「職人とは、ものを作る手だてを考え、道具を工夫する人のことである」
小関智弘
若い頃ビルの建設現場で働いていたことがあります。大勢の、いわゆる「職人さん」方に囲まれながら現場仕事をしていたのですが、正直私はその仕事が苦手でした(苦笑)。でも今、どうして自分は当時苦手だと思っていたかを思い出して考えてみると、それは私が「仕事が分からなかった。仕事が出来なかった」から、という答えに行き着きます。
職人さんたちと対等に話をするには、こっちもある程度、いや彼らよりも物事を知っていなければ彼らの尊敬を得ることは難しいです。当時の私はなんにも分らず、ただ上司と職人さんたちの間のメッセンジャーボーイに過ぎなかったので、職人さんたちの無口さがかえって当時の私には圧力に感じて苦手意識を持っていたのかも知れません。
今日の言葉の小関智弘さんは「職人学」や「職人力」の著書で知られています。上述の通り、小関さんは「職人とは、ものを作る手だてを考え、道具を工夫する人のことである」と定義していると同時に次のように述べています。
「与えられる仕事を、教えられたとおりにすればよいなら、それは単なる労働者にすぎない」
この言葉に接して、シンガポールに来る日本人の人たちの中にどれだけの“職人”がいるだろうかと考えました。綺麗なオフィスの中で仕事をしていても“単なる労働者”という人たちもいるのではと思います。こんな事を書いている私自身以前はそうだったかも知れません。
実際は手を使って、道具を使って何かを作る職人ではないかも知れませんが、常に創意工夫を心がけ職人的なエージェントでありたいと願って、これを今週の言葉として掲げ一週間を過ごしたいと思います。