歴タビ日記~風に吹かれて~

歴タビ、歴史をめぐる旅。旅先で知った、気になる歴史のエピソードを備忘録も兼ね、まとめています。

浅井長政さま自刃の地

2022-06-06 07:50:21 | 滋賀県

本日は、小谷城城主・浅井長政自刃の地と、

お人柄についてのエピソードをまとめます。

よろしくおつきあいくださいませ。

 

小谷城・本丸に向かって歩いていると、その直前に、右に折れる道があります。

(冒頭画像)

 

ここをずっと下りていくと、「赤尾美作屋敷跡」。

本丸へと続く登城ルートから、少し外れているせいか、人気がありません。

 

長政さまは、ここで自刃されたそうです。

 

家臣の屋敷って・・・?

なぜ、本丸ではないの?

 

天正元(1573)年9月1日、北近江を支配していた、浅井家の居城・小谷城は、

織田信長に攻められ、落城します。

この前日には、長政の父・先代当主・浅井久政が自刃していました。

 

本当は、この段階で、信長の攻撃は終了、

長政は和議によって降伏することになっていたのです。

 

ところが・・・

 

信長側は、重臣の赤尾清綱と浅井石見を生け捕りにしたのです。

赤尾清綱は、自刃の地となった、赤尾屋敷の主でしょう。

一番、本丸に近い地を与えられている、重臣中の重臣ですから・・・

 

 

長政さまが、お怒りになるのも、もっともなこと。

黒金門から討ってでるも、信長軍に攻められ、

本丸は、既に占拠され、戻ることができません。

 

仕方なく、本丸をあきらめ、この地・赤尾屋敷へと向かい、

自刃したのだそうです。享年29歳。合掌。

 

 

以前、NHK「英雄達の選択」で、磯田先生が浅井長政の人柄を絶賛しておいででした。

「自分が領民だったら、絶対に浅井長政がいい。」と。

(「戦国武将としては、信長がおもしろいけれど」ともw)

 

 

そんな長政さまの最期の想いが綴られた、書状(手紙)が残っています。

普通の手紙より小さな(9.8cm×23.3cm)紙切れに書かれていることが、

いよいよ最期の迫った、城内の混乱をうかがわせます。

 

宛名は、家臣・片桐直貞(ナオサダ)。片桐且元の父です。

 

「籠城を続けていたが、既に城は本丸を残すのみ・・・

家臣も裏切って、皆、去って行った。そんな中、残ったのは無二の存在。

申す言葉もないし、手紙でも現せない。謹んで申し上げるのみ」と・・・

 

討ち死にしたり、捕らえられたりした家臣もいたでしょうが、

裏切ったものも多かったのでしょう。

そんな中、片桐直貞は残ってくれた・・・

長政さまは、ご自身が裏切りなど考えられない、まっすぐなご気性・・・

落胆の中、直貞は、ひとひらの救いに思えたのかもしれません。

 

でも、息子の且元(カツモト)は、大阪の陣を前に、

豊臣秀頼方から、徳川家康に寝返っていますよねw

息子として、父の生き方に想うところがあったのでせうか・・・

 

 

さて、この手紙が、なぜ残っているのか?

戦場ですよ、落城ですよ。

 

他にも、長政さまが、したためられた書状はあるそうですが・・・

なぜ、残っているのでしょう?

 

火打ち袋に入れて残った、伝えられる手紙もあったとか。

つまりは、肌身離さず持っていた家臣が、生き残ることができ・・・

さらに、それを子々孫々に伝えたということなのです。

 

本来だったら、落城した城主の手紙なんて、何の役にも立ちません。

それでも、現代まで、400年以上も伝えられている・・・

 

太田浩司先生は

「小谷籠城と浅井氏への無二なる中世は、江戸時代以降の湖北人にとって、

何よりもまさる勲章だった」(156頁)と書かれています。

 

長政さまの人柄が偲べるのではないでしょうか・・・

 

 

余談。

片桐直貞宛の「浅井長政最期の感状」は、お茶の水図書館に所蔵されています。

これは、徳富蘇峰のコレクションなのだとか!

 

すごいっ!

「國民新聞」の主宰者、近代を代表するジャーナリスト!

弟の蘆花は小説家・・・徳富兄弟と言えば、ビッグネーム!!

 

そちらにも、大興奮でございましたw

おつきあいいただき、どうもありがとうございました。

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参考:

太田浩司『浅井長政と姉川合戦 ーその繁栄と滅亡の軌跡ー』サンライズ出版

 本記事の「浅井長政最期の感状」は、太田先生が書き下された文章(153頁)を

 もとに、現代文に訳しました。

 

その他、案内板や現地のパンフレットなどを参考にまとめましたが、

不備な点は素人のことと、どうぞお許し下さいませ。


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