周平の『コトノハノハコ』

作詞家・周平の作詞作品や歌詞提供作品の告知、オリジナル曲、小説、制作日誌などを公開しております☆

小説第3弾『Extra Dream』~第9章~

2013年02月28日 | 小説
物語はいよいよ終盤に突入した様子だ。
勘の良い方なら今の時点で老人の正体が予測できたかもしれないが、
この物語のオチはそこではないので、「もういいや」と思わずに是非とも最後まで読み続けて欲しい。

筆者がそう願っているうちに、1週間ひとつ屋根の下だった3人は、
52歳の歩夢が1週間前に降り立った公園の公衆トイレの個室の中にギュウギュウ詰めで入っていた。
入っていく所を誰にも見られていなかったら幸いだ。

「じゃあ、精々元気でのぉ。あ、そうそう、これこれ。」
老人は52歳の歩夢に手紙の入った便箋を渡した。

「じいさん、何だよこれ?」
便座に腰掛けた52歳の歩夢が問う。

「2043年の世界に戻ったら必ず読んでおくれ。」

「何だよ… 気色悪いなぁ。まぁ手紙なんて誰からも貰った事ないからちょっと嬉しいけど。」

22歳の歩夢も52歳の歩夢に別れの言葉を告げた。
「俺、絶対夢をあきらめないから! 30年後の俺や親父やおふくろに苦労させないようにもっと頑張るよ! そして絶対俳優として売れてみせるよ!」

「まったく… 俺は何のために東京に引っ越してまで、この時代にタイムスリップしてきたのか… これに一生分の運を使ったようなもんだぜ?」

「無駄にはしないよ! 30年後の俺の努力を。」

「もちろんだ。絶対に無駄にすんなよ! 俺の努力と苦労を!」

ちなみに52歳の歩夢は何の努力も苦労もしてはいない。
ただ、バイト先を岐阜から東京へ変え、住処を実家から二瓶のアパートに変えただけだ。

52歳の歩夢が左腕にしている安い腕時計に目をやると同時に、その体が薄黄色の光に包まれ出した。
「どうやらそろそろタイムリミットのようだな。頼んだぞ! 22歳の俺! それから… じいさんもお元気で。まぁできるだけ長生きしてくれよ。じいさんのおかげで俺も少し目が覚めたよ。ありがとう。2043年に戻ったら俺はどういう生活をしているか分からないけれど、自分に与えられている仕事を一生懸命頑張ってみるよ!」

そう言った52歳の歩夢の体はさっきよりも眩しい光に包まれ、やがて公衆トイレの個室から消えた。

(最終章へ続く)

『夢花』リリース1周年記念!

2013年02月25日 | 日誌
「自分が歌詞を書いた曲がCDとなって発売される」

そんな10年越しの夢が叶ったのが、ちょうど1年前の今日、
2012年2月25日でした。

1年経った今でもあまりピンと来てないような変な感覚です。

周平が作詞をさせていただいたのは、藤村智史さんのミニアルバム「めぐり来る朝」(全4曲)のラストを飾った「夢花」という曲。

このミニアルバムを引っさげてのインストアライヴツアーにも何公演か同行させていただき、音響のお手伝いなどをさせていただきました。

そのインストアライヴツアーの初日となる東京公演が、自分が上京した日からちょうど10年となる日の2012年3月7日だったのも何か運命的なものを勝手に感じていました(笑)
もちろん同行させていただきました!

4月8日の福島公演では、周平の生まれ故郷という事もあり、ステージに上がってトークにも参加させていただきました♪
人生最大の緊張でしたね(笑)

ただ、周平が同行した公演はあまり天気に恵まれなかったことが本当に本当に申し訳ない気持ちです(苦笑)

自分の周りでも、この「夢花」という曲を愛してくださっている方がたくさんいてくれて、この上ない幸せでございます。

そして、最近は訳あって「夢花」のギター弾き語りの練習をしまくっています!
いつかカバーしたものを皆様にもお聴かせできたらと思っています。

1年前に出せた結果に満足せず、これからも頑張っていきますので今後ともよろしくお願いします!

【今後のブログ更新予定】

2月28日 小説第3弾『Extra Dream』~第9章~
3月7日  小説第3弾『Extra Dream』~最終章~
3月13日 歌詞#128『憶病フィルター』
4月1日頃 内容未定
4月15日 歌詞#129『タイトル未定』
5月1日頃 内容未定
5月17日 6th distribution『タイトル未公開』&歌詞#130『タイトル未公開』

小説第3弾『Extra Dream』~第8章~

2013年02月21日 | 小説
翌日も52歳の歩夢の、52歳の歩夢による、52歳の歩夢と22歳の歩夢と歩夢の両親のための説得が続いた。

「分かったよ。じゃあ、俳優の夢は諦めないで、色々資格を取りながらバイトを続けるって事で良いか? まぁ、どうせそろそろそうしなきゃなぁって考えてたところだったし。」

「ダメだダメだ。そうこうしてるとあっという間に三十路になっちまう。すぐに就職活動始めろ! そして就職が決まり次第バイトやめろ。」

「嫌だよ、そんなの…」
22歳の歩夢はそう言うと、半分涙目でうつむいてしまい、部屋にはしばらく沈黙が続いた。

「ピンポーン♪」
沈黙を破るようにインターホンが鳴った。

「うん? 誰だ、こんな時に。まぁ女じゃない事だけは俺も知ってるが。どうせ宅急便だろ。」
52歳の歩夢はそう決めつけた。

22歳の歩夢は顔を上げて、ゆっくりと玄関へ向かいドアを開けた。
「はい、どちら様ですか?」

そこには年老いた男が杖をつきながら立っていた。
「私は『若者の夢を応援する会』の会長をしておる者じゃ。今、このアパートの前を通りかかったら、あんたと別の男の会話が聞こえてきて、若いあんたに夢を諦めろだなんて、何てひどい事を言う奴がおるんじゃと思い、失礼を承知でお邪魔したのじゃ。」

二人の歩夢の会話は外に漏れるほど大きいものではなかったはずだ。
22歳の歩夢はかなり胡散臭いと思ったが、今の自分にとってこの老人は味方以外の何物でもないと思い、部屋に招き入れる事にした。

それから狭いアパートの一室で、22歳の歩夢、52歳の歩夢、そして『若者の夢を応援する会』の会長を名乗る老人の3人による討論会が行われた。
タイムスリップ云々の話も老人はなぜかすぐに理解した。

「とにかく夢は持ち続けなきゃいかんのじゃ! わしも若い頃に夢があって追いかけてはみたが、結局あきらめてしまって… 今になって思えば本気が足りなかったなぁと思うんじゃ。もっと頑張ってみれば良かったのぉ…と今になって思う。わしはもう先が長くは無い。でもそんなわしが死ぬ間際にこんな風に思うのじゃから、52歳のあんたも、昔の自分の夢をもう少し信じてあげたらどうかのぉ?」

「じいさんは甘いんだよ! もう先が長くないからそんな気楽に考えられるんだよ!」

「俺は会長さんに賛成! やっぱり人間、最後の最後にはどんなに貧しくても、どんなに惨めでも、自分の生きたいように生きれば良かったって思うんだよ。そうですよね? 会長さん?」と22歳の歩夢。

「まったくその通りじゃ!」

その後、5日間同じような言葉のやり取りが続いた。
22歳の歩夢&老人 VS 52歳の歩夢という構図は最後まで変わらなかった。
そしてなぜか、どさくさに紛れて老人も22歳の歩夢のアパートに居候している。

そしてついに、52歳の歩夢が30年後の世界に戻らなくてはならない時がやってきた。

(第9章へ続く)

小説第3弾『Extra Dream』~第7章~

2013年02月14日 | 小説
「どちら様ですか?」と22歳の歩夢。

「あなた様です!」と52歳の歩夢。

バターン!と22歳の歩夢はすぐに玄関のドアを力強く閉めた。

「いや、怪しいもんじゃないから開けてよ~。」
52歳の歩夢は慌てて玄関のドアを数回ノックした。

「ふざけんな! 今忙しいんだよ!」

「大丈夫! すぐに話は終わるから! それにお前、本当は忙しくないだろ。だって22歳の頃の俺に忙しかった時なんて無いんだから。」

22歳の歩夢はもう一度ドアを20センチぐらいだけ恐る恐る開けてこう言った。
「おじさん、さっきから何言ってんの? 警察呼ぶぜ?」

「まぁまぁ落ち着いて! 立ち話もなんだから、部屋の中で話そうよ!」

「いやいや、ここは俺の部屋だから。」

「お前の部屋だって事は俺の部屋だよ。」

「はぁ? ふざけんなよ!」

「信じてもらえるわけはないと思うけど、俺は30年後のお前なんだよ。その証拠に…」
52歳の歩夢は自分の生年月日から、生い立ち、数々の失恋話、数々の失敗談、小学生の頃のあだ名など本人しか知らないような事を次々と言い並べた。

「どうせ俺の同級生の誰かから聞き出したんだろ? 信じられないね!」

「じゃあ、これならどうだ?」
52歳の歩夢は13~22歳の歩夢の歴代エロ本隠し場所を全て言い当てた。

「分かりました。信じます。すみませんでした。」と22歳の歩夢。

それから2人は部屋の中に入り、52歳の歩夢は自分がタイムスリップできた理由や、そもそもタイムスリップしてきた理由を話した。

「まぁ、とにかく、さっさと俳優になる夢なんて諦めて、良い所に就職して、良い彼女見つけて、さっさと結婚もして、親父とおふくろを安心させてくれや。」

「はぁ? ふざけんなよ。確かにそりゃ、親父とおふくろに親孝行はしてやりたいけど、夢は絶対にあきらめられないよ!」

「でもどうせ30過ぎた頃に 諦める運命にあるんだぜ?」

「いや! そんな運命変えてみせる! このままなら叶わないと分かったんなら、尚更もっと頑張って絶対に俳優として成功してみせる! だからさっさと30年後に帰ってくれよ!」

「いや、無理無理。今日から1週間、ここで寝泊りするから。」

「はぁ? ふざけんなよ…」

(第8章へ続く)

小説第3弾『Extra Dream』~第6章~

2013年02月07日 | 小説
物語は第6章へ突入。5章かけてやっと歩夢が過去へと来られたわけだが、これでも結構どうでも良い部分を色々省いて書いている事を読者にはご理解いただきたい。

「あぁ、懐かしいなぁ…」
歩夢は2013年の風景の中を、昔の記憶を思い出しながら歩いた。
「そういえばここでヤンキーに絡まれたっけなぁ」とか「そういえばここで自転車で派手にこけたっけなぁ」とか「そういえばここで犬の糞を思いっきり踏んでしまったっけなぁ」など、気が付けば悲しい思い出ばかりだ。

そうこうしていると、30年前にアルバイトしていたコンビニ、いや、つい昨日まで2034年の世界でも働いていたコンビニにたどり着いた。

レジには22歳の二瓶が立っていた。
「うん、いつの時間帯でも確実に彼は居ると思ってた。」

どうやら2013年の10月13日は歩夢は仕事が休みだったらしい。もしくは深夜のシフトになっていたかである。

「とりあえずこの頃に住んでたアパートへ行ってみるか。あ、でもその前に一応…」
歩夢は何を思いついたのか、コンビニの中へ入っていって二瓶の立っているレジへ向かった。

「ねぇ、君、おそらく来年くらいに大きな恋をすると思うけど、残念ながら叶わない恋だからあきらめなよ。君が傷つかないためにもね。」

「は?」
当然の二瓶の反応である。
「いきなり何なんですか?」

「いや、失礼。いきなり変な事を言って済まなかった。でもね、未来はいくらでも自分の手で変えられるからね!頑張って!」
歩夢は全く説得力の無い言葉を返した。

「は、はい…」

「それじゃあ、また30年後で!」

「…」

歩夢は自分の言いたい事だけ言い放って、コンビニを足早に出て行った。

「何だ今のオッサン。頭おかしいんじゃねぇか? でも顔が誰かに似ていたような… まぁいいか。」

15分後、頭のおかしいオッサンは30年前に住んでいたアパートへとたどり着いた。

「ピンポーン♪」
インターホンを鳴らすと、22歳の歩夢がゆっくり玄関のドアを開けてくれた。

(第7章へ続く)

櫻下月飛十への提供作品

2013年02月04日 | 告知
みなさん、こんにちは!

今回はちょっと番外編です♪

周平が10年前に音楽の専門学校に通っていた頃からの腐れ縁の友達が、
今は岩手の方で音楽をやってます。
櫻下月飛十っていう名前でやってます。
(おうかつきひと、と読みます。変換で出てこないから面倒くさいw)
その彼も東京に住んでいた頃に歌詞を提供した作品が2つあったのですが、
それらが3~4年の時を経てやっと形になったようなので(笑)、この場をお借りして紹介してみたいと思います♪

本人は最近歌録りしてYoutubeへアップしたのですが、こっちとしては歌詞を書いたのは3~4年前なので結構恥ずかしさみたいなのもあるんですが(笑)

また共作の曲ができたら紹介しますね!

『虹色の影』※これは歌詞は一応共作なので、このブログに歌詞は載せてません。

http://www.youtube.com/watch?v=swRNKgF2NJ0

『朧月』※歌詞は#76として過去にアップしてます。(もう50作も前だよw)

http://www.youtube.com/watch?v=aGoPLmhcrww&sns=em