人生にとって幸福な音が
三つある。
1. 夫が家にいて、静かに本を
を読んでページをめくる音
2. その傍らに妻がいて、、何
かを作っている音
3. その夫婦の側で、子供が
元気に遊び戯れている音
日本のよき時代にあった音たち。
人生にとって幸福な音が
三つある。
1. 夫が家にいて、静かに本を
を読んでページをめくる音
2. その傍らに妻がいて、、何
かを作っている音
3. その夫婦の側で、子供が
元気に遊び戯れている音
日本のよき時代にあった音たち。
クローゼットの前に立って、迷う。
何を着ていこう、今宵の逢瀬
にふさわしい洋服は、どれ?
あれこれ取り出して、身に着けて
は、むしり取る。「これでよし」
と思った直後に「ああ、違う!」
とつぶやいて、また、一からや
り直し。
我ながら「馬鹿みたいだ」と思う。
この「ひとりファッションショー」
をやっていると、いつも、古い映画
『恋におちて』の中で、メリル・スト
リーブがデ・ニーロに会いに行くた
めに、ベットルームの鏡の前で洋服を
取っ替え引っ替えしているシーンを
思い出す。
想いを寄せている人の手で、あとで
脱がされるために着るドレスを選ぶ
・・・なんて骨の折れる、なんて心
心躍る時間。
さんざん迷った挙句、わたしが選ん
だのは、ラベンダー色のシルクの
ワンピース。胸もとと背中が大きく
開いている。アクセサリーは、何も
つけない。
このドレスにはなぜか、香水だけが
映る。ストッキングと靴は黒。バック
は濃い紫の薔薇の花を飾ったものに
する。
これで決まり。
彼が代官山駅に着くのは七時半
になるだろう。
電話がかかってきたのは、午後
四時二十分だった。
わたしはちょうど、今日の仕事に
一区切りつけて、そろそろ夕食の
支度にとりかかろうと思いながら、
受話器を取ると、彼の声が飛び込
んできた。
「夕方のアポがひとつ、急にキャン
セルになって今夜どこかで一緒に
食事をしよう。翔子の好きな店で
いいよ」
彼ったら、なんて、嘘が下手なの。
そんな見え透いた嘘をついて、ほ
んとに、可愛い人。
「了解。じゃあ、お店はわたしの
ほうで予約しておく」
彼はわたしが、もうすっかり忘れて
いると、思っているのだろうか。
忘れるわけがない。きょうが何の日か。
*
わたしはその日、ニューヨークに
向かう飛行機に乗っていた。今から
三年前のきょうだ。
あとはもう離陸をするだけ、という
状態になってから、大慌てで駆け込
んできたのが彼だった。
いかにも「ニッポンの企業戦士です」
といった風情の人、苦手なタイプだ、
隣の席に来なければいいけれどと、
思いながら眺めていると、案の定、
客室乗務員が彼の搭乗券を見ながら
指し示したのは、わたしの隣だった。
彼とは笑顔と目配せでわたしに挨拶
をしてから、窓際の席に腰掛けた。
笑顔はなかなか素敵だ。と思った。
でも、それだけ。
食事が終わり、映画の上映が始ま
った。
いかにも飛行機の中で上映される
映画としてふさわしい、他愛のない、
犬猫の冒険物だった。
かずかずの危険と困難をかいくぐ
って、最後には無事に自分の家ま
で戻ってくる、そんなストーリーだ。
やがて、クライマックスがやって
きた。今でも、わたしはあの「場面」
を思い出すと、頬がゆるんでしまう。
背景は、機内の暗闇。登場人物は、
頭の切れる辣腕ビジネスマン。そ
してわたしが目にしたのは、彼の
頬を伝う、ひとすじの涙だった。
彼は泣いていたのだった。動物たち
が飼い主と再会する感動の場面で。
なんて可愛い人なの!
忘れもしない、彼を好きになった
のは、その瞬間だった、恋の神さま
がわたしのために、彼の最も愛され
るべきチャームに、ぱっと光を当てて
くれたんだと思う。
今から三年前に、この、広い広い、果
てしない宇宙の中で、混沌とした世界
の中で、わたしたちは巡りあった。
きょう六月1日は、ふたりの
恋の誕生日
電車はあと五分もすれば、到着
するだろう。思い切りお洒落し
た彼は、きっと、深い紫色の
薔薇の花束を手に電車から降り
てくるだろう。
駅から出て、わたしを探す彼の姿が
見えたなら、わたしはまっすぐに
駆けて行く。
世界で一番愛している。
世界で一番素敵な人の、
両腕に抱かれるために。
「家で死にたいんじゃありません。
家で暮らし続けたいんです」
※
「ペットの最後は自宅で死なせる
べきです。
ペットでなくても、飼ってる人間
だって同じことだと思います」
※
「子供ってのは――
親が死ぬってことが予定にない
んですね。
だから親に死なれると、自分も
死ぬんだという実感がドーンと
きますね」
※
「死んだら他人の世話になるん
だから、生きている間に他人の
世話をしとかなきゃね」
※
「死ぬ前になりますと、人間は
炭酸ガスが増えるんです。
この炭酸ガスに麻酔性がありま
すから、最後はそれほど苦しまず
に終わるようにできているんです」
※
「死ぬということには
ベテランや名人はいません。
死にのはみんな初心者です」
どんな人になりたいかと
聞かれたら、
私は「一緒にいて楽しい人」
になりたいと答えると思い
ます。
そのためには毎日をボジテ
ィブに、楽しく生きたほう
がいい。
「あの人といたら、なんか
楽しいんだよね」
そんな感じで周りの人が
明るい気持ちになれる。
そんなポジティブさを身に
つけたいと思います。
ポジティブに生きるのは、
自分のためだけじゃないん
です。
開高健様。
若くして文壇にその才能を
認められ、企業の宣伝部にあって
一世を風靡する宣伝をいくつも
手がけるかと思えば、
戦火のベトナムから命がけの
ルポルタージュを書き送る。
そんな多忙の間をぬって、
地球の果ての大河に飛んで
壮大なフィッシングを愉し
む。すべてが桁はずれ。
小説家の枠におさまらない
行動力で人々を魅力した。
彼のもうひとつの顔は、美
食家。ワインやコニャック
を愛で、キャビアに舌鼓を
打ち、世界を縦横に駆けめぐ
ってあらゆる料理を味わい
尽くした。そんな開高健が、
じつはお茶漬けファンだった。
と言ったら、驚くだろうか。
あるとき、彼は旅先から家族
宛てた手紙のなかで
「梅茶漬け、送れ」と書いた。
まるで、どこにでもいるふつう
の日本の男のように。
ホッと息ぬきできる時間を求め
るように。
ひとの何倍もの濃密さとスピー
ドで、59年の生涯を駆け抜け
た男が、ただの男に戻るとき、
そこにお茶漬けがあった。
美食も冒険も人生を豊かにする。
しかし、それだけでは何かが
足りない。
肩の力をぬいて、ふだん着の
まま楽しめる何かが足りない。
その何かとは、あったかくて、
らくちんで、日本にしかない、
サラサラおいしいもの。
今夜の酒のシメ。
ゆっくり、おいしい。
梅茶漬け。
「何か、飲み物が欲しい?」
彼女はわたしにソファーを
すすめたあと、リビングルーム
の続きにあるキッチンに立って、
にこにこ尋ねた。
「コーヒー、紅茶、ジャスミン
ティ、グリーンティもあるのよ。
それともあなた、ワインを飲み
ますか」
喉がからからに渇いていた。
「ありがとうございます。じゃあ、
ジャスミンティをいただきます。
その前に、お水を一杯もらえま
すか」
「はい、わかりました」
彼女がお湯を沸かして、お茶の
準備をしているあいだに、わた
しはさり気なくあたりを見回し
た。いや、見回さなくとも、
次々にわたしの目に飛び込ん
できた。
テーブルの上に置かれている
雑誌、英語の新聞、そして日
本語の辞書。ボールペンとメモ
用紙。女物の腕時計。長椅子の
上にはクッションのほかに、
明らかにあのひとのものだと
わかるセーターとシャツ・・・。
それらは「あのひと」であり、
同時に「あのひとの不在」でも
あった。
飾り棚の上には、ファックス用
紙の差し込まれた電話機と、写
真立てがいくつか。大きく引き
伸ばされた彼女の写真。彼女が
両親と三人で写っているものと、
彼女の子ども時代の写真。
その隣に、コックの制服を着て、
クラスメイトと一緒に写って
いる、あのひとの写真。
それは、わたしのよく知ってい
るあのひとのようにも見えたが、
同時に、まったく見知らぬ他人
のようにも見えた。
この部屋で、あのひとは、この
人と暮らしていた。いいえ今も、
暮らしている。
ここには、わたしの知らない
あのひとの生活があり、それは
これからも続いていく。
「男性のみなさん、世界中の
女性にモテモテなのは男性で
はありません。残念ながら。」
欲ばりな男が浜辺で不思議な
ビンを拾いました。
それを開けてみると、妖精が
飛び出し男に言いました。
「私をビンの中から救い出し
てくれてありがとう。お礼
に、3つの願いをかなえて
あげましょう。」
男は迷わず「3億ドルがほ
しい!」と言いました。
するとびっくり。
そこには3億ドルの札束が。
次に「カッコいいオープン
カーが欲しい!」と言いま
した。すると、たちまちカ
ッコいいオープンカーが
現れました。
そして味をしめた男は最後
に「世界中の女から愛され
たい!」と言いました。
すると・・・彼は、
おいしそうなチョコレートに
なりました。
チョコレートは、ひとを幸せに
する。
ただし、そんなに甘くないから
願い事は、慎重に。