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2022年2月24日に始まったロシア軍によるウクライナ侵略。
6月下旬現在、ロシア軍は東部のドネツク・ルハンシク2州を完全制圧する勢いで、ゼレンスキー大統領は
「わたしたちのすべての都市、セベロドネツク・ドネツク・ルハンシク、我々はすべてを取り戻す」
と猛反発し、欧米諸国にさらなる兵器の供給を依頼。
今行なわれているG7サミットでは、無期限でウクライナに援助を続ける声明が出される予定で、ロシア・ウクライナ戦争はますます泥沼化の様相を呈してきました。
そんな中、2019年に私を特別講義にお招きくださった青山学院大学の白井邦彦経済学部教授(ご専門は「社会経済学・社会経済学視点からの労働経済論」)が、ウクライナとロシアが憎しみあい、多数の人命が毎日失われていく現状を非常に憂えて、毎日のようにメールをくださっています。
私は法律家なので、どうしてもロシアのウクライナ侵略が違法であることを確定することが後々のためにもなるという意識が強いのですが、白井先生は人命尊重の立場から、早期停戦のための現実的な停戦協議案を今の段階から提案していくべきだというご主張です。
うちのブログで私が展開してきた議論と多少角度が違う視点からのご提案も貴重だという事で、お忙しいなか、6月25日にいただいた玉稿をご厚意で掲載させていただきますので、ぜひお読みくださいませ。
(例によって挿入の画像は宮武によるものです)
ウクライナ戦争・即時停戦を-多数の死傷者が出続けることには耐えられない-
2022年6月25日 白井邦彦青山学院大学経済学部教授
1、はじめに
ウクライナ戦争はロシアのプーチン政権(「ロシアによる侵略」ではなく「ロシアのプーチン政権による」としているのは責任主体を明確にするとともに、ロシア人差別などロシアに関係するものがすべて悪いかのようにする風潮とは一線を画するためです)による侵略であり、ロシア軍のウクライナ領土内からの即時撤退を強く求めます。この点を強調したうえで、この戦争に関する私の考えを述べたいと思います。まとめると下記のとおりです。
- 前述したようにこの戦争はロシアのプーチン政権による侵略行為であり、ロシア軍はウクライナ領土内から無条件で撤兵すべき。
- しかし現実にはその実現は難しい。ウクライナ軍に武器を供給しウクライナ軍が押し返すようにするもかなりの時間がかかり、しかもそれが可能かも不明、そしてその間多数の死傷者が出続けてしまいそれは絶対避けるべき。
- そうであれば停戦を早期に実現することが必要。停戦のためには双方が受け入れる、あるいは受け入れざるをえない停戦条件を示すことが必要であり、そのためにはこの戦争の背景などに関する多面的分析が必要である。
停戦案としては、
- 1、ウクライナのNATO非加盟中立化・中立国としての安全保障
- 2、EU加盟承認(ロシア政権はウクライナのEU加盟への動きには干渉しないということ)
- 3、ロシア語制限措置の即時撤廃のうえで、東部地域に関しては高度な自治を認める
- 4、クルミアの帰属に関しては15年後までをめどに両国で話し合う
- 5、ロシア軍のウクライナ領土内からの即時撤兵
が考えられる。
ベラルーシ南東部のホメリ地方で2022年2月28日、協議に臨むウクライナ(右)とロシアの代表団=AP
以下上記について説明していきたいと思います。ただ1,については事実認識として説明の必要のないことと思いますから2,3,4について説明したく思います。
2、停戦の必要性とロシアのプーチン政権による侵略の背景
下記のようなウクライナ戦争に関して6月15日に欧州のシンクタンク「欧州外交評議会」による興味深い欧州世論調査結果が発表されました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220617/k10013675741000.html(NHK6/17)
この調査では、「早期に停戦交渉を始めるべきで戦争を終わらせるためにはウクライナ側が多少譲歩することはやむをえない」と考える人の割合が「ロシアに代償を払わせ国土を取り戻す、そのためには戦争の長期化死傷者の増加もやむをえない」とする人より高くなっています(ただし国ごとにかなり差があり、イタリア・ドイツ・フランス・ルーマニアなどでたかなっており、後者は多くの国で少数です)
この結果は、1、戦争が長引くにつれて死傷者の増大という厳しい現実がつきつけられている、2、欧州にはウクライナからの難民がかなり存在しておりその悲惨さを目の当たりにしている、3、市民生活そのものへの悪影響が出始めている、といった理由からと思います(こうした調査は日米でもやってほしいし結果はぜひ知りたいところです、僭越ですが読者の皆様の回答はどうでしょうか)。
では「侵略されたウクライナが妥協できる(妥協もやむをえない)ギリギリの線」はどこでしょうか?そのためにはこの戦争の背景を考える必要があると思います。
背景として考えられるのは、1、NATOが東方拡大するなかで、ウクライナまでもが拡大対象となったこと、2、ウクライナ東部でのロシア人に対する抑圧、と思います(これらはあくまでロシア政権による侵略の背景の指摘で、それらによって侵略が正当化されるものではない、という点は強調しておきます)。
1、に関していえば様々な論者が述べていますが、ミアシャイマー、シカゴ大学教授(国際政治学)とフランスの人口歴史学者エマニュエル・トッド氏の見解を紹介したく思います。
下記のとおりです。
ミアシャイマー氏へのインタビュー記事(文芸春秋6月号、ただし無料で閲覧できるところまで)
エマニュエル・トッド氏の見解(文春オンライン、6/21)
https://bunshun.jp/articles/-/55103
https://bunshun.jp/articles/-/55108
ミアシャイマー氏の見解の動画(日本語字幕付き)
お二方とも、ロシア政権による侵略でありそこは容認できない、としながら、背景としてNATOのウクライナまでもの拡大がロシアにとって容認されえないものでありロシアを刺激した、ことを指摘しています。
2、の点に関しては水島先生(早稲田大学・憲法)の下記の「直言」の論考の「ロシア系住民への枠圧」の部分をお読みいただければ幸いです。
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2022/0321.html(直言3/22)
ウクライナにはロシア語を母語とする人々が少なからず存在します。その人たちにとってこの措置は医療・食といった生存に直接かかわる面で深刻な問題を引き起こします。また情報からも事実上遮断されてしまいます。
繰り返しますがこうした背景があるからといってロシア政権による侵略自体は全く免責されません。しかし停戦条件を探るうえでこれらの問題は直視する必要があるのでは、と考えます。
3、停戦案に関して
停戦案の1、に関しては最後に説明することとし、停戦案の2から述べていきたいと思います。
停戦案の2、に関してはウクライナについてはすでにEU加盟候補国となっており、プーチン氏も「EU入りには反対しない」と明言しています。
停戦案の3、に関しては先に背景の2のところで述べた点と、ミンスク合意Ⅱがいったんなされ、しかしその後両国の不履行(実はその不履行に関してはウクライナ側のほうが大きかったといわれている)にあったものがもともとは存在していたわけですから、その履行により実現できるはずです。
停戦案の4に関しては、併合から一定の時間もたっているため、時間をかけて落としどころをさぐっていくしかないと思います。さらにこの案は3/29のトルコのイスタンブールでの停戦交渉でウクライナ側からも出されていました。
停戦案の5については、いうまでもないことと、思います。
さて停戦案の1、についてですが、次のようなことからです。停戦案1は上述の背景1とともに、①軍事同盟であるNATOの拡大は国際平和・平和的秩序の構築という点からこれ以上認めるべきでないこと、②3/29のトルコ・イスタンブールでの停戦交渉の場でウクライナ側から提出された停戦案に入っていたこと、③5/20にイタリアが提示した四項目の和平案の中に「ウクライナのNATO入りを想定しない」との文言があり、NATO加盟には全加盟国の合意が必要である以上ウクライナのNATO加盟は困難なこと、④NATOは紛争当事国を加盟させないこと、⑤NATO・ロシア間で「NATO東方不拡大の一種の『約束』」が存在したこと、から現状と国際的にも認められるもの、と思われるからです。
ちなみに⑤については、ジョージ・ワシントン大学内に施設をもつNational Security Archiveで公開された公文書から確認できます。下記のDocument5の7行目から11行目の90年2月9日当時のアメリカ国務長官ベーカー氏がゴルバチョフ氏に語った言葉・Document9の8・9行目の翌日2月10日のコール氏の言葉の記述です。
https://nsarchive.gwu.edu/briefing-book/russia-programs/2017-12-12/nato-expansion-what-gorbachev-heard-western-leaders-early
米ソ外相会談のためソ連・モスクワのシェレメチェボ国際空港に到着したジェイムズ・ベーカー米国務長官(中央)=1990年5月
1991年12月、ベーカー米国務長官(左)と話すゴルバチョフ大統領(真ん中)。
さらに上記と重複しますが、NATOにはNATO憲章第五条の集団的自衛権行使規定があり、そのため紛争当事国は加盟させないわけですから、当面ウクライナのNATO加盟はいくらウクライナ側が望んでもそもそも認められない状況あります。
それゆえ停戦案の1によってウクライナ側は現実には実質的には失うものはない、むしろ中立国としての安全保障という形でロシア側に安全保障を約束させることができる、つまりロシア側は「名は得られるが実は得られない」、一方ウクライナ側は「名は失うが安全保障という大きな実を得られる」という形になります。
まず現状のところで停戦ラインを引く、そのうえで仲介国が入り上述の5項目の停戦案による停戦をまとめる、という形で停戦が実現できれば、と考えています。
4、終わりに-人間の命ほど大切なものはない-
停戦は困難な作業で、その過程で停戦破りが頻発します。まさに「賽の河原の石積み」です。しかしそれをすることで、現状のままでは出続ける死傷者の死傷を一人でも減らすことができるのではないでしょうか。今この瞬間にも貴重な命が失われています。この世で人間の命ほど大切なものはありません。多数の死傷者が出続けることには耐えられません。その点強く訴えたく思います。
この拙文がウクライナ市民・命令で有無を言わさず戦地に行かされているロシア兵、その他この戦争で影響を受けている人の命を救うことの万が一何らかの役にたつことがあるならば、ということが私の大それた望みです。
「人の命は地球より重い」という強い思いからのもの、とこの拙文を理解していただければ幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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特別寄稿!白井邦彦教授(青山学院大学経済学部)『緊急事態宣言-「国による大規模な各種補償措置の実施」と「公立公的病院・病床削減促進施策の全面白紙撤廃」と必ずセットで』
ロシア軍によるウクライナ侵略から4か月。ウクライナ市民の死傷者は4万人、兵士の死者は1万人。ロシア軍にも死者多数でも停戦への道筋は全く見えない。戦争が始まらないための外交努力が何よりも大切だ。
ロシア専門家の廣瀬陽子慶大教授が「核が抑止力でなくロシアの自由度を高めている。核抑止論者にとっては衝撃的」。岸田首相はNATO首脳会議でなく、核兵器禁止条約の第1回締結国会議に出席すべきだ。
ウクライナ戦争「どっちもどっち」論には道理がないとする日本共産党の立場は至当。侵略しているロシアの行為の違法性こそ著しく重大。そこから議論を始めない橋下氏らがロシア擁護派とされるのは当然だ。
チョムスキー曰く「ロシアによるウクライナ侵攻は重大な戦争犯罪だ」「攻撃に至った経緯を突き止めようとすることにいかなる言い訳も入り込む余地はない」。侵略国ロシアとウクライナを相対化することは許されない。
ロシアのウクライナ侵攻開始から100日目。ロシアは即時停戦し、侵略と戦争犯罪行為を止めよ。欧米諸国は本気で停戦協議のために労を取れ。日本は欧米に「軍事援助だけでなく停戦努力をしろ」と本気で迫るべきだ。
文中の「和平派」と「正義派」という区分でいうと、白井先生より私の方が正義派にやや傾いているんだと思います。
それは国際法秩序を守ることがこれからの侵略戦争を未然に防ぐという意見からなのですが、しかし、目の前で人が死につつある現実を見過ごすことはできないという点で、私たちに意見の相違は全くありません。
白井先生、超お忙しいのに、今回の特別寄稿も毎日のメールもありがとうございます!
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G7声明草案、ウクライナの防衛を無期限で支援することを約束
John Follain、Alberto Nardelliドイツ南部エルマウで行われている主要7カ国首脳会議(G7サミット)の声明草案によると、G7首脳はウクライナに対し、ロシアの侵攻に対する防衛で無期限の支援を提供すると約束する。
ブルームバーグが確認したウクライナ支援に関する声明草案には「われわれは資金や人道面、軍事および外交での支援を継続し、必要なだけウクライナを支持する」と書かれている。
原題:
G-7 Draft Commits to Supporting Ukraine’s Defense Indefinitely(抜粋)
「セベロドネツク取り戻す」ゼレンスキー大統領が反発 ロシアが完全制圧発表
TBSテレビ
2022年6月26日(日) 11:42
ウクライナ軍が撤退を進めているとする東部の要衝セベロドネツクについて、ロシア側は「完全に制圧した」と発表しました。
ロシア国防省は25日、ロシア軍と親ロシア派部隊がウクライナ東部ルハンシク州の要衝セベロドネツクと近郊の町や集落3か所を「完全に制圧した」と発表しました。
セベロドネツク市長は制圧を認めたうえで、ウクライナ軍は隣接するリシチャンシクから抵抗を続ける準備をしているとしています。
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「セベロドネツクを含め、ドネツク、ルハンシクすべてを取り戻す」
ウクライナのゼレンスキー大統領は、セベロドネツクを含め、マリウポリなどロシア軍に占領されている全ての街を取り戻すと反発しています。
さらに、25日には西部リビウ州、南部ミコライウ州など、激しい戦闘が続く東部ドンバス地方以外でも広範囲にわたってロシア軍がミサイル攻撃を行ったと明らかにしました。
こうした中、ロシアのプーチン大統領は25日、サンクトペテルブルクで同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領と会談。冒頭、次のように表明しました。
ロシア プーチン大統領
「今後数か月のうちにベラルーシにミサイルシステム『イスカンデルM』を引き渡す。これは通常型と核搭載型のミサイルの両方を使用できる」
プーチン氏はベラルーシに対して、核弾頭を搭載することができる地上発射型ミサイルシステム「イスカンデル」を「数か月以内に引き渡す」と語りました。
ルカシェンコ氏は5月、ロシアからイスカンデルを購入したと明らかにしていました。
ゼレンスキー大統領“東部奪還”の意向 強く表明
ロシア軍による激しい攻撃が続いていた、ウクライナ東部ルハンシク州の要衝セベロドネツクについて、地元市長は25日、町が完全にロシア軍に制圧されたと明らかにしました。
セベロドネツク市長「町はロシア軍に全面的に占領されています」
また、市長はロシア側が街の「司令官」を一方的に任命したと明らかにしています。ロシア側は東部ルハンシク州の完全制圧を目指していて、州内のウクライナ軍最後の拠点であるリシチャンシクへの攻勢を強めています。
一方、ゼレンスキー大統領は東部奪還の意向を強く表明しました。
ゼレンスキー大統領「わたしたちのすべての都市、セベロドネツク・ドネツク・ルハンシク、我々はすべてを取り戻す」
こうした中、ロシアのプーチン大統領は盟友関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領と会談し、核兵器も搭載できる弾道ミサイルを数か月以内に提供すると表明しました。
ベラルーシと国境を接するリトアニアやポーランドなど、西側諸国に対する圧力を強める狙いがあるものとみられます。
要衝セベロドネツクが陥落 ロシアの「完全な占領下」―ウクライナ軍、対岸から反攻も
ロシア軍は5月にセベロドネツクへの攻撃を本格化させたものの、一進一退の戦闘は長期間に及んだ。今後、東部ドンバス地方を構成するドネツク州の制圧も目指すとみられるが、泥沼の地上戦で民間人の犠牲者や双方の戦死傷者がさらに増える恐れがある。
プーチン大統領は2月下旬、侵攻に先立ち、ドンバス地方を一部占拠してきた二つの親ロシア派を「独立国家」として承認。その領土は2州全域に及ぶと強弁し、支配の拡大に向けて作戦を命令した。ロシア軍はキーウ(キエフ)州を含む北部から撤退後、東部に戦力を振り向けた。
セベロドネツクはルガンスク州の事実上の州都として、ドネツ川対岸のリシチャンスクと共にウクライナ軍が死守していた。今回の動きは、有利な陣地に移り、新しい重火器を手にするための「戦術的撤退」(米国防総省当局者)とみられている。ロシア軍による制圧は「戦争の転換点にはならない」(戦争研究所)とも言われる。
ロシア側は、欧米の軍事支援が効果を出す前に、ドネツク州の事実上の州都クラマトルスクまで戦線を伸ばしたい考え。頓挫している停戦交渉の再開の可能性をにらみつつ、ドンバス地方をめぐる戦闘は「時間との闘い」にもなっている。プーチン氏は5月9日の戦勝記念日の演説で、ドンバス地方を「歴史的な土地」と表現した。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、2月下旬の侵攻開始前の状態までロシア軍を押し戻すことができれば「勝利と見なす」と強調しているが、支配地域や人命が奪われているのが実情。「重火器の数で10倍」とされたロシア軍との戦力差を埋めるべく、欧米の兵器・弾薬供与のさらなる充実を訴える声が一層強まりそうだ。
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こういう間の入り方をすると、イジメていた生徒は、本来なら先生にこっぴどく怒られる立場だったのに、なぜか引き分けに終わった形になったのでニンマリとなるのに対し、イジメられていた生徒は、自分には一切の非は無いのに、一方的に和解を強要される事で、加害者への処罰感情は全く満たされず、心の中にモヤッとした気持ちだけが残ります。
そうなれば、当然、イジメられていた生徒は、やはり、この裁定に納得が出来なくて、イジメた生徒に対して抗議の声を上げたりもしますが、しかし、このダメ教師はと言うと「何だお前!まだ過去のことでグチグチ言ってんのか!いい加減に忘れろよ!」と、なぜか被害者側の生徒を責めたりするもんですから、尚更の事、生徒は納得が出来ず、ただ泣き寝入りをさせられる形になり、本来の解決とは程遠い状況に置かれます。
つまり、現状でウクライナ側が一切求めてもいないような「和解(一方的譲歩)」を迫る人と言うのは、ただ単に自身の言動に酔いしれているだけの行為となっており、被害者側からすれば迷惑の一言に尽きます。
しかも、タチが悪いのは、停戦提案する人の言葉って、一見すると良い事を言っているように聞こえてしまうため、それに迎合してしまう人が後を絶たず、まるでその主張が正しく思えてしまう事で、今、必死に抵抗しているウクライナが悪いかのような印象を与えてしまいます。
そもそも、もし今、ウクライナがこんな停戦案を受け入れたら、侵略したもん勝ちとなってしまい、ロシアは益々調子に乗るだけでなく、それを陰と言うより堂々と支えている中国が「じゃあ、俺達も!」と、台湾を狙う口実を与えてしまうため、百害あって一利なしの提案と言えます。
大人も含めて良い子のみんなは、加害者と被害者の間に入ろうとする人が居た場合、それは決して良い人なんかでは無く、ただ純粋に「ああこの人は、加害者寄りの人なんだな」と認識するようにしましょう!
これまでの経緯、事実関係を鑑みてのご提案です。最後に挙げられているように、戦闘で死傷者が出ることを、何よりも止めることを目的とされています。素晴らしいことです。
「人の命は地球より重い」
この言葉を、軍事費倍増で一儲けしてやろうとたくらんでいる人たちに、理解させなければいけません。
できるだけ早い停戦、できれば終戦を願っています。
しかし、それには両者が納得できる条件が必要だと思うのですが、その条件が思い浮かばない私です。
そんな中、白井さんの提言は大変参考となるものだと思うのですが、6月26日、Youtubeにこんな動画がアップされていることを知りました。
・ 20220625 UPLAN 田中龍作・志葉玲「ウクライナと世界と日本」 2022/06/26
https://www.youtube.com/watch?v=CI3R6Mn41YY&t=6903s
ウクライナへ長期取材を敢行した日本人ジャーナリスト二人からの現地報告です。
2時間14分に及ぶ長い動画です。
この中で、現地の人に対して、アメリカ・NATOの東方拡大説について尋ねると、
「それを言うならロシアの西方拡大が先だ、と鼻で笑われた」
というウクライナの人々の反応があることを紹介しています。また、
「戦争は嫌だし、早く終わってほしいけど、ロシアに占領されるのはもっと嫌だ」
という人がいたという報告もありました。
このような嫌露感情を持つ人たちが実際にどれほどいるのかは見当がつきませんが、逆に考えると、思想的には嫌露だろうが、即時停戦支持者が多ければ、今頃、ゼレンスキーは退陣に追い込まれ、停戦支持の大統領なり代理なりが停戦交渉の仲立ちを国連なりに申し入れているとも考えられるのですが、そうなっていない現実を見ると、嫌露派と言われる、先に紹介したような考えを持つ徹底抗戦派(が適切な言葉であるかには自信がありません)が、現時点では多数なのかとも考えられます。
そのように考えると、白井さんの
> では「侵略されたウクライナが妥協できる(妥協もやむをえない)ギリギリの線」はどこでしょうか?そのためにはこの戦争の背景を考える必要があると思います。
「 背景として考えられるのは、1、NATOが東方拡大するなかで、ウクライナまでもが拡大対象となったこと、2、ウクライナ東部でのロシア人に対する抑圧、と思います」
という立場では、現時点のウクライナ国民に納得してもらえる可能性は相当低いのではないだろうかという疑問が浮かびました。
また、大統領が納得すれば、国民は従わざるを得ない状況なのでしょうか。
ロシア占領地域となってしまったところでは、すでに、レジスタンスも始まっているという報道も見ますし、動画を見ても、簡単には停戦に納得が得られる意見となっていない、そのような状況ではなさそうだ、と思える私です。
停戦は、何より、両者が納得できる案となっていれば最高ですが、これで仕方がないと鉾をおさめられる程度にはなっていないと結べない話だと思うのです。
白井さんや水島さんの案に意義ありと立ち向かうつもりなど毛頭ないのですが、あくまで私の感覚では、あまりにも、戦争当事者となっている人の気持ちに添った形となっていないような気がしまして・・・。
実は、この動画を見た後、志葉玲さんがいつ帰国をしたのかを知りたくなり、彼のブログを見たら、4月30日に帰国していたと報告されています。その後、現地報告されている動画があることを知ったのですが、この動画を含めて、どれもが視聴回数が大変少なく、出来ることならな、もっと多くの人に見てもらい、ウクライナ・ロシア両国の人の心に寄り添う素晴らしい停戦案が出来ることを願い、コメントさせていただきます。
因みに、4月30日以前の取材報告内容から見て、約二ヶ月過ぎた現在でも、停戦の目処が見えないという状況ですので、ウクライナの内実は、動画で報告されている状況とさほど違わない現状であろうと私は思っています。
お忙しい白井さんには大変恐縮ですが、この長い動画を見てもらい、それでも、現時点においては、ご説が最良だとおっしゃるのならば、それで全く構いませんが、もし、この動画を参考に新案が思い浮かぶならば、また、ご教示願いたいと思います。
違う角度からの意見も、という主旨の記事なので、現地を取材した人の報告もその趣旨に反しないかと思い、コメントさせていただきました。
私は、この動画の解説欄に書かれている、
「論点はいくつもあるが、現場で生きる当事者(ウクライナの人々)を抜きに、自分の思想やイデオロギーを掲げ、それに合わない「現場」と「当事者」を否定する人も少なからず存在する。当日は、そういうことにも話は及ぶと思う。」
もまた、心に残る言葉となっています。
※遺体発掘の残酷なシーンがあります。という注釈がついている動画です、と付け加えておきます。
・ 20220625 UPLAN 田中龍作・志葉玲「ウクライナと世界と日本」 2022/06/26
https://www.youtube.com/watch?v=CI3R6Mn41YY&t=6903s
は、戦場の厳しい姿を映したものが削除対象となったようです。
そこで、それらの場面をなくし、前編・後編へと再編集されたものがこちらです。
前編 ウクライナ現地報告(志葉玲+田中龍作) 2022/06/27
https://www.youtube.com/watch?v=TDIqDfyPCV8&t=770s
後篇 ウクライナと日本(志葉玲・田中龍作・林克明) 2022/06/27
https://www.youtube.com/watch?v=MCgKKG0MeO8&t=24s
ウクライナ戦争の現地報告のひとつとして、皆さんのお考えの参考になれば嬉しいです。
繰り返しますがこうした背景があるからといってロシア政権による侵略自体は全く免責されません。しかし停戦条件を探るうえでこれらの問題は直視する必要があるのでは、と考えます。
★ 「本当のウクライナ」 訪問30回以上、指導者たちと直接会ってわかったこと
紹介させて頂く、この本の著者・岡部芳彦さんの肩書から、ウクライナと大変関係の深い方という印象を持ちながら注意深く読みましたが、ウクライナとウクライナ国民、そして、ロシアとの関係などの一面を知ることが出来るものと思いました。
「なぜ、いま、ウクライナは多くの犠牲者を出しながらも、核兵器を持つ圧倒的な軍事大国ロシアに抵抗するのでしょうか。
僕は、その理由は非常に簡単で、ウクライナ人がウクライナ人でなくなってしまうからだと思います。
ウクライナでは、ロシア帝国やソ連の約300年の支配を通じて、10回以上ウクライナ語の使用禁止令が出されました。当然、ウクライナ語による教育も許されず、ウクライナ語、ロシア語の二重言語国家となりました。首都キーウ近郊のブチャでの虐殺では、ウクライナ語を話している人から順番に殺されたといいます。ロシア国営系のリアノーボスチ通信に4月上旬に掲載された論評では、非ナチ化は必然的に非ウクライナ化だと主張しています。
ウクライナという国名を名乗ることも許されない、ウクライナ人という存在すら消されてしまうかもしれない、彼らにとってはそうならないようアイデンティティーを守るための戦いなのです。」
「2014年以降、ウクライナではずーっと戦争が続いてきました。逆にいえば、この8年間、世界がそれについて無関心だったことが、プーチンに今回の戦争を決断させた背景の一つにあるのかもしれません。毎日、ウクライナの悲惨な映像を見ていると、どうしても見るのも嫌になってくることもあるでしょう。もしかして、長期化すると関心も薄れてくるかもしれません。その意味では、多くの人がウクライナに関心を持ち、プーチンやロシアに対して抗議の声を上げ続けることが、この戦争を終わらせる近道だと僕は信じています。」
2022年7月5日初版発行となっているこの本も停戦条件を考える上で参考に出来ないでしょうかと思い、コメントさせていただきます。