周平の『コトノハノハコ』

作詞家・周平の作詞作品や歌詞提供作品の告知、オリジナル曲、小説、制作日誌などを公開しております☆

『夢馬鹿』~第8話~(シューピー散文クッキング第1弾)

2021年11月24日 | シューピー散文クッキング
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない「シューピー散文クッキング」の第1弾『夢馬鹿』の第8話です!

さて、今回の材料は…

「旧制」…大さじ6杯
「警護」…大さじ3杯
「退屈」…小さじ2杯
「歩行」…小さじ2杯
「雪下ろし」…大さじ4杯(辞書では雪男のとなり!)

本当に"退屈"だとは思いますが、ぜひ最後まで読んでいただきたい第8話スタート!!

『夢馬鹿』~第8話~

「う~ん、そうかぁ…」雪男が腕組みをしながら言葉を吐いた。

「ごめん、めっちゃ”退屈”だったよな。俺の話。」と、雪男の言葉の意図が読めなかった私はとりあえず返した。

「いや、そんな事ないよ。実はさ、俺も今の会社のままで良いのかなって考えてて。転職したいって言うよりは、俺も貝塚みたいに昔夢見てたバーを開きたいなって思ってて。」

「マジで? 奥さんには話したの?」

「うん。お前の家とは違って、うちの嫁は反対はしてない。うちはまだ子供いないから。」

「そうかぁ、羨ましいなぁ。」

「うちの嫁は、男は外で稼いでくる、女は家で家事をするっていうのは"旧制"で今はもうそんな時代じゃないって考えてくれる人なんだよ。」

「いいなぁ。うちもそんなだったら…。」

「もし良かったら俺と一緒にやってみるか?」

「は?」

雪男はそこから熱く語りだし、私と雪男の二人で、ラーメンとお酒の両方を楽しめるラーメンバーを開かないかと提案してきた。
資金も雪男がどうにかしてくれるし、我が家に来て私の家内を説得する事にも付き合ってくれるという。

「でも、これ以上しつこくお願いしたら殺されかねないよ…。」

「大丈夫! 俺が"警護"してやるから!」

「ホントか? うちの家内は強いぞ? 雪男だけに"雪下ろし"に遭うぞ?」

私はうまい事を言ったつもりだったが見事にスルーされ、その後もラーメンバーを開くにあたっての雪男の細かい提案が続いた。
雪男は起業に関する勉強もちゃんとしているようで尊敬する。

私は自分の悩みを吐き出せた事と、夢に向かって歩き出せる望みが生まれた事で気分が良くなり、ついつい飲み過ぎてしまった。
まともに"歩行"できなくなってしまった私を、雪男は家の前まで送ってくれた。

「じゃあ、今度の週末にでもお邪魔するわ。頑張って奥さんを説得しようぜ。」

《第9話へ続く》

『夢馬鹿』~第7話~(シューピー散文クッキング第1弾)

2021年11月10日 | シューピー散文クッキング
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない「シューピー散文クッキング」の第1弾『夢馬鹿』の第7話です!

さて、今回の材料は…

「さては」…小さじ2杯
「かいろ」…小さじ4杯
「とりとめのない」…小さじ3杯
「柔道」…大さじ1杯
「面する」…大さじ2杯

まさに"とりとめのない"物語、完結に向かえるのか!? たぶんこの辺から後半突入だと思われる第7話スタート!!

『夢馬鹿』~第7話~

コンビニに到着した私は、缶コーヒーと弁当と”かいろ”を購入した。
レジには増田さんという若い女性スタッフが立っていた。

「いつもいる男の子は今日も休み? なんか最近見ないけど。」私は尋ねた。

「あぁ、二瓶君の事ですか? 彼は色々訳あって福島県に引っ越して、そこのコンビニで働いています。」

「へぇ、そうなんだ。それは残念だなぁ。なんか彼は自分に似てる気がしていたから。」

二瓶君の身に何があったのかは、ご覧になっているこのブログの別コーナー「コトノハラビリンス」のシーズン2を見ていただければ分かるとの事だ。

コンビニを出たところで、先ほどメールを送った家内から返事が来た。

「”さては”浮気ですか?」

「違うよ~。大学の時の友達の雪男と飲みに行く事になりました。」と私は返した。

上司からの説教で始まった今日だが、意外にも定時であがる事ができ、私はさっそく雪男にメールした。
待ち合わせ場所に先に着いた私は、今の悩みを雪男にどう話そうかを考えた。
もしかしたら雪男にも、脱サラをしてラーメン屋を開く夢を大反対されるんじゃないだろうかとも思った。

雪男が待ち合わせ場所にやってきた。
中学の頃から”柔道”をやっていたという彼の体は大きく、遠くからでもすぐに分かる。

居酒屋に入った私達は対”面する”ように座り、とりあえず適当にビールやつまみを注文した。

乾杯を終え、少ししたところで、
「で、最近どうよ?」

おそらく大体の事はお見通しであろう雪男が、私が話を切り出しやすいように優しいパスをくれた。

”とりとめのない”話し方だったとは思うが、私は雪男に全てを打ち明けた。

黙って最後まで私の話を聞いてくれた雪男が、腕組みをして何かを考え始めた。
おそらくどの”柔道”技で私の目を覚まさせるのかを考えているのだろう。

《第8話へ続く》

『夢馬鹿』~第6話~(シューピー散文クッキング第1弾)

2021年10月27日 | シューピー散文クッキング
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない「シューピー散文クッキング」の第1弾『夢馬鹿』、久々の更新となる第6話です!

さて、今回の材料は…

「見知らぬ」…小さじ2杯
「人生」…小さじ1杯
「近頃」…小さじ2杯
「貝塚」…大さじ4杯
「雪男」…大さじ5杯

ついにUMAの雪男まで登場!? 何がテーマか分からなくなってきた第6話スタート!!

『夢馬鹿』~第6話~

私の勘違いの所為で"見知らぬ"女性と長話をしてしまった結果、会社へ遅刻してしまった私は、皆の前で上司から説教を食らってしまった。
"近頃"、上司からは説教ばかり受けていて、ますます「自分の"人生"、このままで良いのか?」と考えてしまう。
今の会社で昇進するよりも、ラーメン屋を開いて成功する方が簡単な気さえしてきた。

そんな事を考えながら、昼休みに弁当を買うため、会社の近くのコンビニへ向かっていると、目の前から"雪男"が歩いてきた。
ちなみに「ゆきおとこ」ではなく「ゆきお」と読む。
私の大学時代の友人だ。
大雪の日に生まれたからという理由で"雪男"と名付けられた、配慮に欠けるご両親の間に生まれてきた奴だが、本人は周りに色々と配慮のできる本当に良い奴だ。

「おぉ、"雪男"! 久しぶりじゃん!」

「おぉ、"貝塚"! 久しぶり!! 元気そう… でもない感じか?」

さすが、"雪男”は何でもお見通しだ。
そして、申し遅れてしまいましたが、私の苗字は"貝塚"という。

「どうだ? 仕事終わったら久々に一杯!」
"雪男”はビールを飲むジェスチャーをしながら私に提案してきた。

正直、最近の家内の機嫌を考えたら、誘いを断って真っ直ぐ帰宅したいところだったが、”雪男”はきっと私が何かに悩んでる事に気付き、話を聞いてくれようとしているのだと思い、「おう! じゃあ仕事終わったら連絡するわ。」と返事をした。

私は恐る恐る家内に今日の夕飯は要らない旨の連絡をし、再びコンビニへと向かい歩き出した。

《第7話へ続く》

『夢馬鹿』~第5話~(シューピー散文クッキング第1弾)

2021年09月12日 | シューピー散文クッキング
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない新企画も早くも第5回!

さて、今回の材料は…

「見せしめ」…大さじ1杯(一体何されるの!?)
「軍国主義」…大さじ5杯(だから何されるの!?)
「里芋」…大さじ2杯(急に平和!)
「脳」…小さじ1杯
「細める」…小さじ2杯

主人公は一体何の見せしめにあうのか? 全く話が夢に向かわない第5話スタート!!

『夢馬鹿』~第5話~

これはマズい。
私の"脳"は即座にそう判断した。
このままではきっと自殺をしてしまう。

私はその20歳前後くらいの女性の元に駆け寄り、その左腕を掴んだ。
すると女性は悲鳴もあげられない程に驚いた様子でこちらを見た。

「えっ?何ですか?」

「君、今、線路に飛び込もうと思ってなかったかい?」

「い、いいえ…」

これはマズい。
私の"脳"は即座にそう判断した。
このままではきっと痴漢扱いだ。

「ごめん、なんだか君が何かに絶望してるように見えたから、つい…」

すると女性は目を"細めて"笑った。

「たしかにちょっと悩んでる事はありますけど、べつに自殺するような事じゃ…」

「悩み? 一体何に悩んでるの?」

女性の悩みを聞いてあげていたら、うっかり会社に遅刻してしまった。
女性も通勤途中だったらしく、私の早とちりの所為で一本後の電車に乗る羽目になってしまった。
職場に着いたら「駅で体調崩して少し休んでた」とでも言い訳すると冗談っぽく言っていた。

だが、私の職場はそうはいかない。
「いつの時代だよ!!」っていうくらいに"軍国主義"みたいな会社で、遅刻なんかしようもんなら、"見せしめ"のように皆の前で上司からの説教を食らう。

悩みを聞いてあげた女性から、別れ際に"里芋"を何個かもらったのだが、その代償としては上司からの説教は大き過ぎる。

ちなみに女性の悩みとは、実家から大量に送られてきた"里芋"たちを職場の同僚たちに配って消化しきれるのだろうかという、しょうもないものだった。

私の悩みも他者から見れば、きっと同じようなものなのだろう。

《第6話へ続く》

『夢馬鹿』~第4話~(シューピー散文クッキング第1弾)

2021年08月28日 | シューピー散文クッキング
前回からちょっと間が空いてしまいましたが、決して挫折したわけではありませんよ!
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない、自分から自分への超無茶ぶりな新企画「シューピー散文クッキング」も早くも4回目。

さて、今回の材料は…

「さて」…小さじ1杯(これは使いやすい!)
「竜巻」…大さじ1杯
「留まる」…小さじ3杯
「絵本」…小さじ2杯
「本性」…小さじ2杯

今回は割と簡単なお題が多いけど、竜巻注意報発令!? 今度こそ主人公が死ぬかもしれない第4話スタート!!

『夢馬鹿』~第4話~

その後は残念ながら一度も赤信号に引っかかる事もなく、最寄り駅へと辿り着いた。

この駅に着くと必ず目に"留まる"ものがある。
駅のすぐ目の前にある毎日行列が絶えないラーメン屋である。
私の夢はあんな風に大繁盛するラーメン屋を開く事だ。

しかし、大繁盛するしない以前に店を開くまでの道のりが長い。
資金や土地の問題などではなく家内を説得する事である。

4歳の娘が毎晩寝る前に家内が読み聞かせている"絵本"の中の世界は、満天の星空のように夢で溢れている。
32歳の父親が毎晩寝る前に家内に言い聞かせている自分の夢は"竜巻"にでも巻き込まれたかのように家の屋根を突き破り、満天の星空へと呆気なく消えてゆく。

これが結婚前だったり、子供が生まれる前だったら違ったのであろう。
子供を2人も授かった後で、親馬鹿な私の中で長い間眠りについていた夢馬鹿が今更のように"本性"を現した事がいけないのだ。

それは"さて"おき、今日も私を平凡でつまらない一日を過ごす事になる会社へと運ぶ電車が駅のホームへ到着したようだ。

ここから私は毎朝毎夕、25分間満員電車に揺られる。
大切に思う家内や子供たちと、完全に捨てきれない夢との間で揺れている自分の心と同調するように。

電車は4つの駅に停車した後に、私が勤める会社まで徒歩3分の距離にある駅に到着した。

ホームに降りると、反対側の電車を待っている20歳前後くらいの女性の姿があった。
もちろん他にも何人もの乗客がホームにはいるのだが、なぜかその女性だけが気になった。
べつにその女性がタイプだからとかではなく、何かに絶望しているように見えたからだ。

「間もなく2番線に下り列車が参ります」

《第5話へ続く》

『夢馬鹿』~第3話~(シューピー散文クッキング第1弾)

2021年07月30日 | シューピー散文クッキング
反応が一切無いので好評か不評かも分かっていない新企画『シューピー散文クッキング』。
今後の展開も結末も分かっていません。
なぜならこの新企画は、周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけないのです。

さて、今回の材料は…

「ポスト」…小さじ1杯(そうそう、こういう楽なやつ!)
「泡立つ」…大さじ3杯
「他殺」…大さじ7杯(おいおい、そっちいくのか!?)
「後攻」…小さじ5杯(野球やらせるしかない?)
「歪む」…小さじ2杯

早くも企画終了フラグ? もしかしたら主人公が誰かによって殺されるかもしれない第3話スタート!!

『夢馬鹿』~第3話~

その後、数日間は家内が口を利いてくれない日々が続いたが、それにも耐えきれなくなり、ある日の夜に子供たちが寝静まった後でまた自分の熱意を家内へ伝えようとした。
もちろん結果は散々だった。
こちらがどんな球を投げても力強く打ち返され、9打者連続でホームランを浴びてしまったピッチャーの気持ちだ。
そのくせ、野球のように"後攻"であるはずの私の攻撃の順番が回ってくる事は決してなかった。

翌朝、仕事へ向かう途中で先日記入した国勢調査の調査票の入った封筒を"ポスト"へ投函した。
果たして5年後の次回の調査も、今回と同じく家族4人の名前などを記入できるのだろうか。

駅へ向かう途中の横断歩道の信号が赤だったので立ち止まる。
信号が赤だった事を普段なら嫌がってしまうが、今日は違った。
なんか立ち止まりたい気持ちだった。何なら逆走してしまいたいくらいだった。

自分の昔からの夢を叶えたいという感情と、その夢を諦められたらどんなに楽だろうという感情がぶつかり合う。
そこにさらに家内の事、子供たちの事、他にも色んな感情が混ざり合い、頭の上で何かが"泡立つ"ような感覚を覚える。

自分で自分の夢を殺す事なんて到底できない。
いっその事、誰かの手で"他殺"されてしまえば良いなどと考えが"歪む"。

普通の32歳であればそんな事は考えないか、考えるとしてもとっくの昔にであろう。

何年か前にタイムスリップする事が出来たら夢を追いかけ、叶える事ができるだろうか。
いや、ダメだ。
そしたら家内や子供たちの存在も無くなるという事だ。

そんなあり得もしないくだらない事を考えていたら信号が青に変わってしまった。
どうやら時も私も前に進むしかないようだ。

《第4話へ続く》

『夢馬鹿』~第2話~(シューピー散文クッキング第1弾)

2021年07月16日 | シューピー散文クッキング
前回スタートした新企画『シューピー散文クッキング』、その第1弾のタイトルは『夢馬鹿』に決定しましたが、それが正しいのか間違ってるのかは誰にも分かりません。今後の展開も結末も分かりません。
なぜならこの新企画は、周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけないのです。

さて、今回の材料は…

「起伏」…小さじ2杯
「国勢」…大さじ3杯(どう使えとw)
「便覧」…大さじ4杯
「塔」…小さじ3杯
「こじ開ける」…小さじ2杯

前回よりはマシだけど、どうしよう…。全く方向が読めないけど、第2話スタート!!

『夢馬鹿』~第2話~

つい先ほどまで俯きながら泣いていた家内が、今度はまた怒りタイムに戻ったらしく、立ち上がって私の横に来た。
椅子に座ったままの私からは高くそびえる"塔"ようにさえ感じた。

家内のこの"起伏"を抑える方法は1つしかない事は私も分かってはいる。
私が先ほどまで熱く語っていたラーメン屋を開く夢をあきらめるしかないのだ。

家内の口からは「離婚」という言葉まで飛び出してしまった。
何の偶然か嫌がらせか、たまたま今日、5年に1度の"国勢"調査の調査票が自宅に届いたところだった。
このままでは家族構成などどう記入したら良いか分からなくなる。

翌朝、いつもと何ら変わらない一日が始まった。
唯一普段と違うのは家内が口を利いてくれない事だ。

この何とも言えない居心地の悪い真っ暗な世界からの脱出口を"こじ開ける"方法が載っている"便覧"を誰か持っていないだろうか。

沈黙に包まれた朝の食卓に耐えられなくなった私は、何を血迷ったのか6歳の息子に将来の夢を訊いてしまった。
今、この状況において「夢」という単語は禁句である。

「仮面ライダーになりたい!」と息子は無邪気に答えた。
それでも家内の顔はほころばない。

食パンってこんなにも固かっただろうか。
牛乳ってこんなにも味が無かっただろうか。

《第3話へ続く》

『夢馬鹿』~第1話~(シューピー散文クッキング第1弾)

2021年07月02日 | シューピー散文クッキング
ついにスタートする新企画『シューピー散文クッキング』、その第1弾のタイトルは今回(第1話)の内容からなんとなく『夢馬鹿』に決定。
でも今後の展開も結末も決まっていません。
なぜならこの新企画は、周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけません。
そのお題の難易度は調味料の量で表したいと思います。

さて、今回の材料は…

「投げ出す」…小さじ2杯(1つ目のお題がコレってw)
「切り込む」…小さじ5杯
「表意文字」…大さじ5杯(人生で初めて聞いた言葉!)
「毒する」…大さじ1杯
「家内」…小さじ3杯

1回目からコレはキツいわ~。でも自分で決めたんだからやるしかない! というわけで、とりあえず第1話スタート!!

『夢馬鹿』~第1話~

今、私と対面している自宅のリビングの壁には「"家内"安全」と書かれた、お守りのシールが貼られている。
何の時だったか忘れてしまったが、4歳になる娘が"家内"からもらって喜びながら貼ったものだ。
その言葉の意味も分からずに。

私にはこの4歳の娘と、6歳の息子がいる。

そして今、

「"家内"安全」のシールと私のちょうど中間には、私と同い年の"家内"が涙を流しながら座っている。
先ほどから怒ったり泣いたりを繰り返していて、とても「"家内"安全」と言える状況ではない事は確かだ。

原因は100%私にある。
32歳のサラリーマンの私が2時間前に突然、「脱サラをして、昔から夢だったラーメン屋を開きたい」と言い出したからだ。

妻の涙の一粒一粒が"表意文字"のように色んな意味を持ち、私の胸に"切り込ん"でくる。
無理も無いだろう。
6歳と4歳のまだ幼い子供が2人もいるというのに、そこそこの稼ぎを得ているサラリーマンという仕事を"投げ出し"、生き残りの厳しいラーメンの世界に飛び込んでいこうとしているのだから。

でも昔からやりたいと思った事は全てやらないと気が済まない、私の中の毒のようなものを解"毒する"アイテムはまだ見つかってはいない。
「私と子供たちはそれになれないの?」と言わんばかりの妻の表情に、私はただ黙る事しかできなかった。

子供たちはもう眠ってしまっている。
私と妻の2人だけの23時のリビング。
「"家内"安全」のシールの真上に掛けられている時計は、まるで電池が切れているかのように先ほどから全く動いていないような気さえした。

《第2話へ続く》