ricoのつれづれblog

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観劇感想〜NODA・MAP『フェイクスピア』〜

2021-07-25 | お芝居のこと
お久しぶりです。
観劇感想も久しぶりです。

前回の観劇感想はコロナ前の劇団⭐︎新感線でしたが、
あの後、実はNODA・MAPの前作『Q』を観に行ってます。

この『Q』の観劇感想を書こうと思いながらバタバタした日々を過ごしてタイミング逃して今更書けなくなってしまったので、今回は観たてほやほやで書きます。

本日千秋楽なので、ネタバレ大丈夫と思いますが、念のため内容知りたくないよーの人はご注意ください。











冒頭は山?森?の中、小さな箱をかかえた男が倒れている。
木が薙ぎ倒される音、木々に扮した人々がゆっくり倒れていく。


そして恐山。
白石加代子さんが、女優白石加代子になるまえに恐山でイタコ修行をしていたと語るシーンから、流れるようにイタコみならいとして男二人に口寄せ?(取り憑きみたいなもの?)を依頼される。

一人は小さな箱をもっている若い男(高橋一生)
もう一人は年配の男性(橋本功)。

若い男はイタコみならいに「頭を下げろ!」と怒鳴る。
口寄せのダブルブッキングに怒ったのだと思ったイタコみならいは深々と頭を下げる。
すると若い男は「頭を上げろ!」と言う。

一方年配男性は殺された娘に会いたいと言う。なぜかその男性は国王で、自分に取り入ろうとしなかった三女に会いたいと言う。

すると三女はイタコみならいではなく若い男性に取り憑く。
三女はコーネリアス。

その後年配の男性がシェイクスピアのキャラクターになるたび、若い男性に相手役が降りてくる…。

イタコみならいは自分に取り憑いてもらえないので、これでは年一回のイタコ昇格試験に落ちてしまうと嘆く。

実は高校の同級生だったとわかったイタコみならいと年配男性。

協力を得てイタコ昇格試験に受かりたいと願うイタコみならい。

ここから話はめまぐるしく展開するので一度観ただけのわたしには説明できなくて申し訳ないですが、ダイジェストで。

小さな箱は神様が無くしたさいごの言の葉が入っていて、それを取り戻したい神様の使いたち(川平慈英と伊原剛志)、イタコみならいの母である伝説のイタコや星の王子様(どちらも前田敦子)らが物語を回していく。

神さまは目に見えない。言葉も聞こえない。言葉が聞こえないのはコトバの葉を人間に与えたから。

小さな箱に入っているコトバとは?



いつもの野田ワールド、セリフひとつ聞き逃してはいけない展開。

冒頭から散りばめられたセリフの中に、私はかなり早い段階で意味がわかってしまいました。

「18時56分28秒」。

若い男性と年配男性がイタコみならいに口寄せを依頼した時間。

この時間は、聞き覚えがある。

日航機墜落事故。

その墜落した時間…。

神様の使いは永遠と36年、箱を探していた。

36年前、もう間違いないわ。

一瞬箱が開いたときの言葉

がんばれがんばれ!

どーんといこうや!

墜落した日航機のボイスレコーダーに残っていた言葉たち…。

私のように覚えている人、知っている人もきっと少なくなかったと思う。

ああ、このテーマなんだ…

気づいた時から想像できる、というか事実でしかないラストに胸が痛くてつらかった。


冒頭の木々が倒れる姿は機体になぎ倒された御巣鷹の尾根の木々、もしくは人々。若い男性のセリフの「頭を下げろ!」と「頭を上げろ!」もボイスレコーダーの中で必死に、それこそ死を目前にして最後の最後までなんとかしようと発せらたことば。

若い男性はこの言葉の主、つまりパイロットだった。

そして年配の男性はこのパイロットの息子。
事故により、パイロットの家族も責めらたのだろう、息子は憧れの空ではなく、地下深く走る地下鉄の職員になって、定年を迎えた。
定年後、地下鉄に飛び込んで死のうとしていた。

箱の言葉を聞いて、生き延びる為に必死に発した最後の言葉たちを聞いて、
「生きる」ことを決めた年配の息子…。

込み上げるものの重さに涙が止まりませんでした。



ラストのフライトの様子を再現した緊迫のシーン。
セリフはきっとボイスレコーダーそのままだったのでしょう。

だから、泣きながら、ハンカチをぎゅっと握りしめて観ていました。
助かって、お願い!と本気で思ってました。

日航機墜落を題材にした舞台、事故当時を知っている人と知らない人には温度差があるかもしれないですが、
それでもパイロット役を演じるのはかなり重かったのではないかと感じています。

私なら毎晩夢でうなされてしまうかも…。


フェイクスピアというタイトルの意味、シェイクスピアとの関わりについては一度しかみていないのでまだ私の中ではまとまっていません。

飛行機、宇宙船?に関わりのある星の王子さまの登場もまだうまくまとまりません。

コロスという烏たちもです。

すぐにテーマはわかったものの、野田ワールドはまだまだ深く深く、
全てを掬い出すのはずっとずっと時間を要するのですが、
それこそが野田ワールドのお芝居を観るのをやめられない理由ですね。

また次回作も是非観に行きたいです。