パキスタンの反政府勢力指導者がアメリカの無人機攻撃で、殺害されました。アメリカはアルカイダ勢力の掃討作戦として行っているので正当だとの立場です。しかし、アフガニスタンではなく、パキスタンでの軍事行動、しかも、政府と反政府勢力の話し合いが計画された相手側指導者の他国による殺害は到底容認できるものではないことはあきらかです。アメリカによる傍若無人の軍事行動は国際的な批判を巻き起こすことが必要です。
アメリカ人、アメリカ軍の死者数を減らすために、無人機による攻撃などが導入されています。このような流れが進行すれば、科学技術の進歩を悪用した戦争、軍事行動が拡大することになります。アメリカ、イギリス、イスラエルなどの好戦的政権がその無人機利用による戦争、軍事行動を拡大することで政治外交に混乱をもたらすことが予測されます。いかなる理由があろうとも無人機、殺人兵器のロボット化などを許すことは人類にとって不幸でしかありません。核兵器は科学技術を兵器利用したものですが、そのことによる破滅的戦争への影響、人類の生存に対する脅威となっていることを見ても明らかです。このようなアメリカ、先進工業国などの科学技術を使った殺人兵器開発、無人爆撃、殺人ロボットなどの開発、製造、使用を禁止する必要があります。
<社説:無人機による軍事行動>
米国の無人機攻撃への批判が強まっている。国連人権理事会が調査を依頼したエマーソン特別報告者(英国)らの報告(10月)によると、パキスタンでは2004年以降、330回以上の無人機攻撃が行われ、約2200人が死亡した。うち民間人は少なくとも400人に上り、隣国アフガニスタンでは60人近い民間人が犠牲になったという。
また、国際人権団体は先月下旬の報告書で、イエメンでは09年から今年にかけての無人機攻撃で57人の民間人が殺されたと結論づけた。
先月訪米してオバマ大統領と会談したパキスタンのシャリフ首相は、同国領内での無人機攻撃をやめるよう求めた。ノーベル平和賞の候補になった同国の少女、マララ・ユスフザイさんもオバマ大統領に無人機攻撃の停止を要望している。
実にもっともである。無人機攻撃は、アフガンとパキスタンに潜む国際テロ組織アルカイダやイスラム武装組織タリバンなどが標的であり、民間人殺傷は言語道断だ。戦闘の巻き添えになるパキスタンで反米感情が高まるのは無理もなかろう。1日にはタリバン側の幹部が無人機で殺され、タリバンとの和平協議をめざすパキスタンには打撃となった。
オバマ大統領は5月、無人機による民間人殺傷の対策として、中央情報局(CIA)が運用してきた無人機を米軍所管とし、テロ容疑者を暗殺するより身柄拘束や聴取を重視する方針を示していた。この方針が徹底していないのだろう。
無人機は米本土から遠隔操作で飛ばし、搭載したカメラやレーダーで前線の敵を識別して攻撃することが可能だ。米国にすれば軍事費や米兵の犠牲を減らせて重宝だが、協力者の現地情報(ヒューミント)がないまま運用すると誤爆を生みやすいとされる。遠隔操作である分、殺傷への心理的抵抗も薄れるはずだ。
エマーソン氏らは無人機を違法とはみなさなかったが、どんな場合に使用が認められるか明確な国際合意がないと指摘し、適切な規制を設ける議論を各国に呼びかけた。民間人の犠牲者が出た時は当事国が説明責任を果たすことも求めた。いずれも当然の提言である。オバマ大統領は5月の約束を思い出し、規制をめぐる国際論議を主導してはどうか。
パキスタンやアフガンでは有人の軍用機による誤爆例も多い。操縦士が乗っていようがいまいが、十分な情報を持たない攻撃は悲劇につながるということだ。国際部隊のアフガン撤退期限(来年末)を前に米国は焦っているかもしれないが、現地の人々の恨みを買えば「名誉ある撤退」はますます遠のくだけである。
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