物語はいよいよ終盤に突入した様子だ。
勘の良い方なら今の時点で老人の正体が予測できたかもしれないが、
この物語のオチはそこではないので、「もういいや」と思わずに是非とも最後まで読み続けて欲しい。
筆者がそう願っているうちに、1週間ひとつ屋根の下だった3人は、
52歳の歩夢が1週間前に降り立った公園の公衆トイレの個室の中にギュウギュウ詰めで入っていた。
入っていく所を誰にも見られていなかったら幸いだ。
「じゃあ、精々元気でのぉ。あ、そうそう、これこれ。」
老人は52歳の歩夢に手紙の入った便箋を渡した。
「じいさん、何だよこれ?」
便座に腰掛けた52歳の歩夢が問う。
「2043年の世界に戻ったら必ず読んでおくれ。」
「何だよ… 気色悪いなぁ。まぁ手紙なんて誰からも貰った事ないからちょっと嬉しいけど。」
22歳の歩夢も52歳の歩夢に別れの言葉を告げた。
「俺、絶対夢をあきらめないから! 30年後の俺や親父やおふくろに苦労させないようにもっと頑張るよ! そして絶対俳優として売れてみせるよ!」
「まったく… 俺は何のために東京に引っ越してまで、この時代にタイムスリップしてきたのか… これに一生分の運を使ったようなもんだぜ?」
「無駄にはしないよ! 30年後の俺の努力を。」
「もちろんだ。絶対に無駄にすんなよ! 俺の努力と苦労を!」
ちなみに52歳の歩夢は何の努力も苦労もしてはいない。
ただ、バイト先を岐阜から東京へ変え、住処を実家から二瓶のアパートに変えただけだ。
52歳の歩夢が左腕にしている安い腕時計に目をやると同時に、その体が薄黄色の光に包まれ出した。
「どうやらそろそろタイムリミットのようだな。頼んだぞ! 22歳の俺! それから… じいさんもお元気で。まぁできるだけ長生きしてくれよ。じいさんのおかげで俺も少し目が覚めたよ。ありがとう。2043年に戻ったら俺はどういう生活をしているか分からないけれど、自分に与えられている仕事を一生懸命頑張ってみるよ!」
そう言った52歳の歩夢の体はさっきよりも眩しい光に包まれ、やがて公衆トイレの個室から消えた。
(最終章へ続く)
勘の良い方なら今の時点で老人の正体が予測できたかもしれないが、
この物語のオチはそこではないので、「もういいや」と思わずに是非とも最後まで読み続けて欲しい。
筆者がそう願っているうちに、1週間ひとつ屋根の下だった3人は、
52歳の歩夢が1週間前に降り立った公園の公衆トイレの個室の中にギュウギュウ詰めで入っていた。
入っていく所を誰にも見られていなかったら幸いだ。
「じゃあ、精々元気でのぉ。あ、そうそう、これこれ。」
老人は52歳の歩夢に手紙の入った便箋を渡した。
「じいさん、何だよこれ?」
便座に腰掛けた52歳の歩夢が問う。
「2043年の世界に戻ったら必ず読んでおくれ。」
「何だよ… 気色悪いなぁ。まぁ手紙なんて誰からも貰った事ないからちょっと嬉しいけど。」
22歳の歩夢も52歳の歩夢に別れの言葉を告げた。
「俺、絶対夢をあきらめないから! 30年後の俺や親父やおふくろに苦労させないようにもっと頑張るよ! そして絶対俳優として売れてみせるよ!」
「まったく… 俺は何のために東京に引っ越してまで、この時代にタイムスリップしてきたのか… これに一生分の運を使ったようなもんだぜ?」
「無駄にはしないよ! 30年後の俺の努力を。」
「もちろんだ。絶対に無駄にすんなよ! 俺の努力と苦労を!」
ちなみに52歳の歩夢は何の努力も苦労もしてはいない。
ただ、バイト先を岐阜から東京へ変え、住処を実家から二瓶のアパートに変えただけだ。
52歳の歩夢が左腕にしている安い腕時計に目をやると同時に、その体が薄黄色の光に包まれ出した。
「どうやらそろそろタイムリミットのようだな。頼んだぞ! 22歳の俺! それから… じいさんもお元気で。まぁできるだけ長生きしてくれよ。じいさんのおかげで俺も少し目が覚めたよ。ありがとう。2043年に戻ったら俺はどういう生活をしているか分からないけれど、自分に与えられている仕事を一生懸命頑張ってみるよ!」
そう言った52歳の歩夢の体はさっきよりも眩しい光に包まれ、やがて公衆トイレの個室から消えた。
(最終章へ続く)