昨年2月に98歳で亡くなった俳人の金子兜太(かねこ・とうた)さん。人生100年時代の先駆者とも言うべき,その人生は多くの人々の心を惹きつけた。
金子さんは、埼玉県で医師の息子として生まれ、1943年に東大経済学部を卒業。日本銀行に入行するが、海軍主計中尉としてトラック島に赴任し、飢餓や捕虜生活を経験した。
日銀復帰後は、保守的な会社に反発し、組合活動に没頭。そのために福島、神戸、長崎などの支店に回され、本人曰く「冷や飯を食わされる」ことになった。
日銀に勤務しながら,1956年に現代俳句協会賞を受賞。62年にのちに主宰をつとめる俳誌「海程」を創刊する。83年には現代俳句協会会長に就任、87年には朝日俳壇の選者となった。80代半ばの頃,金子氏の俳人としての評価はさらに高まっていった。金子氏の俳句は,「生きているだけで尊い」という,アニミズム的な境地に入り,金子氏のライフスタイルや人生哲学に共感する人も増えていった。
金子兜太さんの長男,金子真土(まつち)さんは,戦争体験と江戸時代の俳人,小林一茶の存在が鬼太さんの人間観をつくったと指摘。異なる主張に耳を傾けず,勇ましい発言が流布される風潮を「父は非常に危供していた」と明かし,「人間は性悪なものとみていた父が頼ったのは知性。知性をいかに豊かに持つかで,人間はなんとか皆と生をていけると考えていた」と語っている。
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雑誌『兜太 TOTA』第1号 〔特集・存在者 金子兜太〕 |
現役大往生した、俳人金子兜太。その思想を探る“生きる勇気
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藤原書店 ¥ 1,296 |
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死者と先祖の話 (角川選書) | |
柳田国男『先祖の話』と折口信夫『死者の書』という、 戦時下に著された二つの書をてがかりに、鎮魂・供養・ 往生・看取り等から、日本古来の信仰や死生観を見つ め直す。 |
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KADOKAWA 山折 哲雄著 ¥1,728 |
『死者と先祖の話 (角川選書)』で著者・ 山折 哲雄 は言う。とどまることのない延命長寿化のなか、無葬無墓・寺院消滅・脱宗教など、死を棚上げしたまま、社会現象だけが肥大化し、ただ声高に叫ばれるようになった、と。
核家族化が当たり前の現代にあって、みずからや家族の死を、私たちはどのように迎えればよいのか。古来、日本人は死をどのように受け止め、死者はどう供養され、先祖はいかにして祀(まつ)られてきたのか。
折口信夫『死者の書』と柳田国男『先祖の話』を手掛かりに、浄土信仰や山岳信仰、東京裁判や遺骨収集、源信の『往生要集』、そして現代の歌謡曲や九相図(仏教絵画)などにまで思索を巡らし、鎮魂・供養・往生・看取(みと)りなどから、日本人の信仰や死生観を見直していく。
山折 哲雄 (やまおり てつお、1931年5月11日- ):宗教学者、評論家。専攻は宗教史・思想史。国際日本文化研究センター名誉教授(元所長)、国立歴史民俗博物館名誉教授、21世紀高野山医療フォーラム副理事長、総合研究大学院大学名誉教授、平城遷都1300年記念事業評議員。教育改革国民会議委員。角川財団学芸賞、和辻哲郎文化賞、山本七平賞選考委員。
Kindle版 |
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第一章 戦後と東北
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KADOKAWA / 角川学芸出版 山折 哲雄著 ¥1,600 |
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