明治大学平和教育登戸研究所資料館、第14回企画展記念特別対談
「小林エリカ×山田朗『女の子たち風船爆弾をつくる
The Paper Balloon Bomb Follies』をめぐって」に
オンラインで参加した。
小林エリカ氏は、作家、マンガ家、アーティストと
多彩な活躍をなさっている。
この春、知人にオンラインブックトークを紹介され、参加したが
この時点で小林氏を存じ上げなかった・・・
それが、2時間ほどのトークで、すっかりファンになった!
というのも、幼い頃、アンネの日記から作家を志し、
長じてマリー・キュリーに惹かれ、
(うん、うん、わかる、わかる~~)
わたしより、ずっとお若いけれど、
目に見えないもの、歴史、時間、放射能などをテーマにするという
著者に共感、さっそく、著作を読んだ次第。
読んだのは、『トリニティ、トリニティ、トリニティ 』(集英社)
『彼女たちの戦争 嵐の中のささやきよ! 』(筑摩書房)
『最後の挨拶』(講談社)・・・
どれも史実とフィクションが巧みに交錯する、美しい作品!
ACジャパン支援、プラン・インターナショナルの、
この広告をご存知のかたも多いのではないだろうか。
あとで気づいたのだが、
これは小林エリカ氏のイラストが使われているのだ!
一方の山田朗先生は、何度かお話を伺っている
登戸研究所資料館の館長だ。
お二人の顔合わせは、小林氏の最新刊(イベント当日に発売!)
『女の子たち風船爆弾をつくる
ーThe Paper Balloon Bomb Follies』(文藝春秋)のテーマが
アジア太平洋戦争中に女学生が風船爆弾を作った史実だからだ。
風船爆弾と言えば、登戸研究所!
これは、現在の明治大学生田キャンパス敷地内に、
かつて存在した軍事施設である。
1937(昭和12)年以来、日本陸軍における
<秘密戦>兵器の開発機関だった。
「秘密戦」とは、防諜・諜報・謀略・宣伝活動を指す。
「秘密戦」とは、防諜・諜報・謀略・宣伝活動を指す。
陸軍中野学校は人(スパイだね)を育て、
登戸はモノを作ったと言われている。
詳しくは、去年、山田先生のご講義を伺った際の記事
(過去記事「今よみがえる・・・!?」)を読んでいただければ、
ありがたい。
登戸研究所で作ったものは、偽札、毒薬のほか、
よく知られているのが、風船爆弾である。
下の書影を、ご覧いただきたい。
巨大な球体が風船爆弾だ。
下で作業中の女学生も写っており、大きさに圧倒される!!
~山田朗・明治大学登戸研究所平和資料館
『陸軍登戸研究所〈秘密戦〉の世界 : 風船爆弾・生物兵器・偽札を探る 』
(明治大学 丸善出版)
風船爆弾は、アジア太平洋戦争中、
日本本土からアメリカ本土を攻撃するための兵器として開発された。
上質の和紙とコンニャク糊を風船の原料に、
日本各地(満州などでも)の高等女学校(現在の中高生)の生徒が
動員され作業にあたっている。
東京銀座の宝塚劇場では雙葉、跡見、麹町といった
私立女学校の生徒たちが動員された。
小林氏は、その証言や資料を丹念に追い、
『女の子たち風船爆弾をつくる』を書き上げたそうだ。
それも、裏のとれない内容は一切書かないことを心がけ、
結果、膨大な、山田先生曰く小さくて読めないほどの活字で
10頁にも及ぶ「注」がついているというw
なにせ本日発売の新刊ゆえ、
まだ読んでおらず、本については語れない。
(さっそく書店にとりおいてもらったので、近々、購入予定)
本日は、お二人のお話から、気になったことをいくつか挙げておく。
1.歴史は地続き
小林氏は言う。
ーー戦時下で、宝塚歌劇は「不要不急」とされていました。
以前だったら、それは歴史の出来事に過ぎなかっでしょうが、
コロナ禍を体験した今は、とても他人事とは思えないんです、と。
わたしにも、それは、いまだに、うずく記憶。
「不要不急」という言葉のもと、どれだけ多くの人がネット上も含め、
攻撃され、自分も彼らに腹を立てていたか(←そこが怖い)
山田先生も続ける。
ーー学生も同じ、戦争と言えば遠い昔の出来事にしか過ぎません。
でも、自分たちが今、学んでいる、このキャンパスに、
かつて登戸研究所があり、実際に戦争遂行のための兵器が開発されたと
知ると、俄然、気持ちが変わってくるんです。
自分も歴史の中に存在している、歴史は地続きなのだと実感できる、
そう言うようになります」と、学生の感想を挙げられた。
ああ、まさに、それ!
その感覚があるから、わたしは歴史が好きなのだ。
歴史の地を旅すれば、必ず、そこにいた人に想いを馳せる。
自分も同じ場所で、その記憶をたどりたい、
同じ空気を感じたい・・・ずっと、そう思ってきた。
これぞ歴史の醍醐味ではないか!
2.「虎に翼」
小林氏は朝ドラ「虎に翼」を例に挙げる。
「男性は兵士として戦い、亡くなれば靖国神社に名前を刻まれる。
でも、女性は、戦うこともできません。
女性は『虎に翼』でも言われていたように
<無能力者>とみなされた時代なだけに・・・
名前が残ることは決してありません。
だから、頑張っちゃったんでしょうね。
女性は、戦争協力を惜しまなかったんですね
女学生は、風船爆弾作りを必死でこなしています」とおっしゃる。
当時は、「お国のため」としか知らなかった女学生。
後に、風船爆弾で、実際アメリカでは6人の命が喪われている・・・
そのことを知り、自分は殺人に加担したと
悩むことになる・・・
「虎に翼」から、もうひとつ。
オンライン視聴者から(わたしじゃないけどw)
寅子の父の会社「登戸火工」は登戸研究所と関係があるのかとの質問。
山田先生のお答え。
「昭和火工」という会社が実在し、
ドラマでは、これをモデルにしました。
ここは登戸研究所の第二課に納入をしていたんです。
第二課はゲリラ戦に関わる部署で、時限爆弾などを作っていました」
やっぱりね~~♫
「これから『寅に翼』でも登戸研究所が出てくるかもしれませんね」と
小林氏の言葉に、会場は、ますます大盛り上がり。
・・・と、この質問で盛り上がったところで、
対談は終了した。
明るく和やかなお開きは、さすが明治大学!あっぱれ!!
余談ながら、この時間帯に明治大学・駿河台キャンパスでは、
NHK「土スタ」の公開生放が行われ、伊藤沙莉さん、仲野太賀 さんが
ゲストとしていらしていたそうで・・・
(後から録画を観た💓)
明治大学は作中、寅子が通った「明律大学」のモデルなのだ。
小林氏は「虎に翼」が、お好きなご様子。
わたしも大好き、好きすぎて胸が痛くなっちゃうほど。
OPでは、法服をつけた寅子を中心に、
近代から現代へ、さまざまな職業の服装をした女性が
軽やかにダンスをする。
小林エリカ氏の言う「大活字にはならない」女性達の歴史が
ここにある。
歴史は、まさに地続きなのだ。
それを、ひしひしと感じ、いまだにOPから泣けて泣けて・・・
困っているw
余談を、もうひとつ。
昨年8月に出た、中脇初枝『伝言』(講談社)では
主人公が旧満州の女学校で風船爆弾作りに動員されている。
終戦後、彼女は満州から引き上げ、四国へ落ち着く・・・
対談で、山田先生が、愛媛に出張した折に聞かされたという、
コウゾの作業に当たっていた女学生のエピソードを話していらした。
小説のネタバレになるが、晩年の主人公は高知に住み、
山田館長(実名!)とも、交流をしている・・・
ここで、つながるのかぁ~と、マニアックな喜びにひたったw
さぁ、今日は、本屋さんへ走るぞ~~~
(今、腰痛なので走れないけどw)
📷 小林エリカ氏の書影は、ご自身のHPから
明治大学関連は、明治大学のHPから、
冒頭書影は版元ドットコムよりお借りしました。
★追記★
昨日(2024年5月26日)付け「朝日新聞」地方欄に、
対談についての記事が掲載されたので、冒頭画像を差し替えました。
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おつきあいいただき、どうもありがとうございます。
わたしのメモ書きをもとにまとめましたが、
間違いや勘違いはあるかもしれません。
素人のことと、どうぞお許し下さいませ。