りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“レナード” ―全13場― 完結編

2012年09月04日 16時20分36秒 | 未発表脚本

        レナード、ヘンリーを見据えながら、フランシス

        を背後に隠す。

 

  ヘンリー「僕はあなたが大嫌いですよ・・・(笑う。)」

  フランシス「(レナードの後ろから飛び出そうとして。)止めて!!

        馬鹿な真似はよして!!」

  レナード「(フランシスを強く止める。)フランシス!!」

  ヘンリー「馬鹿な真似・・・?そうかも知れませんねぇ・・・。けど、

       あなたが悪いんですよ・・・。黙って僕と結婚さえしてい

       れば、こんなに沢山の人達を死なせることはなかった

       のに・・・。」

  フランシス「じゃあ、私だけを殺せばいいわ!!」

  ヘンリー「それは駄目ですよ・・・。皆さん、恨むならフランシス

       を恨んで下さいね・・・。」

  レナード「例え・・・ここで死んだとしても、フランシスを恨むよう

       な奴はここにはいない・・・」

  B・J「勿論!!」

  アーチー「当たり前じゃないですか!!」

 

        ロイ、ロレッタ、リズ頷く。

 

  ヘンリー「最後まで面白くない奴らですねぇ・・・」

  フランシス「・・・皆さん・・・(涙が流れる。)」

  ヘンリー「じゃあお望みの通りに・・・(ピストルをレナードに向

       けて引き金をゆっくり引く。)」

 

        その時、一発の銃声が響き渡り、ヘンリーの

        手からピストルが飛び出す。皆、悲鳴を其々

        上げる。ヘンリー、呻き声を上げて、腕を押さ

        える。入口よりチャールズ、慌てた様子で登場。

 

  チャールズ「間に合ったか!!」

  レナード「(チャールズを認めて、安心したように深く溜め息を

       吐く。)チャールズ・・・」

  チャールズ「間一髪だな・・・。こっちの心臓が止まるかと思っ

         たぜ・・・」

 

        入口より、大勢の警察官、急いで入って来る。

        其々ヘンリー、ウィリアムス、ウィルソン、レオーネ、  

        スタンに手錠を掛ける。

 

  レナード「(微笑んで。)来てくれると思ったよ・・・」

  チャールズ「(皮肉っぽく。)その信頼が嬉しいね・・・(レナード

         の後ろのフランシスを、覗くように見て微笑む。)

         終わったよ・・・。」

 

        チャールズ、2人から離れて警官に何か

        指示をして回る。

        従業員達もホッとしたように座り込んだり、

        其々警官に質問されている。

        レナード、フランシスの方へ向き直り、手を

        取って見詰める。

 

  レナード「・・・もう・・・会社は大丈夫だ・・・」

  フランシス「(涙ぐみ頷く。)・・・あなたのお陰よ・・・何もかも・・・

        (涙が零れる。)」

  レナード「(微笑んでフランシスの涙を拭う。優しく。)泣くな・・・

       これからはおまえが親父さんの会社を守っていくんだ

       ・・・。」

  フランシス「私・・・一人で・・・?」

  レナード「・・・トーマスがいる・・・ダニエルだって・・・一人じゃな

       いさ・・・」

  フランシス「・・・自信がないわ・・・」

  レナード「大丈夫さ・・・。あんな高層ホテルから、たった一人で

       抜け出して来た勇気があるんだ。何にでも立ち向かえ

       るよ・・・。」

  フランシス「・・・あなたも・・・一緒に・・・」

 

        警官出て行く。チャールズ、遠巻きに2人を

        見詰めている。

        従業員、其々奥へ入る。

        トーマス、少し離れて立つ。

 

  レナード「(フランシスの手を離し、首を振る。)俺の家はここだ

       ・・・。気に入ってる・・・。それにこの町の連中には、俺

       がいてやらないと・・・。分かるだろ?おまえにはおまえ

       を助けてくれる大勢がいる・・・」

  フランシス「・・・でも・・・!!」

  レナード「おまえと俺は!!・・・住む世界が違い過ぎる・・・。さ

       ぁ・・・トーマスが待ってる。」

  フランシス「レナード・・・(涙声で。)」

  レナード「元気でな・・・。新しい靴・・・買ってやれなかったけど

       ・・・。(名残惜しそうに暫くフランシスを見詰めた後、

       微笑んでフランシスを反対向かせ、背中を軽く押す。)」

  フランシス「レナード!!(振り返ろうとする。)」

  レナード「(フランシスの両肩を強く握って。)振り返らずに行け

       !!おまえの未来に・・・!!」        ※

 

        フランシス、泣きながらゆっくりトーマスの

        方へ。トーマス、フランシスに近寄って、

        レナードの方を見詰め、頭を下げる。

        トーマス、フランシスの背中を押しながら

        ゆっくり2人去る。

        レナード、その方をじっと見ている。

        チャールズ、レナードに近寄る。

 

  チャールズ「レナード・・・本当にこれで良かったのか?」

  レナード「(入口を見詰めたまま。)ああ・・・」

  チャールズ「俺は、おまえには俺と同じ思いをして欲しくないん

         だ。」

  レナード「(チャールズを見て笑う。)俺が大会社の社長って柄

       か・・・?」

  チャールズ「だけど・・・!!」

  レナード「(真面目な顔付になる。)・・・愛してたって・・・時には

       別れ別れになる方が、お互いの為になることだって

       ある・・・」

  チャールズ「レナード・・・」

  レナード「・・・そのことは、おまえが一番よく分かってることだ

       ろう・・・(チャールズを見て。)そんな顔するなよ!これ

       で良かったんだ・・・全て・・・(思い出したように、腕の

       傷を見て押さえる。)・・・やけに・・・痛いな・・・」

 

        レナード、スポットに残してフェード・アウト。

        カーテン閉まる。

 

    ――――― 第 12 場 ―――――

 

        レナード、遣る瀬ない表情で歌う。

 

        “あの日・・・

        素足のおまえが何故だか

        とても心に残り・・・

        何時までも・・・忘れることが出来なくなった

        出会ったのは偶然だったのだろうか・・・

        おまえを守る為に出会わされたに

        違いない・・・

        ただそれだけの為に

        俺は命を賭けても構わない・・・

        それなのに・・・もう・・・

        会うことはないと言うのか・・・

        おまえの笑顔に触れることは

        二度とないと言うのか・・・”

 

        レナード、上手へ去る。

        音楽盛り上がって、暗転。

 

    ――――― 第 13 場 ―――――

 

        カーテン開く。と、開店前の“nothing”

        カウンターにはジャネットとイザベラ。

        B・J、用事をしながら2人の相手をして

        いる。

        回りのテーブルには、一組のカップルが

        座っている。

 

  イザベラ「レナード、そんなに落ち込んでるの?」

  B・J「レナードさんはそんなこと、これっぽっちも顔に出したり

     しないけど、俺には分かるんだ・・・。」

  イザベラ「柄にもなく、あんなお嬢様に本気になるからよ!」

  ジャネット「そう言う言い方は良くないわよ。」

  イザベラ「だって本当じゃない!私にしときゃ良かったのに・・・」

  B・J「時々思い出したようにフッとね・・・遠くを見詰める目が、

     彼女に会いたいと言ってるみたいで・・・」

  イザベラ「参るなぁ・・・」

 

        最後に残っていた客男、カウンターに

        近寄り、お金を払い女を連れて出て行く。

 

  B・J「ありがとうございました。」

 

        近くでテーブルを拭いたりしていたロイ、

        カップルが座っていたテーブルの上の

        グラスを持って、カウンターの中へ。

 

  B・J「サンキュー!じゃあもう帰っていいぜ。」

  ロイ「(腕時計をチラッと見て。)今夜も午前様か。」

  B・J「(ロイの肩を叩いて。)お疲れさん!」

  ロイ「お先!」

  ジャネット「おやすみ、ロイ!」

  ロイ「おやすみ!(奥へ入る。)」

  ジャネット「さぁ・・・じゃあ私達もそろそろ帰りましょうか、イザベ

        ラ。」

  イザベラ「そうね・・・。そんな風に落ち込んでるレナード見るの

       も嫌だし・・・」

  ジャネット「レナードによろしくね、B・J!(立ち上がって入口の

        方へ。)」

  B・J「はい!」

  イザベラ「さよなら!(ジャネットに付いて行く。)」

  B・J「おやすみなさい!」

 

        B・J、2人の使っていたグラスを下に下ろす。

        カウンターから出て、全ての椅子をテーブルの

        上へ反対向けて、順番に乗せて回る。

        そこへ、奥よりレナード出て来る。

        カウンターの外へ。

 

  レナード「悪いな、最後まで。」

  B・J「あ、レナードさん。」

  レナード「後は俺がやるからもういいよ。」

  B・J「そうですか?」

  レナード「ああ。」

  B・J「じゃあ・・・」

  レナード「ご苦労さん!」

  B・J「お先です!(奥へ入る。)」

 

        レナード、残っていた椅子を、一つのテーブル

        の場所を除いて上へ上げる。

        レナード、カウンターの中へ入って、下にあった

        酒瓶とグラスを数個、棚に並べる。

        それから違う酒瓶を一本取って、下に残って

        いたグラスを持って、カウンターの外に出、まだ

        上げていなかった椅子に腰を下ろす。

        グラスに酒を注いで手に持ったまま、何か物思

        いに耽るよう。

        その時、レナードの名を呼ぶフランシスの声が

        微かに響く。

 

  レナード「フランシス・・・?」

 

        レナード、その声に一瞬驚き、だが半信半疑

        でフランシスを捜すように、立ち上がり回りを

        見回す。

 

  レナード「・・・(フッと笑って。)・・・そんな訳ないか・・・(座る。)」

 

        レナード、呟くように歌う。

 

        “何が起こるか分からない・・・

        けど・・・行動を起こさないと・・・

        何も・・・始まらない・・・”

 

        その時、入口から入って来たフランシス、

        呼応するかのように歌う。

        微笑みながら、ゆっくりレナードの側へ。

        その気配に振り返り、驚いたレナード、

        立ち上がりフランシスを見詰める。

 

    フランシス“何が待ってるか分からない・・・

           素晴らしい未来かそれとも・・・

           けど迷っていたら何時までも・・・

           立ち止まったまま・・・”

 

        2人、見詰め合い歌う。

 

        “いつもnothingから始まる・・・

        いつもここから明日が・・・始まる・・・

        振り向くことは考えないで・・・

        昇りゆく陽が輝いているから・・・”

 

  レナード「どうしたんだ、一体!?」

  フランシス「(微笑んで。)約束通り・・・新しい靴を買ってもらい

        に来たわ・・・。」

  レナード「・・・フランシス・・・」

  フランシス「・・・私・・・気付いたの・・・あなたが来れないんだっ

        たら、私が行けばいいんだって・・・」

  レナード「・・・だが・・・会社は・・・!?」

  フランシス「会社の権利は放棄して来たわ。全て、トーマスに

        任せることにした・・・。」

  レナード「しかし・・・」

  フランシス「私は・・・!!あなたの側にいたい・・・あなただけ

        いれば、それでいい・・・」

  レナード「本当に・・・いいのか・・・?」

  フランシス「・・・ええ・・・」

  レナード「俺は今までのおまえみたいに、金持ちじゃないぜ

       ・・・」

  フランシス「(微笑んで頷く。)・・・もう・・・私も何もないわ・・・」

  レナード「それがどうした・・・。俺は最初っから、素足のおまえ

       を愛していたんだ!!フランシス!!(両手を広げる

       。)」

  フランシス「レナード!!(レナードの胸に飛び込む。)」

  レナード「もう、離さない・・・!!」

 

        レナード、フランシスの手を取って歌う。

 

        “いつもnothingから始まる・・・

        いつもここから明日が始まる・・・

        振り向くことは考えないで

        昇りゆく陽が輝いてるから・・・”

 

        レナード、フランシスに口付ける。

 

 

 

 

 

        ――――― 幕 ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ※ この辺りの場面の台詞・・・最近は子ども向き専門・・・

     みたいなところがあるので、あまり書かないですよね~^^;

     なので、何だか自分で書いててアレですけど・・・少し恥ずか

     しいです~(^_^;)

 

 

 

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