周平の『コトノハノハコ』

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小説第5弾続編『夢の続きの夜行バス』~前編~

2015年05月16日 | 小説
俺は今、3ヶ月ぶりに夜行バスに乗っている。

3ヶ月前とは逆に盛岡から東京へ向かってだ。

理由も逆。夢の終わりではなく始まり。

いや、夢の続きと言った方が正しいだろうか。

理由を話すと長くなるのでやめておきたいが、その理由を話しておかないと読者は訳が分からないだろうし、前編後編に渡る予定のこの続編小説の尺が埋まらないので、やっぱりちゃんと話しておこうと思う。

3ヶ月前、あの夜行バスの中で出会った二瓶一之という同い年の男とFacebookでつながり、それから音楽話に花を咲かせた。

どんな音楽を聴くだとか、誰のCDを買うだとか、誰のライヴを観に行っただとか、どんなアイドルが好きだとか、どんな顔がタイプだとか、夜行バスで一緒だった女の子の事だとか…

もう後半は音楽とまるで関係ない。

やはりあの時、二瓶一之は仙台の実家に一時帰省していて、普段は東京に住んでいる。
コンビニで週6~7ペースでアルバイトをしながら。
やはり音楽活動でなかなか芽が出る事はなく…。

そんな彼でも俺より数倍マシだ。
俺は盛岡の実家に帰ってから3ヶ月無職だったのだから。

彼とつながってから3週間ほど経ったある日、彼から突然「ねぇ? 僕とユニット組まない?」と誘ってきた。

無職で暇な俺にとって、断る理由は「ちょっとウザい」以外には特に無かったので誘いに乗ることにした。

彼が曲を作り、俺が歌詞を書き、それを彼が歌い、俺がアレンジを加える。

そんな流れでわずか1ヶ月の間に4曲のオリジナル曲を作り、それを二瓶がいくつものレコード会社に売り込んだ。

その中の1社から「すぐにでも会いたい」と二瓶の元へ連絡が入った。

俺は盛岡に住んでるので、とりあえずは二瓶が一人で、そのレコード会社のプロデューサーと会ったのだが、その場ですぐにメジャーデビューを約束され、俺にも東京へ出てきて欲しいと言ってきたのだ。

そんなバカな? 
こんなにうまくいって良いのか?
怪しいレコード会社ではないのか?
と色々疑ったが、調べた結果怪しそうなレコード会社ではなかったし、こんなチャンスは俺にも二瓶にも二度とないだろう。

そんなわけで、俺は今、人生2度目の上京の夜行バスの中なのである。

そう、夢の終わりではなく、夢の始まりの、夢の続きの夜行バス。

(後編へ続く)

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