>>>日航再生・稲盛和夫氏・2 JAL再建の原動力-『JALフィロソフィー』による意識改革
“日の丸フラッグ”にあぐらをかいて破綻に追い込まれたJAL。だが,京セラの稲盛名誉会長の陣頭指揮下のもと,2010年の経営破たんからわずか2年で営業利益は2000億円と,業績は急回復し,“スピード再生”を果たした。
「JAL再生」のバックボーンは,稲盛経営哲学」の注入にある。これは,フィップ・コトラーの提唱する「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則 」,ジェームズ・C・コリンズが説く「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則 」にも通じるものがある。この点は,順次,考察したい。
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稲盛さんは,就任するや幹部と“合宿”,社員に対しては,稲盛イズムともいえる『JALフィロソフィー』で意識改革を図った。同時に稲盛氏は自身が編み出した経営管理手法「アメーバ経営」による『部門別採算制度』で,部門ごとに収入は最大に経費は最小に抑えて利益追求するというコスト改革を断行した。
なお,部門別採算制度で部門ごとに利益追求すると,社内で軋轢が生じかねないことから,JALフィロソフィで,社員に経営意識を持たせると同時に、「利他のこころ」の醸成により軋轢の発生を防いでいる。この,フィロソフィをまとめた小冊子『JALフィロソフィー』を社員は携行している。
*「利他のこころ」
稲盛和夫氏によると「利他のこころ」とは、自分だけではなく、ほかの周りの人のための利益になっているかどうかということ。
--稲盛語録--
利を求める心は事業や人間活動の原動力となるものです。ですから、誰しも儲けたいという「欲」はあってもいい。しかし、その欲を利己の範囲にのみとどまらせてはいけません。人にもよかれという「大欲」をもって公益を図ることその利他の精神がめぐりめぐって自分にも利をもたらし、またその利を大きく広げもするのです。
◆稲盛和夫氏が提唱の「アメーバ経営」
アメーバ経営では,会社の組織を「アメーバ」と呼ばれる6~7人の小集団に分け,その中でリーダーを選び,各アメーバはリーダーが中心となって計画を立て,全員の知恵と努力により目標の達成を図る。これは,現場の社員ひとりひとりが主役となり,自主的に経営に参加する「全員参加経営」にほかならない。
同時に,経営をオープンにし,部門別の経営の実態が誰にでもわかるようにする。さらに,アメーバ経営は経営哲学と一体でなければならないとし,そのルールや仕組みのひとつひとつが稲盛氏の企業哲学と明確につながるようにしている。
また,アメーバごとに経営の内容が正確に把握できる,独創的で精緻な部門別採算管理の仕組みを構築する。「時間当たり採算=(売り上げ-経費)÷労働時間」を算出し,時間当たり採算の最大化を図る。時間当たり採算の目標値を月次,年次で策定。労働時間短縮や売り上げ増加策を実行に移して目標達成を目指す。
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稲盛氏は京都のセラミックメーカーで技術者として勤務していたが、1959年、27歳の時に独立して京都セラミック(現京セラ)を設立。同社を連結売上高で1兆円超の企業に育て上げた。84年には通信の自由化をにらみ、いち早く通信事業に参入。第二電電(現KDDI)を設立し、NTTの独占体制に風穴を開けた。
京セラは82年には経営難に陥ったトランシーバーメーカーのサイバネット工業を吸収合併、翌83年には中堅カメラメーカーだったヤシカを取り込み、立て直した。98年には会社更生法の適用を申請した複写機メーカー、三田工業(現・京セラミタ)を再建。
⇒⇒ 京セラグループのCSRは「京セラフィロソフィ」の実践 http://www.kyocera.co.jp/ecology/csr/
⇒⇒ 「京セラフィロソフィ」とは http://www.kyocera.co.jp/ecology/report/pdf2010/06_07.pdf
◆バックナンバー
⇒⇒ 日航再生・稲盛和夫氏・1 JAL再建の原動力-『JALフィロソフィー』による意識改革
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