「身の丈」経営,「身の程」人生

身の丈,身の程を知って生きる・・・・・

生涯現役を貫いた俳人 金子兜太さん

2019-05-01 02:30:03 | 人生100歳時代

 嵐山光三郎さんの『年をとったら驚いた!』(新潮社刊)の一項に,昨年2月に98歳で亡くなった俳人の金子兜太(かねこ・とうた)さんが92歳のとき行われた「海程」創刊50周年記念祝賀会での出席者の祝詞がユーモアたっぷりに紹介されいる。

トラック島時代の上官だった西澤実さん(94歳)は,「金子君はな、戦争中のトラック島で負けそうなとき、陸海軍合同俳句会をやったとんでもねえ野郎だア」と大声で演説して、名調子であった。
 そのときにつくったのが、魚雷の胴にトカゲが這い廻るって旬だ (魚雷の丸胴蜥蜴這い廻りて去りぬ)。しばらくすると、薄っぺらい俳句誌を送ってきやがって、それが「海程」創刊号だった (拍手)。それがなんだ、50周年号は机の上に置くと立つよ。広辞苑みたいなもんだ (拍手、拍手)。
宇多喜代子さんの祝詞は,「かつて宇多喜代子をバイ菌から守る会がありました」。バイ菌とは前衛俳句と呼ばれたころの金子兜太さんで、遠慮がない。

 

年をとったら驚いた!
嵐山光三郎
新講社

 

雑誌『兜太 TOTA』第1号 〔特集・存在者 金子兜太〕

 

現役大往生した、俳人金子兜太。その思想を探る“生きる勇気
が湧く"雑誌、創刊!
去る2月20日、98歳で急逝した俳句界の巨星、金子兜太
(1919-2018)。
社会性俳句に始まり、造型俳句、前衛俳句、定住漂泊、荒
凡夫、ふたりごころ、いきもの諷詠、アニミズムと句境を
深め、戦後俳句界の重要な現場に常に立ち会ってきた金子
兜太氏。その精神と肉体の融合が結晶する「存在者」の思
想を継承し、俳句界を超えて広く文芸・文化・思想関係の
方々の参加による「総合誌」を創刊する。

 

藤原書店 ¥ 1,296

 金子兜太(かねこ・とうた)さんの足跡をたどり,その仕事にさまざまな角度から光を当てる雑誌「兜太 Tota 」(藤原書店)の創刊号が販売されている。2017年に行われた本人へのインタビューを中心に,論考やエッセ「を掲載。瀬戸内寂聴さんやドナルド・キーンさんも編集顧問に名を連ね,メッセージを寄せている。
 編集集主幹を務める俳人の黒田杏子(ももこ)さんは,「現役で最後まで生きて仕事をした。こういう人はおられない。先生からいただいたご恩に対して私ができるご恩返しは,金子兜太という人を皆さんと深く考えていくことだ」と述べた。編集長を務める俳人筑紫磐井(ばんせい)さんは「兜太も放っておいたらカビが生える。若い世代の批評も盛り込んでいきたい」,藤原書店の藤原良雄社長は「兜太さんの人柄から生活,生きざま,そう心うものに似合つ雑誌になればいい」と語った。 兜太さんも,雑誌の「名誉顧問」として名を連ねる。創刊号は1296円。

 

雑誌『兜太 Tota』 vol.2 〔特集・現役大往生〕
黒田 杏子,筑紫 磐井
藤原書店

    (以上の出典:信濃毎日新聞 2018-10-27 11面

 金子兜太さんの長男,金子真土(まつち)さんは,戦争体験と江戸時代の俳人,小林一茶の存在が兜太さんの人間観をつくったと指摘。異なる主張に耳を傾けず,勇ましい発言が流布される風潮を「父は非常に危供していた」と明かし,「人間は性悪なものとみていた父が頼ったのは知性。知性をいかに豊かに持つかで,人間はなんとか皆と生をていけると考えていた」と語っておられる。

 

金子兜太 私が俳句だ (のこす言葉 KOKORO BOOKLET)

 反骨の俳人が最後に残した言葉。一つのことを極めた先輩が生きた
 知恵を切実な言葉で伝える、語り下ろし自伝シリーズ創刊。

平凡社  ¥ 1,296
金子兜太自選自解99句
「海程」主宰、朝日俳壇選者である金子兜太氏の自選代表句99句を
肉筆色紙からの印刷で収める自選自解集。兜太氏の自選による自解
集は初めて。作句開始75年、俳誌「海程」の創刊50周年記念出版。
角川学芸出版 ¥ 2,365


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