〈 主な登場人物 〉
ドン ・・・ 泥棒。
マックス ・・・ 少年。
デン ・・・ ドンの弟分。
サンタ ・・・ サンタクロース。占い師をしている。
トナ ・・・ トナカイ。
シスター ・・・ 孤児院の先生。
ラリー ・・・ 孤児院に住む。
その他。
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
クリスマスソングが流れ、幕が上がる。
(街の中。)
――――― 第 1 場 ―――――
雪がチラチラ舞う中、楽しそうな人々が
行き交う。
そこへ一人のサンタクロースの格好を
した男(ドン。)、上手より大きな袋を
抱え、重そうに持ち登場。歌う。
“メリーメリークリスマス
街中浮かれたハッピークリスマス
誰もが心踊る
明るく楽しいクリスマス
街中煌くイルミネーション
色とりどりの眩い灯りに
目も開けられない”
ドン「(袋を下へ下ろし、中を覗き込む。)へっへっへ・・・この時
期は、どこの家も全く無用心ときたもんだ。皆、浮かれて、
外から来る者は誰しもサンタクロースだと思い込んでいや
がる。お陰で俺たちみたいな盗みを生業としてるような者
にとっちゃ、とんと都合がいいってことさ。」
“ハッピーハッピークリスマス
一年で一番浮かれた時
誰も人のことなんて
構やしないぜメリークリスマス!”
そこへ上手後方より、一人の少年
(マックス。)登場。
ドン、袋の中から宝石を取り出し、
嬉しそうに眺めている。
マックス「(ドンを認める。)サンタさん!!サンタさんだ!!(ド
ンに駆け寄る。)サンタさん!!あなたサンタさんでしょ
!?やっと見つけた!!」
ドン「お・・・(慌てて宝石を袋に入れる。)え・・・?(マックスを認
め。)なんだ、餓鬼か・・・」
マックス「ねぇ、サンタさん!!今、皆の家を回って、プレゼント
を配ってるんでしょ!?僕ンところには、いつになったら
来てくれるの!?僕ずっと待って・・・」
ドン「(面倒臭そうに。)うるせぇなぁ・・・」
マックス「僕、サンタさんが中々来てくれないから、体から抜け
出して、こんなとこまで捜しに来っちゃったよ!!」
ドン「え・・・体?ばぁか!ベッドから抜け出した・・・だろ!それよ
り・・・(回りを見回し。)ホントだ・・・おまえこんな時間にベッド
から抜け出して、夜の街をウロウロするなんて、とんだ不良
子どもだな。」
マックス「ねぇ!僕、どうしてもサンタさんにお願いしたいことが
あるんだ!!早く、僕のところへ来てよ!!」
ドン「ああ・・・はいはい、分かった分かった・・・分かったから、さ
っさと自分の家へ帰って、ベッドへ入りな!いいか?サンタ
クロースってのは、クリスマスイブの夜にやって来るんだ!
それに子どもが、寝静まってからそっと来るんだからな。お
まえみたいに目、煌煌と光らせて、こんなとこウロウロして
る餓鬼のとこには来てくんねぇぞ。」
マックス「そんなこと言わないで、早く僕のところへ来てよ!僕
時間が・・・」
ドン「時間・・・?時間って何だよ。可笑しな餓鬼だな・・・。クリス
マスはまだ明後日だぞ。」
マックス「僕、大切なお願いがあるんだ・・・!!」
ドン「お願いお願いって・・・そんなものは父ちゃん、母ちゃんに
言えよ・・・。」
マックス「だっておじさん、サンタさんなんでしょ?サンタさんは
1年間いい子にしてた子どもに、何か一つプレゼントを
くれるんでしょ?」
ドン「(溜め息を吐いて。)それはだなぁ・・・大人が勝手に・・・」
マックス「だから、僕、早くサンタさんが来てくれないかなぁ・・・
って、ずっと待って・・・」
ドン「はいはい・・・じゃあその願いとやらを、さっさと言って、と
っとと帰れよ・・・」
マックス「本当!?」
ドン「ああ・・・」
マックス「本当に?」
ドン「ああ、だから早く言えよ・・・」
マックス「僕・・・僕ね・・・!!(何かに気付いたように、上手方を
見て。)あ・・・誰か来る・・・」
ドン「え・・・?(回りを見回す。)
ドン、スポットに残し、マックス消える。
ドン「おい・・・!?(回りを捜すように。)あれ・・・?」
その時上手より、サンタクロースの格好を
したデン、走りながら息を切らせ登場。
デン「兄貴ー!!兄貴ー!!いたいた・・・一体どこ行ったかと
思ったじゃない・・・」
ドン「あ・・・?ああ、デンか・・・」
デン「どうしたんだよ、そんな気の抜けた顔してさ・・・」
ドン「え・・・あ・・・いや・・・別に・・・。それより、今そっちの方へ、
少年が走って行かなかったか・・・?」
デン「少年・・・?」
ドン「ああ・・・」
デン「さぁ・・・オイラ、一本径を走って来たんだけど、人っこ一人
・・・犬コロにだって出会わなかったぜ。」
ドン「・・・そっ・・・か・・・」
デン「何?その少年がどうかしたのかい?」
ドン「・・・いや・・・」
デン「それより兄貴!今の時期は稼ぎ時なんだから、こんなとこ
で呆けてないで、早いとこ次の家に・・・プレゼントを届けに
行こうよ!」
音楽流れ、デン歌う。
“ハッピーハッピークリスマス!
街中浮かれたメリークリスマス!”
ドン「・・・そうだな!!」
ドン、歌う。
“夜はこれから
サンタの出番はまだまだだ”
2人、歌う。
“皆が寝静まり
辺りはひっそり闇の中
待ってましたとサンタが飛び出す
待ちわびる子ども達に届け物
袋一杯のプレゼント
だけど・・・
闇の中でこっそりと・・・
動き回るは働き者のサンタさん
ホントの仕事は・・・
大泥棒!”
ドン、デン、笑い合う。
暗転。(カーテン閉まる。)
――――― 第 2 場 ―――――
カーテン前。
音楽流れ下手より、何かを探しているように
マックス登場。歌う。
“どこにあるの・・・
僕の探し物・・・
一体いつになれば
見つかるの・・・”
そこへ上手より、仲良さそうな親子(父、母
子ども“マリィ”。)登場。話しながら下手方へ。
(マックス、淋しそうな面持ちで、その様子を
見詰めている。)
マリィ「ねぇ、パパ、ママ!今年はサンタさん、どんなプレゼント
を持って来てくれるかしら!」
母「そうねぇ・・・マリィはいい子にしてたから、きっとどんなプレ
ゼントでも持って来てくれるんじゃないかしら・・・。」
父「そうだな・・・。マリィは何が一番欲しいんだったかな?きっと
それがサンタさんのプレゼントだと思うな。」
マリィ「本当?クリスマスイブは早くベッドに入るわ、私!」
父「それはいいアイデアだ、マリィ。」
マリィ「フフフ・・・(笑う。)ママ!クリスマスには、こんな大きなケ
ーキを焼いてね!」
母「ええ、分かってるわ。それにとびきりのご馳走も、用意しまし
ょうね。」
マリィ「わあーっ!!パパ!ママ!早くお家へ帰りましょう!!
(下手方へ走り出す。)」
父「こら、そんなに走ると危ないぞ!」
母「マリィ!待って頂戴!」
3人、笑い合いながら下手へ去る。
マックス、歌う。
“僕には来ないのサンタさん・・・
どこにいるの待っているのに
こんなに待ちわびて
昼も夜もただひたすら待って・・・
早く来てお願いだサンタさん
僕にはどうしても・・・
見つけて欲しいものがあるんだから・・・”
マックス、上手前方(舞台縁。)へ、腰を
下ろす。
そこへ下手より、ドン、デン、重そうに袋
を抱え、登場。
ドン「楽勝、楽勝!(笑う。)」
デン「本当だね、兄貴!(笑う。)見てくれよ、この袋!!この宝
の山を売り捌けば、一体いくらになるんだろう・・・!」
ドン「ああ!」
ドン、デン、上手方へ行きかける。
ドン、舞台縁に座るマックスを認める。
ドン「ん・・・?あ・・・あいつはさっきの餓鬼・・・」
デン「・・・ガキ・・・?」
ドン「ああ!なんか矢鱈とサンタのプレゼントを欲しがる、やや
こしい餓鬼なんだ!見つかると厄介だぞ!気付かれない
うちに・・・(抜き足差し足で、マックスの後ろを通り、ゆっくり
上手方へ。)」
デン「(マックスの方を見て。)・・・ガキなんてどこに・・・可笑しな
こと言うんだな、兄貴。(笑う。)さぁ、お次はあそこに見える
豪邸だ!!(上手方を指差し、ドンのことは気にせず、上
手へ走り去る。)」
ドン「あ・・・おい!!デン!!待て・・・待てよ・・・」
マックス、振り返りドンを認める。
ドン「あ・・・しまった・・・」
マックス「サンタさん!!やっと会えた!!(嬉しそうに立ち上
がり、ドンに抱き付く。)」
ドン「は・・・離せよ!!離せってば、餓鬼!!畜生・・・!!なん
で俺なんだよ!!離せ・・・」
マックス「サンタさん!!僕、ずっと待ってるんだよ!!早く来て
よ!!」
ドン「あああ、もう煩い餓鬼だなぁ・・・。来て来てって、おまえン
家、一体どこなんだよ。そんな風に闇雲に言われたって、
サンタって言うのは順番通りに皆の家を平等に渡り歩いて
んだ!おまえン家も順番が来りゃあ、行ってやるさ!」
マックス「それじゃあ駄目なんだ!!僕には時間がないから・・・
」
ドン「それそれ、その時間ってのもだぜ?大体サンタのプレゼン
トってのは、クリスマスの朝に届くもんなんだ。こんなクリス
マスイブイブに、誰よりも真っ先にプレゼントを欲しがるな
んざ、それが“いい子”の取る行動か?サンタはいい子の
家にしか行かねぇんだぜ!(自分で自分の言ったことに感
心するように。)うん・・・我ながらいい説明だ・・・(笑う。)」
マックス「僕・・・僕ね、“心の種”が欲しいんだ!」
ドン「・・・え・・・?“心の種”・・・?なんだ、そりゃ。そんなの聞い
たことが・・・」
マックス「僕、うっかり“心の種”をなくしちゃって・・・それがない
と僕!!」
ドン「種なんか、そこら辺の花屋に行きゃあ、いくらでも売ってる
だろ?」
マックス「そんな種じゃないんだ!!僕の心の種でなきゃ、僕・・・
!!」
ドン「(溜め息を吐く。)はいはい・・・分かった分かった。おまえの
希望のプレゼントは、このサンタ・・・然と聞き受けた!!」
マックス「本当!?」
ドン「ああ、だからさっさと家へ帰って、ベッドへ入るんだ!!」
マックス「本当の本当だね、サンタさん!!」
ドン「ああ・・・」
マックス「僕、待ってるからね!!(消えるように、カーテン後ろ
へ去る。)」
ドン「(溜め息を吐く。)・・・はいはい・・・(マックスがいないことに
気付いて。)・・・あれ・・・?おい・・・少年・・・?(回りを捜す
ように。首を傾げて。)・・・心の・・・種・・・って・・・」
暗転。(カーテン開く。)
――――― 第 3 場 ―――――
占いの家。
中央テーブルに占い師(サンタ。)、大きな
虫眼鏡を覗き込み、前に座る夫婦をマジマジ
と見ている。
サンタ「ふむふむ・・・それであんた方は、何故こんな状況に陥っ
てしまったのか・・・それが知りたいと・・・?」
夫「はい・・・」
妻「私達はどうもここのところ、ついていなくて・・・」
夫「仕事は上手くいかず・・・母は病に倒れ、息子は学校にも行
かずブラブラと・・・一体、何が原因でこんな良くないことが続
くのか・・・一度、街で評判の、よく当たると噂される占い師さ
んに、見立てをして頂こうと・・・」
サンタ「ふむ・・・成程・・・分かりました・・・。それでは見て差し上
げましょう。その前に、先ず見立て代のご相談を・・・」
夫「見立て代・・・そ・・・それはもう・・・いくらだって、街で評判の
占い師さんだ・・・あなた様の言い値で構やしませんよ。」
サンタ「いや・・・うちの支払いは金ではない・・・」
――――― “ドンのハッピーサンタクロース”
2へつづく ―――――
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(どら余談^^;)
YouTubeで、“J”2幕の回想場面~を公開致しました♪
またよければご覧下さいm(_ _)m
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
夫「金でない・・・?とすると・・・一体・・・」
サンタ「先ずは握手を・・・(手を差し出す。)」
夫「はあ・・・(サンタの手を握る。)」
サンタ「これで正式に契約は結ばれた。」
夫婦、不思議そうにお互い顔を見合わせる。
サンタ「(机の上のファイルの中から、1枚紙を取り出し、夫婦の
方へ差し出す。)ほれ・・・」
夫「(紙を受け取り。)・・・これが・・・何か・・・」
サンタ「あんたはクリスマスの日の朝、一人の子どもにクリスマ
スプレゼントを届けるのじゃ。」
夫「プレゼント・・・?」
サンタ「プレゼントの希望と、届ける場所はその用紙に書いてあ
る。」
夫「(紙を見る。)はあ・・・」
サンタ「人が喜ぶ顔を見る・・・と言うのは、いいもんじゃよ。」
夫「それが・・・お代・・・?」
サンタ「ふむ・・・」
妻「あの・・・私たちの占いは・・・」
サンタ「おお、そうじゃった。(笑う。コソッと小声で。)いかん、い
かん・・・つい自分の仕事を減らすことで、頭が一杯になっ
ておったわ・・・(咳払いをして。)ゴホン・・・では、そなた
達に、これをやろう・・・(机の上の大きな瓶の中から、何
かを取り出し、2人の方へ差し出す。)」
夫「(サンタの差し出したものを、受け取り見る。)これは・・・」
サンタ「気分が晴れるキャンディじゃ。」
夫「キャンディ・・・?」
サンタ「そうじゃ。まあ、騙されたと思って、一口舐めてみるとい
い。気分が晴れて、今まで悩んでおったことが、何てちっ
ぽけで馬鹿馬鹿しいことじゃったか・・・分かると思うぞ。」
夫「は・・・はあ・・・(思わず手にしていたものを見る。)」
サンタ「ほれ・・・」
夫「(頷く。袋を開け、中の一つを妻に手渡す。)」
妻「(それを受け取り、夫と顔を見合わせる。。)」
夫婦、ゆっくりキャンディを口に放り込む。
サンタ「どうじゃ・・・?」
夫「・・・おや・・・?」
妻「・・・あら・・・?」
夫「何だか心がポカポカしてきたぞ・・・」
妻「本当・・・私も何だか心が温かく感じられるわ・・・」
夫「おまえ・・・」
妻「あなた・・・」
夫婦2人「俺(私)たち、今まで何てくだらないことにクヨクヨして
きたんだ!」
明るい音楽流れ、夫婦、立ち上がり歌う。
“晴れるぞ晴れる
気分が晴れる
忽ち明るく陽が差し始めた”
夫、歌う。
“何だこれは”
妻、歌う。
“何て不思議”
2人、歌う。
“今まで掛かった雲全て
風に流され飛んでった
やれ気分がいいぞ
何もかもが上手く行きそう!”
夫「どうも、ありがとうございました!(サンタの手を握る。)」
妻「これでもう大丈夫ですわ!(夫の手の上から、サンタの手を
握る。)」
夫「お代は必ずクリスマスの朝に!」
サンタ「ホッホッホ・・・頼んだぞ。」
夫「では!」
夫婦、微笑み合い、下手へ去る。
夫婦と入れ代わるように、上手より
トナカイ(トナ。)登場。
トナ「ねぇ、サンタさん!」
サンタ「しっ!!わしがサンタであることがバレたらどうするんじ
ゃ。」
トナ「(回りを見回して嬉しそうに。)もう誰もいないよ・・・。」
サンタ「・・・ああ・・・そうか。」
トナ「それよりサンタさん、また楽しようと思ってるでしょ!」
サンタ「ふん、何を人聞きの悪いことを言っておるんじゃ。わしは
人の為に何かをすると言うことが、どれだけ気持ちのいい
ことか教えてやっておるんじゃ。」
トナ「そんなこと言って、この時期、目が回る程忙しいサンタさん
の仕事の手伝いを、なんやかんや言って、皆に振り分けて
るだけじゃない。」
サンタ「煩い、煩い。おまえの方こそソリの点検は終わったのか
?クリスマスの夜に、ソリの不具合が見つかったとなれば
、大変じゃからな。(笑う。)」
トナ「失礼だな、サンタさん!大丈夫に決まってるだろ!僕の点
検は完璧だからね!」
サンタ「そうか・・・?」
トナ「ねぇ、サンタさん!さっきの人達にあげた、そのキャンディ
は一体何なの?(机の上を指差す。)」
サンタ「これか?これはなぁ・・・世にも不思議な・・・」
トナ「・・・世にも不思議な・・・?」
サンタ「ただのジンジャーキャンディじゃよ。」
トナ「ジンジャーキャンディ!?」
サンタ「ああ、そうじゃ。」
トナ「なあんだ、ただの“生姜飴”か。だからあの人達、心がポカ
ポカしてきただなんて・・・。けど、どうしてそんなもので・・・
?」
サンタ「なあに、人の感情と言うのは、何事も心の持ちようで、
いいにも悪いにも転がると言うことじゃよ・・・。ホッホッホ
・・・」
トナ「ふうん・・・人間って複雑なんだね。僕らトナカイには分から
ないや。」
サンタ「さぁて・・・そろそろプレゼントを配る、準備でも始めるか
の。夜も更けてきたことじゃし、もう今日はわしの手伝い
をしてもらえそうな客人も来んじゃろうて・・・」
トナ「そうだね!僕も手伝うよ。」
サンタ「ああ・・・」
サンタとトナ、灯りを消して上手へ去る。
一時置いて、下手より回りを見回しながら
ドン、懐中電灯を片手にゆっくり登場。
ドン「へっへっへ・・・お宝はどこにあるかな・・・っと・・・」
ドン、壁際のタンスの引き出しを開ける。
ドン「あった、あった・・・(引き出しから何かを取り出す。)ん・・・?
何だ、これ?暗くてよく見えないぜ・・・。まぁ、いっか、一先
ず何だって頂いていくとするか・・・」
ドン、袋の中へタンスから取り出したものを
次々放り込む。
その時、突然灯りがつき、上手よりトナ登場。
トナ「誰!?」
ドン「あ・・・しまった・・・!!(トナに背を向けたまま、ゆっくり立ち
上がる。)・・・ホッホッホ・・・わしはサンタクロースじゃ・・・」
トナ「サンタクロース・・・?」
ドン「いい子にしておる子ども達に、プレゼントを届けに来たんじ
ゃよ。(振り返り、トナを認める。)ト・・・トナカイ!?あれ・・・
今、子どもがいたと思ったが・・・」
トナ「何してるの、偽サンタさん!!」
ドン「ニセ・・・!?ニセだと、この・・・わ・・・わあ・・・ト・・・トナカイ
が、しゃ・・・しゃ・・・喋ったーっ!!(腰を抜かす。)」
トナ「あなた、失礼だね!!トナカイが喋っちゃ悪いかよ!!」
そこへ上手よりサンタ登場。
サンタ「どうしたんじゃ?トナ・・・(腰を抜かしているドンを認め。)
ん・・・?こんな時間に、お客かな?」
トナ「違うよ、こいつはサンタさんのフリをした泥棒だよ!!」
ドン「ち・・・違う・・・俺・・・いや、わしはサンタクロース・・・」
サンタ「ホッホッホ・・・サンタクロースにしては、ちと若いのぉ・・・
」
ドン「あ・・・(付け髭が取れかかっているのに気付き、慌てて付
け直す。)」
サンタ「ジンジャーキャンディが好きかの?」
ドン「・・・え・・・?」
サンタ「袋にそんなに詰め込んでおるじゃないか。」
ドン「ジンジャーキャンディ!?(袋の中を覗き込み、1袋取り出
す。)ただの飴!?」
サンタ「残念じゃが、この家にはおまえさんが欲しがるような物
は、なぁんも置いとらんよ。(笑う。)ジンジャーキャンディ
なら、山程あるがの・・・」
トナ「あるのは子ども達へのプレゼントだけさ!」
ドン「なんでぇ・・・しけた家へ入っちまったぜ・・・(ハッとして。)
って・・・俺は何も泥棒しようだなんて・・・俺はサンタクロー
ス・・・」
サンタ「ホッホッホ・・・わしには分かっておるよ。」
トナ「嘘吐きサンタクロース!」
ドン「嘘吐きだと!?」
トナ「だってそうでしょ?本物のサンタクロースは、ここにいるも
の!」
ドン「本物のって・・・!え・・・?え・・・?えーっ!?冗談だろ!?
サンタクロースって北極の・・・」
トナ「違うよ!そんなところからやって来てたんじゃ、沢山のいい
子達に、クリスマスの日にプレゼントを配り終わらないでし
ょ?だからサンタさんは、冬の間子ども達の近くで間借りし
て、クリスマスを迎えるんだよ!プレゼントの準備をしなが
らね。」
サンタ「おまえさんもサンタになりたいようじゃから、わしの仕事
を手伝わせてやるぞ。」
トナ「サンタさん!」
ドン「え・・・お・・・俺は・・・その・・・いや・・・別にサンタになりたく
て・・・」
サンタ「ホッホッホ・・・そうか?」
トナ「ね、サンタさん!この時期になると、サンタさんの名を語っ
た偽サンタがゴロゴロ街中に現れるね。中にはこいつみた
いに、悪いことをしようとする奴だっているんだ。」
ドン「お・・・俺は・・・あ・・・そ・・・そうだ!!俺、ある子どもから、
サンタにプレゼントの希望を伝えて欲しいと頼まれて・・・!
それでわざわざサンタの家を探してまでやって来たと言う
訳さ・・・!!」
トナ「え・・・?」
サンタ「プレゼントの希望・・・?」
トナ「嘘吐き!」
ドン「う・・・嘘じゃない!!ホントだぜ!!その子は俺を本物の
サンタと間違えて、ずっとプレゼントが欲しいって付き纏っ
て・・・」
トナ「サンタさん!こんな奴もう放っといて、プレゼントの準備の
続きをしようよ。」
ドン「ホントなんだ!!」
サンタ「その子どもが欲しいと願った物は何じゃ・・・?」
トナ「サンタさん!」
ドン「あ・・・ああ確か・・・えっと・・・種・・・種だ!!」
トナ「種?何の?」
ドン「こ・・・心の種だ!!」
サンタ「心の・・・」
ドン「ああ!!そんな“心の種”なんてもんが、あるのかどうか、
俺は知らね・・・けど・・・」
サンタ「その子は・・・間もなく死ぬぞ・・・」
ドン「死・・・?え・・・何言って・・・」
トナ「サンタさん・・・?」
サンタ「その子の命の炎は、今にも消えそうな筈じゃ・・・」
ドン「だ・・・だって・・・あんなに元気そうで・・・俺のことも力強く
掴んで・・・!!」
サンタ「おそらく・・・おまえさんの前に姿を現すその子どもは、そ
の子自身の影じゃ・・・」
トナ「影・・・?」
ドン「まさか・・・」
サンタ「現に、消えたり現れたりが上手い筈じゃよ。(笑う。)」
ドン「何、笑ってんだよ、ジジイ!!冗談ばっかり・・・あ・・・そう
言えば・・・デンの奴も見えていなかったような・・・で・・・でも
影って・・・そんな・・・それに、あの子が死ぬって・・・死にそう
ってどう言うことなんだよ!!」
サンタ「その子は意識のない状態で、今、どこかにおる筈じゃ・・・
」
ドン「・・・嘘だ・・・嘘だ、そんな・・・」
サンタ「その子はどうしておまえさんの前に現れるようになった
んじゃったかな?」
ドン「え・・・?あ・・・ああ・・・少年は俺のことを、本物のサンタク
ロースだと信じて・・・心の種を探してくれと・・・」
サンタ「そう・・・心の種を探してくれ・・・」
ドン「種がどうかしたのかよ・・・。そんな“心の種”なんて・・・俺
は見たことも聞いたことも・・・花の種みたいなもんじゃねぇ
んだろ・・・!?」
サンタ「心の種・・・即ちそれはその子自身のことじゃよ。」
ドン「・・・あの子自身・・・?」
サンタ「その子は、自分の体に帰ろうとしておるんじゃ・・・」
ドン「一体どう言うことなのか、ちゃんと説明してくれよ!!」
サンタ「その子はきっとどこかで・・・助けが来るのを待っている
筈じゃ・・・自分の力では抜け出せないような、どうしよう
もない場所で・・・。」
ドン「そんな・・・」
サンタ「最後の力を振り絞り、今、生きようと懸命に戦っておる
んじゃろう。そしてサンタだと信じたおまえさんに、助けを
、求めておるんじゃ。」
ドン「お・・・俺に・・・?」
サンタ「(頷く。)」
ドン「そ・・・そうだ・・・時間がない・・・ずっとそう言ってたんだ・・・
あいつ・・・」
サンタ「時間が・・・?」
ドン「ああ・・・」
サンタ「それはいよいよ急がなければ駄目じゃの・・・。」
ドン「・・・(何かを悟ったように。)・・・わ・・・分かった!!俺、行
って来る!!先ず、どうすりゃいいんだ!?少年は心の種
を探してくれって・・・あいつ自身がその種だとすりゃあ一体
・・・」
サンタ「あの子の体を探してやることじゃ。」
ドン「探す・・・どこを・・・?」
サンタ「きっとこの町のどこかで行方不明になっておる子がいる
筈じゃ。」
ドン「あ・・・ああ!!そ・・・それで?」
トナ「馬鹿だなぁ!その子の存在が分かれば、後は探すだけだ
ろ。」
ドン「トナカイに馬鹿呼ばわりされる覚えは・・・!!」
サンタ「早く行け!!その子の命が消える前に、その子を見つ
け出して来るんじゃ!!クリスマスでは間に合わんと言っ
ておったんじゃろう?」
ドン「あ・・・お・・・おう!!ガッテンだ!!」
ドン、下手へ走り去る。
サンタ「トナ、プレゼントの準備はいいから、あの偽サンタを助け
てやりなさい・・・。」
トナ「え?」
サンタ「あれも立派なサンタの仕事じゃよ。(微笑む。)」
トナ「サンタさん・・・うん!!分かったよ!!」
トナ、下手へ走り去る。
下手方を温かく見詰めるサンタ。
フェード・アウト。(カーテン閉まる。)
――――― “ドンのハッピーサンタクロース”
3へつづく ―――――
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談^^;)
“J”の2幕、佳境部分の動画投稿を致しました(^-^)
只今、YouTubeと、ヤフー版でご覧頂けるので、また
よければ見にいらして下さい♪
ハリーさんの乱れた髪・・・笑って下さい・・・(^_^;)
今日は子どもが風邪で学校をお休みしているので、
買い物もネットで済ませ、家で籠り生活中です・・・(>_<)
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――――― 第 4 場 ―――――
カーテン前。音楽流れる。
下手よりドン、急いで登場。続いてデン、
ドンを追い掛けるように登場。
ドン「急げ!!デン!!時間がないんだ!!」
デン「待ってよーっ!!兄貴ー!!そんなに急いで・・・時間が
ないって、何の時間だよ・・・!!(息を切らせて。)兄貴っ
てば・・・一体どうして急に行方不明の子どもを捜すだなん
て・・・こんな広い街の中から、どうやって捜すんだよ・・・」
ドン「煩い!グズグズ言ってないで、兎に角捜せばいいんだよ
!!」
ドン、デン、歌う。
ドン“助けを求められたのは
この俺だ
サンタクロースだと信じて
疑うこともしなかった”
デン“兄貴の話しはよく分からない
突然沢山の
ジンジャーキャンディと共に
戻ったかと思えば
街中子どもを捜し回る”
ドン“希望を叶えて夢を与える
それがサンタの努め!”
デン「兄貴・・・いつから本物のサンタクロースに目覚めたの・・・
?一人で入ったあの家の中で何があったんだよ。しかも何
故か・・・(恐々、下手方を見て、コソッと。)喋るトナカイも一
緒だなんて・・・」
ドン「さぁ!捜すぞ!!」
デン「・・・うん・・・」
ドン、デン、通りすがりの街の人達に、
何かを聞いて回るように。
その時、上手方の人達の間に、マックス
の顔を見つけたドン、慌ててその方へ
走り寄る。
ドン「あ!!おい!!待ってくれ!!どこにいるんだ、少年!?
おい!!おまえは一体どこにいるんだ!!」
その時、上手より走り登場した、一人の
子ども(ラリー)が、ドンにぶつかる。
ラリー「あっ!!(尻餅をついて泣く。)えーん・・・!!」
ドン「あ・・・悪い!!怪我しなかったか?(泣いているラリーを立
たせ、服を払う。)ほら、こいつをやるからもう泣くな・・・(ポ
ケットからジンジャーキャンディを一つ取り出し、ラリーへ差
し出す。)」
ラリー「(泣き止み、ドンを見る。)」
ドン「ほら・・・」
ラリー「(キャンディを受け取り、微笑む。)ありがとう、サンタさん
!!」
そこへ上手より、慌てた様子のシスター
登場。
シスター「ラリー!!(ラリーを認め。)ラリー!!」
ラリー「(振り返り、シスターを認める。)あ!先生!」
シスター「(ラリーに走り寄り。)急に走り出すから驚いたわ・・・(
ドンを認め。)あ・・・ラリーが何かしたんじゃありません
か?」
ドン「いや、別に・・・。じゃあな、坊主・・・(ラリーの頭に手を置き
、他の人の方へ行く。)」
ラリー「キャンディをありがとう、サンタさん!!(手を振る。)」
シスター「どうしたの、ラリー。血相を変えて走って行ったけれど
・・・」
ラリー「だって先生!沢山の人の中に、マックス兄ちゃんがいた
んだ!!」
シスター「え・・・?」
ラリー「あれは確かにマックス兄ちゃんだったよ!!本当さ!!
」
シスター「でもマックスがこんな街の中にいる筈は・・・」
ラリー「だって・・・!!」
シスター「・・・マックスは森へ入って行って、行方不明になった
のよ・・・」
ドン「(耳に入ったその言葉に顔色を変え、シスターを見る。)今
なんて・・・!?」
シスター「え・・・?」
ドン「今、何て言ったんだ、シスター!!」
シスター「あの・・・」
ドン「森で行方不明とか何とか・・・!!」
シスター「・・・ええ・・・」
ドン「教えてくれ、シスター!!その話しを詳しく!!」
シスター「(頷く。)・・・1週間程前・・・となり村のセント・ジョセフ
孤児院で暮らすマックスが、森で行方不明になったの
です・・・」
ドン「本当に!?」
シスター「はい・・・」
ラリー「マックス兄ちゃんは、クリスマスツリーが欲しいって言う
皆の為に、モミの木の変わりになる木を探して来るって言
って、森に入ったんだ・・・」
シスター「始めは村の人達が捜しに、森へ行ってくれたんですけ
れど・・・ここ数日の冬の訪れと共に・・・これ以上は危
険だからと、捜査を打ち切ってしまわれて・・・」
ラリー「もしかしたら、どこかで見かけた人がいるかも知れない
からって、こうやってホームの皆で兄ちゃんの似顔絵を書
いて、街の掲示板に貼ってもらいに来たんだ!!(似顔
絵の書いた紙を、ドンの方へ差し出す。)」
ドン「(ラリーから紙を受け取り、食い入るように見詰める。)」
シスター「この寒さです・・・もうきっとマックスは・・・」
ドン「・・・生きてる・・・」
シスター「え・・・?」
ドン「マックスは生きてる!!」
ラリー「・・・本当に!?」
ドン「ああ!!」
ラリー「先生!!サンタさんは嘘を吐かないよ!!やっぱりマッ
クス兄ちゃんは、どこかで助けを待っているんだ!!」
シスター「マックスが生きてるって・・・(涙声で。)」
ドン「ああ、間違いない!!マックスが俺に助けを求めてるんだ
!!マックスが行方不明になった、その森へ案内してくれ
!!この俺がマックスを助けに行く!!」
ラリー「サンタさん・・・!!」
デン「兄貴・・・」
音楽流れ、ドン、スポットに浮かび上がり
歌う。
“待ってろ今直ぐ
駆け付けるそれまで
消すな命の灯
どこかで待ってる
誰にも気付かれず
ただ一人サンタが来るのを
そんな奴がいることを
知らずにいた俺
曲がりなりにもサンタの真似を
してきたこの俺!”
ドン「さあ、急がねぇと、隣り村まで歩いて行くとなれば・・・こりゃ
あ時間がかかるぞ・・・!!でも・・・そんなこと言ってる場合
じゃねぇな!!」
ドン、下手方へ行こうとする。
その時、下手スポットにトナ、登場。
トナ「偽サンタさん!」
ドン「誰が偽だ!!・・・あ・・・おまえは・・・」
トナ「僕のソリに乗って行きなよ!」
ドン「え・・・?(下手奥を見て。)」
トナ「サンタクロースはトナカイの引くソリに乗って、子ども達の
元へ駆け付けるんだぜ!」
ドン「おまえ・・・」
トナ「このトナカイのトナ様が、隣り村まで連れてってあげるよ!
!」
ドン「・・・いいのか・・・?」
トナ「さぁ、早く!あなたのことを信じて待っている子がいるんだ
。」
ドン「ああ・・!!ありがとう・・・トナ!!」
暗転。
――――― 第 5 場 ―――――
カーテン開く。と舞台は森の様子。
(中央に2本の分かれ道がある。)
音楽流れ、中央奥よりマックス登場。
歌う。
“僕はここだよ・・・
ここにいる・・・
ずっと待っているんだ
サンタさん・・・
時間がないんだ
もう僕には・・・
サンタさんが来るまで
待てないよ・・・僕・・・”
マックス、再び森の奥へ去る。
一時置いて、下手よりドン、手に持った
紙を見ながら登場。
ドン「シスターに聞いた話しだと・・・そろそろ分かれ道が・・・(顔
を上げ2本道を認める。)あった!!ここだここ・・・よーし、
後はマックス坊やが右へ行ったか左へ行ったか・・・(左右
の道を交互に見て。)ん・・・ん・・・んーっ・・・?全く、分かん
ねぇ!!一体どっちへ行きゃあいいんだよ!!畜生・・・トナ
の野郎も“僕はここで待ってるからね”なーんて言いやがっ
て、温々、孤児院で子ども達と遊んでいるなんて・・・!“あ
りがとう”の言い損じゃねぇか、全く!!トナカイはサンタク
ロースを乗せて、子どもの待つ場所まで行くのが役目なん
じゃねぇのかよー!!(中央にあった立て看板に気付く。)
ん・・・?何々・・・(下手を見て。)こっちは恐ろしい道・・・(上
手を見て。)こっちは楽しい道・・・なぁんだ、ちゃーんと書い
てるじゃねぇか!左は恐ろしい道なんだろ?そんな道に行
くわきゃねぇよな!きっと、マックスは右の楽しい道っての
に行ったんだ!!(勢いで立て看板を叩く。と、看板倒れる
。)あ・・・れ・・・?(立て看板を拾って。)えっ・・・えーっ!?
何だよ、この看板!根元が腐って折れてたんじゃねぇか!
!それを誰かが適当に突っ込んでたんだな!!なんでぇ
!これじゃあ、役に立たないぜ、こんな看板!・・・って・・・
待てよ・・・と、言うことは・・・本当はどっち向いて立ってたか
分からないってことじゃねぇか!!(看板を裏表、逆にした
り戻したりして立てて見る。)えーっ・・・どっちが正解なんだ
よーっ!!あっ、そうか・・・(下手方を指差して。)こっちか
ら来たんだから、こっち側から見えるように・・・(看板を表向
きで立てる。)こうか!!よしっ!!俺って頭いい!!」
その時、上手方から声が聞こえる。
声「じゃあ、こっち側から来た人はどうなるの・・・?」
ドン「あ・・・そうか・・・(上手方を指差して。)こっちから来た奴ら
には看板は・・・こうでなくちゃ・・・(看板を裏向きに立てて
みる。)よし!これで見やすくなった・・・って違うだろ!!こ
れじゃあ、あっちから来た奴とこっちから来た奴・・・来る方
向が違えば、恐ろしい道と楽しい道も逆になるってことじゃ
ねぇか!!頭悪いぜ、全く!!」
声「あはははは・・・」
ドン「何、笑ってんだ、馬鹿!!・・・ん・・・?(回りを見回す。)え
・・・?だ・・・誰だ・・・?」
その時、上手方から雪の精、登場。
雪の精「こんにちは。」
ドン「あ・・・ああ・・・」
雪の精「あなた、さっきから面白いわね。(笑う。)」
ドン「う・・・うるせぇ・・・だ・・・誰だよ、おまえ・・・」
雪の精「私は雪の精!!」
ドン「雪の精・・・?」
雪の精「ええ。今、順番に村や街を回って雪を降らせ、ホワイト
クリスマスを迎える準備をしているの。」
ドン「・・・ホワイトクリスマスだと・・・?」
雪の精「ええ!雪を沢山降らせて、辺り一面の銀世界・・・なん
て素敵なクリスマスなの・・・!あなたもそう思うでしょ?
」
ドン「ま・・・待ってくれ!!」
雪の精「・・・え・・・?」
ドン「もう一日!!いや・・・もう半日でいい!!俺がマックスを
見つけ出すまで、雪を降らせないでくれ・・・!!」
雪の精「マックス・・・?」
ドン「でないとあいつ・・・こんな山ン中で雪に埋もれて、それで
なくても今にも命の灯が消えそうな時に、雪なんて降って
きやがったら、あいつ、真っ先に死んじまうだろ!?頼む・・・
頼むよ!!」
雪の精「駄目よ。こんな場所で道草を食ってる時間はないのよ
。早く雪を降らせて回らなきゃ、全部の街がホワイトクリ
スマスにならないわ。皆が楽しみに待っているって言う
のに。」
ドン「分かる!!分かるぜ、その気持ち!!だけどこちとら、一
人の少年の命がかかってるんだ!!だから頼む!!お願
いだ!!(土下座する。)」
音楽流れ、ドン、正座したまま歌う。
“お願いだ・・・
今まで人に頼みごと
したことなんて一度もねぇ・・・
そんな俺が一生に
一度きりのお願いを
頭を下げて頼むんだ・・・”
ドン「なぁ!!皆が幸せになるクリスマスなんじゃねぇのか!?
そんなクリスマスに一人の少年の命が消えていい訳ねぇだ
ろ!?」
雪の精「・・・そうねぇ・・・分かったわ。あなたの必死さに免じて
・・・じゃあ後、3時間だけ待ってあげてもいいわ。」
ドン「3時間・・・あ・・・ああ、それでも構わねぇ!!恩に着るぜ
!!3時間待ってくれて、ありがとうよ!!(行きかけて左
右に迷う。左右を見比べて。)えっと・・・」
雪の精「どっちへ行くのかしら・・・?そのマックスを捜しに・・・。」
ドン「あ・・・えっと・・・そうだな・・・こっちだ!!(左方を指差す。)
」
雪の精「本当に・・・?」
ドン「迷ってる暇はねぇ!!(行きかける。)」
雪の精「でも間違った道に行ってしまったら、3時間では戻って
これないわね。」
ドン「そんなこと言ったって・・・じゃあ、どうすれば・・・!!」
雪の精「右の道と左の道・・・少し進めば大人のあなたなら、簡
単に分かると思うけれど・・・明らかにどちらが正しい道
なのか・・・。」
ドン「あ・・・そうか!(左右の道、少しずつ進んでみる。)お!!
ホントだ!!左っ側はあの角を曲がると、明らかに道が険
しくなってるみてぇだ!!それに比べて右っ側は・・・よーし
!!分かったぞ!!危うく間違った方へ行くところだったぜ
!!マックス少年は右の楽しい道へ行ったんだ!!な!?
そうだろ?」
雪の精「・・・馬鹿ねぇ・・・」
ドン「ば・・・馬鹿だと!?何で俺が馬鹿なんだよ!!ちゃんと、
立て看板の向きを当てたんだぞ!!」
雪の精「もう・・・世話が焼けるわねぇ・・・。いいことを教えてあげ
ましょうか・・・?」
ドン「いいこと・・・?あ・・・ああ、教えてくれ、いいことなら何だっ
て!!」
――――― “ドンのハッピーサンタクロース”
4へつづく ―――――
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(どら余談^^;)
この“ドン”さん、書き進める度、魅力が増し、素敵な
サンタさんへと成長中です♥
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