兵庫県庁に登庁し、報道陣の取材に応じる斎藤元彦知事=25日午前、神戸市中央区(撮影・大島光貴)

 兵庫県議会から全会一致で不信任を突き付けられて以降、斎藤元彦知事はテレビ番組などで就任3年の実績をアピールし、「改革に取り組んできた」と主張している。知事が強調する県立大無償化事業や外郭団体の改革、県庁舎再整備計画の撤回をはじめとした行財政改革について、現状と課題を整理した。(金 慶順、大島光貴、岩崎昂志)

■県立大無償化、受益者は県内高卒の2%程度

 斎藤知事が注力する「若者・Z世代支援」。その柱に掲げるのは、県立大(本部・神戸市西区)と県立芸術文化観光専門職大(豊岡市)で県民の授業料を段階的に無償化する事業だ。2024年度は学部4年などが対象で、26年度までに大学院も含めた全学年に広げる方針を示している。

 県によると、23年春に県内の高校を卒業した人のうち県立大に進学したのは757人(1・8%)。24年春も794人で、議会の複数会派はより広く学生が恩恵を受けられるように「奨学金返済支援の拡充などに予算を充てるべきだ」と指摘している。

 24年度の事業費は5億2千万円。県は最終的に年間23億円まで膨らむと試算している。ただ事業費は年度ごとに県議会で審議されることもあり、県政の空転が続けば、事業の持続性は見通せない。

 議会や県民、有識者への事前説明やヒアリングが不十分だったため「政策決定過程が不透明」とする批判も根強い。

■行財政改革、「貯金100億円超」は税収増の影響

 斎藤知事は就任以降、行財政改革を重視。連日のテレビ出演などでは「県の貯金が100億円を超えた」と公約の達成をアピールしている。

 県の貯金にあたる財政調整基金は、就任前の2020年度末は33億円だったが、23年度末には約127億円に達した。だが県財政課はその要因について「企業業績が好調で県税収入が増えた影響が大きい」と分析。行革で捻出したのではなく、黒字分94億円を積み立てた結果と説明する。

 一方、知事公用車の高級車「センチュリー」の解約とワンボックス車への変更では7年間で約830万円の経費削減につなげた。

 県議会の不信任可決を受け、知事が議会解散に踏み切れば県議選に約16億円かかる。

■外郭団体見直し、前知事派排除狙いとの指摘も

 民間の積極的な活用を掲げる斎藤知事は、外郭団体の改革実績も強調する。

 最近は、県職員OBの外郭団体への再就職について「65歳以上の天下りを制限した」と積極的にアピールしている。県の内規では65歳での退職を定めるが、斎藤知事の就任前は慣例的に延長されていた。2022年度に運用を厳格化し、在籍するOBを約60人削減した。

 しかし、ある外郭団体の職員は「前知事派の排除が狙いだった」とし、県庁内の亀裂に拍車がかかったと明かす。

 一方、県と密接に関係する32団体について、斎藤知事は22年度中に廃止や統合を含め方針を示すとしたが、まだ方向性が示された団体はゼロだ。

 外郭団体が指定管理を担っていた県立施設への民間参入は一部始まったものの、存廃議論は8月の県議会特別委員会で「単に団体数を減らすことを目的とすべきではない」と注文が付くなど議論は停滞している。