徒然草庵 (別館)

人、木石にあらねば時にとりて物に感ずる事無きに非ず。
旅・舞台・ドラマ・映画・コンサート等の記録と感想がメインです。

鍵泥棒のメソッド 【黒版】公演第三週 (ネタバレあり)

2014年05月21日 | 舞台


終わってほしくない。

このままずっと観ていたい。
二人のやり取りに耳を傾けていたい。

お願いだから、終わらないで!




これが「今日の全て」でした!【白版】3回、そして今回含めて【黒版】3回と観てきましたが、こんなに魂が震えるような切ない思いをしたのは初めてです。

それは物語終盤、トリックを見破った工藤たちの前から辛くも(綾子と香苗を連れて)脱出したコンドウと桜井が車の中で話をする場面。台詞は今までと同じはずなのに、何が違うのか?!コンドウの思い、桜井の思い、香苗の思い…それぞれ交わされる言葉に込められた情感がこれまでとは桁違いに豊かな広がりを見せていきます。
畑中さん演じる桜井が、これまでとはまた全然違った表情と声で「彼なりの勝負に出た理由」を語り、阿部さんのコンドウが呆れたような口調の中にも素直な賛辞を込めていて「えっ、ここってこんなに良いシーンだったっけ…?」と瞠目するような驚き!お芝居がひとつ突き抜けた、蛹が蝶になったような鮮やかな変化でした。こんな場面に立ち会うことができるなんて、今日の私はツイてる!(歓喜!)



ふたつの声が織りなす会話をずーっとこのまま聞いていたい…後部座席で語る桜井、少し後ろに視線を投げかけながら聞き入るコンドウ、二人の表情の変化や心の通じあいが、大地を潤す春の雨のように劇場をあたたかく包んでいました。その空気に浸りながら「舞台はいつか終わってしまう。2時間の上演時間であれ、3週間の公演期間であれ、いつか必ず終わりが来るもの」…それでも「終わってほしくない!」と願っていたのでした。



カテコの阿部さんの挨拶、ちょっと今日は仕事で落ち込んで疲れていた気持ちに、これまたスーッと染み入って、不覚にも泣きそうになりました。弱ってるサラリーマンにあんな優しい言葉をかけるなんて、反則っ!(でも明日から再び頑張って働きますので、また元気貰いに来ていいですか?笑)

なのに…「次回ホワイトチームでは岡内さんがコンドウ役をします!」というとんでもないアナウンスを真顔でやっちゃうという…!(爆)客席も大ウケw

岡内さん 「えーっ?香苗はどうするの?!」
阿部さん 「岡田さんが香苗役ですw」
岡田さん 「オレが胸キュンスイッチやるの?(と、ポーズ)」 ←場内大爆笑
阿部さん 「大丈夫、髪の毛の代わりにスカーフ被ればそれっぽく見えます!」
多田さん 「桜井はっ?桜井はそのままでいいの?!」 ←あからさまに安堵w

西川さんの「嘘をついてはいけません!」というお叱りがまた絶妙のタイミングで、最後まで涙が出るほど笑わせていただきましたw ラストは安理ちゃんの「おうちに帰るまでが公演ですよ」の声に送られて、ホッコリ暖かな気持ちで家路につきました。


☆★   ☆★


そんなわけで今日は5月20日(火)・・・前後しましたが、キャラメルボックス『鍵泥棒のメソッド』東京公演も(2回目の休演日を経て)3週目に入りました♪

≪参戦履歴≫
 5/11 ●
 5/13 ○
 5/15 ○
 5/17 ●○
 5/20 ●  ←今ココ


今日の阿部さん@コンドウの台詞の紡ぎ方と声音の繊細な変化は、今まで観てきた中で一番染み入るように心地よいものでした。阿部さんの声を前回「イケヴォイス→イケボ」と評しましたが、そんな表現が安っぽいほどに良い声です。畑中さんの桜井もヤンチャで愛嬌のある部分はそのままに、ぐっと大人びた感じが加わって、また語る声も以前よりもずっと深みを増して、あれ?発声変えた?と思ってしまったくらい。安理ちゃんの香苗も可愛らしさと強さの絶妙なブレンドに「小動物のような頼りなさ&少女のような心の揺らめき」がちゃーんと入って、ぐっとリアルな女性に。主演の3人だけではなく、全てのキャストの皆さんが持ち役を肌身になじんだものとして心から楽しそうに、生き生きと演じている、むしろ「役そのものを2時間生きている」ことが伝わってきて、観ているこちらも笑顔になってしまいます。

「ああ、これこそ3週目の進化!」とひたすら気持ちよくお芝居に酔う幸せ!^^ 今までも楽しかったあのシーン、ドキドキしたこのシーンが、少しずつ密度と彩度を増している!より登場人物たちがリアルに、色鮮やかに、イキイキと動き回っている!これまで観てきたからこそ気づく細やかな進化に嬉しくなるとともに、今週以降初見で観に来るお客さんは幸せだな、すっごくいい感じに熟成が進んでいる「現在進行形」をすぐ味わえるんだから!などと思ったり。


それはそうと、私は公演期間中「休演明け一発目の公演」が好きです。わざとこの日を狙って観に行くことも多々あります。理由は明白で、役者さんが十分休養してリフレッシュされていること、その前の週の公演の内容に手直しを加えてくることも多いのでそれを比べる楽しみ、そして「気合い」。演じる側も観る側も、スタートダッシュを決めるつもり満々で臨む、それが「休演明け一発目」の面白さだと思います。(なので「最初は17日○と20日●で観るつもりだった」と、今では誰に言っても信じて貰えないのですが…本当です!)


今日のチケットはちゃんと最速先行で取ったので、他よりはず~っと良い席です!今日は実質4列目のセンター少し下手。

センター少し下手!
センター少し下手!!
何という私得な席!!!
 ←うるさいw

前回にダンスシーンの図解をちょっとしてみたものの「配置がどうも違うな…」そこは今回ちゃんと確かめたかったのでしたが、序盤で あ え な く 撃沈。今日もシャチの餌食になったアザラシ状態(T_T)あのシャチさんたち(下参照)は肉食全開で遠慮なくこっちの心を喰いちぎって行かれますので、多分来週末の千秋楽のころにはワタクシ、骨も残ってないんじゃないかとw 



しかもシャチに齧られた後は、もれなく「お茶目なお医者さん」と「ドSで可愛い工藤さん」ショータイムもありますしw



工藤さん(=大内さん)相変わらずむちゃくちゃカッコいいです。どのくらいカッコいいかというと!白黒ロングジャケットで大道具小道具配置を手伝いに舞台に出てくる時すら目が離せないくらいです!顔伏せてても色気ダダ漏れなんで無駄!植木鉢よっこいしょって運んでてもカッコいい!w(観るとこソコじゃねえ!と怒鳴られそう?!)

そして今日は気のせいでしょうか?顔芸含めた「チャーミングさ」が3割増量!怖い場面のハイテンション演技はそのままに、落とすところ、笑わせるところ、プルプルしちゃうところ(笑)、対照的な形で工藤の内面を表現する場面の切れ味がさらに上がってて、(これまでも「そこ」がガン見で注目していましたが)一瞬の止め絵的楽しさが大盛り無料!(笑)大満足&満腹!



というか…土屋と藤本を含めた工藤興業トリオの役作りとお芝居のアンサンブル、完成度は既に映画を越えているんじゃないかと。これは本気で思います。

これらを虚心無心で観るほどワタクシ人間が出来ておりません。多分千秋楽まで無理だと思います!(努力放棄)



しかし!今日は 素晴らしいもの がCB公式で出来上がっていて、大歓喜!!!キャストの笑顔、叫び、驚き、怒りの表情…「見どころ」=私の大好きなあのシーン、このシーン、ラスト以外は全部てんこ盛りで入ってます!!!そして「気が済むまでリピしたいv」と願っていたダンスがばっちり!私の好きなアングルで!ちゃんと入ってます!





『鍵泥棒のメソッド』プロモーションビデオ(BGM:石田ショーキチ『MOONBASE』)

実はこの動画、公演直前の劇場内で携帯使って見てました。


(今日…私、絶対眠れないじゃないかっ!) ←心の声


さすが公式…!悔しいやら大満足やら。公演DVD発売する時はこのPVも特典映像としてちゃんと入れてくださいね!(笑)永久保存版決定!!ホントに素敵なシーンのいっぱい詰まった「胸キュン」動画ですw


☆★   ☆★


≪余談≫
ところで。先日「雑感」で登場したキャラメルボックス観劇デビューの友人(普段は下北沢や三鷹、三茶あたりの小劇場、劇団公演によく出かけている人です)が、終演後にこんなことを言っていました。

友人「そもそもこの『鍵泥棒のメソッド』、何故CBはBlackとWhiteの2バージョンで上演しようと思ったんだろうね?」
私 「商業的な目論見ですかねえ…でも冬にやってた公演が1作品2バージョンで、春公演は2作品同時上演。そもそも、そういうことができちゃうクオリティ、人的余裕とお芝居の実力、体力がある劇団なんじゃないでしょうか?」 

もちろんCB初心者ですので本当のところは知りません!あくまでも!推測です!
バッグからメモを取り出すと、私はざっと下のような項目を書いて、友人に見せました。

①仮に3週間の公演期間として、普通1公演につき1回の観劇でおしまい。
 ※地方から上京するファンもここに入る。
②劇場に比較的行きやすい所に住んでいて、ちょっとお金と時間に余裕のある人なら前半と後半に1回ずつ、2回。
③出演者の熱烈なファンでしかもお金と時間が何とかなる人なら、序盤・中盤・終盤の各1回。あるいはそれ以上。

これは自分や周囲の観劇パターンを見ていての一般的な話ですが、劇場に足を運ぶ観客のうち、最も数が多いのがグループ①。いわゆる「舞台好き」と一般的に言われるのがグループ②。でも、③なんかは余程の有閑マダムとかお金持ちとか、あるいは超のつく芝居好きとか、そんな感じでしょうか?素人の計算だと、観劇するお客さんの絶対数を増やすなら「グループ①が2回来てくれること」が一番。

友人「確かに2つのバージョンのキャストの個性や、作り出すお芝居の雰囲気が全然違うと知ってるCBファンなら、時間とお金が許せば絶対両方観たくなるよね。クロスキャストだから入れ替え場面含めて観たい!のが特定の役者さんのファン心理でもあるだろうしw」
私 「それに、自分みたいな初心者でも【黒】観たら【白】も観たいな、と素直に思いましたから、そういう楽しみ方を劇団として提供したいと思っているんじゃないでしょうか…今日のカテコ挨拶でも『皆さんに楽しんで頂けるものを』って、役者さん達みんなが言ってましたよね?」

友人はそこでニヤっと人の悪い笑みを浮かべました。

私 「どうしました?」
友人「とりあえずCBの市場戦略はさておき、私の目の前に『グループ③の極めつけ』が1匹釣れている…しかも友釣り状態www」
私 「・・・・・・!(絶句)」 

キャラメルボックスの思惑はともかく、何だか騒がしいのが釣れたのは間違いなさそうです。
有閑マダムでもお金持ちでもないけれど、とりあえず舞台が大好きvな1匹が!(笑)


☆★   ☆★


来週はこれまた「自分も学生時代舞台に立ったことがある」友人を誘い、【黒版】→【白版】とハシゴの予定。あのシーンやこの台詞でどんな反応するかな、と今からワクワク…もちろん!もう一つ上の次元に進化しているに違いないお芝居も!

千秋楽まで「お祭り」は続きそうです。