まるっとかわいいリンゴ🍎の茶入

2022-01-13 15:21:40 | 紹介
令和4年1月の特別展示室、逸品展示のテーマは「信玄公のくらし」です。
ご覧いただいておりますのは、信玄公ゆかりの茶入と茶臼、そして武田氏館の絵図の3点。

展示中の「文琳之茶入」は、真田宝物館(長野県)が所蔵するもの。
「真田」と言えば、あの「真田」で、
茶入は「信玄公御遺物」(ごゆいもつ)として真田家が拝領した伝世品。


茶入とは、抹茶入れのこと。
茶道具の中でも、元は輸入品だったということもあったのでしょう。
価値のあるものとして、茶入れという用途に加え、鑑賞の対象にもなりました。
木製で基本的には薄茶用の「棗」(なつめ)に対し、
陶器製の「茶入」は、一般的に薄茶用の抹茶よりも品質の良い濃茶用。

茶入は、宋代(10~13世紀)から元代(13~14世紀)にかけて中国で作られ、
鎌倉時代に輸入された、何かの容器だったとか。
最初に茶入れとして見立てられた容器は、容量も大きく、口も大きいもの。
液状のものか、湿気てはこまるものを入れるための容器だったのか定かではありませんが、
その多くが、内側に釉薬がかけられていたようです。
また、付属していた象牙の匙が、後の茶杓になったとも言われています。

そんな茶入は、形状別に分類され、
唐物茶入のナンバーワンとされる「肩衝」(かたつき)にはじまり、
「茄子」「瓢箪」「水滴」「鶴首」「大海」などなど、代表的な形状は20を優に超え、
その中のひとつが、今回展示の「文琳」(ぶんりん)です。

「文琳」」とはリンゴ🍎のこと。
かつてリンゴは「文林郎果」(ぶんりんろうか)と呼ばれたため、リンゴに似た茶入を「文琳」型と呼んだそう。
真田宝物館の「文琳之茶入」は、形もまんまる、姫リンゴを大きくしたような印象で、確かに直観的にリンゴです。
ただ、この「文琳」は、現在私たちが親しんでいる西洋リンゴのことではなく、
平安の頃、中国から入ってきた和リンゴの方。
和リンゴは直径2~5cm、形は長球、偏球、裾すぼまりなど多様で、文琳茶入の形状もまた多様。
展示中の茶入は真球状で、安土桃山時代以降、とりわけ愛でられるようになった形だとか。

多様な文琳型を文琳たらしめたのは、形状に加えて、その口から首の部分も。
口縁の削いだ感じ、そしてリンゴを上から眺めた時に見える、漏斗状のくぼみにもリンゴを見た・・ということでしょうか。
茶の湯を愛し、育てた方々の目のつけどころは、やっぱりちょっと違います😉

「信玄公御遺物」と伝わる「文琳之茶入」。
どのような経緯で、真田家に贈られたのでしょう。
はっきりしたことはわかりませんが、この茶入が、真田家が徳川家康より拝領した短刀とともに保管されてきたことを考えれば、
それが、どんな「大名物」にも劣らない、家宝として大切にされてきたことに疑いはありません。


江戸時代、2度の火災に見舞われ、象牙の蓋も共箱も焼失。
茶入だけ、何とか救い出されたこともうなずけます。

でも、手のひらサイズのころんとした「文琳之茶入」は、
そんな過去をおくびにも出さず、ただただかわいく、心ときめく茶入🍎
1月31日(月)までの展示です。

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