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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

女性はなぜ「引きこもる」のか 未婚・無職・引きこもり……増え続ける“女性SNEP”の実態

2014年12月24日 | 新自由主義批判 所得の再分配と格差社会の是正

独身・無職者のリアル (扶桑社新書) 

SNEPと呼ばれる20歳~59歳の孤立無業者の総人口は107万人!仕事もなく、友達もいなく、結婚もせず、家族以外との接点がない人びとの現実は、決して他人事ではない。



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皆さんは、SNEP(スネップ)、という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。

2014年9月24日のNHK「あさイチ」が、このSNEPの中でも「女性SNEP」の実態を特集してから、視聴者に話題になり、一気に広く知られるようになってきました。

さて、SNEPは、東京大学社会科学研究所の玄田有史教授により提唱された言葉で、『Solitary Non-Employed Persons』=Solitary(孤立した)No-Employed Persons(無業者)、つまり、“社会で孤立し、就業していない者”という意味です。簡単に言うと、年齢は20~59歳。普段仕事をしておらず、2日以上ずっと一人、もしくは家族としか交流のなかった非婚者のことです。 最近はニートと同じく、注目されるになってきました

そして、“NEET(ニート)”が15歳から34歳までの若年無業者を指すのに対して、このSNEPには35歳以上59歳以下の中高年をも含まれています。そして、ニートが無業者を求職活動の有無によって区別した概念であるのに対し、SNEPは無業者を友人・知人などの対人関係の有無によって分けたものです。 

ちなみに、総務省が5年に1度行う、社会生活基本調査を基に玄田教授らのグループが集計した結果によると、わが国では仕事も通学もしなかった20~50代の未婚男女256万人のうち、SNEP状態に陥っている男女は2001年の85万人から、2011年の162万人と10年で倍近くにまで増加しているとのことです。

さらに、年齢別でみると、いちばん多いのは20代=60.2万人ですが、30代=44.8万人や40代=35.2万人もかなりの数にのぼり、どの世代も急増しているそうです。


この番組では、こんな二人の方の話がレポートされていました。

Aさん(36)は新卒で志望企業に入社したものの、鹿児島の実家で祖父が倒れ、介護を手伝って欲しいと家族から連絡があった。Aさんは会社を1年で退職し、地元で介護をしながら就職活動をすることに決めました。

そのときは「仕事はすぐ見つかる」と思っていましたが、いざ就活をすると、1年で退職したことがネックになりました。っして、就職に不利になると思い、介護中であることも言い出せず、結局10社受けても採用されずストレスから過食気味になり、徐々にSNEP状態になってしまったということでした。

Bさん(43)は35歳で離婚し、娘と一緒に実家に帰ったものの、近所の好奇の目に耐え切れず、新しい人間関係を作ることが怖くなってSNEP状態となり、8年が経過してしまっているそうです。そして、娘の進学費用を稼ぎたいが、履歴書も書くことができない精神状態に陥っているとのことで、

「人とのつながりがなくて、人に相談することもなかった。追い込まれていくっていうか、思い詰めてしまって。働きたい気持ちはあるが、いざとなるとできない」

と言っています。

 

番組では、女性がSNEPに陥りやすいきっかけとして「失恋」「職場燃え尽き」「Uターン」「転職」を挙げていました。環境の変化や大きなストレスによって、誰にでも陥る可能性があるということです。上の玄田教授は番組の中で

「甘えという声もあるが、統計などを見ると、親が裕福だからSNEPやニートになっているわけではなく、家族だけで何とかしようとしても限界がある。地域でもサポートする場所が増えてきたので、本人や家族だけで抱え込まないようにしてもらいたい」

と語っています。

女性がSNEPに陥るきっかけは離婚や親の介護などが多いと言われています。女性一人で子育てや介護をしなくてはならず、結果、退職を余儀なくされたり、思うような仕事に就けなかったりということが原因となっているようです。つまり、誰でもふとしたきっかけでSNEPになる可能性はあると言えます。 

玄田教授が2013年1月に出した論文「孤立無業者(SNEP)の現状と課題」によると、特に女性はいちどSNEPに陥ると「就業希望と求職活動の両方に対して消極的になっている」のだということです。

 

 

『失業者』とは仕事を探している人のことですが、失業期間が長期化すると、就労先が見つからないという絶望から、働く意欲まで失ってしまいます。そういう人は『無業者』と呼ばれています。

中年が無業者になった場合、サポートしてくれる公的支援はほとんどない。そのために社会復帰が難しく、必然的に失業期間が長期化してしまうのです。

では、このスネップ問題に対して、どう対処していけばいいのでしょうか。

家に引きこもっていても、ネットでつながることができるのではないか、という考えもあり得ます。しかし、「ひきこもり」というと、一日中インターネットをやっているというイメージがありますが、玄田教授の調査によると、「スネップ゚は実際の交流が゙欠けているのみならず、電子メールや情報検索などインターネットの利用も少ない」(「孤立無業者(SNEP)の現状と課題」)ということです。

ですから、玄田教授はSNEPの対策として、2013年5月31日の衆議院厚生労働委員会において、支援提供者が自らSNEPの元に足を運んでサポートを行う「アウトリーチ」の必要性や、SNEP防止のために子どもの頃からいろいろな人間に会って体験をさせることが重要だと述べています。

 

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たとえば、非正規雇用であったがために突然の雇い止めに遭い、以来3年の間SNEP状態にあった40代の女性が、心のリハビリのつもりで学生時代に趣味としていた文章書きを再開したら、そのうちにブログ記事の執筆代行の在宅ワークで月に何万円かのお金を稼ぐようになったという実際の話があります。 

しかも、その女性はネタ集めのために始めたSNSを通じて幾人かの友人もでき、今では自宅にいながらSNEP状態を脱したとのことです。

最初にリアルでのきっかけがあれば、ネットにもつながっていけるといえるかもしれません。

あさいちの中で、玄田教授は

「乗り越える人の特徴は、周囲に協力してくれる人が誰かしらいたこと」として、「一人で抱え込まずに、必ず誰かに相談すること。『苦しい』と声をあげることが大事。家族だけで抱え込まないでほしい」と番組の中でアドバイスされておられました。

我が国では、中年の無業者を支援する制度がほとんどありません。今後は政府がこの問題を直視し取り組んでいかなければなりませんが、家族にスネップがいる場合には、その方の人格を尊重しながら、あまりネットやメールを使わないスネップにはSNSを利用してみるように促したりすることも考えられます。

また、スネップに陥っているご家族の趣味や関心を考えて、自分の関心あるところに行って、そこで同じ趣味の仲間と出会ったりする機会を提案することを手始めとして、リアルでの関係作りの橋渡しを援助するのもいいでしょう。

家族と本人が社会から孤立していると解決の糸口を見つけるのが困難ですから、若年層のニートを支援するNPO法人などはかなりありますから、中年のスネップの場合でもそのような団体に相談しに行くというような対処が考えられるのではないでしょうか。

 

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スネップ。多くの方にとって、ご家族やご自身も他人ごとではない問題だと思います。

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未婚・無職・引きこもり……増え続ける“女性SNEP”の実態


パピマミ 2014/11/25 18:14

【女性からのご相談】 
先日、朝の全国放送の人気テレビ番組で、『未婚で無職の“大人の女性ひきこもり(女性SNEP)”が増加中』という特集を組んでいました。番組は、「SNEPの状態から抜け出す手伝いをしてやらなければならない」という前提で編集されていたような気がします。 

実はわが家の40代の娘がまさに“女性SNEP”。政治家や文化人の中にも、「SNEPは農業などに強制的に就労させるようにした方がいい」といった趣旨の発言をされる方がおり、「世の中の邪魔者」扱いに聞こえます。 

持ち家は独立していった息子たちでなく娘に譲るつもりなので住居費はこの先もかかりません。ぜいたくさえしなければ娘が一生暮らせるだけの預金も既にあります。“女性SNEP”は非難されなければならない存在なのですか。私のリウマチが悪化してからというもの、お勤めも辞めてずっと介護してくれている優しい娘なのですが。 

●A. 他人がとやかくいうことではないが、“不測の事態”が心配ではあります。 

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。 

おっしゃる通りで、既に生涯の生活設計ができたのでしたら他人がとやかくいうべきことは何もありません。ただ、人生は不測の事態が起こりえます。 

ぜいたくさえしなければ一生暮らしていける額だとあなたが思っていた預金は、病気や事故などの不測の事態でたちまち消えてなくなる場合もありますし、あなたなき後の男性のご兄弟たちとの関係も気になります。 

また、住居も古くなればいろいろなほころびが出てきますから、改築費として思わぬ大金が出ていくことだって考えられます。今は親が支えていても、ふとしたことで将来経済的に厳しい状況に陥るおそれがあるのです。 

都内でメンタルクリニックを開業し長年にわたって“ひきこもり”の女性患者さんたちの診察にあたってきた、精神神経科医師に伺った分析を参考にしながら、その原因と対処法を考えてみたいと思います。 

●SNEPとは何か 

『“SNEP(スネップ)”とは、“Solitary Non-Employed Persons”の頭文字をとった言葉で、孤立無業者を意味します。東京大学社会科学研究所教授の玄田有史氏が2012年に提唱した概念で、「20歳以上59歳以下の未婚の無業者のうち、普段ずっと一人でいるか、一緒にいる人が家族以外にはいない人々」を指す用語です。 

“NEET(ニート)”が15歳から34歳までの若年無業者を指すのに対してSNEPは35歳以上59歳以下の中高年をも含め、ニートが無業者を求職活動の有無によって区別した概念であるのに対し、SNEPは無業者を友人・知人などの対人関係の有無によって分けたものです。 

総務省が5年に1度行う、社会生活基本調査を基に玄田教授らのグループが集計した結果によると、わが国では2011年時点で仕事も通学もしなかった20~50代の未婚男女256万人のうち、SNEP(孤立無業者)に該当する人が162万人いました』(50代女性/前出メンタルクリニック院長・精神神経科医師) 

●最近とくに“女性SNEP”が注目されている理由 

『そもそも玄田教授も、「SNEPには男性・中高年・高校中退を含む中学卒ほどなりやすい」と述べていました。これは、女性が男性に比べると本来コミュニケーション能力が高く、自分の主義・信条などは置いといて生活に密着したレベルでの他人との交流が男性よりもずっと得意であることに起因しています。 

ところが、最近のいわゆる“女性SNEP”とされる患者さんたちからの訴えを聴いていると、離婚・雇い止めによる失業・親の介護などをきっかけに孤立してしまったというケースがとても多いのです。 

元来コミュニケーションに関してはタフであったはずの女性までもが、どちらかというと社会的な要因からSNEPに陥るような時代になってきてしまったという点が世間の注目を浴びているのだろうと思われます』(前出メンタルクリニック院長) 

●SNEP状態から脱したひとりの女性の例~人は仕事を通してアイデンティティーを得る~ 

『SNEPが問題視される社会的理由として、生活保護費など社会保障費の増大への懸念と、親世代が潤沢な貯蓄を消費に使わずSNEPの子どものために寝かせてしまうなどがあります。しかし、それらはそれぞれに人権を持った個人がとやかくいわれるべきことではありません。 

「強制的に就業させるべき」などといった政治家の発言ももってのほかで、そんな契機で仕事に就いても長続きするはずがありません。ただ、人生は不測の事態が起こりえるものですし、何より人間は仕事を通してアイデンティティーを獲得できるという面があります。預金の取り崩しだけで生きていくのも娘さんにとってはつらいことです』(前出メンタルクリニック院長) 

ほんの一例にすぎませんが、非正規雇用であったがために突然の雇い止めに遭い、以来3年の間SNEP状態にあった40代の女性が、心のリハビリのつもりで学生時代に趣味としていた文章書きを再開したら、そのうちにブログ記事の執筆代行の在宅ワークで月に何万円かのお金を稼ぐようになったという実際の話があります。 

しかも、その女性はネタ集めのために始めたSNSを通じて幾人かの友人もでき、今では自宅にいながらSNEP状態を脱したとのことです。特効薬の処方箋を書くことはできませんが、ご参考になさっていただけたなら幸いです。 

(ライタープロフィール) 
鈴木かつよし(エッセイスト)/慶大在学中の1982年に雑誌『朝日ジャーナル』に書き下ろした、エッセイ『卒業』でデビュー。政府系政策銀行勤務、医療福祉大学職員、健康食品販売会社経営を経て、2011年頃よりエッセイ執筆を活動の中心に据える。WHO憲章によれば、「健康」は単に病気が存在しないことではなく、完全な肉体的・精神的・社会的福祉の状態であると定義されています。そういった「真に健康な」状態をいかにして保ちながら働き、生活していくかを自身の人生経験を踏まえながらお話ししてまいります。2014年1月『親父へ』で、「つたえたい心の手紙」エッセイ賞受賞。

 

 

孤立無業SNEP急増「通院歴なし、アナログ人間が特徴」と識者

2013年10月20日 07時00分
提供:NEWSポストセブン

 ニートとも引きこもりとも違う、新しいタイプの孤立無業者、通称「SNEP」が日本に162万人もいるという驚くべき報告が出た。名付け親はニート研究の第一人者でもある東京大学社会科学研究所教授の玄田有史氏だ。

「孤立無業者がこのまま増え続ければ、日本の社会的なコスト増大は計り知れない」と警告する玄田氏に、SNEPになりやすい人の特徴や、孤立無業から抜け出す手段を聞いた。

 * * *
――SNEPとは20歳以上59歳以下の未婚無業者で、家族以外は社会との接点を持たない人々と定義しています。その他、どんな特徴が挙げられるのでしょうか。

玄田:まず男性に多い点です。日本では勉強ができて、いい会社に入らなければ将来はないといったプレッシャーが女性よりも男性のほうが受けやすい。それが重荷になって、一度躓くと「もうダメだ」と考えて、社会参加を困難にさせているケースが多いのです。

 居住地域や世帯の裕福さなどによる違いはみられませんでしたが、少し意外だったのは「健康ではないが通院していない」人ほど、SNEPになりやすくなっていたことです。うつ病や自閉症といった治療・療養を一生懸命行っている無業者は、むしろ社会復帰に向けて積極的に活動をしている人々なのです。

――他人との直接的な付き合いはなくても、インターネットやメールでの交流はあるのでは?

玄田:これも調べてみて意外だったのですが、SNEPは決して“ネット中毒者”ではありません。電子メールやインターネットを通じた情報検索・収集にあまり積極的ではなく、むしろ長時間テレビを観て、睡眠時間も長い。昭和のアナログ時代の無業者と変わらない印象を持ちました。

――まだ家族がいれば会話もあるでしょうが、一人型の無業者は本当に孤独ですね。

玄田:一人型の孤立無業は、朝起きるのも遅く、部屋の掃除もあまりしない割合が高いことが分かりました。深夜も含めてめったに外出しない生活を送っている人も多いので、精神的に不安定で、趣味や関心事も少ない。もちろん結婚願望も乏しいといえます。

 また、貯金や財産が十分でないために、強い老後不安を感じていることも多いのです。いざとなったら生活保護を受けるのも致し方ないと思っていたり、すでに受給している場合も少なくありません。

――SNEP対策の第一は、「無業」から抜け出す前に「孤立」から抜け出す必要があると思います。周囲に悩みや相談を打ち明けられる人がいないとドロ沼にはまるばかりです。

玄田:私もそう思います。とにかく自分の関心あるところに行って、そこで同じ趣味の仲間と出会ったり、「こういうのが好き」「僕も好き」と会話できる関係を築くことから始めてほしいです。

 いまの時代、特に若い人の間で、人と深くかかわることを避ける風潮が強まっている気がします。そのために本当に困ったときにでも、相談したり悩みを直接打ち明けられる友達もいない。ネットで人間関係を広げたくても、誰も自分とつながってくれない。そんな自分を受け入れてくれない社会が広がっていることに、やり場のない気持ちが膨れ上がり、孤立していく現象が起きているのでしょう。

――家族型SNEPも、親は頼りにならないのでしょうか。

玄田:親を頼るというより、働かずに親に悪いなという気持ちと、親が自分のことを甘やかすからこうなっているという、なんともいえない気持ちが交錯し、親子関係はうまくいっていないケースが多いのです。

 ここは親もあえて子供を突き放すことも必要です。親が親として自分の人生を大事にして生きることは、じつは結果的にSNEPの子供の自立につながることを分かってほしいです。

――肝心の就職ですが、どうしたらうまくいきますか。

玄田:自分でできることから少しずつやっていけばいいと思います。雇用形態は正社員だろうがアルバイトだろうが構いません。

 よくSNEPは無業期間が長いために履歴書の空白を見た会社の面接官から、「何だお前、ずっと引きこもりか」みたいなことを言われてパニックになる人もいます。でも、変わろうとしている自分の勇気を正直に話せば、きっと分かってくれる企業はあります。

 世の中ブラック企業が話題になっていますが、ホワイト企業もちゃんとあります。「よし、わかった。一人前になるまで苦しいけど、頑張れるか?」って希望を与えてくれる会社がなければ、日本はとっくの昔にもっとダメになっていたはずです。

 私はSNEPという新たなレッテルを貼ろうとは毛頭思っていません。社会病理のひとつとして存在することを認めることが大事なのです。SNEPやその家族のことを他人事と考えるのではなく、みなで理解し、自分たちの問題としてその解決方法を模索していくことが孤立無業者を一人でも減らす近道なのです。

【玄田有史/げんだ・ゆうじ】
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、ハーバード大学やオックスフォード大学の客員研究員、学習院大学教授などを経て、東京大学社会科学研究所教授に就任。『ニート』(幻冬舎)、『希望のつくり方』(岩波新書)など著書多数。最新刊に『孤立無業(SNEP)』(日本経済新聞出版社)がある。

 

 

 

 

2014年9月28日 08時59分 (2014年9月29日 16時12分 更新)仕事もない、友達も少ない、結婚相手もいない……そんなオトナの男女が増えている。決してヒトゴトではない「無職・独身」のリアルとは?

◆増え続ける、独身・無職で”ぼっち”な人たち

 20~59歳という働き盛りの年齢でありながら、家族以外との交流がない、無職・独身の男女を指す新たな概念として、最近は「SNEP(スネップ※1)」という言葉が「NEET(ニート)」に代わって注目を集めている。なかでも、リストラや病気などで社会のレールから外れてしまったアラフォー世代は、特にこのSNEPに陥りやすいという。

 SNEPを提唱した東京大学社会科学研究所の玄田有史教授によると、SNEPは約162万人(2011年)。いちばん多いのは20代=60.2万人だが、30代=44.8万人や40代=35.2万人もかなりの数にのぼり、どの世代も急増している(※2)

 そして、未婚無業者のうち6割以上が、一人ぼっちか家族としか会わないSNEPになっていて、特に40代は孤立する率が高い(68%)。一昔前なら、働いて子供を育てている世代なのに……。

◆職が見つからないまま、ひきこもり中年に

 アラフォー世代の場合、いったん失業すると、失業期間が長くなりがちだという。長年にわたり“大人のひきこもり”問題を取材してきたジャーナリストの池上正樹氏は、次のように指摘する。

「最大の原因はセーフティネットの不備。転職市場から見放された人はハローワークを頼るのですが、実は“まともな求人”がほとんどない。募集数はたくさんあるんですが、『ハローワークにも求人を出す良い企業』という社会的なイメージアップのためだけで、実際に採用されない話はよく聞きます」

 池上氏はハローワーク経由で紹介された会社に面接に行った、ある中年男性の例を語る。

「『資格がないからダメ』と落とされたので、その資格を取得してまた面接を受けました。でも、やっぱり何かと理由をつけられて落とされたんです。そんなことが何社も続くうちに働く意欲を失い、ひきこもりのようになってしまうケースが最近目立ちますね」

 また現在、普通に働いている人たちも他人事ではない。

「想定外のリストラや両親の介護問題がきっかけで、仕事がなくなるだけではなく、あっという間に社会から孤立してしまうことも珍しくはありません。特に真面目な人ほどなりやすいと思います」

 ひきこもりやニートの社会復帰を支援する認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏も同意する。
 
「『失業者』とは仕事を探している人のことですが、失業期間が長期化すると、就労先が見つからないという絶望から、働く意欲まで失ってしまいます。そういう人は『無業者』と呼ばれており、支援する制度がほとんどありません。無業者の数は増え続けているという実感があります。若者支援を掲げている僕らのところにも中年の相談者が来るくらいですから」

 中年が無業者になった場合、サポートしてくれる公的支援はほとんどない。そのために社会復帰が難しく、必然的に失業期間が長期化してしまうのだ。

※1 SNEP=Solitary Non-Employed Persons=孤立無業者とは、20歳以上59歳以下の未婚の無業者のうち、ふだんずっと一人か一緒にいる人が家族以外いない人々。

※2「孤立無業者(SNEP)の現状と課題」玄田有史教授、2013年。総務省統計局『社会生活基本調査』にもとづいて人数等を算出している。これによると、SNEPの世代計人数は、74.6万人(96年)→85.4万人(01年)→111.8万人(06年)→162.3万人(11年)と急増

池上正樹氏】

ジャーナリスト。通信社勤務を経て、フリージャーナリストとして活躍。著書に『ドキュメント ひきこもり「長期化」と「高年齢化」の実態』など

工藤啓氏】

認定NPO法人「育て上げネット」理事長。米国ベルビューコミュニティーカレッジ卒業。著書に『「ニート」支援マニュアル』、『NPOで働く―「社会の課題」を解決する仕事―』

― 「未来が見えない!」35歳以上[無職・独身者]のリアル【1】 ―

 

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6 コメント

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それは傲慢ですよ (フリーランス)
2018-11-08 10:41:30
「こうでなければならない」という社会的規範、基準を最初に作ることでお金もうけする人がいるこの矛盾。それで安心できる社会になりました?
いいえ。私は結婚もして、仕事もフリーでこなし、子供もいて友達もいます。でも不安でSNEP同様です。まる2日、家族と親戚としか話してないですし、被災して仕事はできず、当然この先は不安しかないです。
この世から全ての不安を取り除くことはできません。できる、してやると思うのはただの傲慢です。
それと戦う自由こそまさに各自の、尊厳ある人生なのです。
返信する
なぜって・・・これだけの差別的な外圧が本当にわからないことなのですか? (M)
2018-03-25 17:22:22
――SNEP対策の第一は、「無業」から抜け出す前に「孤立」から抜け出す必要があると思います。周囲に悩みや相談を打ち明けられる人がいないとドロ沼にはまるばかりです。

玄田:私もそう思います。とにかく自分の関心あるところに行って、そこで同じ趣味の仲間と出会ったり、「こういうのが好き」「僕も好き」と会話できる関係を築くことから始めてほしいです。

↓↓↓

これについて、びっくりしました・・・
多くの場合、無業だから孤立するのですよ。

必ずしも自分から閉じこもっていったわけではなく、
さんざん差別的な目に会い、尊厳を傷つけられ、
無理解な親からも見下され、けなされ続けて
二次被害。三次被害な目にあわされるからです。

親は特に、介護奴隷がほしいために非協力的ですしね。
一度長期化してしまえば、もうどこにも雇ってもらえませんし、
そういう日本のシステムを知らなかった人間も多い。

はげまされるほど、理不尽で惨めでたまらないです。
具体的に、生活を取り戻せるような収入源など提案できやしないのに。

欲求の優先順位は、”生存”です。
ヘラヘラとコミュニケーション?
普通に暮らせている人間と?
僅かな出費でも震えるほどのストレスだと言うのに?

初対面の人の中へ?
悩みを打ち明ける心理的ハードルなんてかなり高いだろ笑

見下されに、わざわざ出かけるような鋼のメンタル
マゾとしか思えない・・・


返信する
不登校の子供と同じで、、、 (K)
2016-02-08 19:57:33
無理に学校に連れ出そうとすると、さらに問題が悪化するのと似てる気がしますね。
最悪な場合は自殺してしまったりとか・・・
そういう子には、「学校に行かなくてもいいんだよ」と言ってあげたほうが楽になると思うんですよね。

SNEPの女性たちにも、そもそも社会に出なくても食っていけるような社会を構築することで、「もう無理に働こうとしなくていいんだよ」と言ってあげたいな。
そうすれば、精神的にも楽になって自然と外に出られるような気がします。
返信する
再度投稿させて頂きますね (allegra)
2015-01-04 02:11:57
こちらでは介護などで仕事から離れそのまま無職になったり社会や人との接点がなくなったとありますが、
もっと別のところに真実があります

職場や地域で特定の個人をターゲットにし、いじめや誹謗中傷、盗聴盗撮をして、
職場から追い出したり、地域から孤立させるような犯罪が今徐々に明るみになってきています。

経済の問題以前に、水面下で犯罪が行われもみ消されているのです。

それに目を向けずに、アベノミクスの問題点や女性の貧困を語るのは無意味なのです。

ご理解よろしくお願いいたします。
返信する
なぜ最初のコメントを公開していただけないのでしょうか (allegra)
2015-01-03 15:06:26
最初のを公開していただけないなら意味がありません
返信する
昨日コメントさせて頂いた者です (allegra)
2015-01-02 23:46:01
コメントのお返事楽しみにしております
返信する

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