働き方改革法で、時間外休日労働の上限規制が数値として法制化されました。いままでは法の外、大臣告示の基準として示達されていただけに、労基法70年余の歴史上、数値法定化は画期的な出来事です。そのひとつに、法定休日労働を含む時間外労働時間が、単月100時間に達してはならず、2カ月ないし6カ月平均で80時間を超えてはならないというものがあります。計算方法は煩雑なのですが、例示してみましょう。
年月 | R4.2 | R4.3 | R4.4 | R4.5 | R4.6 | R4.7 |
時間外労働時間 | 80 | 60 | 45 | 35 | 55 | 79 |
法定休日労働 | 0 | 20 | 15 | 10 | 30 | 0 |
合計 | 80 | 80 | 60 | 45 | 85 | 79 |
6カ月平均 | ||||||
5カ月平均 | ||||||
4カ月平均 | ||||||
3カ月平均 | ||||||
2カ月平均 | ||||||
6カ月平均 | 5カ月平均 | 4カ月平均 | 3カ月平均 | 2カ月平均 | ||
合計時間 | 429 | 349 | 269 | 209 | 164 | |
平均時間 | 71:30 | 69:48 | 67:15 | 69:40 | 82:00 |
先月の時間外が単月80時間に収まっていても、平均をとったところ80時間オーバーでは、法違反となります。おわってからの計算で80オーバーと気付いたのではあとの祭りです。この例では6月が終わった段階で、今月(7月)は何時間が上限か算出可能です。平均を求める算出式を変形しています。労務担当者はぬかりなく算出したうえで、社内通達して今月の上限時間を徹底する必要があると言えるでしょう。なおその最小値が100時間(以上)とでても、単月100時間に達してはなりませんので、99時間59分という値になります。
あらかじめ6月終わった段階の7月上限計算例です。
6カ月×80時間-[2~6月]=a | 480-350=130 |
5カ月×80時間-[3~6月]=b | 400-270=130 |
4カ月×80時間-[4~6月]=c | 320-190=130 |
3カ月×80時間-[5~6月]=d | 240-130=110 |
2カ月×80時間-[6月]=e | 160-85=75 |
[括弧内]の月範囲は、その期間の時間外・休日労働時間の合計数値です。求まるa~eの最小値が今月(7月)の時間外・休日労働時間上限となります。上の例では、7月の最大は75時間が上限だったわけで、それを求めずにいると平均80時間以上働かせる危険性があります。場合によっては今月上限0に近い数値がでることもありますので、毎月早急に今月可能時間外・休日労働時間数をもとめて、部門長に厳命する必要があるでしょう。組織が大きければ大きいほど、動きを急に止めることはできませんから、あらかじめ部下を持つ上長に対し、新労基法のしくみを周知徹底し、体制を整えておくのはいうまでもないでしょう。
特別条項の年間発動回数は、対象期間が終わればリセットされますが、この2~6カ月平均は、新法による36協定期間であれば期をまたいで求めます。この例では、仮に4月から新36協定期間でも、2月3月の時間を用いて6か月5カ月平均を求めます。また転勤してきた人も、前職の時間外休日労働時間数も対象ですので、自己申告いただくようにしてください。
(2022年7月7日投稿、2022年11月12日編集)