彼は、砂を蹴るように走ってい
った。そのあとを小犬がじゃれ
て、ついていく。
暮れかかった海辺で、そこだけ
スローモション・フィルムのよ
うな絵柄に見えた。
彼はこちらを向いて、手を振っ
た。私も手を振り返し、
・・・水すまし、糸切り歯・・・
と、つぶやき、渚に背を向けて
から、思わずほほえんだ。
ーー ※ ーー
夏のプロローグ 気がつくと
しなやかに心は踊る
その年のまっさらな思いでづ
くり
ワンショットでいい 飾るシー
ンも
それがいつか 大きく季節を
超え たくさんのドラマを
生むかもしれない
揺り返す波の ストップモーシ
ョンのように
出逢いも 心の中で 一時停止
した情景
出来れば 絵葉書のように
壁のピンで止めたい
胸騒ぎも 予感も 出来れば
凪いだ海のように
おだやかな 包みこむような
恋であってほしい
誘惑ほどに 大げさじゃなく
さざなみほどの
ときめき きらめきの心で・・・