りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“チュー吉くんの君は友だち・・・” ―全7場― 2

2012年01月06日 21時11分54秒 | 新作(人形劇用)


    ――――― 第 3 場 ―――――

         紗幕開く。と、小高い丘の草むら。
         (辺りは夕暮れ時の様子。)
         チュー介、佇み静かに歌う。

         “僕は何をしているんだろう・・・
         こんなところで一人ぼっちに・・・
         仲間もいない
         味方もいない
         大草原に一人放り出された
         ちっぽけな僕・・・
         誰も僕のことなど知らない・・・”

  チュー介「父さん・・・」

         チュー介、立ち尽くす。
         その時、上手よりチュー吉、重そうに食料の
         入った、買い物カゴを手に登場。

  チュー吉「もう母さんは一体どれだけお使いを頼むんだよ・・・。
        重いったらありゃしない・・・。よっ・・・。あれ・・・(チュー
        介に気付く。)チュー介じゃないか。」

         チュー介、チュー吉に気付くが、知らん顔して
         下手へ行きかける。

  チュー吉「おい!知らん顔して行くなよ!何してたんだよ、こん
        なとこで。ひょっとして夕焼けを見てた?ここから見る
        夕焼けって、綺麗だよなぁ・・・。僕も、この場所が大好
        きなんだ!」
  チュー介「・・・煩いんだよ・・・」
  チュー吉「え?」
  チュー介「煩いってんだよ!!僕は一人になりたいんだ!!」
  チュー吉「何だよ!そんな言い方しなくてもいいだろ!折角、友
        達になろうと思って・・・」
  チュー介「友達なんていらないんだよ!!」
  チュー吉「ああ、そうかい!!ふん!!何だよ!!そんな風に
        突っ張った態度取ってると、その内学校で誰からも相
        手にされなくなるぞ!!ふん!!ホントに・・・全く!!
        」

         チュー吉、下手方へ行きかけるが、何か
         気になったように振り返る。

  チュー吉「・・・おい・・・何でおまえ・・・そんな風に突っ張ってるん
        だよ・・・」
  チュー介「・・・突っ張ってなんか・・・いるもんか・・・」

         音楽流れ、チュー介歌う。

         “僕は突っ張ってる訳じゃない・・・
         意気がってる訳でもない・・・
         僕は僕なんだ
         だから構うな
         放っておいてくれ・・・”

         チュー吉歌う。

         “同じ仲間じゃないか
         そんな風に壁を作って
         他を寄せ付けない
         そんな態度
         放っとけない・・・”

         チュー介歌う。

         “勝手じゃないかそんなこと
         僕がどうでも
         関係ない・・・”

  チュー吉「折角同じ学校に転校して来たんじゃないか。友達に
        なろうよ!」
  チュー介「友達・・・?ふざけるな!!」
  チュー吉「ふざけてなんかないさ!だって折角知り合えたんじゃ
        ないか。友達にならないと、勿体ないよ!」
  チュー介「・・・勿体ない・・・?馬鹿じゃないか。」
  チュー吉「馬鹿・・・?友達に向かって“馬鹿”って言ったら駄目
        なんだぞ!!先生に教わらなかったのかい!?」
  チュー介「・・・先生なんて知るもんか。」
  チュー吉「知らない・・・って、学校の先生だよ!前の学校でも
        いただろう?」
  チュー介「・・・学校なんて行ったことない・・・」
  チュー吉「・・・え?ホントに・・・?友達は・・・?」
  チュー介「そんなのいるもんか!!」
  チュー吉「じゃあ絶対、友達になろうよ!!」
  チュー介「嫌だ!!」
  チュー吉「そんなこと言わないでさ!折角、学校に来ることにな
        ったんだから・・・。でも・・・如何して行き成り学校に・・・
        ?」
  チュー介「・・・ばあちゃんが行けって言うから・・・」
  チュー吉「ばあちゃん・・・?」
  チュー介「・・・ばあちゃんが、僕ん家に来ることになって・・・」
  チュー吉「ふうん・・・そうなんだ。君ん家は何処?」
  チュー介「・・・学校の隣の赤い屋根・・・」
  チュー吉「ジ―クん家!?」
  チュー介「・・・ジ―ク・・・?」
  チュー吉「うん!!僕ん家は、ジ―クん家の屋根裏なんだ!!
        君は?」
  チュー介「地下・・・」
  チュー吉「同じ建物だなんて、近所じゃないか!!今まで全然
        知らなかったなぁ。じゃあジ―クのこと、知ってる?」
  チュー介「ジ―クって・・・」
  チュー吉「とっても優しくって、毎日僕にビスケットを分けてくれ
        るんだよ。」
  チュー介「・・・ビスケット・・・?それ・・・何だよ・・・。」
  チュー吉「ビスケットを知らないの!?」
  チュー介「知らない・・・。」
  チュー吉「ほら・・・これだよ・・・。(ポケットからひとかけのビスケ
        ットを取り出し、チュー介へ差し出す。)」
  チュー介「(ビスケットを受け取る。)」
  チュー吉「食べてごらんよ!!とっても美味しいから!!」
  チュー介「う・・・うん・・・(口へ放り込む。)」
  チュー吉「ね!?美味しいだろ?」
  チュー介「本当だ・・・。こんな美味しい食べ物があるなんて・・・」
  チュー吉「だって、ジ―クは人間・・・」
  チュー介「人間!?これ、人間の食べ物なの!?」
  チュー吉「あ・・・うん。」
  チュー介「こんなのいるもんか!!(手に残っていたビスケットを
        放り投げ、口に残っていたビスケットを吐き出すように
        。)」
  チュー吉「ど・・・どうしたんだよ・・・。」
  チュー介「僕、人間なんて大っ嫌いだ!!」
  チュー吉「大っ嫌いって・・・ジ―クはすごくいい人間なんだよ。」
  チュー介「人間に“いい奴”なんているもんか!!」
  チュー吉「そんなことないよ!!」

         音楽流れ、チュー介歌う。

         “自分勝手に
         好き放題生きる
         恐ろしい生き物
         それが人間”   ※        
        
         チュー吉歌う。

         “そんなことない人間だって
         思い遣りに溢れて
         僕達に優しく接する
         食べ物を分けて
         いつも気にかけてくれる
         恐ろしい訳ない”

         チュー介歌う。

         “人間なんて 人間なんて
         ただ恐ろしいだけ
         人間なんて 人間なんて
         みんながいなくなればいい!!”

  チュー介「そしたら僕の父ちゃんも死なずに済んだんだ!!」
  チュー吉「え・・・?」
  チュー介「父ちゃんが人間に捕まって・・・弟や妹の面倒を見る
        人がいなくなったから・・・だから・・・ばあちゃんが家へ
        来た・・・!!」
  チュー吉「お父さん・・・人間に捕まったの・・・?」
  チュー介「・・・そうさ・・・」
  チュー吉「ジ―クの家で・・・?」
  チュー介「(頷く。)」
  チュー吉「(少し考えるように。)・・・捜しに行こう!!」
  チュー介「え・・・?」
  チュー吉「ジ―クん家に捜しに行こうよ!!僕も一緒に行くから
        さ!!」
  チュー介「そんな・・・もう屹度、父ちゃんは・・・」
  チュー吉「まだ生きてる!!ジ―クは僕達を殺したりしないよ!
        !」
  チュー介「・・・そんなこと・・・分かるもんか・・・」
  チュー吉「分かるよ!!ジ―クはそんなことしない!!」
  チュー介「父ちゃんを捕まえたのが・・・そのジ―クじゃないかも
        知れないじゃないか・・・。」
  チュー吉「でも行ってみようよ!!ちゃんと確かめもしないで、
        疑うのはよくないだろ?」
  チュー介「それは・・・」

         音楽流れ、チュー吉歌う。

         “行ってみよう
         大切な者を捜しに
         ほんの少しでも
         望みがあるなら
         それを見逃す手はないさ
         だから行こう
         危険があっても2人なら
         屹度抜け出せる
         どんなピンチも
         ただの想像で
         色々良くない思いに溢れて
         下を向く
         そんなの何の意味もないだろう
         顔を上げるんだ!”

  チュー介「チュー吉・・・」

         チュー介が自分の名前を呼んだことに
         少し驚いた面持ちで、でも嬉しそうに
         チュー吉頷く。

         “行けば分かるさ
         何が真実か
         今まで見えていなかった
         気付かなかった大切なことも
         屹度何もかもが見えてくる
         だから行かないと
         今この時を逃す手はないから!”

         チュー介歌う。

         “そうだね行こう
         君の言う通り
         もしかすると僕の思い違い・・・
         一人勝手に下を向いて
         前を見ないで勿体ない・・・
         君がいるんだ
         怖くはないさ
         臆病を隠して突っ張ったって
         屹度何も解決しない”

         2人歌う。

         “そうさだから行こう!!
         2人手をつないで
         まだ知らない未知の世界だけれど
         屹度光は見えてくる筈!!”

  チュー吉「行こう!!」
  チュー介「うん!!」

         2人、下手へ走り去る。   ※2
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         紗幕前。
         音楽流れ、大人ネズミが入ったカゴ、
         上がる。
         大人ネズミ、悲し気に歌う。

         “こんな檻に閉じ込められた
         惨めな俺・・・
         自分の行きたいとこにも行けず
         愛しい家族にも会えないなんて・・・
         こんな生き地獄
         いつまで続くんだろう
         それならいっそ・・・”

  大人ネズミ「(カゴの中にあったビスケットを、一口かじる。)食べ
         るものには困らないが・・・こんなカゴの中で、死ぬま
         で暮らすのか・・・」

         その時、2人の人間の足音が近付く。
         (“トントントン・・・”)

  カークの声「ほら・・・ほら見てよ、兄ちゃん!!」
  ジ―クの声「わあーっ!!可愛いネズミじゃないか!!」
  カークの声「でしょ!?兄ちゃんが言ってた通り、ビスケットを食
         べるんだ、このネズミ!」
  ジ―クの声「へぇ・・・。こいつなのかなぁ・・・僕がいつも置いてた
          ビスケットの欠片を食べてたの・・・。おい・・・おまえ
          が、僕の友達かい・・・?」












   ――――― “チュー吉くんの君は友だち・・・”
                          3へつづく ―――――
 












   ※ “人間”と言うものを、人間でないものから見た時に、
     どういったように見えるのか・・・私は人間なので・・・^^;
     本当のところはこの表現が正解かどうか分かりません。
     が、春公演作品でも、同じような表現の歌詞がある・・・
     と言うことは、私自身が、こんな風に見えているんであろう
     ・・・と自分の中に、固定観念があるんでしょうね(^_^;)

   ※2、お気付きの通り“人”ではなく“匹”が正解です^^;
     が、今回“も”敢えて人間と同じ数え方“人”で書かせて
     頂きますm(__)m


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      (おまけフォト^^;)

      

    東京にいる弟が、帰って来た時に、必ず泊まるホテルの
    決まった部屋があります(^.^)
    これは今日、その弟の部屋へ、夕食までの時間潰しに
    立ち寄った時に、“ボ~ッ”と見ていた風景です^^;
    毎回同じ風景なのですが、(同じ部屋なので当たり前で
    すよね^^;)時間帯によって、見え方の違う風景、夜景
    が、とっても綺麗だな・・・と♥飛行機の発着が、遠くに
    見えて、飛行機好きの私には“堪らない”風景です(^^)






















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“アンソニー” ―全16場―

2012年01月06日 20時43分36秒 | 未発表脚本


  
       


     今回の作品は、趣味的に書いたもの・・・と言うことで、
    実は、自分好みの配役が付いています^^;
    それ+登場人物の人数が、とっても多いのです(-_-;)
    なので・・・今回は、〈登場人物〉の写真の掲載は致しま
    せん(^_^;)あしからず、ご了承下さい<(_ _)>


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   〈主な登場人物〉


   アンソニー  ・・・  吸血鬼ドラキュラ伯爵。本編の主人公。

   リーザ  ・・・  シャンドール家の前妻の娘。

   エドワード  ・・・  お供として、アンソニーに付いている。
    
   ルイ  ・・・  アンソニー、エドワードと一緒に旅している。

   ミシェル  ・・・  シャンドール家の後妻と主人の息子。

   ジェラール  ・・・  吸血鬼達を、執拗に追う男。老医者。

   ミハエル  ・・・  ジェラールの助手。

   エリザベート  ・・・  後妻の娘。長女。

   

   その他



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    ――――― 第 1 場 ―――――

         音楽で幕が上がる。と、木々が茂り、小鳥達の
         囀り、木漏れ日溢れる、見るからに爽やかな
         奥深い森の風景。
         若い男女が左右より登場、楽し気に手を取り合
         いながら、歌い踊る。
         男女が左右へ去ると、中央より長髪のアンソニー
         ゆっくり登場。森の中を楽しむように踊る。
         その面影は、黒い髪に透き通るような白い肌を
         持ち、何故か赤い唇だけが一際目を引く。
         その容姿は俗世の者と思われないよう。
         と、その時、数発の銃声が辺りに響き渡り、一瞬
         顔を強張らせたアンソニー、誰のものとも分から
         ない“当たったぞー!!”の叫び声を残して、森
         の奥へと消える。
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 2 場 ―――――

         紗幕前。
         上手より、慌てた感じのミハエル、ルドルフ走り
         登場。続いてジェラール、銃を片手に幾分落ち
         着いて登場。

  ミハエル「一体何処へ行ったんだ!?」
  ルドルフ「確かに、弾が当りましたよね!!」
  ミハエル「当たり前だ!!あれだけ血痕が残ってるんだ、可なり
        の傷を負ってるに違いない!!」
  ジェラール「あいつらを、普通の人間と同じように考えるんじゃな
         いぞ。」
  ミハエル「先生・・・」
  ジェラール「多分、あのくらいの傷、明日になれば跡形もなく、治
         っている筈だ。」
  ルドルフ「(笑う。)そんな・・・」
  ミハエル「じゃあ一体・・・?」
  ジェラール「本当にあいつらを殺そうとするなら、銀の杭を、その
         胸に深く・・・深く突き刺すしかない。」
  ミハエル「・・・銀の杭を・・・?」
  ジェラール「そして、その杭を突き刺すのは・・・この私だ!!」
  ルドルフ「でも・・・何で先生はそんなに・・・」
  ジェラール「あいつとは、100年来の因縁の間柄だ・・・。」
  ルドルフ「100年って・・・俺がまだ生まれるずっと前から・・・(
        ハッとして。)あれ・・・?先生だって生まれていない・・・
        」
  ミハエル「そんなに昔から?けど先生、さっき言ってた、普通の
        人間と思うだなんて一体・・・」
  
         その時、数羽の鳥の飛び立つ音が
         響き渡る。

  ルドルフ「(思わず身を屈めて。)わぁっ!!コウモリだ!!」
  ジェラール「(顔を強張らせて、空を見上げる。)また捜し直しだ
         ・・・。今日は・・・満月だな・・・。さぁ、行くぞ!!」

         ジェラール、下手へ去る。ミハエル、ルドルフ、
         ジェラールに続く。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         楽し気な音楽が流れる中、紗幕開く。
         舞台は屋敷の中。手に其々洋服を持った
         シャンドール家の娘達。長女エリザベート、
         次女で双子のステラ、クレナ姉妹、陽気に
         歌い踊る。

         “見て見て何て素敵な色かしら
         見て見て何て可愛い仕上がりかしら
         屹度みんなが目を奪われるわ
         屹度みんなが私に注目する
         誰よりも一番綺麗で
         誰よりも一番素晴らしい
         見て頂戴
         今度のお茶会では私が主役”

         ソファーに腰を下ろして、3人の歌を聞いて
         いた、3人の兄クリス、立ち上がる。

  クリス「(首を傾げて。)そんなに一番がいいのかね。」
  エリザベート「お兄様には分からなくってよ!!」
  クリス「しかし、こんな小さな村の中じゃ、一番だろうが二番だろ
      うが、たいして変わりはないと思うがね。(笑う。)」
  クレナ「(溜め息を吐いて。)これだから男って・・・」
  エリザベート「(ドレスを胸に抱いて。)何時もみんなの目を惹く
          私は、その内国中の知れるところとなって、ある日
          その噂を聞いた素敵な王子様が、私を尋ねて来て
          くれるのよ!」
  クリス「(笑う。)本気にそんなことを考えているのかい?」
  エリザベート意地悪ね!」

         その時、2階より末弟ミシェル、本を片手に
         ゆっくり下りて来る。

  ステラ「(ミシェルに気付いて。)あらミシェル、また読書してたの
      ?」
  ミシェル「うん・・・」
  クレナ「偶には私達と一緒に、お茶でもどう?」
  エリザベート「お兄様は偶には読書でもなさったら?」
  クリス「煩いな!(ミシェルに近寄って。)おまえ、この頃はあの
      部屋へ行ってないだろうな?」
  ステラ「・・・あの部屋って・・・?」
  エリザベート「・・・まさか・・・黒い扉の・・・!?ミシェル、あなた
          ・・・」
  ミシェル「行ってないよ・・・」
  クリス「ならいいんだ。ちょっと聞いてみただけさ。」

         ミシェル、上手へ去る。4人、暫くその方を
         見ている。

  クレナ「何だって、あの子・・・」
  クリス「よく知らないが、以前、偶々あの部屋から出て来たミシェ
      ルを見かけてね・・・。どうもみんなに隠れて、ちょくちょく
      顔を出してたようなんだ。」
  エリザベート「それで!?」
  クリス「勿論、それからは決して近寄るなと、念押しはしておい
      たんだが・・・」
  ステラ「ならいいじゃない。本人も行ってないって言ってたんだし
      ・・・」
  エリザベート「あなたって呑気でいいわね。お母様に知れたら事
          よ!」
  ステラ「私は来週のお茶会のことで、頭が一杯なの!」

         その時、ドアの呼び鈴の音。
         執事のヨハン、奥より登場し扉の方へ。
         何時の間にか奥よりメイド、クララ登場、
         娘達のドレスを仕舞ったり、用事をしている。

  ヨハン「はい、どなたで?(扉を開ける。一時置いて。)あの・・・、
      しかし・・・」
  
  ルイの声「頼む!!怪我人がいるんだ!!一晩だけ・・・一晩
        だけ休ませてくれれば、明日には出て行く!!」

  ヨハン「・・・事情は分かりますが・・・何分、ご主人様はご旅行中
      でして・・・」
  
  ルイの声「頼む!!」

         エリザベート、ヨハンの様子に気付いて
         近寄る。
 
  エリザベート「ヨハン、どなた?」
  ヨハン「あ・・・お嬢様、それが・・・」
  エリザベート「(扉の外を覗いて。)どちら様ですか?」
  
  ルイの声「あ・・・突然すまない。旅行中に友人が怪我をして・・・
        一晩だけでいいんだ、宿を!!」

  エリザベート「そう言うことならどうぞ。お友達の方も。」

  ルイの声「ありがとう!!」

  ヨハン「お嬢様!!」
  エリザベート「一晩くらい、いいじゃない。」

         ルイ登場。続いてエドワードに抱かえられ、
         ぐったりとしたアンソニー登場。

  アンソニー「・・・すまない・・・」

         エリザベート、クレナ、ステラ、思わずぼうっと
         アンソニーに見惚れる。

  ルイ「あの・・・何処へ・・」
  エリザベート「(ハッとして。)あ・・・お2階へどうぞ!!お友達の
          方、大分お悪いようですし、一晩だけと言わず、傷
          が治るまで養生していらして下さいな。」
  ヨハン「お嬢様!!」
  エリザベート「お父様がお帰りになったら、私からお話しするわ!
          !」
  エドワード「いや・・・今晩だけで・・・」
  エリザベート「いいえ。お見かけしたところ、一晩やそこらで良く
          なるような傷とは思われませんし、そんな怪我人を
          放り出すような真似はできませんわ。」

         エドワードとルイ、そっと顔を見合わせる。

  エドワード「・・・それじゃあ・・・」
  エリザベート「(思わず嬉しそうに。)よかった!!ロベール!!」

         奥より使用人ロベール登場。

  ロベール「(エリザベートに近寄って。)はい!」
  エリザベート「大切なお客様よ!2階の一番上等の客間に、ご
          案内してさしあげて!!」
  ロベール「分かりました。(エドワード達の方へ向いて。)こちらへ
        どうぞ。」

         エドワード、ルイ、アンソニー、ロベールに
         付いて2階の方へ。

  エリザベート「(思い出したように。)あ・・・!!先生をお呼びしま
          しょうか?」
  エドワード「いや!!・・・結構だ・・・」
  エリザベート「(頷く。)それと!!2階の一番奥の・・・突き当たり
          に見える黒い扉の部屋だけは、決して開けないで
          下さい。(微笑んで。)後は、何処の部屋へ入られて
          も構いませんわ。」

         3人、ロベールに付いて、2階へ上がる。

  ステラ「(4人が出て行くのを見計らって、エリザベートに駆け寄
      る。)お姉様!!あの黒髪の怪我人、素敵なお方ね!!
      (溜め息を吐く。)」
  クレナ「本当ね!!この世の者とは思われない・・・。見た!?
      あの透き通るような肌!!」
  エリザベート「いいこと!?抜け駆けはなしよ!!」
  クリス「(肩を窄めて。)やれやれ・・・」

         暗転。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         音楽でフェード・インする。と、アンソニー達が
         通された客間。
         アンソニー、ベットの上に横になっている。
         エドワード、窓を開けると、もう暗くなっている
         空には、満月が昇っているのが、窓の向こう
         に見える。

  エドワード「全く、今日のアンソニーは、彼には珍しく不用心だっ
         たな・・・。」
  ルイ「あんなに沢山、無駄な血を流してしまって勿体ない。(笑う
     。)」
  エドワード「笑いごとじゃないだろ?」
  ルイ「それにしても、本当にしつこい奴らだな。何でジェラール
     は、あんなにも俺達のことを?」
  エドワード「・・・さぁ・・・」
  ルイ「俺が君達の仲間に入った時には、もう何時も後ろにはあ
     いつがいた・・・」
  アンソニー「どうでもいいんじゃないか、そんなことは・・・」
  エドワード「アンソニー!!」

         アンソニー、ベットの上へ起き上がる。

  ルイ「アンソニー!!」

         エドワード、ルイ、アンソニーの側へ近寄る。

  アンソニー「奴らが何処の誰で、何故俺達を執拗に追い回すの
         か・・・別にどうでもいいことさ・・・。」
  エドワード「・・・アンソニー・・・」
  ルイ「そうだな。(笑う。)」
  エドワード「ところで、もう体はいいのか?」
  アンソニー「ああ。(ベットから立ち上がって、両腕を高く上げ、
         元気だと言う風に見せる。)この通り!!もう今直ぐ
         にでも立てるぞ。」
  エドワード「(笑う。)そうか。だが、そう言う訳にもいかなくてな。」
  アンソニー「ああ・・・俺の傷が治るまで、客人としてこの屋敷に
         留まることにしたんだっけ・・・?」
  ルイ「その通り!よく分かったな。」
  アンソニー「朦朧としながらも、気は張ってたからね・・・。傷の酷
         さも知られてしまったことだし、2週間くらいは大人し
         くしてなけりゃいけないかもな?」
  エドワード「そうだな・・・。大分逃げて来たから、そのくらいなら
         平気だろう。だが、くれぐれも気を付けてくれよ。さっ
         きまで死にそうな顔をしてた奴が、もうピンピンしてる
         と分かったら、それこそ大騒ぎだ。」
  アンソニー「(笑う。)OK。だが、俺にはちょっとばかり辛い忠告
         だな。」
       
  











       ――――― “アンソニー”2へつづく ―――――












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    (どら余談^^;)

    そんなに直ぐに治るんなら、ちょっと木陰でも休んでいれば
    いいのに・・・などと、色々と思うところがおありでしょうが・・・
    “物語”の不思議・・・と言うことで、あまり深く考えずにお楽し
    み頂ければいいかな・・・と思います(^_^;)

    「入るべからず・・・」と言ったお話しも、昔から色んなお話し
    に登場する、ありがちなキーワードとしてお読み下さい^^;








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