飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」「万里一空」「雲外蒼天」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

ダブルバインド

2021年05月18日 08時22分40秒 | 教育論
教師は教室の中で次のような言い方をしていないだろうか。
「みんなとよく相談しなさい。でも,一人で考えることも大切です。」
「時間がないので,急いで書きなさい。でも,掲示するから丁寧に書かなければいけませんよ。」
言っている教師の中では矛盾していないつもりだが、受け取る子どもは混乱する。
矛盾する指示が同時に出されているからである。
こう言った状態が続くと、教師への信頼は失われ、さらに、子どもたちも自己肯定感を下げてしまう結果となる。

このような状態を「ダブル・バインド」(二重拘束)という。
「ダブル・バインド」とは,心理学用語で,その意味は,二つの相反する言動を一度に受けるということ。
教師も知らないうちに,「ダブル・バインド」をしてしまっていることが多くある。

教室で教師は子どもたちに、「自由に表現しなさい」「自分の意見を自由に言いなさい」と言う。
その一方で、実際には教師の展開や指導案から逸脱した意見や考え方が出てくると、教師が強引に授業をまとめたり、子どもの意見を曲解して進めたりすることもある。
また、「わからないことはなんでも聞きなさい」と言いながら、実際に勇気を出して聞きにいけば「こんなこともわからないの。授業で何を聞いていたの。もう言いました。」と責められる。

子どもを指導する場面でもよくある。
生徒指導的な場面で、子どもが黙っていると、
「きちんと状況を説明しなさい。なんとか言いなさい。」
と言われる。
何かを話そうとすると今度は、
「言い訳はしない。」
と言われる。
これは典型的な「ダブル・バインド」である。

指導以前に子どもたちの頭の中は大混乱する。

では、教師は「ダブル・バインド」をさけるためにはどのような配慮が必要なのだろう。
それは次にようなことに注意することである。

1 本当にしてほしいことだけをシンプルに伝える
子どもは教師の言葉の裏にある感情や言葉の裏表を読み取る能力がまだ備わっていない。
そのために、「○○をします。」「○○はしません」などとシンプルでわかりやすい言葉をかける。

2 あらかじめ条件をつけておく
「この3つの中から好きなものを選んでいいよ」など最初に条件づけをしておく。
「イベントを開きます。条件は、三つあります。一つ目は、お金をかけないこと。二つ目は、学校の施設を傷つけたり、壊したりしないこと。三つ目は、人の心を傷つけるようなことはしないこと。」
「読書してもいいです。ただし、30分です。」

3 教師が自身の言動を意識する
自分の指示や言動が矛盾していないかと常に気をつける

4 メッセージに含まれた矛盾に気が付く
メッセージに矛盾や行き違いがないかを点検する。

5 自分の発言に責任を持つ
自分が言った以上、そのことで自分を律することも大事。

6 ダブルバインドに関して周囲の人の協力を得る
周りの先生方にも、自分も言動について率直に批判していただく

自分の以前こんなことがあった。
運動会の時である。
運動会の前には、「勝っても、あまり大喜びしないように。負けてしまったクラスの子もきちんと考えなさい。」と言っておいて。
運動会で勝利したときに、あまり喜びを表現しない子どもたちに対して、「なんで素直に喜ばないの。うれしくないのは一所懸命努力しなかったからですか。」と言ってしまった。
その日の日記にある子が次のように書いてきた。
「先生は敗者の気持ちを考えて、勝っても心の中で喜ぶようにといっておきながら、体で喜びを表現しなかった私たちを叱るのはおかしい。」
その通りで反省した。

saitani
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フロー体験

2021年05月11日 15時59分48秒 | 教育論
教師なら誰でも、子どもたちが時間も忘れて学習に取り組んでほしいと思っている。
そのために様々な工夫を授業の中でする。
子どもたちが集中して取り組んでいる状態をフロー体験という。

これは20世紀を代表する心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱したもの。
自分自身の「心理的エネルギー」が、100パーセント今取り組んでいる対象へと注がれている状態のことをチクセントミハイは心理的エネルギーと言った。

そのフロー体験が成立する主な条件は次の四つである。(実際は8つ)

1 ちょうどいい難易度のものに取り組んでいる
読書にしろ、会話のやりとりにしろ、仕事にしろ、スポーツにしろ、今取り組んでいる内容が、本人の能力と照らし合わせて難易度が高すぎず、なおかつ、簡単にできるものではなく、能力のすべてをだしきらなければ達成できないレベルであること。

2 取り組んでいる対象へのコントロール感覚がある
取り組んでいるものを自分が自在に操っているという感覚を覚えること。
このあたりは教育で言う、主体性や自主性がもって活動している言ってもいいかもしれない。

3 直接的なフィードバックがある
取り組んでいることからの直接的なフィードバックが即座にあること。
反応が自分の内面に響き、喜びや悔しさなどの感情を呼び起こす状態であること。

4 集中を妨げる要素がシャットアウトされている
現在取り組んでいる作業や活動を遮断されるような要素がなく、集中できる環境であること。

この4つの条件が満たされると、人は過去に体験したことのない高い集中力を発揮することができる。
このフロー体験は次のフロー体験を呼び起こすことになり、学びの連続性にも大きな貢献することとなる。

saitani

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算数のノート指導

2021年05月10日 11時33分46秒 | 教育論
算数のノート作りは重要な学習の要素である。
いや、算数にかぎらずノートは学習を進める上で不可欠な成長要素である。
通常、手本を示し、型を徹底することが多い。

物事には趣意説明ということが必要であり、このことによって子どもたちの意識にも変化見られるようになる。
ある先生は次のように説明するという。

ノート1ページを一つ町とします。
筆算は家。
筆算と筆算の間は道。
家と家の間がなくなったら、道がなくて通れない。
住みにくい町になります。
だから、道を作ります。

なるほど。

saitani
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質問することの意味

2021年05月10日 11時23分48秒 | 授業論
「何か質問はありますか?」
教師は授業中に子どもたちに問う。
そこで質問する子はまれである。
研修会でも質問はと問われて質問することはそう多くはない。
そんなときにこんな話を子どもたちにすると有効かもしれない。

なぜ質問することが有益なのか。
質問は自分がわからないことがわかるようになったり、意味がより深くわかるようにするためにするように思いがちだ。
しかし、質問をすることによって、メリットを受けるのは本人はもちろん周りの人間でもある。
質問をする人は偉いと言うことを説明する。

1 はじめに質問する人は偉い
なぜなら、次の人が聞きやすくなるから

2 馬鹿な質問をする人は偉い
なぜなら、質問の内容のハードルを下げるから

3 関係ない質問をする人は偉い
なぜなら、話が広がるから

こんな風に話すと少しは質問するようになるかな。

saitani
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理解力を高める意識

2021年05月10日 09時58分08秒 | 教師論
物事を指導したり、学んだりするときには理解力は高い方がよい。
その方が効率よく学習も進められ、進歩も早い。
しかし、ただ単純に学んでいたのでは理解力を高めることはできない。
そこにはある共通した姿勢がある。
例えば次のような自己意識である。

1 話の大事な部分はメモをとる
誰かの教えを請うたり、指導を受けたときには必ずメモをとる。
人間の記録など曖昧なものだ。
聞いた話のほとんどは忘れる。
記憶は整理した形で保存されないとあとで再生できない。
その点で、見返したり、復習したりするときに不可欠な情報源となる。
情報の多くはタイムリーにインプットされることは少ない。
後日、問題意識をもったときに、「そういえばあのときに関連した話を聞いた」と記憶が蘇るのである。

2 物事を論理的に考える
身の回りで様々な事象が起きる。
その多くは何事もなく過ぎることが多い。
しかし、その出来事を論理的に分析したり、考察したりする習慣は人を成長させる。
ただ漠然と日々を過ごすことなく、「なぜだろう」「どういう因果関係でこのことが起きたのか」と考えることは大切である。

3 自分で抱え込みすぎない
中堅と言われる立場になると後輩をもつようになる。
自分に能力もつき、仕事の見通しもたつのですべて自分がやった方が早いと感じる。
しかし、適材適所で仕事を割り振ることも大切である。
分業を意識して、スペシャリストが担当した方が効率的ということも多い。
また、問題が発生したときには、自分だけで考えていると迷宮に迷い込むこともある。
同僚に相談したり、先輩に指導を受けたりすると簡単に踏ん切りがついたり、問題が解決したりすることもある。
自分で抱え込むことは避けた方がよい。

4 聞いた内容を人に説明してみる
最近はインプット同時に、アウトプットも重要性も強く感じる。
これに関する書籍も多く本屋に並んでいる。
アウトプットすることにより思考が整理され、新たな課題や問題点も見えてくる。
自分の論理の脆弱性も感じるのである。

5 不明点は周りの人に聞く
わからないことはすぐに人に聞く。
まず自分で調べる習慣も大切である。
今は、スマホが身近にあり、すぐにインターネット検索ができる。
その点では便利になった。
言葉の意味とか、自分で調べればすぐにわかるようなことは、自分で調べるべきだと思う。
それは、聞かれた方の都合や時間もあるからだ。
同じことを何度もきいてくる人がいるが、教える方も忙しいことを慮る配慮はほしい。
その配慮の上で、積極的に人に聞くべきだと思う。

6 相手や話題に興味をもつ
年を経るにつれて時間の進み具合が早く感じる。
1年などあっと言うまだ。
しかし、子どもにとっては1年間は長い。
それは好奇心や新しい物への感動が多いからだと言われる。
年をとっても感動する心を持ち続けて、様々なことに興味関心を持ち続けることは大事なことである。

7 一度やってしまった失敗は覚えておく
人は必ず失敗をする。
そして、失敗から多くのことを学び成長していく。
これは真理である。
だから、失敗してもくよくよしたり、落ち込んだりする必要はない。
以前読んだ本に、ある航空会社では、ミスしたことや失敗したことを共有するノートがあったという。
そこに個人の失敗したことを記録して、同じ間違いを周りの人間もしないようにする。
航空会社のミスは、すぐに命に直結する。

8 知識をしっかりと身につける
良い土に種をまかないと芽がでなかったり、良い作物が収穫できないように、人間の知識、すなわち土台を堅固にする必要がある。
幅広い知識の上に、よいアイディアが生まれ、進んだ考えが浮かぶ。
無からは有は生まれないである。

9 本で読んで読解力を身につける
これはなかなか難しい方法である。
ただ漠然と本を読んでいてもなかなか読解力は身につかない。
この文書の論理展開はどのようになっているかとか、ここまでを要約するとどういうことなのかという観点で常に読み進めていく意識も重要である。
目に見えない部分での蓄積もあるが。

saitani

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