日本航空社長植木義晴氏は,稲盛和夫名誉会長は,ビジネス誌のインタビュー記事で,「アメーバ経営と意識改革の二つをJALに持ち込むことで,当社に最も欠けていたもの,すなわち“心”を入れてくれた。心とはつまり,採算意識であるとか,責任の所在であるとか,当事者意識のことだ。」と稲盛氏の功績を語っている。
また,日本能率協会が9月5日発表の「「第15回 新任役員の素顔に関する調査」(N=1445)http://www.jma.or.jp/news/release_detail.html?id=180によると,得票率17.0%で理想の経営者のトップに,稲盛和夫氏選ばれている。
その一方で,「稲盛氏の言動は宗教じみている」との批判も根強い。さらには,稲盛氏は「利益なくして安全なし」として安全より利益を優先する立場に立っていると,その経営姿勢を追求する動きもある。
必要のない整理解雇を撤回しないまま,大量に新規募集するという道理のないやり方が問題だ。人員削減をやりすぎ,現場では過密労働がはびこり,安全運航が脅かされている。退職者が続出し,事業拡大しようにも人員不足の状態に陥った。再建に向けて路線復活など事業拡大するなら,解雇を撤回し,従業員を職場戻すのが先決である,と論じている。
こうした批判論を幾つか抜き書きしてみた。その詳細は,各出典(ホームページ)を参照いただきたい。
◆ 衆議院国土交通委員会2012年8月21日 -日本航空の再生問題に関する参考人質疑-
出典:http://www.jalobkon.justhpbs.jp/news2012.8.22kokkaitvjal.pdf JAL退職者懇談会ホームページ
衆議院国土交通委員会での参考人質疑で,共産党の穀田議員からの「整理解雇の目的は組合幹部の狙い撃ちだったのではないか」と尋ねられた小野展克嘉悦大学准教授は,「信頼できるニュースソースから聞いた。ご認識の通りだと思う」とのやりとりしている。
〇「しんぶん赤旗」2012年8月22日(水)
8月21日の衆院国土交通委員会で日本航空の再生問題に関する参考人質疑が行われ,日本共産党の穀田恵二議員は「整理解雇を撤回すべきだ」と迫りました。参考人として出席した日航の大西賢会長はまともに答えられず,労働者165人の整理解雇の不当性が改めて浮き彫りになりました。
穀田氏は,2010年度の営業費用は1兆1738億円で,被解雇者の人件費はわずか0・13%にすぎないことをあげ,稲盛和夫会長(当時)が認めたように整理解雇の必要がなかったことは明らかだと強調。「JAL『整理解雇』の裏側」を書いた参考人の小野展克嘉悦大学准教授に対し,「整理解雇の目的は組合幹部の狙い撃ちだったのではないか」と尋ねると,小野氏は「信頼できるニュースソースから聞いた。ご認識の通りだと思う」と述べました。
さらに穀田氏は,日航が客室乗務員84人を整理解雇しながら510人の新人を採用し,10月に100人以上,来春に200人の採用計画を立てていることをあげ,「整理解雇された労働者に非はないのだから,人員が不足したら,まずその人たちを会社に戻すのが先決だ」と追及。大西氏は,「新たな日本航空を背負う人材を採用していく」としか答えられませんでした。
穀田氏は,日航が「利益なくして安全なし」(稲盛氏)として安全より利益を優先する立場に立っていることをあげ,トラブルや不具合の多発で国交省も立ち入り検査に入り,人員削減によって安全が脅かされていると認めていると追及。大西氏は「常に意識を高く持つことが大切」などと述べるだけでした。
穀田氏は,国際労働機関(ILO)の結社の自由委員会が日本政府に勧告を出し,日航と労働組合代表の協議の保障を求めていることに言及。「政府は努力すべきだ」と迫ると,羽田雄一郎国交相は「適切に対処したい」と答えました。
出典:http://www.jalobkon.justhpbs.jp/news2012.8.22kokkaitvjal.pdf JAL退職者懇談会ホームページ
◆日本航空 危険な「稲盛教」経営
出典:http://www.sentaku.co.jp/category/economies/post-1874.php (雑誌 選択)
・・・・・・(前略)
JAL経営陣は,フィロソフィを核とする「意識改革の成果」で経営の改善が進んだと誇示するが,不満を燻らせる社内からは,安全運航を犠牲にしかねない危険な利益至上主義の徹底や経営実態の隠蔽など,本業の基盤が綻びつつある実態が伝わる。そこには,そこには,かつてナショナルフラッグシップを担った名門企業の片鱗などどこにもない。JAL内部に一体何が起きているのか。
安全よりコストカット優先
八月,アジア方面の国際線フライトでの出来事だ。JALのある客室乗務員は,息を呑んだ。機長が,台風に突っ込んでいくかのような航路を最後まで変更せず,その理由を「台風を迂回すると,燃料費が二十万円余計にかかる」と前代未聞の説明をしたからだ。運航ブリーフィング(打ち合わせ)で同機長は,「この便の収支を知っていますか」とも言ったと伝わる。...
(以下略・http://www.sentaku.co.jp/category/economies/post-1874.php 参照)
◆京セラ “稲盛教”の洗脳力
出典:http://www.mynewsjapan.com/reports/947 (MyNewsJapan 記事)
今夏,京セラを辞めたばかりの元中堅社員が,同社の社内事情について解説する。「創業者の稲盛和夫名誉会長が作った仕組みは確かに天才的。でも中途で入ると,その徹底した管理主義についていけない。私がいた部署は中途入社組が百数十人のうち3人いましたが,この数年で全員やめてしまった。いまや全員プロパーです。感覚的にいうと,中途で入っても1年以内に半分くらいは辞める。最近は新人の離職率も上がっています」 ・・・(以下略・http://www.mynewsjapan.com/reports/947 参照)。
◆私たち労働者は日航123便御巣鷹山事故の教訓を忘れない
出典 http://www.bekkoame.ne.jp/~jcau/123leaflet.pdf ≪日本航空の不当解雇撤回をめざす国民支援共闘会議≫
日本航空は昨年11月19日に経営破綻し,政府主導の下に再建計画が進められています.2010年度は計画の約3倍にあたる営業利益を達成しました。一方,現場では大規模な人員削減・リストラによって社員の流失が続き深刻な影響が出ています。昨年の秋以降,安全トラブルの発生が連続し,そのため2月には国土交通省航空局の立ち入り調査が実施されました。
今まさに,白本航空の再建が「安全第-の再建」かF利益優先の再建」か,問われています。
日航の稲盛会長はビジネス誌の対談記事で,社員に対して,御鷹山事故がトラウマとなっていると批判し“利益なくして安全なし”という経営理念を強調しています。この稲盛会長の発言は,520名の犠牲者とその家族の“空の安全を願う気持ち”を冒涜するもので・・・・(以下略・http://www.bekkoame.ne.jp/~jcau/123leaflet.pdf 参照)。
⇒⇒ 京セラグループのCSRは「京セラフィロソフィ」の実践 http://www.kyocera.co.jp/ecology/csr/
⇒⇒ 「京セラフィロソフィ」とは http://www.kyocera.co.jp/ecology/report/pdf2010/06_07.pdf
▼稲盛流経営 バックナンバー
・稲盛和夫さんと逆境
・日航再生・稲盛和夫氏・2 JAL再建の原動力-『JALフィロソフィー』による意識改革
・日航再生・稲盛和夫氏・1 JAL再建の原動力-『JALフィロソフィー』による意識改革
巨象の漂流 JALという罠 (講談社BIZ) | |
小野展克著 | |
講談社 |