ウィーン国立歌劇場のドン・ジョバンニ、素晴らしかった。そう言うしかありません。
タイトルロールのマルクス・ヴェルバはもちろんのこと、日本ではあまり知られていないアンナのミルト・パパタナシウ、エルヴィーラのオルガ・ベズマストナ、オッターヴィオのベンジャミン・ブランズ、レポレッロのアナトーリ・シフコ、名前がわからないツェルニーナもマゼッタも。みんな表情豊かに、見事なまでに自分の聴かせどころを決めていました。
歌手のレベルは、エステート劇場やミハイロフスキー劇場よりも一段レベルが高いと思いました。
特にグッときたのはエルヴィーラとアンナ。女心、切ない想いを切々と歌い上げ、美しくてセクシー。たまりません。
そして二列目左端のぼくの席からは、マエストロ、アダム・フィッシャーの動きや表情が手に取るように見て取れたのですが、オケはもちろん、歌い手をコントロール、支配していました。
何もせずに自由にやらせるところもあるのですが、重要な場面では自分でも歌いながら、こうだぞ、こう、って身振りと表情で指示、いや命じていました。ものすごいエネルギー。オーラを発していました。
決して豪奢とはいえない古い椅子に、さほど大きくはないホールですが、歴史と伝統、品格に満ちていました。観客とあいまってすごい空間を創り出していました。
至福の3時間半。
明日のルサルカが終わっても、ぼくはこの先、まだ何度もここに来るでしょう。