報道によると,京セラ創業者の稲盛和夫名誉会長(86)が若手経営者に経営哲学を伝授する勉強会「盛和塾」は,2019年末で活動を終了し,解散する。稲盛氏が高齢となり,精力的な活動を続けることが難しくなったため。
>>>稲盛和夫(いなもり・かずお)
1932年,鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年,京都セラミック株式会社(現・京セラ)を設立。社長,会長を経て,97年より名誉会長。84年に第二電電(現・KDDI)を設立し,会長に就任。2001年より最高顧問。10年には日本航空会長に就任。代表取締役会長,名誉会長を経て,15年より名誉顧問。
このほか,1984年に稲盛財団を設立し,「京都賞」を創設。毎年,人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰している。また,若手経営者が集まる経営塾「盛和塾」の塾長として,後進の育成に心血を注ぐ。
主な著書に『生き方』(サンマーク出版),『働き方』(三笠書房),『稲盛和夫のガキの自叙伝』(日本経済新聞出版社),『成功への情熱』(PHP研究所),『君の思いは必ず実現する』(財界研究所),『人生と経営』(致知出版社),『燃える闘魂』(毎日新聞出版),『ど真剣に生きる』(NHK出版)などがある。
稲盛和夫オフィシャルホームページ http://www.kyocera.co.jp/inamori/
>>> 『考え方~人生・仕事の結果が変わる』
善(よ)き思いに満ちていること
考え方~人生・仕事の結果が変わる 出典:p251~p253
私は再建の任を終えて、二〇一三年三月に日本航空の取締役を退任しましたが、それまでの日々を振り返り、なぜあのような奇跡的な再生を果たすことができたのかと、夜、床につくときにしみじみと考えることがあります。
まずは、何よりも社員たちの心が変わり、られます。
たとえば、受付カウンターのスタッフは、るのではなく、常にお客様の立場になって、ことは何か」「お客様が困っていることで、仕事の姿勢、行動が変わったことが挙げられます。
たとえば,受付カウンターのスタッフは,チェックインの際、杓子定規に対応をすろのでなく,「お客様に今、本当に必要とされている何か対応できることはないか」「お客様が困っていることで,何か対応できることはないか」を考え、自発的に行動してくれるようになりました。
また、お客様とフライトを共にするキャビン・アテンダントたちも、マニュアルに書かれていないことでも、「こういうことをしたら、お客様は喜んでくれるのではないか」と考えて、お客様の要望を先取りするように、臨機応変にサービスを提供してくれるようになりました。
さらに、それまでは通り一遍の機内アナウンスをしていた機長たちも、いつも同じ言葉で話すのではなく、その日ご搭乗いただいたお客様に対して、心のこもった言葉を自ら考え、アナウンスをしてくれるようになりました。
かつての日本航空は、日本を代表するナショナルフラッグキャリアという自負心から、倣慢さ、横柄さ、そしてプライドの高さが鼻につき、お客様をないがしろにするようなことがまま見受けられました。そのような社員の心のあり方が日本航空を破綻おとしいに陥れたのです。
一方、日本航空の再生において、私は全社員に、「真面目に一生懸命仕事に打ち込む」こと、「感謝の心を持つ」こと、「常に謙虚に素直な心を持つ」ことといった、人間の「徳」に基づいた書き「考え方」を持つことの大切さを伝え続けました。そのような「考え方」が浸透するにつれ、官僚的な体質は少しずつなくなり、マニュアル主義といわれていたサービスも改善され、社員一人ひとりの行動が大きく変化していきました。
それまで「自分だけよければいい」という利己的な「考え方」に染まっていた心が、「お客様のため」、また「仲間のため」といった、他に善かれかしという「考え方」に変わっていったことで、それぞれの持ち場、立場で、懸命に仕事に取り組んでくれるようになったのです。
こうした日本航空の社員たちの変化によってお客様へのサービスが向上し、搭乗してくださるお客様も次第に増えていき、それにしたがって収益も飛躍的に改善していきました。こうして、経営破綻に至るまで悪化し続けていた日本航空の運命は好転し始めました。
つまり、社員たちの意識と行動の変化という「自力」が、お客様からの応援という「他力」を呼び起こすことによって、日本航空は運命を変え、世界高収益性を誇る航空会社に生まれ変わることができたのです。
考え方~人生・仕事の結果が変わる | |
京セラ創業から第二電電(現KDDI)の設立、そして、2010年の経営破綻からわずか2年で日本航空をスピード再生させた当代随一の経営者・稲盛和夫が、自ら一貫して実践し、社員一人ひとりに語り続けてきた、「自己成長を促し、真の充足をもたらす」唯一つの方法を示す。渾身の書下ろし新刊!! |
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大和書房 1620円 |
○利他(りた)
「情けは人のためならず」と言われるように,優しい思いやりに満ちた心、行動は、
相手に善きことをもたらすのみならず、必ず自分に返ってくるものです。
○貢献
人の行いのなかで最も尊いものは、人のために何かをしてあげるという行為です。
人はふつう、まず自分のことを第一に考えがちですが、実は誰でも人の役に立ち、
喜ばれることを、最高の幸せとする心を持っています。
人間の本性とはそれほど美しいものです。
九 世のため,人のために行動すること --自己犠牲をいとわず相手に尽くす
出典:『考え方』p228~p233
◎利他(りた)
「情けは人のためならず」と言われるように,優しい思いやりに満ちた心,行動は,
相手に善きことをもたらすのみならず,必ず自分に返ってくるものです。
不平不満を言わず,常に謙虚にして騎らず,生きていることに感謝する。誰にも負け
ない努力を重ね,自分が犠牲を払ってでも世のため人のために尽くそうとする。そう
した「他に善かれかし」という優しい思いやりに満ちた,美しい「利他の心」が,じ
つは自分自身の人生をもよくしていきます。
「自分さえよければいい」という利己の心をむき出しにして世間を渡っていけば,必
ず乳轢が生じ,さらに悪い方向へと自分を追いやってしまいます。そうした利己の心
を離れ,まず自分から思いやりの心で周囲に接するようにする。一人ひとりがそうし
た「利他の心」を持つことで,潤いのある平和で幸福な社会が築かれていくはずです
し,一人ひとりの運命も好転していくはずです。