる一方、日本人を刑事罰の対象から外した。
麗澤大の八木秀次教授(憲法学)は「構成要件は限定しているが、なお不明確なところがあり、正当な言論に対する萎縮効果を持つ可能性がある」と語る。拡大解釈の余地が残り、南京事件や慰安婦問題などをめぐる日本側の正当な主張が「差別的言動」と取られる恐れもあるためだ。
違反者に勧告や命令を行う際は、有識者でつくる審査会に意見を聴くことになっているが、緊急を要する場合は「この限りではない」とも規定。行政法に詳しい北口雅章弁護士は「運用次第で一定の政治的表現を萎縮させ、社会的な対立を誘発する可能性はないか」と懸念を示す。
立教大の服部孝章名誉教授(メディア法)は「表現活動の自由が脅かされる恐れがあるため、条例の適用には相当慎重な運用が求められる」と話した。
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鉄壁じゃなくて、鉄面皮の間違いでしょうが、産経でさえ、サクラ見る会斬り始めたようです。
神のものは神に、カエサルのものはカエサルに。
「アメリカのものはアメリカに。危険極まりないアメリカ産食品はアメリカに送り返せ。」
と叫んだら、ヘイトになるのでしょうか。