りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

10周年記念公演 “あの空の向こう”―2幕―

2017年01月11日 11時07分50秒 | 新作(人形劇用)


 2017年1月3日


 皆様、新年明けましておめでとうございます。


 今年も精進してまいりますので“リトルパイン”を

 何卒宜しくお願い致します。




 さて、昨年はあまりブログを更新できないまま、

 新しい年へと変わってしまいましたが、昨年度も

 いつもと変わらぬ活動をこなしつつ、10周年記念公演

 では“J”作品に次ぐ1本立てのちょっと大人な長編作品を

 書き、11月のボランティア公演では、初めて「認知症」を

 テーマにした作品をと依頼を受け、四苦八苦しながら

 仕上げ、つい最近までは今月の小学校公演に持って

 行く作品を、欠席メンバーがいる為に少人数でも動きが

 出来るように考えながら書き上げ・・・

 ちょうど今、少し頭が空の状態になったところであります。

 
 現在、ブログ上ではモリーちゃん作品を公開途中では
 
 ありますが・・・その次に公開予定の作品も控えては

 おりますが・・・少し公開順序が前後してしまうことに

 なりますが新年と言うことで、昨年度、公演しました

 「あの空の向こう」をモリーちゃん作品と平行して

 皆様にお届けしていこうかな・・・と考えております。

 この作品は、“J”作品同様、普段伺うボランティア公演に

 は、まず持って行けない長編作品で、人形劇と言う形で

 皆様にご覧になって頂くことは、二度とないと思いますが、

 紙面上で“私ワールド”を感じて頂けるといいかな・・・と・・・


 思っております。


 最後に、昨年度もイロイロな場所に呼んで頂き、沢山の

 方々との出会いがありました。

 本来ならば、その公演ごとに公演日記を書き、お礼の言葉を

 書かせて頂くところではありますが、少し前より公演日記を

 書くのが追いつかない状態になってしまい、中々個々の

 皆様にご挨拶が出来ていません。

 本当に申し訳ございません。そして、ありがとうございました。

 
  
                ミュージカル人形劇団リトルパイン

                               どら。








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  〈 主な登場人物 〉


  ピット  ・・・  天界の使者。

  ジェシー・ブラウン

  シスター・アマン  ・・・  フレディが暮らす施設長。

  フレディ・ブラウン  ・・・  ジェシーの弟。 目が見えない。

  天界の女神  ・・・  ピットの母。

  シスター・ローラ

  アルセウス  ・・・  天界の門番。

  刑事

  ドナ  ・・・  ジェシーの会社のマドンナ。

  部長 社員

  その他




   
       (左)ジェシー  (中央)シスター・アマン





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                         ※



     〈 プロローグ 〉

    音楽流れ、幕は開く。と、スモーク流れる雲の上の様子。
    並んだ天界の使者達、歌う。

     “我々 生きてる時には
      会えない 天界の者
      あの世で 迷わない為
      導く天使達

      光 射す道の向こう
      差し出す 手を道しるべとし
      招く天の国へ
      手を取り指し示す
      光の道を
      前には 永遠に続く      コーラス“見える 先に 続く”
      幸せがある”

    ピット、歌う。

     “私 天界の使い
      天と地上の往復
      毎日どんな時も指令所片手に持ち
      人を迎えに行くのが
      私達の仕事なの
      準備は整った後は行くだけ
      いつでも地上へ         コーラス“迎えに行く
      降り立ち 手を差し出すわ        そっと
      いつも 側に                 あなたのことを
                               導く
                               私達に
                               ついてくればいい
      信じて”                    道しるべ”

    天界の女神(母)、天界の使者(子)達へ、それぞれ
    紙を渡す。天界の女神、歌う。

     “子どもよ そろそろ時間よ
      手渡す指令所のとおり
      今日も人間が迷わないお手伝いを”

    天界の使者達、歌う。

     “これが 我々の仕事
      人を 最後の審判
      受ける為
      天界の裁判所へ連れて”    ピット“行くこと”

 ピット「(紙を見て。)ジェシー・ブラウン・・・」


 
                      ※2


    紗幕、閉まる。

   ――――― 第 1 場 ――――― A







    紗幕前。
    音楽流れ、上手よりスーツ姿の一人の青年(ジェシー)、
    息を切らせ、走り登場。
    その時、携帯電話のベルが鳴る。
    ジェシー、慌てて背広やズボンのポケットを探し、
    携帯電話を取り出し出る。

 ジェシー「はい!はい・・・はい、いつも弟がお世話になります。え?
      はい・・・はい、それで弟は?はい・・・そうですか・・・ご迷惑
      をお掛けします。はい・・・分かりました。直ぐに病院代は
      振込みます。だから、弟を・・・フレディのことを宜しくお願い
      します。(携帯電話を切る。“ピッ”)はぁ・・・(腕時計を見る。
      )あっ!!いっけね、もうこんな時間だ!!新しいプロジェ
      クトの準備に追われて、つい時間を忘れてしまってた!!
      折角、今夜は密かにずっと憧れてた社内のマドンナ、ドナ
      との初めてのデートだったってのに・・・!あぁあ、もうこん
      な時間じゃないか・・・。彼女、怒って帰っちまっただろうな
      ぁ・・・ついてないぜ全く・・・」

    ジェシー、歌う。(途中、紗幕開く。と、ベンチのある公演。)

     “毎日 仕事に 明け暮れて
     恋する 暇さえ 今の俺には皆無
     忙し過ぎる 日々が          コーラス“毎日が
     虚しく過ぎてく 今も                乾いた日々”
     時間も 余裕も 何もない
     あるのは疲れた
     心と体だけだ              ジェシー“時間さえ
     ただ生きる日々 今は              無駄に過ぎる”
     一人で静かに眠りたい” 

 ジェシー「あ・・・れ・・・?何だかめまいが・・・(横のベンチへ腰を
      下ろす。)ここんとこ、残業続きで寝不足だったからな・・・
      ふあぁ・・・(あくびをする。)眠・・・い・・・グー・・・(ベンチに
      ゴロンと横になる。)」



                      ※3



    音楽変わり、下手より片手に大きな時計、もう片方の手に
    指令書を持ち、ピット登場。周りをキョロキョロ見回しながら、
    何かを探している様子。




                       


 ピット「あー・・・一体どこにいるのかしら、ジェシー・ブラウン・・・」

 天界の女神の声「いいですか、ピット。あなたは直ぐに自分の仕事
            を忘れて、色々なことに惑わされるところがあり
            ます。十分にそのことを心しておきなさい。」

 ピット「はい、お母様!」

 天界の女神の声「(溜め息を吐いて。)あなたはお返事だけは誰
            よりも素晴らしいのだけれど・・・」

    ピット、歌う。

    “どこに いるの 捜してる人
    多分 ここに いる筈なのに
    見つからない
    早くしないと そろそろ時間
    いたわ そこよ あの人
    捜していた人よ
    そこにいたの
    捜したのよ 心配した        コーラス“早くなさい
                                時間がきた
                                急いで仕事して”
    目を覚まして 行きましょう
    起きなさい時間よ”

    時計のベルが鳴り響く。(ジリリリリリー!)

 ジェシー「わぁ・・・わあーっ!!(飛び起きる。)」
 ピット「時間よ!!」
 ジェシー「え・・・な・・・なんだ!?」
 ピット「さぁ、行くわよジェシー!(ジェシーの手を引っ張る。)」
 ジェシー「・・・え・・・い・・・行くってどこへ!?」
 ピット「何とぼけてるのよ!!天界の裁判所に決まってるでしょ?」
 ジェシー「裁判所・・・?裁判所って・・・おまえ・・・!!それに、お
      まえは一体誰なんだよ!!」
 ピット「私?私はピット!あなたを迎えに来た、天界の使者よ!」
 ジェシー「天界の使者だって・・・?」
 ピット「そうよ!」
 ジェシー「迎えに来た・・・?」
 ピット「ええ!!」
 ジェシー「迎えって何だよ。どこ行くってんだよ!」
 ピット「何言ってるの?あなた死んだから、天国へ行くか地獄へ
    行くか、その裁きを受ける為に天界の大魔王様のところへ
    行くんじゃない。」
 ジェシー「し・・・死んだ!?」

    音楽流れる。

 ピット「そうよ!ほら!(上手方を指差すと、そこに倒れた一人の
    青年、周りには人々、騒いでいる。)」
 ジェシー「え・・・えーっ!!」




    


    ピット、歌う。

    “ほら見て あそこに倒れてるのは
    他の誰でもない
    あなたなのだから”

    ジェシー、歌う。

    “頭で 理解をするのは難しい”

    ピット、歌う。

    “いいえ 大丈夫よ
    見れば分かるでしょう?”

    ジェシー、歌う。

    “今の今までここにいた
    血の通った人間として
    それが突然なぜ・・・”

 ジェシー「ちょ・・・ちょっと待ってくれよ!!俺はまだ死んでなんて
      ・・・」
 ピット「そう?」

    ピット、歌う。

    “行くわよ 時間よ 誰もが行くの
    生まれ変わる為に
    天界の国へ” 

 ジェシー「生まれ変わる!?駄目だ!!ちょ・・・ちょっと待ってくれ
      よ!!俺にはまだまだ遣り残したことがあるんだ。今はま
      だ死ねないんだよ!!」
 ピット「何?その遣り残したことって。」
 ジェシー「新しいプロジェクトの責任者を任されて・・・」
 ピット「あら、新しいプロジェクトの責任者なんて、あなたでなくても
    他に誰かがやってくれるわよ。」
 ジェシー「そんな筈ないだろ!あのプロジェクトは俺が長年考えて
      温めてきた企画で、そうやくそれが皆に認められ、やっと
      大金を・・・」
 ピット「じゃあ見てみる?」
 ジェシー「え・・・?」

    ピット、ポケットから杖を取り出し、一振りする。と、
    上手後方スポットに、ジェシーの勤める社内の様子。
    部長と社員(ジョニー・ブラウニー)浮かび上がる。







 部長「しかし、ブラウン君は残念なことになったものだ。弟の目の
    治療費の為に、随分と頑張っていたのに・・・」
 社員「はい、全く。それに今度彼が企画した新しいプロジェクトが、
    軌道に乗ったところで・・・」
 部長「まあ、だからと言って、この企画を頓挫させる訳にもいくま
    い。それに、こう言ってはなんだが・・・プロジェクトチームの
    責任者は、彼でなくても大丈夫だろう。」
 社員「部長・・・」
 部長「ブラウニー君、ブラウン君に代わってこのプロジェクトの責
    任者を君に任せることにしよう。」
 社員「部長!!」
 部長「頼んだよ。」
 社員「はい!!」

    後方スポット、フェード・アウト。

 ジェシー「・・・部長・・・!!」
 ピット「ねぇ?」
 ジェシー「・・・仕方ないさ・・・俺だって、もし同じ立場になれば・・・
      折角の企画を駄目にしちまうより・・・誰か他に適任者を
      ・・・」
 ピット「そう?」
 ジェシー「・・・ああ・・・」
 ピット「じゃあ、もう心残りはないわね?そろそろ天界の裁判所へ
    行かないと、判決を受ける順番が最後になっちゃうわ!さぁ、
    行きましょう!(ジェシーの手を引っ張る。)」
 ジェシー「まっ・・・待ってくれよ!!」
 ピット「何よ!」
 ジェシー「まだあるんだ、俺には心残りが・・・」
 ピット「まぁ!あなた一体いくつの心残りを持ってるって言うの?」
 ジェシー「そりゃそうだろ!?俺はついさっきまで、普通の生活を
      して普通に人生を謳歌してたんだ!それをいきなり訳も
      分からず、死んだから天界へ行くんだ!なんて言われた
      って・・・」
 ピット「でも普通の人は皆、そんな自分の境遇を疑いもせず、すん
    なりと受け入れて、黄泉の国へ旅立つのよ。」
 ジェシー「俺は違うんだ!」
 ピット「(溜め息を吐く。)それで?何かしら、その2つ目の心残り
    は・・・」
 ジェシー「あ・・・ああ・・・」








     ――――― “あの空の向こう” 2へつづく ―――――



   










  ※ とーっても見えにくいですが・・・スモーク流れています。

  ※2 右端がピットちゃんです。このお人形のドレス、フレアが
     沢山あるうえに、後側がマントのように長くなっている為、
     ものすごーく重たいのです。
     (ビデオからの写真なので、見にくくてすみません。)

  ※3 このベンチ、団員のお父様手製の本物です。
     とっても可愛いベンチです。

  

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