下記の記事は東洋経済様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。
未婚男性は未婚女性より約340万人も多いという「男余り現象」については、こちらの記事(『「未婚男性」は未婚女性より340万人超多い現実』)で紹介しました。20~50代でも約300万人の男余りです。これだけ「男余り」ならば、結婚したい女性はよりどりみどり、婚活には苦労しないようなもの、と思うのですが、どうやら現実はそうでもないようです。
婚活の現場では、「そもそも男性の絶対数が少ない」「男性参加者が少なくて、婚活パーティーが単なる女子会になってしまう」などという声も聞かれます。未婚男性の絶対数が多いのに、婚活の現場ではどうしてこうした逆転現象が起きるのでしょうか?
結婚したい男女は9割の誤解
その1つの理由は、未婚男性だからといって全員が「結婚したい男」ではないからです。よくテレビや新聞などで「出生動向基本調査によると、結婚したい男女は9割もいる」という言説が流れますが、あれは正しくありません。
以前、こちらの記事(『「独身の9割が結婚したい」説の根本的な誤解』)で詳しくお伝えしましたが、この結果というのは、「いずれ結婚するつもり」か「一生結婚しないつもり」かの二者択一の質問に対する回答なのです。どちらか1つを選べと言われれば、よほど結婚したくないと思っていない限り「いずれ結婚するつもり」を選ぶでしょう。
出生動向基本調査では、それに続いて、「1年以内に結婚したい」「理想の相手ならしてもよい」という結婚前向き派か、「まだ結婚するつもりはない」「一生結婚するつもりはない」という結婚後ろ向き派か、という質問もしています。
それによれば、結婚に前向きな18~34歳までの未婚男性はたったの4割程度しかいません。一方、同じ年齢の女性でも5割です。二者択一の無理やりな選択で「結婚するつもり9割」だとしても、実際、結婚意欲があるといえるのはその半分程度であり、この傾向は30年前から変わっていません。
そして、重要なことは、男女の間には1割の乖離があるということです。2015年の出生動向基本調査から年齢別にその詳細を見てみましょう。
結婚意欲は女性のほうが高い
20~39歳までの年齢では、すべて女性のほうの結婚意欲が高いことがわかります。男女差分でいえば、25~29歳が16%も女性の結婚意欲が高くなっています。つまり、未婚者の絶対数では「300万人の男余り(20~50代の場合)」ですが、結婚意欲に関しては女性のほうが上回っているのです。単に未婚男性の人口が多くても、結婚意欲がない相手では結婚の対象にはなりえません。
この結婚意欲の違いを、結婚適齢期といわれる20~34歳までの未婚男女の人口差にあてはめてみましょう。単純な未婚男女の人口差では、99万人もの男余りです。しかし、結婚意欲の違いを乗じると、結婚したい人口は男299万人に対して、女308万人と、男女逆転して約9万人の女余りとなってしまいます。
20代だけに限ると、未婚人口差では55万人の男余りなのに対して、結婚したい人口で考えると25万人も女余りになるということです。これが、男余りといいながら、実際の婚活において女性が苦労する要因なのです。
※結婚したい人口は未婚人口に結婚前向き率(少数点以下の値も含む)を乗じて算出した。
仮に、20~34歳の結婚したい男性との比較で9万人の女余りだとしても、「その程度なら、まだまだ希望はある」と思われるかもしれません。しかし、結婚したい女性にとっては、さらに残念な事実があります。
2018年内閣府の実施した「少子化社会対策に関する意識調査」[結婚を希望している者で結婚していない20~49歳の女性を対象、n(調査数)=1343]によれば、女性が希望する相手の理想の年収は、400万~500万円が26.2%と最も多く、全体の72%が400万円以上を希望しています。
あくまで希望ですから、それをとやかく言うつもりはありませんが、20~34歳の未婚男性の年収分布は、400万円未満で81%を占めます(年収額不明を除く)。
400万円以上ある未婚男性は2割弱
つまり400万円以上の年収のある未婚男性はたったの19%しか存在しないのです。差引き、53%の婚活女性は余ることになります。前述した結婚したい未婚女性人口である308万人にこの53%を乗じると、163万人もの婚活女性は希望どおりにならないという結論になります。
経済的にも自立し、結婚する必要性を感じなくなり、あえて自発的に選択して未婚の道を突き進むソロ女ならまだしも、結婚したいのに希望する結婚相手がいない女性が163万人もいるというのは、残酷な現実かもしれません。
とはいえ、今回の記事での試算は、あくまで男女とも20~34歳の同年代でのマッチングという前提でした。つい先日、落語家の春風亭昇太師匠が、59歳のアラカン初婚にして、19歳年下の元タカラジェンヌと結婚したというニュースが話題になりました。婚活女性は、年齢が同じくらいの相手だけではなく、年上男性に対象の範囲を広げてみてはどうでしょうか?
対象を50代まで拡大したうえで、「結婚したい人口」と年収400万円以上の条件を加味して再計算した結果が以下の表です。女余りは解消できたでしょうか?
残念ながら、結論から言うとできませんでした。女余り数は20~34歳と比べて、むしろ増加して約192万人に膨れ上がってしまいます。年齢層を50代まで拡大したことで、対象相手の男性人口も増えますが、同時に、当然女性側のライバルも増えます。
何よりつらいのは、希望年収条件です。50代まで拡大したとしても、全国で400万円以上の年収のある未婚男性はたったの27%にすぎません。それだけでも44%の女性があぶれます。400万円以上の相手を希望すること自体、無理なのです。
希望年収を300万円台にすると
ちなみに、年収条件をもう100万円落として、300万円台にすると、対象者は50%まで広がります。事実、就業構造基本調査によれば、アラサーで結婚している男性の4人に1人は年収300万円台です。そこがメインボリューム層なのです。希望年収については、300万円台あたりに落として妥協しないと、どうにもならないのが現実です。
さらに、追い打ちをかけるようですが、たとえ300万円台に条件を下げたとしても158万人の女余りであることに変わりません。もう八方ふさがりです。結婚したい男女が集う婚活の現場で、希望にかなう相手を見つけようと思っても、基本的には女性が余るという構造は変えられません。
ただし、この計算の中には、結婚意欲のない残り半分の未婚男性が除外されています。年収条件を度外視すれば、20~34歳で結婚意欲のない未婚男性は、364万人もいます。この中には、今現在は学生であったり、働いていても収入が少なかったりする男性も含まれます。が、今はそうでも、将来性のある人もいるでしょう。
これまで説明してきたように、結婚したいという男性の中から希望の相手を見つけるのは、極めて厳しい戦いが予想されます。あえて、そこでは勝負せず、ブルーオーシャン戦略を取るほうが賢明かもしれません。
思えば、皆婚が実現できていたのは、お節介なお見合いおばさんや強引な職場の上司など、誰かの後押しがあったからこそ実現できたものです。そうした時代に戻ることはありませんが、この連載で何度も説明しているとおり、しょせん7割の男は恋愛や結婚に関しては受け身です。待っていたらどうにもなりません。
どうしても結婚したいと強く願う未婚女性は、「今は結婚なんて別にしたいと思わないなあ」という結婚意欲の薄い未婚男性にターゲットを絞って、彼らをどうやったら動かせるかの「お膳立て」を考えるほうが得策なのかもしれません。
荒川 和久 : 独身研究家、コラムニスト