徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
旅・舞台・ドラマ・映画・コンサート等の記録と感想がメインです。

ロンドン版 ショーシャンクの空に (2014年東京公演・ネタバレなし)

2014年12月21日 | 舞台
公演内容発表から本当に首を長~~くして待っていた舞台!



白井晃さん演出、ロンドン版『ショーシャンクの空に』をシアタークリエで観劇しました。
6列目センターの良席で休憩20分を挟んで約2時間50分のお芝居。

公式HP
http://www.tohostage.com/shawshank/





舞台俳優としての佐々木蔵之介さん、國村隼さんをじっくり見るのは初めてということもあり、事前の期待レベルはいやが応にも高かったのですが、本番はそれを上回るインパクト!重低音のような芝居とシナリオの密度を、矯めに矯めて…ラスト20分で爆発的に解放する脚本・演出・演技に、文字通り魂ごと釘付けでした!

ロンドン版、と銘打っている通り、名作と名高いあの映画そのままのストーリー展開ではありません。ちなみに映画は一度見たのですが、切れ切れにしか覚えていなくて、ディテールは忘れてしまっていた分、無心にのめりこめたのも幸いだったかもしれません。決して大げさではなく、ハリウッド的な「これでもか!」という押し付けがましさや極端な出来事、ご都合主義もなく、むしろ淡々と刑務所内の人間模様を追っていく作りは、私はとても好きだと思いました。

もちろん見所はアンディ(佐々木さん)レッド(國村さん)このダブル主役の化学反応。
まさしく「贅沢な」お芝居に酔いました。脇も実力者ぞろいで一瞬も気が抜けません。

そして、当たり外れは確かにあるのですが、今回では白井さんの緻密で張り詰めた、ツメるところではシャープにコンマ何秒すら計算しつくして瞬間ごとの「間」を削り、逆に「取るべきところ」では存分に余韻を残す、緩急自在の演出手法もより好きになりましたし、松井るみさんの美術は「鉄格子すら美しい」と感じさせたソリッドな魅力。あと、訳された台詞の美しさと深さに敗北感すら覚えました。

SEの響き方、生BGMの使い方・・・ラストまで無駄なく最高に練り上げられた「挑戦的な」作品でした。

もっと印象に残ったシーンなど詳しく書きたいのですが、これからご覧になる方もいるでしょうし、ネタバレは今の段階ではしないことにします。ただ、多分「冒頭とか、あのシーンはミーハー心で観に来た人の度肝を抜いたに違いないよねw」と連れの友人と面白がっておりました。(白井さん容赦ないわー、と大喜びする我々w)





その友人とも忘年会を兼ねて終演後少し飲んでおりました。
彼女は今年白井作品を5本、私は3本観てまして、それぞれの共通した感想。

合わないときはホントにダメだし観てて疲れるけど、
それすら超越して『こういうものを作りたい』がブレてない、
そのハイブロウな感じがいっそ心地よいw


私 「慣れただけじゃない?」
友人「そうとも言うかなw」

結論。
今年の『マイ・ベスト5』に入る、緊張感・美意識・重厚な迫力に満ちた素晴らしい舞台空間でした。
一年の締めくくりがこの一本でよかった、とは友人談。(←年間数十本観ている人なので私も納得!)

ちなみに「こういうのは1回行けば十分よな」と思っていた私たち、この日(16日)が余りに素晴らしかったので、急遽21日にもう1回観に行こう!と即断即決。初見では至近距離で主役二人に目を奪われていた分、引き気味の位置から全体を俯瞰して群像劇としても大いに楽しみました。違う見方が出来てよかったね、とお互いとても満足しました。





希望という言葉と現実の意味を知る「大人」にこそ相応しい、きわめて上質のお芝居でした。
地方公演もあるのでお近くの方は一度足を運んでみてはいかがでしょうか。





(残念な出来事)

そう言えば、昨日は第一幕はイビキかいて(しかも時々「グッ」という変な音を立ててゴソゴソ身動き)寝てて、第二幕では双眼鏡ガン見の女性客がいて、何と言うか傍迷惑通り越して滑稽でした。いろいろ分かり易すぎて…失笑。

改めて「舞台を観に来る人種」と「舞台に出ている人間を観に来る人種」は似て非なるもので、永遠に分かりあえないだろうな…と思いました。後者は時として自分の振る舞いが劇場空間をぶち壊していることに気づきもしないので、だからXXファンは…と言われても仕方のないレベルである時も。こちらも一括りにする気はありませんが、大人として恥ずかしくないですか?

更に悪いことに「舞台に出ている人間を観に来る人」が劇場マナーを弁えていない場合、その「お目当て」になっているキャストの印象にも影響するのは当然で、たとえ素敵なお芝居をしていても、イメージが損なわれてしまうこともあるでしょう。誰のファンであっても劇場には劇場のルールがあります。客はあなただけではないということを念頭に置いて、相応の良識ある行動をお願いしたいものです。

いやもう、いっそその方は休憩挟んで(お目当ての)第二幕から劇場来て観たら良かったのに…と思いましたよ。年末多忙でお疲れで睡眠不足なら、無理しないでゆっくりお越しになってくだされば宜しかったのに。(苦笑)