周平の『コトノハノハコ』

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『ブサメンの音楽隊』~第8話~(シューピー散文クッキング第2弾)

2022年08月28日 | シューピー散文クッキング
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない「シューピー散文クッキング」の第2弾『ブサメンの音楽隊』の第8話です!

さて、今回の材料は…

「野飼い」…大さじ6杯
「海図」…大さじ8杯
「没落」…大さじ5杯
「スイス」…大さじ3杯
「つらつら」…大さじ2杯

今回は材料が過去最高難易度と言っても良いくらいの第8話スタート!!

『ブサメンの音楽隊』~第8話~

新年度生徒会選挙の開票結果の発表は”スイス”イ進んでいった。

生徒会選挙管理委員会のうちの一人の生徒が、新年度の生徒会に当選した生徒を一人ずつ読み上げて行く。
書記、会計、議長など、下の役職から順に当選した生徒の名前が読み上げられ、残すは副会長と会長の2人のみとなった。

「生徒会副会長、212票…  西園寺つむぐ」

体育館中がどよめいた。

「う、嘘だろ? 西園寺が負けた…。」

「ナンバーワン西園寺、ついに"没落"だな。」

「じゃあ、あいつが生徒会長って事か。」

複数の生徒が次々に驚きの言葉を口に出してしまう。
僕も含めブサメンの音楽隊のメンバーは驚きと絶望で声も出なかった。

「生徒会会長、245票…  ”海図”真貴人(かいず・まきと)」

体育館中から大きな拍手が起こった。

”海図”真貴人は僕ら4人の誰ともクラスが一緒ではなく、たしかにネコの強敵となるライバルがいるとしたら彼くらいだった。
スポーツや勉強ではネコには敵わないが、ネコよりもイケメンで、入学当時から軽音楽部に入り、そこの部員とバンドを組み、学校とは関係のないところでもライヴを定期的に行っているらしい。
僕からしたらネコ以上に羨ましい存在だ。

やがて新年度が始まり、僕たちは3年生になった。
ネコが計画していた新入生歓迎会での演奏披露の提案は通らなかった。
それもそうだ。僕たちは軽音楽部に所属しているわけでもない。
ただ友達同士で趣味でバンドをやっている、言ってしまえば”野飼い”のロバ、イヌ、ニワトリ、ネコだ。

「みんな、本当にすまない! 僕が生徒会長になれなかったばかりに…。」ネコが謝ってきた。

「いや、謝るなよ。ネコは十分頑張ったし、どうしたら僕たちなんかが皆の前で演奏を披露できるか”つらつら”と考えてくれていたじゃん。」僕は言った。

「そうだよ。また皆で考えようぜ! 俺たちが曲を披露できる場を。」イヌが言った。

「次にチャンスがあるとしたら文化祭かな?」ニワトリが言った。

文化祭が行われるのは11月3日の文化の日。半年以上も先である。

《第9話へ続く》

『ブサメンの音楽隊』~第7話~(シューピー散文クッキング第2弾)

2022年08月13日 | シューピー散文クッキング
周平本人が目を瞑りながら国語辞典を適当なページで開いて適当な場所を指差し、目を開けた時に指が指している単語(1話につき5個)を全て文章のどこかに組み込まなければいけない「シューピー散文クッキング」の第2弾『ブサメンの音楽隊』の第7話です!

さて、今回の材料は…

「回す」…小さじ2杯
「懸案」…大さじ3杯
「知己」…大さじ2杯
「表」…小さじ3杯
「おおらか」…小さじ5杯

多少無理な展開があっても”おおらか”な気持ちで読んでいただきたい第7話スタート!!

『ブサメンの音楽隊』~第7話~

僕がキーボードに加え、ヴォーカルも務める事になってしまった日から半月が経った。

ネコが作曲ソフトで簡単なオケを作り、それをCDに焼いて、楽譜と一緒に僕ら3人に”回し”た。
それに合わせて僕らはそれぞれに時間の許す限り自宅で演奏や歌の練習をしまくった。
近所からのクレームやピンポンダッシュなどの嫌がらせなど気にしていられなかった。

そして今日、駅前のスタジオを借りて、4人全員ではじめて合わせて演奏してみた。
まだまだバラバラだけど、こういう事が初めてな僕とイヌとニワトリはなんだか感動してしまった。

ただ、どんなに練習を頑張ったところで、披露する場が決まっていないのが”懸案”だ。

「早く”表”舞台に立ちてぇなぁ。」とイヌが言うと、

「僕が生徒会長になれたら、新年度の新入生歓迎会で演奏できる時間をもらえるように動いてみようと思ってる。」とネコが言った。

「おう! それはいいね! そしたらもっともっと練習を頑張らないと。今のレベルじゃ恥をかくだけだ。」ニワトリは真面目な顔つきで言った。

すると、ネコがまた話し始めた。

「半月にしてはまずまずだと思うよ。卒業までにはライヴハウスでやりたいね。僕の”知己”にライヴハウスのスタッフがいるから今から頼んでおくよ。5つ年上のすごく”おおらか”な人で、僕の兄ちゃんみたいな存在でさ。」

「それはありがたい!頼むよ、ネコ。」僕は言った。

それから僕らはさらに練習を重ねた。
個人個人でも、4人全員でも。
まずは新年度の新入生歓迎会で、全校生徒の前でオリジナル曲『ブサメンの音楽隊による行進曲』を披露できると信じて。

そして、ネコにとって、そして僕らにとっても運命を左右する生徒会選挙の開票日がやってきた。

もう事前の演説も投票も終わっている。
ネコなら万が一の逆転が起きても生徒会副会長にはなれるだろうが、ここはやっぱり生徒会長になってもらわないと困る。
不純な理由ではあるが「ブサメンの音楽隊」の躍進のためには仕方ない。

体育館に集められた全校生徒の前でいよいよ開票結果が告げられる。

《第8話へ続く》