>>>小出義雄氏が死去 女子マラソン金の高橋尚子さんら育成
2000年シドニー五輪女子マラソンで金メダルに輝いた高橋尚子さん(46)らを育成した元陸上指導者の小出義雄さんが24日、死去した。80歳だった。
小出さんは千葉県出身。順大で箱根駅伝に出場するなどした後、教員を23年間務め、1988年に実業団のリクルートの監督に就任した。選手の素質や性格を見抜く眼力と繊細な指導力でマラソンで有森裕子さん(52)を92年バルセロナ五輪銀、96年アトランタ五輪銅の2大会連続メダル2000年シドニー五輪金メダルの高橋尚子さん,積水化学に移籍した97年は世界選手権で鈴木博美さん(50)を金メダルに導いた。
気が強い有森さんは自由にさせて底力を引き出し、頼ってくる高橋さんには一から十まで細かく指示してヤル気を引き出したという。この逸話が物語るように選手個々に合わせた巧みな操縦術こそが小出マジックの秘けつだった。その小出マジックの手引き(種明かし)が,氏の著書『君ならできる」(幻冬舎刊)の文中からもうかがえる。
君ならできる | |
小出 義雄 | |
幻冬舎 |
--「監督には五つの胃袋がいる」--
出典:『君ならできる』小出義雄著 p36 幻冬舎刊 私は、監督には胃袋が五つなくてはいけないと思っている。
牛には四つの胃袋があるというが、監督はもうひとつ多く五つ必要なのだ。
たとえば、つまらない話だが、高橋が一人で外出した時など、転んで足をくじきはしないか、交通事故にあいはしまいかと気が気ではない。
心の中にある不安、心配、不満、憤り、自己嫌悪そんなもののすべてを呑み込んで、何度も反すうしながら五つの胃袋で消化してしまわなければならない。粘りの一語につきるのだ。
--「人の心が読める人になれ」--
出典:『君ならできる』小出義雄著 p201 幻冬舎刊 誇張でも何でもなく、私は足音を聞いただけで、それが選手のうちの誰であるかがちゃんと分かる。
選手にはそれぞれに性格があり、足音も違うのである。ハタハタバタとせわしない足音 を立てて来る選手もいれば、静かにソツと来る選手もいる。また、ドアの叩き方にしても、トントンと軽く叩く選手もいれば、ドンドンと勢いよく叩く選手もいる。
それは日頃から注意して選手を見ていれば、誰でも分かることである。私はそう思うのだが、実際はなかなかできない指導者もいる。
そういう人は、要するにいろいろなところに細かく気を遣うことのできない人である。
気を遣うことができる人なら、選手の性格や癖などはちゃんと把握できるはずだ。
私は、些事に細かく気を遣うことができない人は、監督には向いていないと思う。
たとえば、シャワ1を浴びるとき、まわりに石鹸の泡が飛び散っているのも構わずにさっさと出てしまう人がいる。その人はそういう性格なのである。
私は、後から利用する人のことを考えて、ちゃんと泡を洗い流して椅雇にしないと気が済まない。私の性格である。
トイレを使うときも同じで、もしも便器が汚れていたら、ちゃんと綺寮にして出る。次に使う人が気持ちよく使えるようにしておいてあげるのである。
「自然に気を配れる人間じゃなかったら、監督にはならないほうがいいぞ」
私は、コーチや選手たちにいつもいっている。
男だけの酒の席では、こんな話をすることもある。
「監督になるのなら、女性をパッと見た瞬間、彼女が自分の誘いに乗るかどうかを見抜けるようでないといけないよ。それが百パーセント見抜けないうちは、まだ監督は無理だね」
要するに、監督は何よりも人の心が読めないといけないのだ。出会った瞬間に、その人が自分をどう思っているのかを的確に察するようでないと務まらない。もちろん、経験と勘が必要である。
監督は選手とコミュニケーションを取る必要がある。そしてどんなときにも、彼女がどういう言葉を掛けたら喜んでくれ、何をいったら傷つくのかということを、あらかじめ把握しておくことが大切だ。
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