りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“ドンのハッピーサンタクロース” ―全8場― 4

2012年12月31日 15時16分34秒 | 未発表脚本


  雪の精「マックスは道に迷ってしまったのよね・・・?」
  ドン「ああ。さっきからそう言ってるだろ!それがどうかしたのか
     よ!」
  雪の精「ちゃんと整備された1本道を歩いていて、それもまだ雪
       が降る前の見晴らしのいい場所で、その子は迷子にな
       ったのかしら・・・」
  ドン「そりゃあ、いくら子どもだからって、こんな見通しのいい1本
     道(下手方を見る。)、全く土地勘のない俺だって、ここまで
     サッサと来れたんだ・・・ん・・・?何だ・・・?マックスはこん
     な迷子になろうったって、そう簡単になれそうもない道で、
     迷子になったってのか・・・?」
  雪の精「もう・・・だから迷子になったってことは・・・?」
  ドン「・・・あ・・・そうか!!(下手方を指差して。)こっちの恐ろし
     い道に行っちまったんだ!!」
  雪の精「はい、正解・・・」
  ドン「そっか!!なんでぇ、そうと分かりゃ善は急げ!!ありが
     とよ、雪の精!!“いいこと”を教えてくれて!!」

         ドン、左側(下手方)の道へ、走り
         進んで行く。

  雪の精「あ・・・!!もう、全く忙しないサンタさんね・・・。大人だ
       としても気をつけないと、名前通りの迷って危ない道だ
       と分かってるのかしら・・・。まぁ、いいわ・・・あのサンタ
       さんなら何とかするでしょ、きっと・・・。3時間、私はここ
       でのんびりさせてもらうとするわ・・・。(ゴロンと横になる
       。)」

         紗幕閉まる。

    ――――― 第 6 場 ――――― A

         紗幕前。
         音楽流れ、回りを捜すように下手より
         ドン登場。

  ドン「おーい!!どこだーっ!!マックスー!!マックスー!!
     全く・・・この恐ろしい道って・・・恐ろしい・・・じゃなくて、やや
     こしい・・・の間違いじゃねぇか!?丸で迷路だぜ・・・(キョ
     ロキョロ回りを見回して。)あっれぇ・・・それにしても、ここは
     一体どこだ?なんかさっきから、同じとこをグルグル回って
     るような・・・こりゃあ、子どもだとしたら確実に迷っちまうぜ
     ・・・。おーい!!マックスーッ!!」

         ドン、歌う。

         “どこにいるんだ おまえは一体
         やっと側までたどり着いた
         けど肝心のおまえ自身が
         見当たらない・・・
         こんな迷い道の中で
         こんな寒い冬空の
         たった一人で心細い・・・
         きっとサンタが助けに来ると
         信じて待つに違いない・・・”

    ――――― 第 6 場 ――――― B

         紗幕開く。と、森の中。

  ドン「おーい!!おーい!!しかし・・・寒いなぁ・・・。こりゃホント
     にホワイトクリスマスになりそうだぜ。急いで捜さねぇと・・・
     」

         その時、マックスの声が聞こえる。

  マックスの声「・・・サンタさん・・・」
  
  ドン「・・・マックス・・・?」

  マックスの声「・・・サンタさん・・・」

  ドン「マックス!!どこだ!?どこにいる!?(回りを見回す。)
     マックス!!」

         ドン、後方大木の方へ駆け寄り、“マックス”
         の名を呼びながら、回りの木の葉の山を
         崩すように、その中を捜す。

  ドン「マックス・・・!!あっ!!子どもの手だ!!マックス!!
     マックス!!(木の葉の中から捜し当てたマックスを抱き起
     こす。)マックス!!おい、しっかりしろ!!マックス!!」
  マックス「・・・(ゆっくり目を開く。ドンを認め。)・・・サンタ・・・さん
       ・・・」
  ドン「よし!!生きてたか!!偉いぞ、マックス!!この木の葉
     が外の冷気からマックスを守ってくれたんだな!!木の葉
     達、ありがとうよ!!」

  声「・・・いいえ・・・」

  ドン「・・・え・・・?(回りを見回す。)今、誰かなんか・・・まぁ、いい
     か。それよりマックスの体が氷みてぇに冷たいぜ!!何か
     ・・・着るもの・・・(回りを見て。ハッと気付いたように自分の
     服を見る。)あっ!!そうだ!!(自分が着ていた、サンタ
     の衣装を脱いで、その服でマックスを包み込む。)ほら・・・
     !!」

         (ドン、サンタの衣装を脱ぐと、黒いスーツ姿
         になる。)

  マックス「・・・サンタさん・・・(ドンが黒のスーツに変わっている
       のに、一瞬驚いたように。)・・・あなたは・・・」
  ドン「・・・あ?(自分の服を見て。)ああ・・・この服装な・・・悪い
     な、助けに来たのが俺みたいな・・・そうだよ・・・俺は・・・サ
     ンタなんかじゃない・・・しがないただの・・・」
  マックス「(微笑んで。)サンタさん・・・」
  ドン「・・・え・・・?」
  マックス「あなたは・・・サンタさんだよ・・・」
  ドン「マックス・・・」
  マックス「サンタさん・・・ありがとう・・・僕を見つけてくれて・・・」
  ドン「(恥ずかしそうに。)いや・・・何・・・さぁ、マックス・・・ホーム
     へ帰ろう・・・(マックスの前へ跪いて、背を向ける。)俺にお
     ぶされ・・・」
  マックス「・・・うん・・・(ドンの背中にしがみつく。)」

  声「よかったわね・・・」

  マックス「(上方を見て。)・・・うん・・・ありがとう、秋の精・・・」
  ドン「え?何か言ったか?」
  マックス「ううん・・・」
  ドン「あ、そうだ!これでも舐めてろ!(ポケットからジンジャー
     キャンディを取り出し、マックスへ手渡す。)さぁ、行くぞ!」
  マックス「うん・・・」

         ドン、マックスをおぶって下手へ去る。
         暗転。

    ――――― 第 6 場 ――――― C

         上手スポットに雪の精、座って下手方を
         見ている。

  雪の精「(欠伸をして。)ふぁああ・・・よく寝た・・・。こんな時期に
       ゆっくり出来るなんて初めてよ。(笑う。)それにしても遅
       いなぁ・・・もう3時間経っちゃうわよ・・・。まだなのー!?
       (溜め息を吐いて。)仕方ないなぁ。約束だからね!他
       の沢山のホワイトクリスマスを楽しみにしてる人達がい
       るんだから、これ以上待てないわ。(立ち上がり、杖を取
       り出し、天に翳すように。)雪よ・・・!この村にホワイトク
       リスマスを!!」

         その時、雪がチラチラ舞い落ちて来る。

  雪の精「(雪を確認するように。)よしっ!さぁ、次の町へ急がな
       くちゃ!」

         雪の精、上手へ走り去る。

    ――――― 第 6 場 ――――― D

         舞台明るくなる。と、前場の森。
         (雪が積もって、さっきとは様子が違い、
         寒々とした風景。)
         雪がチラチラ舞う中、下手よりマックスを
         おぶったドン、ヨロヨロと登場。

  ドン「あっれぇ・・・可笑しいなぁ・・・ここはさっきも通った場所じゃ
     ねぇか・・・」
  マックス「・・・サンタさん・・・?」
  ドン「ん・・・?心配すんな!もう直ぐホームだぞ!だから頑張れ
     よ!!」
  マックス「・・・うん・・・」
  ドン「(独り言のように。)・・・この道は・・・ややこしくって、一旦足
     を踏み入れたなら、そう簡単には抜け出せない・・・そんな
     風に恐ろしい道だったんだな・・・。おまけに雪がチラチラし
     て視界が・・・(目を擦る。)もう・・・3時間、経っちまったんだ
     ・・・」
  マックス「サンタさん・・・僕・・・ものすごく眠くなってきたよ・・・サ
       ンタさんの背中・・・とっても気持ち良くって・・・」
  ドン「おい?おい、マックス!こんなとこで寝るんじゃないぞ!も
     う少しだから頑張ってくれよ・・・!!おい・・・!マックス・・・
     !おい・・・けど・・・俺も・・・何だか・・・マックス・・・ちょっとだ
     け・・・休んでいいか・・・?もう足が・・・(眠っているようなマ
     ックスを、木の横に下ろし、抱いたまま自分も木にもたれか
     かる。)ふぅ・・・疲れたぜ・・・目が・・・勝手に・・・(眠る。)」

         冷風の音が大きく、雪も段々吹雪いてくる。
         舞台フェード・アウト。(カーテン閉まる。)
         その時、風の音に紛れるように、鈴の音が
         遠くから聞こえてくる。段々大きく。

  トナの声「サンタさーん!!サンタさーん!!迎えに来たよーっ
        !!」
  ドンの声「トナ・・・マックス・・・!!ホームへ帰って来たぞ!!」
  マックスの声「本当!?(木霊する。)」

    ――――― 第 7 場 ――――― A

         カーテン前。
         音楽流れ、舞台明るくなると、下手上手
         より、孤児院の子どもたち登場。
         プレゼントを手に嬉しそうに、ジングルベル
         を歌う。
         (その中には、シスター、ラリーの顔も
         見える。)

    ――――― 第 7 場 ――――― B

         カーテン開く。と、雪の積もった村外れの
         孤児院の前。
         庭先の大きな木が、色とりどりのネオンに
         光輝いている。
         子どもたち、その様子に歓声を上げ、駆け寄る。

  ラリー「わあーっ!!大きいツリーだ!!」
  シスター「・・・これは・・・」
  ラリー「兄ちゃーん!!マックス兄ちゃーん!!」

  マックスの声「何ー?」

  ラリー「綺麗なツリーが飾ってあるよーっ!!」

  マックスの声「直ぐ行くーっ!!」

         その時、上手後方、孤児院の扉が開いて
         マックス元気に飛び出し登場。     ※

  マックス「(クリスマスツリーを見て。)わあーっ!!凄いや!!
       先生!!一体どうしたの?このツリー!」
  シスター「さぁ・・・先生にも分からないのよ。さっき外へ出てみた
        ら、こんな風にホームの前の木が、クリスマスツリーに
        変身させてあったの。」
  ラリー「綺麗だなぁー・・・ね!!マックス兄ちゃん!!」
  マックス「うん!!(ツリーの飾りを見て。)あ・・・これは・・・ジン
       ジャーキャンディだ・・・」
  子ども1「先生!このツリーの飾り、ジンジャーキャンディが一杯
       ぶら下がってるよ!」
  こども2「変なのー(笑う。)」

         子どもたち笑う。
         マックス、シスター、顔を見合わせる。

  マックス「・・・先生・・・サンタさんが来てくれたんだね。」
  シスター「そうね・・・。みんな!このツリーを下さったジンジャー
        キャンディが好きなサンタさんにお礼を言いましょうね
        ・・・」
  子どもたち「はーい!(声を揃えて。)サンタさん!!ジンジャー
         キャンディをどうもありがとう!!」

  ドンサンタの笑い声「ホッホッホ・・・」

         暗転。(カーテン閉まる。)

    ――――― 第 8 場 ――――― A

         カーテン前。
         上手よりスーツ姿のドン、ポケットに片手を
         突っ込み、もう片方に大きな袋を持ち、
         口笛を吹きながら登場。
         そこへ下手よりデン登場。

  デン「(ドンを認め。)兄貴ーっ!!(ドンに駆け寄る。)兄貴!!
     今まで一体どこ行ってたんだよ!!」
  ドン「デン・・・悪い悪い!」
  デン「兄貴のいない間、オイラ一人で・・・ほら!!(袋を見せる
     。)」
  ドン「デン・・・じゃあ今度はそいつを使って、本物のサンタごっこ
     でもやるか!!」
  デン「本物の・・・サンタ・・・?」
  ドン「ああ、綺麗にラッピングし直して・・・」
  デン「ラッピング・・・?」
  ドン「盗んだ家へ、そっと返してくるのさ。」
  デン「えーっ!!折角こんなに頑張ったのにー!!」
  ドン「煩い煩い!!さっさと向こうで綺麗に包装してこい!!可
     愛いリボンも忘れんなよ!」
  デン「えー・・・可愛いリボンって・・・」
  ドン「あ、そうだ・・・(手に持っていた袋を、デンに押し付けるよう
     に手渡す。)こいつも一個ずつ、そのプレゼントと一緒に配
     ってくれ。」
  デン「(袋を覗いて。)ジンジャーキャンディ!?まだ持ってたの
     ?」
  ドン「ブツクサ言ってないで、サッサと行かねぇとクリスマスは明
     日だぞ!(笑う。)」
  デン「分かったよーっ!!」

         デン、上手へ走り去る。
         入れ代わるように下手よりサンタ登場。
         トナ続く。

  トナ「サンタさん2号!」
  ドン「(サンタとトナに気付く。)・・・よお・・・!昨日はありがとうよ
     !トナが来てくれなきゃ、俺たちあのまま凍えて、今頃天の
     国でクリスマスパーティやってる頃だぜ。(笑う。)」
  トナ「サンタさんの役に立つことが、僕の仕事だからね。」
  ドン「偽物で悪いな。」
  トナ「ううん!違うよ、もう!」
  ドン「違う・・・?」
  サンタ「おまえさんは今回のことでは随分頑張って、サンタクロ
      ースの役目を立派に遂行してくれた。その褒美として・・・
      」
  ドン「褒美?何かくれんのか?」











  ――――― “ドンのハッピーサンタクロース”
                     完結編へつづく ―――――
                














     ※ このマックス少年、物凄い回復力です(^^;





      書き上がったので、全8場となりました(^-^)V


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        (おまけフォト^^;)

        

      色んな100円均一ショップで、見つける度に
      買い集めている、来年夏に公演予定作品の
      お人形の小道具です(^-^)

      その小道具類から、作品の内容をご想像下さい♪








    2012年12月31日(月)

    さて、今年も残り数時間となりました(^^;
    皆様にとって、今年はどんな一年だったでしょうか・・・?
    
    私にとってこの一年は、波乱万丈・・・と言っても過言
    ではない、とても様々な出来事に次々と出会う・・・
    そんな一年であったように思います。

    その中で、私にとって不必要なものが去り、本当に必要
    なものだけが残り・・・そして、新たに出会い・・・と、
    なんとも自分の歩く道程が、うまい具合に軌道修正された
    感のあった一年でありました(^_^)
   
    また来年はそんな出会いを大切に・・・
    一段と劇団としても、私自身としても、飛躍していければ
    いいな・・・と、考えております(^-^) 
    まだまだ発展途上でありながら、少しずつですが行く道先
    に目指すものが見え始めたような“リトルパイン”でありま
    すが、これからも頑張って参りますので、暖かい応援を
    頂けると嬉しいです♥

    それでは皆さん、
    一年間、拙い文章にお付き合い下さいまして、
    ありがとうございました(^^;

    よいお年をお迎え下さいm(_ _)m   




                ミュージカル人形劇団“リトルパイン”
                               代表 どら。










  http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
 
         http://ritorupain.blogspot.com/

     http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta








 


“アレックス” ―全15場―

2012年12月31日 14時13分32秒 | 未発表脚本



   〈  主な登場人物  〉

  
   アレックス  ・・・  音楽教師。本編の主人公。

   キャシー  ・・・  アレックスの同僚で、恋人の数学教師。

   ピーター  ・・・  体育教師。

   マリア  ・・・  不思議な少女。

   ジョー  ・・・  マリアのボーイフレンド。

   フランキー  ・・・  校長先生。

   マックス  ・・・  教頭先生。

   シルヴィア  ・・・  キャシーの母。

   カーター  ・・・  キャシーの父。

  
   その他。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    ――――― 第 1 場 ―――――

         音楽で幕が上がる。(舞台はダンスパーティ
         会場。)
         大勢の男女、楽しそうに踊っている。
         (その中には、アレックスとキャシーの姿も
         見える。)
         1曲踊り終わった後、キャシー、アレックスの
         頬を平手打ちし、走り去る。
         呆然と立ち尽くし、キャシーの後ろ姿を
         見詰めるアレックス。
         (他の男女、そんな2人に構わず、踊り続ける。)

  アレックス「キャシー!!」

         フェード・アウト。カーテン閉まる。
         
    ――――― 第 2 場 ―――――

         カーテン前。
         校長フランキーと、教頭マックス、
         話しながら登場。

  フランキー「(おっとりした口調で。)マックス教頭先生、近頃、生
         徒達の様子が、以前より何かこう・・・落ち着き無く・・・
         騒ついていると感じるのですがねぇ・・・。それは私の
         思い過ごしでしょうか?」
  マックス「いえ、確かに私も同じように感じていました。キャシー
       先生のクラスで、何やら生徒同士の揉め事もあるようで
       すし・・・。」
  フランキー「矢張り、あのように若い・・・女の先生では、生徒達
         も中々まとまりにくいのでしょうか・・・」
  マックス「まぁ・・・そう言うこともあるかも知れませんが、キャシー
       先生自体は生徒達の人気も高く、特に女生徒達からは
       姉のように慕われてもいるようですよ。」
  フランキー「ではあのクラスに偶然、問題を起こすような生徒が
         沢山いると言うことでしょうか・・・」
  マックス「この間、転校して来たカールと言う生徒が、どうも問題
       の発端になっているようです。」
  フランキー「成程・・・」
  マックス「そのカールが、同じクラスの人気者のロットに、やたら
       と突っ掛っていくらしく・・・何が気に入らないのか。その
       ことで、キャシー先生は随分悩んでおられるようですよ。
       」
  フランキー「流石、マックス教頭先生は、生徒達の事情に、大変
         お詳しいようですなぁ・・・」
  マックス「いえ・・・」
  フランキー「まぁ、もう少し様子を見てみることに致しましょうか。
         教頭先生、宜しく頼みますね。」
  マックス「はい。」

         2人、ゆっくりと去る。

    ――――― 第 3 場 ―――――
 
         カーテン開く。と、公園。
         月灯りの中、静かな音楽流れる。
         仲良さそうに寄り添いあった恋人達、
         談笑しながら通り過ぎたり、ベンチに
         腰を下ろしたりしている。
         そこへアレックス、ネクタイを緩め、
         ポケットに手を突っ込んでゆっくり登場。
         空いているベンチへ腰を下ろし、惚けて
         いると、1組の恋人達、アレックスの前で
         キスを交わす。その様子を呆っと見ている
         アレックス。
         通り過ぎた恋人達を唖然と目で追う。

  アレックス「畜生!!俺の前でベタベタするなってんだ!!全く
         頭にくる!!キャシーもキャシーだ!!あんなこと位
         で怒ることないだろ!!」

         そこへマリア登場。嬉しそうにアレックス
         へ近寄る。続いてジョー登場し、2人から
         少し離れて立つ。

  マリア「こんばんは!」
  アレックス「(マリアを認めて。)なんだ、おまえは・・・。子どもは
         もうお休みの時間だぜ。早く帰りな・・・。」
  マリア「まぁ、冷たいのね。知らない仲じゃないのに。」
  アレックス「何だって?」
  マリア「ううん!(首を振る。)回りは恋人同士ばかりなのに、ど
      うしてあなたは一人なの?(嬉しそうに。)」
  アレックス「一人じゃいけないか。俺は今、一人でいたいんだ・・・
         一人が好きなんだ!一人にしといてくれ!」
  マリア「とてもハイスクールの先生の言う言葉とは思えないわ
      ね。(笑う。)」
  アレックス「(不思議そうに。)・・・おまえ・・・俺のことを知ってい
         るのか・・・?」
  マリア「一人でいたいからじゃなくて、恋人と喧嘩したから仕方
      なしに一人でいるくせに。」
  アレックス「どうしてそんなこと・・・」
  マリア「ダンスの時に、彼女が今日のデートの為に買った、新品
      のお気に入りのハイヒールを、2回続けてあなたが踏ん
      付けたのよね。(笑う。)」
  アレックス「俺だって好きで踏ん付けた訳じゃないさ!・・・ダンス
         は苦手だってのに・・・あいつが行こうって無理に誘う
         から・・・。それなのにあんなに目くじら立てて怒ること
         ないだろ!だからつい俺もカッとなって・・・。それにし
         ても・・・よく知ってるな、おまえ・・・。さてはあの会場
         にいたんだな?何が目的だ!小遣いか?」
  マリア「違うわ、目的なんてないわよ!でも、あなたに一つだけ
      忠告してあげる・・・。そんな些細なことで彼女と喧嘩別れ
      しちゃったら、あなたは一生、後悔することになるわよ。だ
      からさっさと謝って、仲直りしちゃいなさい!」

         マリア、走り去る。ジョー、マリアに続く。

  アレックス「あ・・・おい!!何だ・・・変わった餓鬼だな・・・」

         アレックス、呆然とマリアの走り去った方を
         見詰める。
         そこへ、同僚の教師(ロバート、ミリー)腕を
         組みながら登場。

  ミリー「あら、アレックスじゃない。」
  アレックス「(2人を認め。)ああ・・・おまえ達か・・・」
  ロバート「どうした?狐にでもつままれたみたいな顔して。(笑う
       。)」
  アレックス「・・・似たようなものだ・・・」
  ロバート「何?キツネが出たのか?」
  アレックス「馬鹿野郎・・・餓鬼だよ。」
  ミリー「子ども・・・?」
  アレックス「ああ、変わった子どもで、えらく俺のことを知ってる
         んだ・・・。何だか妙な気分だな・・・」
  ロバート「(アレックスが一人なのに気がついて。)あれ?おまえ
        確かキャシーと一緒じゃなかったか?」
  アレックス「え・・・?まぁ・・・」
  ロバート「・・・彼女は・・・?」
  アレックス「知らないね。一人怒って帰っちまったからさ・・・」
  ミリー「途中で会場からいなくなったと思ったら、何だ、喧嘩した
     の?」
  ロバート「(嬉しそうに。)何かやらかしたのか?」
  アレックス「(溜め息を吐いて。)煩い・・・。ただ彼女の新品の靴
         を踏んづけただけさ・・・2回・・・」
  ミリー「(笑う。)それで・・・?」
  アレックス「それで・・・?」
  ミリー「もっと他に、彼女がカンカンになるようなこと、何かしたん
      でしょ?」
  アレックス「何もしやしないさ。」
  ミリー「それだけ・・・?」
  アレックス「ああ・・・」
  ミリー「本当!?」
  アレックス「ああ、そう言ってるだろ!?」
  ミリー「(溜め息を吐いて、肩を窄める。)全く・・・くだらないことで
      喧嘩するのね、あなた達って。生徒達より世話が焼ける
      わ・・・」
  ロバート「本当だ。(笑う。)」
  アレックス「何とでも言ってくれ・・・」
  ミリー「いいわね、喧嘩する理由に事欠かなくて。それでまた、
      明日になったらどうせ仲直りするんでしょ?呆れるわよね
      。」
  ロバート「さぁ、ミリー、俺達は仲良くディナーと洒落込みますか。
       」
  ミリー「まぁ、素敵!じゃあね、アレックス!」
  ロバート「素敵な夜を!(手を上げて笑う。)」

         ロバート、ミリーの肩を抱いて出て行く。

  アレックス「畜生!!」

         音楽で暗転。

    ――――― 第 4 場 ――――― A

         フェード・インする。と、教室。(絵紗前。)
         生徒達、屯して、話し込んでいる。
         そこへジュディ、フィービー入って来る。

  ジュディ「おはよう!」

         先にいた生徒達、口々に挨拶を返す。

  フィービー「(楽しそうに。)どうしたの?何の話し?」  
  ジョニー「(トミーの肩を抱いて。)こいつが、今度のクリスマスパ
       ーティに誰も誘う相手がいないなんて、情けないことを
       言うから、俺達が誘い方を伝授してたんだよ。」
  ジュディ「なんだトミー、まだ相手がいないの?」
  トミー「そりゃあ、おまえ達はいいさ!もう付き合ってんだから・・・
      」
  ハンナ「ねぇ、ジュディ!ジュディはカールとロット、どっちと一緒
      に行くの?」
  ロット「俺に決まってるだろ!」
  ハンナ「あ、そうよねぇ・・・ジュディはロットの彼女だものね。」
  
         その時、教室に入って来たカール、近付く。

  カール「さぁ・・・それはどうかな・・・?」

         皆、一斉にカールを見る。

  ロット「何だと!?」
  カール「じゃあ、おまえはジュディの返事を聞いたのかよ。」
  ロット「それは・・・」
  カール「それじゃあジュディが誰と行くかなんて、まだ分からない
      じゃないか。」
  ロット「おい、ジュディ・・・おまえ誰と行くつもりなんだよ・・・」
  ジュディ「私・・・」
  ロット「返事を聞かせてくれ。」
  ジュディ「分からないわ!!(走り去る。)」
  フィービー「ジュディ!!(追い掛ける。)」
  ロット「ジュディ!!(カールに向いて。)畜生・・・おまえが転校し
      てきてから・・・おまえがジュディにちょっかいをかけるから
      ・・・!!(カールに殴りかかる。)」

         ロット、カール、殴り合いの喧嘩を始める。
         女生徒達、悲鳴を上げる。男子生徒、はやす。
         その時、アレックス入って来る。

  アレックス「(驚いて、慌てて喧嘩している2人に駆け寄り、止め
        に入る。)止めろ!!止めるんだ!!何してるんだ、
        全く!!もう授業は始まってるんだぞ!!」
  ロット「畜生!!覚えてろ!!いつか叩きのめしてやる!!」
  カール「それはこっちのセリフだ!!」
  アレックス「いい加減にしろ!!」
  カール「(思わず間に入ってきたアレックスの頬を殴る。)あ・・・
       」
  アレックス「痛ってえ!!(頬を押さえて。)何するんだ、全く・・・
         おまえ達はどうしていつもそうなんだ!!顔を合わ
         せれば喧嘩ばかり・・・!!少しはキャシー先生の身
         にもなれ!!」

         2人、相変わらずふてぶてしい態度で。

  カール「ふん・・・。」
  アレックス「いいな!!」
  ロット「・・・はい・・・」
  アレックス「(カールを見て。)おまえは?」
  カール「(頷く。)」
  アレックス「返事をしろ、返事を!」
  カール「・・・(溜め息を吐いて。)はい・・・」
  アレックス「よし・・・さぁ皆、席に着くんだ。授業を始めるぞ・・・」

         アレックス、その様子を教室の後ろの方で
         見ていたマリアとジョーに気付く。
         2人、微笑みながらゆっくりカーテン前へ。

  アレックス「あいつらは・・・(生徒に向いて。)ちょっと待った!!
         今日は自習だ!!静かにしてろよ!!(2人につい
         てゆっくりカーテン前へ。)」

         嬉しそうな生徒達。(カーテン閉まる。)
         アレックス、走ってマリアとジョーを追い掛ける。

    ――――― 第 4 場 ――――― B

  アレックス「おい!待ってくれ!!」

         マリアとジョー、立ち止まり振り返る。

  マリア「何?先生。(笑う。)」
  アレックス「君達はどう見たってハイスクールの生徒には見えな
         いが・・・どうやって校内に入り込んだんだ?自分たち
         の学校は?」
  マリア「もう彼女とは仲直りしたの?」
  アレックス「(思わず。)いや・・・」
  マリア「駄目ね、早く仲直りしなくちゃ。(嬉しそうに。)」
  アレックス「だが彼女が俺と目すら合わせようとしない・・・(思い
         出したように。)って、違うだろ!!俺のことじゃなく
         て、おまえ達のことだ!!」
  マリア「でも彼女はきっとあなたと仲直りしたいと思ってるわよ。
      ただ、切っ掛けが掴めないだけ。」
  アレックス「どうしてそんなことが分かるのさ。」
  マリア「(笑う。)そんなことを気にしてる間に、彼女と仲直りする
      方法を考えた方がいいと思うけど。」
  ジョー「(マリアを見て。)彼女はキャシーのことなら何でも分か
      るのさ。(笑う。)」
  アレックス「君は?」
  マリア「私の友達よ。」
  アレックス「・・・キャシーの名前まで知ってるのか・・・」
  マリア「ねぇ、学校の中を案内してよ!」
  アレックス「馬鹿野郎、今、授業中だぞ。全く可笑しな餓鬼だな。
         (思わず笑う。)」
  マリア「ガキだなんて失礼ね!私はマリア!彼はジョーよ。」
  ジョー「よろしく。」
  アレックス「俺は・・・」
  マリア「アレックス!(笑う。)」

         その時、キャシー登場。
         3人、キャシーに気付く。

  マリア「あ・・・」
  アレックス「キャシー・・・」
  キャシー「アレックス・・・今、私のクラスの授業中の筈よ・・・。そ
        れなのにこんなところで、子どもと遊んでいるなんて
        ・・・」
  アレックス「あ・・・これは・・・あの・・・」
  キャシー「私のクラスはどうでもいいのね・・・(通り過ぎようとす
        る。)」
  アレックス「違うんだ!!」
  キャシー「どうせ私のクラスは問題だらけよ!!」
  アレックス「そんなこと言ってないだろ!?」
  マリア「待ってよ、2人共!!」
  ジョー「マリア・・・」
  キャシー「なんなの、あなた!ここはハイスクールよ!!子ども
        は子どもの学校へ行きなさい!!」
  マリア「(笑う。)あなた、もう少し素直になった方がいいと思うわ
      。」
  キャシー「素直・・・素直になれって・・・あなた、私のことを知りも
        しないで、よくもそんな・・・!!」
  アレックス「キャシー!!子ども相手にそんなムキにならなくて
         も・・・!!」
  キャシー「余計なお世話だわ!!」
  アレックス「そんなんじゃ、いつまでたっても君のクラスのいざこ
         ざはなくならないぜ。」
  キャシー「・・・酷い・・・」
  アレックス「あ・・・ごめん・・・」
  キャシー「そのことで私がどれだけ悩んでるか、あなたが一番
        知ってる筈なのに・・・あんまりだわ・・・(泣きながら走
        り去る。)」
  アレックス「キャシー!!」
  マリア「早く追い掛けた方がいいわ、アレックス!!でないと取
      り返しのつかないことになっても・・・」
  アレックス「・・・キャシー・・・(キャシーが去った方と逆の方へ去
         る。)」
  マリア「アレックス!!」

         マリア、ジョー、呆然と立ち尽くす。

  ジョー「ねぇ、マリア・・・矢っ張り無理なんじゃないかな・・・2人
      を結婚させるのは・・・」
  マリア「まだ大丈夫よ!!結婚式まで、まだ日があるわ!!私、
      どうしてもあの2人を結婚させたいの!!」
  ジョー「でも・・・僕達の世界では、あの2人の今の喧嘩はなかっ
      た・・・。それでも結婚は出来なかったんだよ。マリアの思
      いとは反対に、状況は悪くなる一方だ・・・。」
  マリア「そんなことないわ!!だってあの2人は愛し合っている
      んだもの!!ただ、2人とも感情を口にするのが上手くな
      いだけよ!!屹度大丈夫・・・!!」
  ジョー「でも・・・もしそうなったら君が・・・」








      ――――― “アレックス”2へつづく ―――――









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     (どら余談^^;)

     実はこの作品、とっても古い作品であるのですが、
     だからか・・・言葉使いなどに気になる部分が多々
     見つかり、その度に手直しながら書き進めている為、
     少しばかり、いつもに比べて進み具合がスローに
     なっております・・・(^^;
     皆様にはお待ち頂くこともあるかと思いますが、
     お許し下さいm(_ _)m








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