12012が2012年3月14日に、待望のフルアルバムをリリースした。(もうリリースから2か月くらい経つけど…)
このアルバムについて書くのはちょっと難しい。これまでの12012と完全に違うから。この変化に、多くのファンが驚いたんじゃないかな。中には、「Dir en greyになった」という意見もあるくらいで、かなりの「路線変更」がうかがわせる。これまでのイメージだと、12012は、どちらかというと「ソフビ」に近いバンドで、GLAYに似た印象さえあった(実際に、彼らはGLAYのカバーもしている!)。
だが、本作は、そんなポップさやキャッチーさをほとんど持ち合わせていない。頽廃的で、ラウドで、激しくて、暗くて、へヴィーなのだ。もともと彼らにはそういう要素はあったから、元に戻ったとも言えなくもないけれど、それにしても、なぜ、今、ラウド&へヴィーの方向に舵を切ったのか。
まさに今、「ヴィジュアル系」がかなり極端に二極化していることにあるように思う。もともとヴィジュアル系は、コミカルな部分とシリアスな部分があった。コミカル系の代表バンドは、なんといってもBA-RA-VA-LAだろう。このバンドはフリーウィルレコードのバンドだったし、れっきとしたヴィジュアル系バンドに入る。
http://www.youtube.com/watch?v=_3VyJgtGBIc
(最後まで見てみてね)
この「コミカルさ」が、現在、極端に誇張されつつある。その代表例が、仙台貨物とゴールデンボンバーだろう。シリアスなヴィジュアル系バンドマンからすれば、「一緒にされたくない」と思うようなバンドだ。けれど、こうしたコミカルな要素も、もともとヴィジュアル系シーンの中にはあった。
最近はそれどころじゃない。もう、どっかおかしいんじゃないか?という奇妙な/気持ち悪いバンドもどんどん出現している。それと同時に、いわゆる「ソフビ」、つまりは中間的なバンドが行き場を失いつつあるように思う。例をあげれば、GLAY系だろうか。ビートロック系統のヴィジュアル系バンドが本当に厳しい状況に立たされている。ポップでキャッチーな8ビートの曲を主とするバンドが苦境に立たされているのだ。そういう背景を念頭にして、この12012の変容を考えると、納得ができる。くしくも、ヴィドールも解散となった。いわゆる「V系王道」が成立しない時代なのだ。それこそ、GLAY、黒夢、LUNA SEAあたりのサウンドは、今の時代には馴染まない。僕は好きだけど、NIGHTMAREも厳しいと思う。今の若いV系ファンは、そういう系統のサウンドを求めていない。かわいくて、超ポップで、アイドルと違わないようなバンドか、グロくて、へヴィーで、デスヴォイスを主とするラウド系バンドか、そのどちらかの選択をしなければならないほど、極端に二極化してきているのだ。また、その二択を逃れたければ、ヴェルサイユや摩天楼オペラのように、技術的にも、ヴィジュアル的にも突き詰めなければならなくなる。
12012が下したのが、ラウド&へヴィーロックへの道、という選択だった。そう考えると、僕はすっと腑に落ちる。
本作は、そういう意味で、12012の再スタート、あるいは大変革の第一歩と考えていいだろう。「スタート」「一歩」としたのは、本作でのボーカル、宮脇の決死の歌がとにかく苦しいからだ。もともと、Dir en greyの京のようなど太い声の持ち主ではない。シャウト向きではなく、どちらかというと、甘くて切ない声が得意なボーカリストだった。それが、突然、京のようなV系デスヴォイスをすると、それは、やはりかなり無理があるように思う。けど、その壁をなんとか越えようと、必死に叫ぶ姿が思い浮かぶ。そういう意味で、スタート、第一歩と考えたいのだ。
バンドの演奏自体は、かなりハイクオリティーになっている。安定感もある。疾走感もある。バンドの演奏自体は、それほど劇的に変わっているようにも思えない。もちろんエフェクターの歪み度合いなどは変わっているが、基本的に、技術的には、これまでの彼らのサウンドに通じるものはある。ただ、ボーカルだけは、なかなかそう簡単に変えることはできない。そこが、ボーカリストの宿命ともいうべきものかな、と。(プレイヤーではなく、アーチストだから)
だから、本作は、もうとにかく宮脇のボーカルに注目したい。
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不気味でダークなSE的な「班」で幕を開ける本アルバム。謎的。続けて、本作「12012」でもかなり重要な曲となっている「SUICIDE」へと移行する。これまた不気味なギターアルペジオから、Dir en greyさながらのヘビー&スピードチューンへと変貌する。いわゆるデスヴォイスでたたみ掛けるような前半戦。そして、かなり音程が上がり、切なくて、美しいメロディーのサビへと向かう。これまでの12012とは全然違うことが、この2曲目ではっきりと分かるだろう。そして、続けてへヴィーナンバーの「BAAL-ZEBUL」へ。これもまたDir en greyの匂いがする。が、彼ららしい毒々しさもある。演奏がしっかりしているので、これだけの変貌を遂げても、あまり違和感はない。バンドとしてさすがキャリアがある。コーラスが聴きどころかな。ちょっと中世ヨーロッパな感じがするのはなぜ? で、4曲目のABUSE。これもまたゴリゴリ&スピードナンバー。がつっとしているー。ギターのリフ(1:14~)が結構かっこいい!あと、何気にベース・ラインがすごい動いていて、クールだ。続く、「唾蓮」はピアノの旋律がとても美しいダーク&バラード曲。どこか虚無的で頽廃的。まさにV系王道(王道として頑張ってほしいなぁ)。
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