今夜は日本フィルの横浜定演でミューザ川崎。
プログラムは①ワーグナー:ジークフリート牧歌②ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ③ベートーヴェン:交響曲第5番運命。
お目当ては神尾真由子さんのブラームス。
神尾さんは艶やかなドレスに身に纏い、始まった第1楽章をしばらく静かに聴き、やがて弾き始める。
甘く美しいヴァイオリンの音色ではなく、声をふり絞って何かを訴えるように。
この長く、多彩に展開する1楽章を聴きながら、ひとりの人間の魂の徘徊とでもいったイメージをぼくは重ねていた。
葛藤し、迷い、試行錯誤の苦しみ。
そして終盤のカデンツァとそれに続くドラマチックな展開で、それらは乗り越えられたのだと。
神尾さんは、弦が切れるのではというような激しさで。あるいはピュアな高音で。また凄まじい速弾きで。
激情や歓喜や絶望などを表現してぼくらの心や感情を揺さぶり、引き裂き、ひきつけた。
第1楽章の妄想を引き継ぐと、第2楽章ではしばしの安寧、休息を。第3楽章では確信、達成、歓喜をイメージ。
今週いろんなヴァイオリニストのCDでこの作品を聴いていたのだけれど、こんな想いで聴いた演奏はない。
神尾さんだから、生演奏だから、一流オケだから、田中マエストロだからか、ミューザだから、さあ.....。
とにかく、なんというブラームスだったろう。素晴らしい。こんな演奏、また聴けるのだろうか。
長くなりすぎたので、あとは簡単に。
田中さんは棒なしでしたがいい指揮で、日フィルと理解しあっていて、神尾さんも満足していた。
運命、実はこの手の超定番にはまったく期待してなかった。
んだけど、良かった、引きこまれた。
日フィルには若い演奏者がとても多く、彼らが乗りまくっていた、からだろう。
フレッシュで、熱く、でも決してエキセントリックではない、運命だった。