「働き方改革関連法2024年問題」とは、狭い意味では働き方改革関連法の中の一つ「時間外労働の上限規制」経過措置として施行から5年間の猶予期間が設けられた業種があるが、その猶予期間が平成36年3月31日までとされていたことから起きる問題のこと。そして平成36年3月31日とは令和6年3月31日のことであり、令和6年3月31日とは2024年3月31日のことだから「2024年問題」。
働き方改革関連法とは
(1)働き方改革関連法の成立経過
2015年(平成27年)4月3日、「労働基準法等の一部を改正する法案」が国会に上程されましたが、継続審議となり、その労働基準法等の改正法案の内容を一部修正して包摂する働き方改革関連(一括)法案が2018年(平成30年)4月6日に国会に上程。そして6月29日に可決成立し、7月6日には働き方改革関連法は公布された。
(2)働き方改革関連法の正式名称と目的
働き方改革関連法の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」。
また働き方改革関連法の目的は、働く人(労働者)がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する「働き方改革」を推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じることとされているが、内容は次のとおり。
(3)働き方改革関連法の内容
新労働基準法・新労働安全衛生法
<新労働基準法(改正労働基準法)>
・時間外労働の上限規制
1.36協定の協定事項を整理し追加
2.時間外労働(勤務)上限を条文に記載
3.特別条項発動時の上限
4.時間外労働に関する新たな指針の策定
5.適用除外の範囲の縮小
・中小企業の月60時間超の割増賃金の猶予措置の廃止
・一定日数以上の有給休暇の確実な取得
・フレックスタイム制の見直し
1.清算期間上限の延長
2.法定労働時間枠の計算方法の例外
・高度プロフェッショナル制度の創設
<新労働安全衛生法等(改正労働安全衛生法等)>
・面接指導等
1.長時間労働発生時の医師面談制度強化と労働時間把握義務強化
2.医師面談制度の特例
・産業医と産業保健機能の強化
1.産業医の活動環境整備
2.事業者の管理義務等
・じん肺法の関連規定整備
<労働時間等設定改善法の改正>
・勤務間インターバル制度の普及促進
・労働時間等設定改善委員会の活用強化
同一労働同一賃金
<パート労働法と労働契約法の再編>
・パート労働法の名称変更
・定義の整備
・基本理念の追加等
・均等・均衡待遇ルールの整備
・説明義務の強化
・指針の内容追加と整備
・紛争の解決他
・労働契約法の一部改正
<派遣法の改正>
・情報の提供
・不合理な待遇の禁止等
・職務の内容等を勘案した賃金の決定
・就業規則の作成
・待遇に関する事項の説明
・その他派遣元が講ずべき措置
・その他派遣先が講ずべき措置
・紛争の解決等
<雇用対策法の改正>
・法律の名称変更
・目的等の追加と変更
・基本方針の策定
労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法の改正
(4)働き方改革関連法の施行日
労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法の改正の施行日は2019年4月1日だが、中小企業における残業時間の上限規制の適用は2020年4月1日。また、中小企業における月60時間超の残業の、割増賃金率引上げの適用は2023年4月1日。
(5)労働時間の上限規制
残業時間(時間外労働)の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできない。
また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。 また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月まで。ただし、上限規制には適用を猶予・除外する事業・業務がある。
(6)「労働時間の上限規制」適用猶予・除外事業・業種
労働時間の上限規制の適用を猶予・除外される事業・業務は次のとおり。
・自動車運転の業務
改正法(新労働基準法)施行5年後に上限規制が適用される。ただし、適用後の上限時間は、年960時間とし、将来的な一般則の適用については引き続き検討されることに。
・建設事業
改正法(新労働基準法)施行5年後に上限規制を適用される。ただし、災害時における復旧・復興の事業については、複数月平均80時間以内・1か月100時間未満の要件は適用しない。この点についても、将来的な一般則の適用について引き続き検討されることに。
・医師
改正法(新労働基準法)施行5年後に上限規制が適用される。ただし、具体的な上限時間等については、医療界の参加による検討の場において、規制の具体的あり方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得ることとされている。
・鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業
改正法(新労働基準法)施行5年後に上限規制が適用される。
・新技術・新商品等 の研究開発業務
医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、時間外労働の上限規制は適用されない。
なお、時間外労働が一定時間を超える場合には、事業者は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないこととされる。
(7)「勤務間インターバル」制度の導入促進
「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みです。この仕組みを企業の努力義務とすることで、働く人の十分な生活時間や睡眠時間を確保します。
(8)年5日間の年次有給休暇の取得(企業に義務づけ)
改正前は働く人が自ら申し出なければ、年休を取得できないが、改正後は使用者が働く人の希望を聴き、希望を踏まえて時季を指定し、年5日は有給休暇を取得。
(9)月60時間超の残業の割増賃金率引上げ
改正前は月60時間超の残業割増賃金率は大企業が50%、中小企業が25%だが、改正後は中小企業の割増賃金率が引上げられ、月60時間超の残業割増賃金率を大企業、中小企業ともに50%とされる。
(10)労働時間の客観的な把握(企業に義務づけ)
改正前は、割増賃金を適正に支払うため、労働時間を客観的に把握することを通達で規定し、裁量労働制が適用される人などは、この通達の対象外。
つまり、裁量労働制の適用者は、みなし時間に基づき割増賃金の算定をするため、通達の対象としないということ。また管理監督者は、時間外・休日労働の割増賃金の支払義務がかからないため、通達の対象としないということ。
改正後は、健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況を客観的な方法その他適切な方法で把握するよう法律で義務づけられ、労働時間の状況を客観的に把握することで、長時間働いた労働者に対する、医師による面接指導を確実に実施されることに。
なお、面接指導とは「労働安全衛生法」に基づいて、残業が一定時間を超えた労働者から申出があった場合、使用者は医師による面接指導を実施する義務がある。
(11)「フレックスタイム制」の拡充
改正前は労働時間の清算期間最長1か月だが、改正後は労働時間の清算期間最長3か月とし、子育てや介護といった生活上のニーズに合わせて労働時間が決められ、より柔軟な働き方が可能に。
(12)「高度プロフェッショナル制度」創設
「高度プロフェッショナル制度新設」の目的は、厚生労働省によると「自律的で創造的な働き方を希望する方々が、 高い収入を確保しながら、メリハリのある働き方をできるよう、 本人の希望に応じた自由な働き方の選択肢を用意」するためとされている。また、厚生労働省の説明では「制度の創設に当たっては、長時間労働を強いられないよう、以下のような手厚い仕組みを徹底します」とのこと。
1 高度プロフェッショナル制度導入の際の企業内手続
事業場の労使同数の委員会(労使委員会)で、対象業務、対象労働者、健康確保措置などを5分の4以上の多数で決議することが必要とされている。また、書面による本人の同意を得る(同意の撤回も可)ことも必要とされている。
2 現行の労働時間規制から新たな規制の枠組みへ
改正前の労働時間規制とは、36協定(時間外・休日労働の規制)と時間外・休日及び深夜の割増賃金になるが、新たな規制とは「高い交渉力を有する高度専門職」については、その働き方にあった健康確保のための新たな規制の枠組みが設けられる。
3 健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置
<必須の措置>
年間104日以上、かつ4週4日以上の休日確保を義務付け
<選択の措置>
必須の措置に加えて、以下のいずれかの措置を義務付け(どの措置を講じるかは労使委員会の5分の4の多数で決議)
・インターバル規制(終業・始業時刻の間に一定時間を確保)+ 深夜業の回数を制限(1か月当たり)
・健康管理時間の上限の設定(1か月または3か月当たり)
・1年につき、2週間連続の休暇取得(働く人が希望する場合には1週間連続×2回)
・臨時の健康診断の実施(健康管理時間が一定時間を超えた場合または本人の申出があった場合など一定要件に該当する場合)
<その他の健康・福祉確保措置>
必須の措置、選択の措置に加え、健康・福祉確保措置(健康・福祉確保措置は有給休暇の付与、健康診断の実施など労基則で規定される中から選択)
4 対象者の限定
<対象は高度専門職のみ>
高度の専門的知識等を必要とし、従事した時間と成果との関連が高くない業務
<対象は希望者のみ>
職務を明確に定める「職務記述書」等により同意している人
<対象は高所得者のみ>
年収が「労働者の平均給与額の3倍」を「相当程度上回る水準」以上の人
(13)産業医・産業保健機能の強化
1 産業医の活動環境の整備
改正前、産業医は労働者の健康を確保するために必要があると認めるとき、事業者に対して勧告することができるとされていた。
改正後は、事業者から産業医への情報提供を充実・強化され、事業者は長時間労働者の状況や労働者の業務の状況など、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければならないことに。
また、改正前、事業者は産業医から勧告を受けた場合は、その勧告を尊重する義務があったが、改正後は産業医の活動と衛生委員会との関係を強化され、事業者は産業医から受けた勧告の内容を事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告することとしなければならないこととされる。
2 労働者に対する健康相談の体制整備、労働者の健康情報の適正な取扱いルールの推進
改正前、事業者は、労働者の健康相談等を継続的かつ 計画的に行う必要があった(努力義務)が、改正後は、産業医等による労働者の健康相談が強化され、事業者は産業医等が労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければならないこととされる。
また、事業者による労働者の健康情報の適正な取扱いが推進され、事業者による労働者の健康情報の収集、保管、使用および適正な管理について指針が定められ、労働者が安心して事業場における健康相談や健康診断を受けられるようにされる。
労働時間の上限規制 条文と附帯決議
働き方改革関連法案が2018年(平成30)に可決・成立し、働き方改革関連法が公布さたが、この働き方改革関連法により労働時間の上限規制が規定された労働基準法36条などが改正された。
なお、改正後の労働基準法は新労働基準法と呼ばれる。また、新労働基準法第36条で変更・追加または新設された項目(2項~6項、10項、11項)に。また働き方改革関連法案の付帯決議は労働時間上限規制に関係する箇所のみ選択して記載。
(1)新労働基準法 第36条
(時間外及び休日の労働)
第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
2項 前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
1 この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
2 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、1年間に限るものとする。第4号及び第6項第3号において同じ。)
3 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
4 対象期間における1日、1箇月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
5 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
3項 前項第4号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。
4項 前項の限度時間は、1箇月について45時間及び1年について360時間(第32条の4第1項第2号の対象期間として 3箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合に あっては、1箇月について42時間及び1年について320時間)とする。
5項 第1項の協定においては、第2項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第3項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第2項第4号に関して協定した時間を含め100時間未満の範囲内に限る。)並びに1年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め720時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第1項の協定に、併せて第2項第2号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が1箇月について45時間(第32条の4第1項第2号の対象期間として3箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあっては、1箇月について42時間)を超えることができる月数(1年について6箇月以内に限る。)を定めなければならない。
6項 使用者は、第一項の協定で定めるところによって労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であっても、 次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
1 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、1日について労働時間を延長して労働させた時間 2時間を超えないこと。
2 1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 100時間未満であること。
3 対象期間の初日から1箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1箇月、2箇月、3箇月、4箇月及び5箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の1箇月当たりの平均時間 80時間を超えないこと。
7項 厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、第一項の協定で定める労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる。
8項 第1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長及び休日の労働を定め延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。
9項 行政官庁は、第7項の指針に関し、第1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
10項 前項の助言及び指導を行うに当たっては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない。
11項 第3項から第5項まで及び第6項(第2号及び第3号に係る部分に限る。)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない。
(2)衆議院における付帯決議
2 時間外労働の上限規制の適用が猶予される業務について、当該業務特有の事情を踏まえたきめ細かな取組を省庁横断的に実施して労働時間の短縮を図り、上限規制の適用に向けた環境の整備を 進めること。特に、自動車運転業務については、長時間労働の実態があることに留意し、改正法施行後5年後の特例適用までの間、過労死の発生を防止する観点から改善基準告示の見直しを行うなど必要な施策 の検討を進めること。
3 労働基準監督署においては、重大・悪質な法令違反について厳正に対処するとともに 労働基準関係法令が十分に理解されていないことに伴う法令違反も多数存在していること等を踏まえ、事業主に対する法令の一層の周知に 取り組むとともに、丁寧な助言指導等を行うことにより、事業主の理解の下、自主的な法令遵守が進むよう努めること。
(3)参議院における付帯決議
2 働き過ぎによる過労死等を防止するため、労使合意に基づいて法定労働時間を超えて仕事をすることができる時間外労働時間の上限については、時間外労働の上限規制が適用される業務だけでなく、適用猶予後の自動車の運転業務や建設事業等についても、時間外労働の原則的上限は月45時間、年360時間であり、労使は36協定を締結するに際して全ての事業場がまずはその原則水準内に収める努力をすべきであること、休日労働は最小限に抑制すべきことについて指針に明記し、当該労使に周知徹底を図るとともに、とりわけ中小企業に対し、その達成に向けた労使の取組を政府として適切に支援すること。
3 労使が年720時間までの特例に係る協定を締結するに当たっては、それがあくまで通常予見できない等の臨時の事態への特例的な対応であるべきこと、安易な特例の活用は長時間労働の削減を目指す本法の趣旨に反するもので、具体的な事由を挙げず、単に「業務の都合上必要なとき」又は「業務上やむを得ないとき」と定めるなど恒常的な長時間労働を招くおそれがあるもの等については特例が認められないこと、特例に係る協定を締結する場合にも可能な限り原則水準に近い時間外労働時間とすべきであることを指針等で明確化し、周知徹底するとともに、都道府県労働局及び労働基準監督署において必要な助言指導を実施すること。
4 特例的延長の場合においては、時間外労働時間の設定次第では四週間で最大160時間までの時間外労働が可能であり、そのような短期に集中して時間外労働を行わせることは望ましくないことを周知徹底すること。
5 事業主は、特例の上限時間内であってもその雇用する労働者への安全配慮義務を負うこと、また、脳・心臓疾患の労災認定基準においては発症前一箇月間の時間外・休日労働がおおむね百時間超又は発症前2箇月間から6箇月間の月平均時間外・休日労働がおおむね80時間超の場合に業務と発症との関連性が強いと評価されることに留意するよう指針に定め、その徹底を図ること。
6 時間外労働時間の上限規制が五年間、適用猶予となる自動車運転業務、建設事業、医師については、その適用猶予期間においても時間外労働時間の削減に向けた実効性ある取組を関係省庁及び関係団体等の連携・協力を強化しつつ、推し進めること。
7 自動車運転業務の上限規制については、5年の適用猶予後の時間外労働時間の上限が休日を含まず年960時間という水準に設定されるが、現状において過労死や精神疾患などの健康被害が最も深刻であり、かつそのために深刻な人手不足に陥っている運輸・物流産業の現状にも鑑み、決して物流を止めてはいけないという強い決意の下、できるだけ早期に一般則に移行できるよう、関係省庁及び関係労使や荷主等を含めた協議の場における議論を加速し、猶予期間においても、実効性ある実労働時間及び拘束時間削減策を講ずること。また、5年の適用猶予後に一般則の適用に向けた検討を行うに当たっては、一般則の全ての規定を直ちに全面的に適用することが困難な場合であっても、一部の規定又は一部の事業・業務についてだけでも先行的に適用することを含め検討すること。
8 自動車運転業務については、過労死等の防止の観点から、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の総拘束時間等の改善について、関係省庁と連携し、速やかに検討を開始すること。また、改善基準告示の見直しに当たっては、トラック運転者について、早朝・深夜の勤務、交代制勤務、宿泊を伴う勤務など多様な勤務実態や危険物の配送などその業務の特性を十分に踏まえて、労働政策審議会において検討し、勤務実態等に応じた基準を定めること。
9 改正労働基準法第140条第1項の遵守に向けた環境を整備するため、荷主の理解と協力を確保するための施策を強力に講ずるなど、取引環境の適正化や労働生産性の向上等の長時間労働是正に向けた環境整備に資する実効性ある具体的取組を速やかに推進すること。
10 医師の働き方改革については、応召義務等の特殊性を踏まえ、長時間労働等の勤務実態を十分考慮しつつ、地域における医療提供体制全体の在り方や医師一人一人の健康確保に関する視点を大切にしながら検討を進めること。
11 教員の働き方改革については、教員の厳しい勤務実態や学校現場の特性を踏まえつつ、ICTやタイムカード等による勤務時間の客観的な把握等適正な勤務時間管理の徹底、労働安全衛生法に規定された衛生委員会の設置及び長時間勤務者に対する医師の面接指導など、長時間勤務の解消に向けた施策を推進すること。また、学校における36協定の締結・届出等及び時間外労働の上限規制等の法令遵守の徹底を図ること。
12 本法による長時間労働削減策の実行に併せ、事業主が個々の労働者の労働時間の状況の把握を徹底し、かつその適正な記録と保存、労働者の求めに応じた労働時間情報の開示を推奨することなど、実効性ある改善策を講じていくこと。
15 時間外労働時間の上限規制の実効性を確保し、本法が目指す長時間労働の削減や過労死ゼロを実現するためには、36協定の協議・締結・運用における適正な労使関係の確保が必要不可欠であることから、とりわけ過半数労働組合が存在しない事業場における過半数代表者の選出をめぐる現状の課題を踏まえ、「使用者の意向による選出」は手続違反に当たること、及び、使用者は過半数代表者がその業務を円滑に推進できるよう必要な配慮を行わなければならない旨を省令に具体的に規定し、監督指導を徹底すること。また、使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならない旨の省令に基づき、その違反に対しては厳しく対処すること。
17 特に、中小企業・小規模事業者においては、法令に関する知識や労務管理体制が必ずしも十分でない事業者が数多く存在すると考えられることを踏まえ、行政機関の対応に当たっては、その労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて必要な配慮を行うものとすること。
なお、施行は2019年4月1日だが、中小企業における残業時間の上限規制の適用は2020年4月1日に。
時間外労働の上限規制 適用猶予・除外事業・業種
「長時間労働は、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっています。長時間労働を是正することによって、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の 向上に結びつきます。このため、今般の働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。」(「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」より)
働き方改革関連法「労働時間の上限規制」施行後は、時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくる。
臨時的な特別の事情があって、労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働+休日労働は月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする必要がある。また、原則である「月45時間」を超えることができるのは、年6か月まで。
そして、大企業への施行は2019年4月、中小企業への適用は2020年4月に。
ただし上限規制には適用を猶予・除外する事業・業務がある。しかし、猶予期間は、施行後5年まで、2024年3月31日まであって、2024年4月1日からは「労働時間の上限規制」が適用されることになる。
工作物の建設の事業 労働時間の上限規制
2024年(令和6年)4月1日から、労働時間の上限規制が適用され、。時間外労働の上限は原則 として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超える ことができなくなる。
また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、次の上限を超える時間外労働・休日労働はできなくなる。
・時間外労働が年720時間以内 ・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」 「5か月平均」「6か月平均」が全て1か月当たり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月まで
上記に違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがある。
ただし、災害時の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について
・月100時間未満
・2~6か月平均80時間以内
この2つの規制は2024年(令和6年)4月1日 以降も適用されない。
新労働基準法
第百三十九条 工作物の建設の事業(災害時における復旧及び復興の事業に限る。)その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業に関する第三十六条の規定の適用については、当分の間、同条第五項中「時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)」とあるのは「時間」と、「同号」とあるのは「第二項第四号」とし、同条第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。
② 前項の規定にかかわらず、工作物の建設の事業その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業については、令和六年三月三十一日(同日及びその翌日を含む期間を定めている第三十六条第一項の協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日)までの間、同条第二項第四号中「一箇月及び」とあるのは、「一日を超え三箇月以内の範囲で前項の協定をする使用者及び労働組合若しくは労働者の過半数を代表する者が定める期間並びに」とし、同条第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。(e-Gov法令検索)
自動車の運転の業務 労働時間の上限規制
2024(令和6年)4月1日から自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用され、時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年960時間(休日労働を含まない)を限度に設定する必要がある。
なお、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件」(令和4年厚生労働省告示第367号)により2022年(令和4年)12月23日に改正され、2024年(令和6年)4月1日から適用される。
新労働基準法
第百四十条 一般乗用旅客自動車運送事業(道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第三条第一号ハに規定する一般乗用旅客自動車運送事業をいう。)の業務、貨物自動車運送事業(貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)第二条第一項に規定する貨物自動車運送事業をいう。)の業務その他の自動車の運転の業務として厚生労働省令で定める業務に関する第三十六条の規定の適用については、当分の間、同条第五項中「時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない」とあるのは、「時間並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め九百六十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる」とし、同条第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。
② 前項の規定にかかわらず、同項に規定する業務については、令和六年三月三十一日(同日及びその翌日を含む期間を定めている第三十六条第一項の協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日)までの間、同条第二項第四号中「一箇月及び」とあるのは、「一日を超え三箇月以内の範囲で前項の協定をする使用者及び労働組合若しくは労働者の過半数を代表する者が定める期間並びに」とし、同条第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。(e-Gov法令検索)
医業に従事する医師 労働時間の上限規制
2024年(令和6年)4月1日から、医業に従事する医師についても労働時間の上限規制を適用される。 ただし適用後の上限時間は年最大1,860時間(休日労働含む)とされるなど、詳しくは次のサイトに記載されている。
新労働基準法
第百四十一条 医業に従事する医師(医療提供体制の確保に必要な者として厚生労働省令で定める者に限る。)に関する第三十六条の規定の適用については、当分の間、同条第二項第四号中「における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について」とあるのは「における」とし、同条第三項中「限度時間」とあるのは「限度時間並びに労働者の健康及び福祉を勘案して厚生労働省令で定める時間」とし、同条第五項及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。
② 前項の場合において、第三十六条第一項の協定に、同条第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に前項の規定により読み替えて適用する同条第三項の厚生労働省令で定める時間を超えて労働させる必要がある場合において、同条第二項第四号に関して協定した時間を超えて労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め、同条第五項に定める時間及び月数並びに労働者の健康及び福祉を勘案して厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内に限る。)その他厚生労働省令で定める事項を定めることができる。
③ 使用者は、第一項の場合において、第三十六条第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、同条第六項に定める要件並びに労働者の健康及び福祉を勘案して厚生労働省令で定める時間を超えて労働させてはならない。
④ 前三項の規定にかかわらず、医業に従事する医師については、令和六年三月三十一日(同日及びその翌日を含む期間を定めている第三十六条第一項の協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日)までの間、同条第二項第四号中「一箇月及び」とあるのは、「一日を超え三箇月以内の範囲で前項の協定をする使用者及び労働組合若しくは労働者の過半数を代表する者が定める期間並びに」とし、同条第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。
⑤ 第三項の規定に違反した者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。(e-Gov法令検索)
鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業 労働時間の上限規制
鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業についても労働時間の上限規制が2024年(令和6年)4月1日から適用される。
新労働基準法
第百四十二条 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業に関する第三十六条の規定の適用については、令和六年三月三十一日(同日及びその翌日を含む期間を定めている同条第一項の協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日)までの間、同条第五項中「時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)」とあるのは「時間」と、「同号」とあるのは「第二項第四号」とし、同条第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。(e-Gov法令検索)
新たな技術、商品または役務の研究開発に係る業務
新たな技術、商品または役務の研究開発に係る業務については、医師の面接指導(1週間当たり40時間を超えて労働した時間が月100時間を超えた労働者に対しては、事業者は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならない)、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、 時間外労働の上限規制は適用しない。
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働き方改革関連法とは
(1)働き方改革関連法の成立経過
2015年(平成27年)4月3日、「労働基準法等の一部を改正する法案」が国会に上程されましたが、継続審議となり、その労働基準法等の改正法案の内容を一部修正して包摂する働き方改革関連(一括)法案が2018年(平成30年)4月6日に国会に上程。そして6月29日に可決成立し、7月6日には働き方改革関連法は公布された。
(2)働き方改革関連法の正式名称と目的
働き方改革関連法の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」。
また働き方改革関連法の目的は、働く人(労働者)がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する「働き方改革」を推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じることとされているが、内容は次のとおり。
(3)働き方改革関連法の内容
新労働基準法・新労働安全衛生法
<新労働基準法(改正労働基準法)>
・時間外労働の上限規制
1.36協定の協定事項を整理し追加
2.時間外労働(勤務)上限を条文に記載
3.特別条項発動時の上限
4.時間外労働に関する新たな指針の策定
5.適用除外の範囲の縮小
・中小企業の月60時間超の割増賃金の猶予措置の廃止
・一定日数以上の有給休暇の確実な取得
・フレックスタイム制の見直し
1.清算期間上限の延長
2.法定労働時間枠の計算方法の例外
・高度プロフェッショナル制度の創設
<新労働安全衛生法等(改正労働安全衛生法等)>
・面接指導等
1.長時間労働発生時の医師面談制度強化と労働時間把握義務強化
2.医師面談制度の特例
・産業医と産業保健機能の強化
1.産業医の活動環境整備
2.事業者の管理義務等
・じん肺法の関連規定整備
<労働時間等設定改善法の改正>
・勤務間インターバル制度の普及促進
・労働時間等設定改善委員会の活用強化
同一労働同一賃金
<パート労働法と労働契約法の再編>
・パート労働法の名称変更
・定義の整備
・基本理念の追加等
・均等・均衡待遇ルールの整備
・説明義務の強化
・指針の内容追加と整備
・紛争の解決他
・労働契約法の一部改正
<派遣法の改正>
・情報の提供
・不合理な待遇の禁止等
・職務の内容等を勘案した賃金の決定
・就業規則の作成
・待遇に関する事項の説明
・その他派遣元が講ずべき措置
・その他派遣先が講ずべき措置
・紛争の解決等
<雇用対策法の改正>
・法律の名称変更
・目的等の追加と変更
・基本方針の策定
労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法の改正
(4)働き方改革関連法の施行日
労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法の改正の施行日は2019年4月1日だが、中小企業における残業時間の上限規制の適用は2020年4月1日。また、中小企業における月60時間超の残業の、割増賃金率引上げの適用は2023年4月1日。
(5)労働時間の上限規制
残業時間(時間外労働)の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできない。
また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。 また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月まで。ただし、上限規制には適用を猶予・除外する事業・業務がある。
(6)「労働時間の上限規制」適用猶予・除外事業・業種
労働時間の上限規制の適用を猶予・除外される事業・業務は次のとおり。
・自動車運転の業務
改正法(新労働基準法)施行5年後に上限規制が適用される。ただし、適用後の上限時間は、年960時間とし、将来的な一般則の適用については引き続き検討されることに。
・建設事業
改正法(新労働基準法)施行5年後に上限規制を適用される。ただし、災害時における復旧・復興の事業については、複数月平均80時間以内・1か月100時間未満の要件は適用しない。この点についても、将来的な一般則の適用について引き続き検討されることに。
・医師
改正法(新労働基準法)施行5年後に上限規制が適用される。ただし、具体的な上限時間等については、医療界の参加による検討の場において、規制の具体的あり方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得ることとされている。
・鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業
改正法(新労働基準法)施行5年後に上限規制が適用される。
・新技術・新商品等 の研究開発業務
医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、時間外労働の上限規制は適用されない。
なお、時間外労働が一定時間を超える場合には、事業者は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないこととされる。
(7)「勤務間インターバル」制度の導入促進
「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みです。この仕組みを企業の努力義務とすることで、働く人の十分な生活時間や睡眠時間を確保します。
(8)年5日間の年次有給休暇の取得(企業に義務づけ)
改正前は働く人が自ら申し出なければ、年休を取得できないが、改正後は使用者が働く人の希望を聴き、希望を踏まえて時季を指定し、年5日は有給休暇を取得。
(9)月60時間超の残業の割増賃金率引上げ
改正前は月60時間超の残業割増賃金率は大企業が50%、中小企業が25%だが、改正後は中小企業の割増賃金率が引上げられ、月60時間超の残業割増賃金率を大企業、中小企業ともに50%とされる。
(10)労働時間の客観的な把握(企業に義務づけ)
改正前は、割増賃金を適正に支払うため、労働時間を客観的に把握することを通達で規定し、裁量労働制が適用される人などは、この通達の対象外。
つまり、裁量労働制の適用者は、みなし時間に基づき割増賃金の算定をするため、通達の対象としないということ。また管理監督者は、時間外・休日労働の割増賃金の支払義務がかからないため、通達の対象としないということ。
改正後は、健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況を客観的な方法その他適切な方法で把握するよう法律で義務づけられ、労働時間の状況を客観的に把握することで、長時間働いた労働者に対する、医師による面接指導を確実に実施されることに。
なお、面接指導とは「労働安全衛生法」に基づいて、残業が一定時間を超えた労働者から申出があった場合、使用者は医師による面接指導を実施する義務がある。
(11)「フレックスタイム制」の拡充
改正前は労働時間の清算期間最長1か月だが、改正後は労働時間の清算期間最長3か月とし、子育てや介護といった生活上のニーズに合わせて労働時間が決められ、より柔軟な働き方が可能に。
(12)「高度プロフェッショナル制度」創設
「高度プロフェッショナル制度新設」の目的は、厚生労働省によると「自律的で創造的な働き方を希望する方々が、 高い収入を確保しながら、メリハリのある働き方をできるよう、 本人の希望に応じた自由な働き方の選択肢を用意」するためとされている。また、厚生労働省の説明では「制度の創設に当たっては、長時間労働を強いられないよう、以下のような手厚い仕組みを徹底します」とのこと。
1 高度プロフェッショナル制度導入の際の企業内手続
事業場の労使同数の委員会(労使委員会)で、対象業務、対象労働者、健康確保措置などを5分の4以上の多数で決議することが必要とされている。また、書面による本人の同意を得る(同意の撤回も可)ことも必要とされている。
2 現行の労働時間規制から新たな規制の枠組みへ
改正前の労働時間規制とは、36協定(時間外・休日労働の規制)と時間外・休日及び深夜の割増賃金になるが、新たな規制とは「高い交渉力を有する高度専門職」については、その働き方にあった健康確保のための新たな規制の枠組みが設けられる。
3 健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置
<必須の措置>
年間104日以上、かつ4週4日以上の休日確保を義務付け
<選択の措置>
必須の措置に加えて、以下のいずれかの措置を義務付け(どの措置を講じるかは労使委員会の5分の4の多数で決議)
・インターバル規制(終業・始業時刻の間に一定時間を確保)+ 深夜業の回数を制限(1か月当たり)
・健康管理時間の上限の設定(1か月または3か月当たり)
・1年につき、2週間連続の休暇取得(働く人が希望する場合には1週間連続×2回)
・臨時の健康診断の実施(健康管理時間が一定時間を超えた場合または本人の申出があった場合など一定要件に該当する場合)
<その他の健康・福祉確保措置>
必須の措置、選択の措置に加え、健康・福祉確保措置(健康・福祉確保措置は有給休暇の付与、健康診断の実施など労基則で規定される中から選択)
4 対象者の限定
<対象は高度専門職のみ>
高度の専門的知識等を必要とし、従事した時間と成果との関連が高くない業務
<対象は希望者のみ>
職務を明確に定める「職務記述書」等により同意している人
<対象は高所得者のみ>
年収が「労働者の平均給与額の3倍」を「相当程度上回る水準」以上の人
(13)産業医・産業保健機能の強化
1 産業医の活動環境の整備
改正前、産業医は労働者の健康を確保するために必要があると認めるとき、事業者に対して勧告することができるとされていた。
改正後は、事業者から産業医への情報提供を充実・強化され、事業者は長時間労働者の状況や労働者の業務の状況など、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければならないことに。
また、改正前、事業者は産業医から勧告を受けた場合は、その勧告を尊重する義務があったが、改正後は産業医の活動と衛生委員会との関係を強化され、事業者は産業医から受けた勧告の内容を事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告することとしなければならないこととされる。
2 労働者に対する健康相談の体制整備、労働者の健康情報の適正な取扱いルールの推進
改正前、事業者は、労働者の健康相談等を継続的かつ 計画的に行う必要があった(努力義務)が、改正後は、産業医等による労働者の健康相談が強化され、事業者は産業医等が労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければならないこととされる。
また、事業者による労働者の健康情報の適正な取扱いが推進され、事業者による労働者の健康情報の収集、保管、使用および適正な管理について指針が定められ、労働者が安心して事業場における健康相談や健康診断を受けられるようにされる。
労働時間の上限規制 条文と附帯決議
働き方改革関連法案が2018年(平成30)に可決・成立し、働き方改革関連法が公布さたが、この働き方改革関連法により労働時間の上限規制が規定された労働基準法36条などが改正された。
なお、改正後の労働基準法は新労働基準法と呼ばれる。また、新労働基準法第36条で変更・追加または新設された項目(2項~6項、10項、11項)に。また働き方改革関連法案の付帯決議は労働時間上限規制に関係する箇所のみ選択して記載。
(1)新労働基準法 第36条
(時間外及び休日の労働)
第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
2項 前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
1 この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
2 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、1年間に限るものとする。第4号及び第6項第3号において同じ。)
3 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
4 対象期間における1日、1箇月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
5 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
3項 前項第4号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。
4項 前項の限度時間は、1箇月について45時間及び1年について360時間(第32条の4第1項第2号の対象期間として 3箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合に あっては、1箇月について42時間及び1年について320時間)とする。
5項 第1項の協定においては、第2項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第3項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第2項第4号に関して協定した時間を含め100時間未満の範囲内に限る。)並びに1年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め720時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第1項の協定に、併せて第2項第2号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が1箇月について45時間(第32条の4第1項第2号の対象期間として3箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあっては、1箇月について42時間)を超えることができる月数(1年について6箇月以内に限る。)を定めなければならない。
6項 使用者は、第一項の協定で定めるところによって労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であっても、 次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
1 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、1日について労働時間を延長して労働させた時間 2時間を超えないこと。
2 1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 100時間未満であること。
3 対象期間の初日から1箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1箇月、2箇月、3箇月、4箇月及び5箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の1箇月当たりの平均時間 80時間を超えないこと。
7項 厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、第一項の協定で定める労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる。
8項 第1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長及び休日の労働を定め延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の指針に適合したものとなるようにしなければならない。
9項 行政官庁は、第7項の指針に関し、第1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
10項 前項の助言及び指導を行うに当たっては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない。
11項 第3項から第5項まで及び第6項(第2号及び第3号に係る部分に限る。)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない。
(2)衆議院における付帯決議
2 時間外労働の上限規制の適用が猶予される業務について、当該業務特有の事情を踏まえたきめ細かな取組を省庁横断的に実施して労働時間の短縮を図り、上限規制の適用に向けた環境の整備を 進めること。特に、自動車運転業務については、長時間労働の実態があることに留意し、改正法施行後5年後の特例適用までの間、過労死の発生を防止する観点から改善基準告示の見直しを行うなど必要な施策 の検討を進めること。
3 労働基準監督署においては、重大・悪質な法令違反について厳正に対処するとともに 労働基準関係法令が十分に理解されていないことに伴う法令違反も多数存在していること等を踏まえ、事業主に対する法令の一層の周知に 取り組むとともに、丁寧な助言指導等を行うことにより、事業主の理解の下、自主的な法令遵守が進むよう努めること。
(3)参議院における付帯決議
2 働き過ぎによる過労死等を防止するため、労使合意に基づいて法定労働時間を超えて仕事をすることができる時間外労働時間の上限については、時間外労働の上限規制が適用される業務だけでなく、適用猶予後の自動車の運転業務や建設事業等についても、時間外労働の原則的上限は月45時間、年360時間であり、労使は36協定を締結するに際して全ての事業場がまずはその原則水準内に収める努力をすべきであること、休日労働は最小限に抑制すべきことについて指針に明記し、当該労使に周知徹底を図るとともに、とりわけ中小企業に対し、その達成に向けた労使の取組を政府として適切に支援すること。
3 労使が年720時間までの特例に係る協定を締結するに当たっては、それがあくまで通常予見できない等の臨時の事態への特例的な対応であるべきこと、安易な特例の活用は長時間労働の削減を目指す本法の趣旨に反するもので、具体的な事由を挙げず、単に「業務の都合上必要なとき」又は「業務上やむを得ないとき」と定めるなど恒常的な長時間労働を招くおそれがあるもの等については特例が認められないこと、特例に係る協定を締結する場合にも可能な限り原則水準に近い時間外労働時間とすべきであることを指針等で明確化し、周知徹底するとともに、都道府県労働局及び労働基準監督署において必要な助言指導を実施すること。
4 特例的延長の場合においては、時間外労働時間の設定次第では四週間で最大160時間までの時間外労働が可能であり、そのような短期に集中して時間外労働を行わせることは望ましくないことを周知徹底すること。
5 事業主は、特例の上限時間内であってもその雇用する労働者への安全配慮義務を負うこと、また、脳・心臓疾患の労災認定基準においては発症前一箇月間の時間外・休日労働がおおむね百時間超又は発症前2箇月間から6箇月間の月平均時間外・休日労働がおおむね80時間超の場合に業務と発症との関連性が強いと評価されることに留意するよう指針に定め、その徹底を図ること。
6 時間外労働時間の上限規制が五年間、適用猶予となる自動車運転業務、建設事業、医師については、その適用猶予期間においても時間外労働時間の削減に向けた実効性ある取組を関係省庁及び関係団体等の連携・協力を強化しつつ、推し進めること。
7 自動車運転業務の上限規制については、5年の適用猶予後の時間外労働時間の上限が休日を含まず年960時間という水準に設定されるが、現状において過労死や精神疾患などの健康被害が最も深刻であり、かつそのために深刻な人手不足に陥っている運輸・物流産業の現状にも鑑み、決して物流を止めてはいけないという強い決意の下、できるだけ早期に一般則に移行できるよう、関係省庁及び関係労使や荷主等を含めた協議の場における議論を加速し、猶予期間においても、実効性ある実労働時間及び拘束時間削減策を講ずること。また、5年の適用猶予後に一般則の適用に向けた検討を行うに当たっては、一般則の全ての規定を直ちに全面的に適用することが困難な場合であっても、一部の規定又は一部の事業・業務についてだけでも先行的に適用することを含め検討すること。
8 自動車運転業務については、過労死等の防止の観点から、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の総拘束時間等の改善について、関係省庁と連携し、速やかに検討を開始すること。また、改善基準告示の見直しに当たっては、トラック運転者について、早朝・深夜の勤務、交代制勤務、宿泊を伴う勤務など多様な勤務実態や危険物の配送などその業務の特性を十分に踏まえて、労働政策審議会において検討し、勤務実態等に応じた基準を定めること。
9 改正労働基準法第140条第1項の遵守に向けた環境を整備するため、荷主の理解と協力を確保するための施策を強力に講ずるなど、取引環境の適正化や労働生産性の向上等の長時間労働是正に向けた環境整備に資する実効性ある具体的取組を速やかに推進すること。
10 医師の働き方改革については、応召義務等の特殊性を踏まえ、長時間労働等の勤務実態を十分考慮しつつ、地域における医療提供体制全体の在り方や医師一人一人の健康確保に関する視点を大切にしながら検討を進めること。
11 教員の働き方改革については、教員の厳しい勤務実態や学校現場の特性を踏まえつつ、ICTやタイムカード等による勤務時間の客観的な把握等適正な勤務時間管理の徹底、労働安全衛生法に規定された衛生委員会の設置及び長時間勤務者に対する医師の面接指導など、長時間勤務の解消に向けた施策を推進すること。また、学校における36協定の締結・届出等及び時間外労働の上限規制等の法令遵守の徹底を図ること。
12 本法による長時間労働削減策の実行に併せ、事業主が個々の労働者の労働時間の状況の把握を徹底し、かつその適正な記録と保存、労働者の求めに応じた労働時間情報の開示を推奨することなど、実効性ある改善策を講じていくこと。
15 時間外労働時間の上限規制の実効性を確保し、本法が目指す長時間労働の削減や過労死ゼロを実現するためには、36協定の協議・締結・運用における適正な労使関係の確保が必要不可欠であることから、とりわけ過半数労働組合が存在しない事業場における過半数代表者の選出をめぐる現状の課題を踏まえ、「使用者の意向による選出」は手続違反に当たること、及び、使用者は過半数代表者がその業務を円滑に推進できるよう必要な配慮を行わなければならない旨を省令に具体的に規定し、監督指導を徹底すること。また、使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならない旨の省令に基づき、その違反に対しては厳しく対処すること。
17 特に、中小企業・小規模事業者においては、法令に関する知識や労務管理体制が必ずしも十分でない事業者が数多く存在すると考えられることを踏まえ、行政機関の対応に当たっては、その労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて必要な配慮を行うものとすること。
なお、施行は2019年4月1日だが、中小企業における残業時間の上限規制の適用は2020年4月1日に。
時間外労働の上限規制 適用猶予・除外事業・業種
「長時間労働は、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっています。長時間労働を是正することによって、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の 向上に結びつきます。このため、今般の働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。」(「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」より)
働き方改革関連法「労働時間の上限規制」施行後は、時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくる。
臨時的な特別の事情があって、労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働+休日労働は月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする必要がある。また、原則である「月45時間」を超えることができるのは、年6か月まで。
そして、大企業への施行は2019年4月、中小企業への適用は2020年4月に。
ただし上限規制には適用を猶予・除外する事業・業務がある。しかし、猶予期間は、施行後5年まで、2024年3月31日まであって、2024年4月1日からは「労働時間の上限規制」が適用されることになる。
工作物の建設の事業 労働時間の上限規制
2024年(令和6年)4月1日から、労働時間の上限規制が適用され、。時間外労働の上限は原則 として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超える ことができなくなる。
また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、次の上限を超える時間外労働・休日労働はできなくなる。
・時間外労働が年720時間以内 ・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」 「5か月平均」「6か月平均」が全て1か月当たり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月まで
上記に違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがある。
ただし、災害時の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について
・月100時間未満
・2~6か月平均80時間以内
この2つの規制は2024年(令和6年)4月1日 以降も適用されない。
新労働基準法
第百三十九条 工作物の建設の事業(災害時における復旧及び復興の事業に限る。)その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業に関する第三十六条の規定の適用については、当分の間、同条第五項中「時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)」とあるのは「時間」と、「同号」とあるのは「第二項第四号」とし、同条第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。
② 前項の規定にかかわらず、工作物の建設の事業その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業については、令和六年三月三十一日(同日及びその翌日を含む期間を定めている第三十六条第一項の協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日)までの間、同条第二項第四号中「一箇月及び」とあるのは、「一日を超え三箇月以内の範囲で前項の協定をする使用者及び労働組合若しくは労働者の過半数を代表する者が定める期間並びに」とし、同条第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。(e-Gov法令検索)
自動車の運転の業務 労働時間の上限規制
2024(令和6年)4月1日から自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用され、時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年960時間(休日労働を含まない)を限度に設定する必要がある。
なお、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件」(令和4年厚生労働省告示第367号)により2022年(令和4年)12月23日に改正され、2024年(令和6年)4月1日から適用される。
新労働基準法
第百四十条 一般乗用旅客自動車運送事業(道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第三条第一号ハに規定する一般乗用旅客自動車運送事業をいう。)の業務、貨物自動車運送事業(貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)第二条第一項に規定する貨物自動車運送事業をいう。)の業務その他の自動車の運転の業務として厚生労働省令で定める業務に関する第三十六条の規定の適用については、当分の間、同条第五項中「時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない」とあるのは、「時間並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め九百六十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる」とし、同条第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。
② 前項の規定にかかわらず、同項に規定する業務については、令和六年三月三十一日(同日及びその翌日を含む期間を定めている第三十六条第一項の協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日)までの間、同条第二項第四号中「一箇月及び」とあるのは、「一日を超え三箇月以内の範囲で前項の協定をする使用者及び労働組合若しくは労働者の過半数を代表する者が定める期間並びに」とし、同条第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。(e-Gov法令検索)
医業に従事する医師 労働時間の上限規制
2024年(令和6年)4月1日から、医業に従事する医師についても労働時間の上限規制を適用される。 ただし適用後の上限時間は年最大1,860時間(休日労働含む)とされるなど、詳しくは次のサイトに記載されている。
新労働基準法
第百四十一条 医業に従事する医師(医療提供体制の確保に必要な者として厚生労働省令で定める者に限る。)に関する第三十六条の規定の適用については、当分の間、同条第二項第四号中「における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について」とあるのは「における」とし、同条第三項中「限度時間」とあるのは「限度時間並びに労働者の健康及び福祉を勘案して厚生労働省令で定める時間」とし、同条第五項及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。
② 前項の場合において、第三十六条第一項の協定に、同条第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に前項の規定により読み替えて適用する同条第三項の厚生労働省令で定める時間を超えて労働させる必要がある場合において、同条第二項第四号に関して協定した時間を超えて労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め、同条第五項に定める時間及び月数並びに労働者の健康及び福祉を勘案して厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内に限る。)その他厚生労働省令で定める事項を定めることができる。
③ 使用者は、第一項の場合において、第三十六条第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、同条第六項に定める要件並びに労働者の健康及び福祉を勘案して厚生労働省令で定める時間を超えて労働させてはならない。
④ 前三項の規定にかかわらず、医業に従事する医師については、令和六年三月三十一日(同日及びその翌日を含む期間を定めている第三十六条第一項の協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日)までの間、同条第二項第四号中「一箇月及び」とあるのは、「一日を超え三箇月以内の範囲で前項の協定をする使用者及び労働組合若しくは労働者の過半数を代表する者が定める期間並びに」とし、同条第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。
⑤ 第三項の規定に違反した者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。(e-Gov法令検索)
鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業 労働時間の上限規制
鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業についても労働時間の上限規制が2024年(令和6年)4月1日から適用される。
新労働基準法
第百四十二条 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業に関する第三十六条の規定の適用については、令和六年三月三十一日(同日及びその翌日を含む期間を定めている同条第一項の協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して一年を経過する日)までの間、同条第五項中「時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)」とあるのは「時間」と、「同号」とあるのは「第二項第四号」とし、同条第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は適用しない。(e-Gov法令検索)
新たな技術、商品または役務の研究開発に係る業務
新たな技術、商品または役務の研究開発に係る業務については、医師の面接指導(1週間当たり40時間を超えて労働した時間が月100時間を超えた労働者に対しては、事業者は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならない)、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、 時間外労働の上限規制は適用しない。
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