安愚楽牧場の操作終結 <東京地検 旧経営陣、詐欺罪では不起訴に>
元社長の三ケ尻久美子被告
7万3000人から4200億円余を集めて経営破綻した「和牛商法」の安愚楽(あぐら)牧場(栃木県那須塩原市)。元社長の三ケ尻久美子被告(69)と元専務執行役員の増渕進(59)被告と元専務執行役員の大石勝也(74)の旧経営陣3人は特定商品預託法違反容疑で,すでに起訴され公判にはいっている。
だが,東京地検は10月11日、旧経営陣3人に対する詐欺罪での刑事告訴については,嫌疑不十分で不起訴処分とした。安愚楽牧場に対する捜査は終結することになる。
地検によると、同社は経営状態が悪化した後も、国内外への販路拡大や金融機関との融資交渉を継続していたという。地検は「事業破綻が分かっていたとは積極的に認められない。意図的にだましたとは認めがたい」としている。
最高で2年以下の懲役の量刑となる特定商品預託法違反罪は「入り口」で、捜査は当初から詐欺罪の立件を目指していた。ところが,最高で10年以下の懲役となる量刑の重い刑法の詐欺罪を適用するには、顧客を故意にだましたという明確な犯意の立証が必要だった。不起訴の背景には投資対象の繁殖牛を有価証券などと同じ「金融商品」と同様に扱い、出資を呼びかけていた同社に「事業実体」があったことが大きい。
安愚楽牧場同社をめぐっては、出資者58人が「牛が存在しないのに嘘をついて出資金を集めていたのは詐欺罪に当たる」などとして、警視庁や各地の警察本部に刑事告訴していた。
弁護団は東京地検の不起訴処分を不服として、検察審査会に申し立てる方針。
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和牛詐欺 人を騙す犯罪はなぜなくならないのか 共同通信社記者「斉藤知彦」氏が、徹底取材の「詐欺犯罪はなぜなくならないのか」。 講談社(1300円)
被害額4200億円余、被害者7万人と、戦後最大規模の消費者被害事件となった安愚楽牧場事件。1990年代、そして2000年代後半に起 こった「ふるさと牧場事件」など、怪しい和牛預託商法が行われ、そして摘発されてきた歴史があるにもかかわらず、悲劇はまたもや繰り返されたのはなぜなのか?
「詐欺専門記者」とj自認の共同通信社記者が、徹底取材で分析した「詐欺犯罪はなぜなくならないのか」。