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それは2006年第一次安倍政権発足の年のことだった。
安倍総理は、記者から総理にとっての今年の一字は?と聞かれ
「変化、ですね。今年は私にとって変化の年でした。」
と答えてしまった。しかし、今年の一字は漢字一文字で表さねばならないのが通例となっている。焦る記者が「総理、今年の一字を一字でお願いします。」と尋ねると、
安倍総理
「それは…責任ですかね」
昨日、2015年6月17日の党首討論において、岡田民主党代表は集団的自衛権の行使を容認する「安保法制」=戦争法案に絞って質疑をしました。
暴力を肯定しているのは誰なんですか、安倍首相。辺野古での海上保安庁の圧倒的な暴力をまず止めさせて!
最初に、岡田氏は、安倍首相らが、集団的自衛権の行使は憲法違反であるとした1972年(昭和47年)の政府見解の段階と今とでは、日本をとりまく安全保障をめぐる環境が変わったのだとしていることに関して、ではどのように変わったのかと尋ねました。
岡田代表
「首相がいつも集団的自衛権の行使が必要だといって挙げる(中東・)ホルムズ海峡において、どのような安全保障環境の根本的な変容があったのか」
安倍首相
「安全保障環境の変化については、まさにどの国も一国のみで自国の安全を守ることできないという中において、国際社会がより協力しなければいけないという状況にあるということだ。そこで申し上げると、どの国も一国のみで自国を守りうる時代ではなくなった。サイバー攻撃もある。世界が協力しなければいけない中で、日本も日本の役割を果たしていけない時代になっているということを申し上げている」
岡田代表
「首相は全く私の質問にお答えになっていない。ホルムズ海峡での安全保障環境の根本的な変容は何なんだと聞いている。ホルムズ海峡の例は、私が2月の代表質問で『具体的な集団的自衛権の限定行使の例を挙げてほしい』と言ったとき、首相が最初に挙げられた例だ。安保環境の変容とは一体何があったのか」
安倍首相
「全体として、国際社会全体としての変化において、ホルムズ海峡における機雷掃海について、日本は他の国々に掃海をお任せします。しかし、掃海によってあそこを通って日本に到達することが可能になった石油は使わせてもらいましょう。日本の石油は8割、ガスも多くがあそこを通ってくる。お互いにより助け合わなければならない時代になって、自分たちの安全のために自分たちが能力を使わなくてもよいのか。立法府、政治家の一員としてそこから逃げてはダメなんですよ。そこに向き合って、考えていくことがまさに求められていると私は思う」
2015.6.17 21:51 産経新聞 【党首討論詳録(1)】「暴力行為を肯定する発言は残念」安倍首相 「強行採決しないと約束するか」岡田氏
テレビや新聞が、安倍首相と岡田氏ら野党の党首との議論が
「噛み合わなかった」
と表現しているのですが、これ、噛み合わなかったというのですかね。
「安全保障環境の変化については、まさにどの国も一国のみで自国の安全を守ることできないという中において、国際社会がより協力しなければいけないという状況にあるということだ。」
って、そんなん、昔からで今に始まったことじゃないでしょう?
「日本の石油は8割、ガスも多くがあそこを通ってくる。」
というのも昔からそうです。
安倍首相がいう「安全保障環境の変化」って結局、
「国際社会がより協力しなければいけないという状況にあるということだ。」
「お互いにより助け合わなければならない時代」
になったというだけなんですが、こんなの抽象的すぎますし、自衛隊がアメリカの戦争に加勢する集団的自衛権の行使をしなければいけないほどの変化の説明になっていますか?
安倍首相の場合、討論がかみ合っていないのではなくて、安倍首相が質問に全く答えられないというのが正しいでしょう。
さらにこのあと、岡田代表は、自衛隊が米軍の「後方支援」ができるだけの重要影響事態に加えて、何が加わると自衛隊が相手国を攻撃までできる存立危機事態になるのか、安倍首相が例に挙げている朝鮮半島有事の際にはどのような具体例があるのかを尋ねました。
岡田氏
「首相は私の質問に全然答えていただいていないが、重要影響事態があって、そこで自衛隊が警察行動はやっている。海上保安庁もいる。そういう中で、プラスアルファ何が加わったら、存立危機事態になるのか。
首相が言ったのは、法律の定義をそのまま読んだだけじゃないですか。
首相が実際に事態の認定をし、そして防衛出動をする。存立危機事態になれば、防衛出動になる、武力行使になる。
だから、それは具体的にどういうことなのか。朝鮮半島有事のその例で、どういう時に存立危機事態に総理は認定するのかということを聞いている。お答えください」
これに対する安倍首相の回答が次のようだったんですが。
以下は私が誇張したんじゃないですよ。かの産経新聞が詳報してくれたのをそのままご紹介しています。
安倍首相
「そこで、そこで、よろしいでしょうか。そこでですね、まさに、どういう事態になるかということは、その事態が起こってさまざまな状況を判断をしなければならない。今、あらかじめ、こうしたこうしてこうした事態があるということを今ここで申し上げるということはいかがなものかと思うわけである。つまり、そうならなければ、いわば、そうならなければ、われわれは武力行使をしないということは、これが明らかになってくるわけである。
そこで、その上で、その上で申し上げれば、いわば朝鮮半島で、朝鮮半島で有事が起こる中において、米艦船がその対応にあたっていく。これが重要影響事態に当たれば、われわれは後方支援を行う。
その中において、某国が東京を火の海にする発言をどんどんエスカレートさせていき、さまざまな状況が、日本に対してミサイル攻撃するかもしれないという状況が発生してくる。
その中において米艦船、あるいは、その米艦船がミサイル防衛に関わる艦船であった場合、それを攻撃するということは、その攻撃された艦船を守らないということについては、これはやはり3要件に当たる可能性があるわけだ。
しかし、そういうことをケース、ケースで私が述べていくということは、まさに日本はどういうことを考えているのか、どういうことでなければ、武力を行使しないために政策的な中身をさらすことにもなるから、これは国際的にもそんなことをいちいち全て述べている海外のリーダーというのはほとんどいないということは申し上げておきたいと思う」
小川氏
「傍聴の方は静粛に願います。そして発言は簡潔に願います」
2015.6.17 22:19 産経新聞 【党首討論詳録(2)】 安倍首相「岡田さんは答えられないのか?」 岡田氏「集団的自衛権はいらない」
(安倍首相のこの発言は19分30秒から21分30秒)
最後に小川委員長が思わず
「そして発言は簡潔に願います」
と注意してしまっているのがお笑いなのですが、簡潔じゃないだけじゃなくて、日本語としてどういう意味なのかを汲み取ることさえ至難の業です。
だいたい、安倍首相は、朝鮮有事の際に米国が対応に当たっていて、日本がその「後方支援」をしているだけで
「某国が東京を火の海にする発言をどんどんエスカレートさせていき、さまざまな状況が、日本に対してミサイル攻撃するかもしれないという状況が発生してくる。」
ということになるのを認めてしまっているんですよね。
それはなぜかというと、「後方支援」=兵站が武力行使と密接不可分な一体のものだからなんです。
ですから、「後方支援」も参戦と同義なので、自衛隊が米軍の「後方支援」をする重要影響事態と、米軍の敵国と戦争をする(集団的自衛権を行使する)存立危機事態の違いなんて言葉のあやであって、実際には区別できないんですね。
「後方支援」が武力行使と一体化するという意味は、「後方支援」も参戦そのもので違憲だということ。
とにかく安倍首相は量だけはいっぱい喋るので、小川委員長に何度も簡潔に話せと怒られてますw
こういう理屈が通らない相手は岡田さんは苦手でしょうねえ。よくわかります。
岡田さんはそのあたりのいい加減さを追及したかったのかもしれないのですが、いかんせん、安倍首相の答弁が巧みすぎるのか下手過ぎるのか、とにかく党首『討論』にならないんですねえ。
これじゃあ、民主党でなくてもヤジりたくなるよなあ。辻元議員が、安倍首相は出てこなくていいから中谷大臣答えてくださいとやっていた意味も良くわかります。
岡田代表は、今は、徴兵制は憲法が禁じている「意に反する苦役」に当たるので憲法違反だと解釈されているけれども
「次の首相が、新しい首相が出てきて、いや徴兵制は憲法に合致している、閣議決定したらどうなるのか、そういうリスクもあなたはちゃんと考えてもらいたいんですよ。」
と言うのも当然ですね。
そして、次の首相じゃなくて、今の首相だって言いだしかねません。集団的自衛権行使もそうだったんだから。
徴兵制のことまで出て来たら、さらなる思考停止状態に。
追記
志位共産党委員長とのやり取りの中で、例の「後方支援」=兵站に関して、他国の武力行使と一体化しない後方支援などと言うのものは国際法の議論ではありえないと追及されて窮してしまい、安倍首相は思わず、
「そこで、志位委員長と私が世界の常識等々について議論したということは、必ず兵站は狙われるという議論の中において、必ず狙われる、戦闘に巻き込まれるという前提の中で、質問があったわけでありますから、私はそうではなくて、兵站というのは極めて重要であり、いわば兵站においていろんな物資を届けるわけでありますから、そこが脆弱(ぜいじゃく)性があるわけでありまして、だからこそ安全な場所を選んで、そしてその届ける物資が奪われてしまっては、まさにこれは大変なことになってしまうわけでありますから、だからこそ、われわれはそうはならない場所を選んで後方支援をしていくということについて、お話をさせていただいたわけでございます」
と誤魔化そうとしたら、
「兵站は安全な場所を選んで行うとおっしゃいましたけどね、兵站は軍事攻撃の格好の標的となる。そして自衛隊が兵站をやっている場所が戦場になるんですよ。」
と、ぴしゃりとやられてしまいました。
でも、国際法の方の議論はなんだかうやむやに。
これほど誠実さにも能力にも欠けた内閣総理大臣を支持するのはやめてほしいものです。
俺に国際法のことなんか聞くなよ、無駄だってわかってるだろという、目もうつろな表情の安倍首相w
自分がわからないんだったら、官僚とかに喋らせて自分は逃げるのが普通だと思うんですが、この人は違うんだよなあ。
安倍首相の場合
1 正面から答えるとヤバい
2 正面から答える気がない
3 正面から答える能力がないけど気づいてない
の三位一体攻撃だと思うんですよ。
わかってないこともわかってないんだよね。
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集団的自衛権の何が問題か――解釈改憲批判 |
半田 滋 (著), 青井 未帆 (著), 南野 森 (著), 浦田 一郎 (著), 水島 朝穂 (著) | |
岩波書店 |
安倍首相が執着する集団的自衛権の行使容認。憲法九条を実質骨抜きにし、平和国家としての日本のあり方を根底から覆すに等しいことを、閣議決定で済ませてよいのか。立憲主義の破壊など憲法解釈の変更がもたらす深刻な事態について、憲法学者、政治学者、ジャーナリストなどさまざまな論者が多角的に分析。安保法制懇の報告書、パネルを使用した総理会見、与党協議等に現れた国民をミスリードする数々の議論に対しても批判を加える。過去の政府答弁など充実した資料も付した、全国民必読の書。
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ハンドブック 集団的自衛権 (岩波ブックレット) |
浦田 一郎 (著), 前田 哲男 (著), 半田 滋 (著) | |
岩波書店 |
安倍総理が執念を燃やす「集団的自衛権」の解釈変更。「集団的自衛権」とはそもそもどのような概念か?なぜ、これまで許されなかったのか?他国はどのようにして行使してきたのか?そして、なぜ、いま変更しなければならないのか?専門家がやさしく、丁寧に解説する。
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政府の憲法九条解釈 ―内閣法制局資料と解説 |
浦田一郎編 | |
信山社 |
『憲法関係答弁集(戦争の放棄)』(内閣法制局作成)を資料として用いて、昭和28年(1953年)から平成23年(2011年)に至る政府の憲法9条解釈の歩みと蓄積を考察する。「憲法9条と自衛権(自衛隊の合憲性)」、「自衛権発動の三要件」、「武力の行使」、「集団的自衛権」、「有事法制」、「武器の輸出に対する規制」など論点別構成で、検索至便。政府の平和主義解釈を知る上で必携の一冊。
集団的自衛権 容認を批判する 別冊法学セミナー (別冊法学セミナー no. 231)
渡辺 治 (著), 山形 英郎 (著), 浦田 一郎 (著), 君島 東彦 (著), 小沢 隆一 (著) 日本評論社
学生・一般市民向けにやさしい語り口です。
資料として、基本用語解説、および、集団的自衛権関係史を載せてあるので、法律を勉強したことのない人でも、読んで理解できる工夫をしています。
楽しいのですが
国会論戦なんて
そもそもする気が無い
どんなに論破されても
多数決で押し通す
というスタンスも感じるので
まったく笑えません。
↓
「成蹊大学法学部にて学 び しか」
「ア○総理が、、、立憲主義ぐらい 学べ よ」と思いながら書いていたら
「学べしか」と初歩的な文法的ミスをおかしてしまいました。
お恥ずかしいかぎりです。
「嗚呼 安倍よ 君を嗤う」
と、詠んでいただろうね。。。
自衛隊員を戦死せしめよと
成蹊大学法学部にて学べしか
・・・・・・・・・
なんてね。。。。。。。
かわすーー少なくとも触れてほしくないテーマの回答を求められたことが理解できているので、違う事柄を持ち出してダメージを最小に抑える
スルーする(馬耳東風)ーーもはや相手がどのような話をしていようとも、自分は想定範囲問答集か何かで暗記してきたようなことを壊れたレコードのように出力する
誰かの歌に
「要するにそういうワケなのです。
ああすれば、こうなるとわかっていながら、
こうするよりなかったのは、
要するにそういうワケなのです」
というものがある。それを思い出した。
安倍首相の「バカの壁 三位一体攻撃」
は難攻不落だぞ(笑)
岡田さんから見れば、「逃げられている」です。
もちろん、まだ逃げ切っていませんが。
かわしたって、相手の言うことに上手く反論したみたいなイメージを抱かせますが、
実際は、噛み合わないと同様、相手の質問に答えずに質問と関係ないことを捲し立てるだけだった、つまり反論できなかった、という場合がほとんどなわけで。
こういうところにも、メディアの安倍に対する肩入れが見え隠れしてますよね。