“さるかに合戦”  臼蔵 と 蜂助・栗坊 の呟き

震災や原発の情報が少なくなりつつあることを感じながら被災地東北から自分達が思っていることを発信していきます。

国民とマネー資本主義 貧富の格差

2016年05月06日 10時20分42秒 | 臼蔵の呟き

「格差が広がれば富める者はもう買う物がなくなり、貧しいものは節約するしかないのですから。」

 シリア、イラクなどの内戦、難民流出の要因は、先進国による収奪と暴力がもたらした紛争、武力衝突です。多くのテロ事件の根底には、テロリストの発生を促す、貧困と差別が存在しています。1%の超富裕層が、99%国民の貧困と引き換えに、富を独占する社会構造、政治経済を転換しない限り、この問題は解決しません。

<東京新聞社説>民衆とマネー資本主義 貧富の格差は正さねば

 若者や弱い立場の人々を苦しめている貧富の格差。それを正そうという新たなうねりが日本はもちろん、先進国で広がり始めています。

 重厚な低音の声優として活躍した大平透さんが先日、八十六歳で亡くなりました。白黒テレビに子どもたちがかじりついたころはスーパーマン。バブル経済が崩壊した一九九〇年代にはテレビアニメ「笑ゥせぇるすまん」、喪黒福造の不気味な語りが印象的でした。

 曰(いわ)く「この世は老いも若きも男も女も、心のさみしい人ばかり、そんな皆さんの心のスキマをお埋めいたします…」

◆広がる心のすきま

 三年前の二〇一三年、忘れていたこのせりふを呼び覚まされる事件がありました。人気漫画「黒子のバスケ」を並べる書店や関連イベントの会場に脅迫文を送り付けた容疑で、三十六歳の派遣社員の青年が逮捕されたのです。

 希望の進学がかなわず、年収が二百万円を超えたことがないという青年は裁判で「手に入れられなかったものをすべて持っている作者のことを知り、人生があまりに違いすぎると愕然(がくぜん)とした」「負け組に属する人間が、成功者への恨みを動機に犯罪に走る事件は、今後の日本で頻発するかもしれない」と述べたのです。

 バブル崩壊後、企業のリストラがすすみ、非正規でしか就職できなかった若者に広がる失望、無力感、そして妬(ねた)み…修復できないほど広がった心のすきまとは社会の断裂ではなかったでしょうか。

 あの事件から三年。止まらない格差の拡大は社会の大きな課題となり論議が広がっています。国内はもちろん、米国でも欧州でも。

 九一年に冷戦が終結してから二十五年。当初は独裁や全体主義に対する民主主義の勝利と称賛されました。ところがリーダーの米国をはじめ民主主義の先進国で貧富の格差がどんどん広がります。

 膨張するマネー、資本の力は「冷戦に勝利したのは民主主義ではなくて資本主義…」とさえ言われるようになりました。その金融資本主義も08年のリーマン・ショックで力を落とし、今、二つの壁に見直しを求められています。

◆パナマ文書は警告する

 ひとつは長期停滞の可能性です。資本主義は発展するにつれて欲望が飽和し、収益のあがる投資先がなくなって長期停滞する-かつて経済学者のケインズはこう指摘しました。最近では資本主義の終焉(しゅうえん)論も耳にします。

 もうひとつは格差に立ち向かい、不公正を正そうとする民衆からのうねり、新たな波です。

 格差社会の象徴になった米国の大統領選挙では、格差と不公正の是正を訴えるサンダース候補が支持を集めています。その主張のひとつが「大銀行解体論」です。

 大銀行に集まる巨額のマネーは少しでも利益のあがる投資先を求めて世界のあらゆる商品、市場を投機の対象に右往左往し、時に破綻し、暮らしの土台である経済を根底から揺さぶります。巨大銀行を分割して金融バブルを防ぐのが解体論の狙いです。米国の中央銀行のひとつ、ミネアポリス地区連銀の総裁も同じ考えを表明するなどウォール街も無視できない動きになりつつあります。

 不公正を正す動きも出てきました。富裕層の脱税の抜け道になっているタックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴く「パナマ文書」です。

 新たなうねりは日本でも見え始めています。

 バブル崩壊から二十年の〇九年、民主党が掲げた「コンクリートから人へ」は多くの共感と期待を集め、政権交代が実現しました。新政権は未熟で、国民の期待は失望に変わり、自公政権が復活。企業収益重視の旧来型の政策で経済を立て直そうとしますが、消費が伸びず行き詰まっています。

 そのはずです。格差が広がれば富める者はもう買う物がなくなり、貧しいものは節約するしかないのですから。

◆人への投資はだれが

 格差是正を求める声が高まる中、国民の審判を受ける参院選挙を前にした安倍晋三首相は、同一労働同一賃金や介護、保育士の給与引き上げなど人への投資を重視した政策へと転換せざるをえなくなっています。

 「笑ゥせぇるすまん」では、客は心のすきまを埋めてもらう代わりに交わした喪黒福造との約束を守れず、家庭が崩壊したり、犯罪に走るという悲劇の結末を迎えます。人間の弱さ、愚かさを浮き彫りにするストーリーです。

 でも格差と不公正が生み出す心のすきまは私たちの手で、社会の力で埋めなければなりません。埋めることはできるはずです。それは民主主義の力であり、政治を動かす力でもあります。


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