草薙厚子さんは僕が大好きなルポライターの一人。彼女の新作、『僕はパパを殺すことに決めた-奈良エリート少年自宅放火事件の真実』(講談社)を読んだ。
この事件は、僕にとって無関心ではいられない事件であった。16歳の少年が自宅に火を放ち、母親と弟と妹を殺めたという事件で、その少年が医学部進学希望をしていて、さらに、両親が共に医師であったということで、マスコミで相当話題にされた事件だった。さらに、この家族、僕が研究研究対象の「パッチワークファミリー」だったのだ。少年は、父と前妻の間の子ども。殺された民香さんは、少年の父(医師)が前妻との離婚後に再婚した人。彼女は初婚なのかな?(この点については触れられていない)
さらに、この少年、父親からひどい身体的虐待(+精神的虐待)を受けていた。それに加え、少年の父は、前妻、民香さんに対しても激しいDVを繰り返していた。前妻との離婚の理由も夫のDVであった。
それだけじゃない。その父親もある意味での犠牲者だった。父親はいわゆる医学一家であり、医者になる運命を背負った人であった。だが、学業成績が伸びずに私立の医大に「なさけ」で入れてもらったほどだったようだ。彼のは大きなコンプレックスがあった、と草薙氏は指摘する。父は念願の医師になったものの、国立大医学部に行けなかったコンプレックスをずっと抱き続けた。がゆえに、自分の子どもに対してはかなりスパルタで教育を行っていた。
家族全体が非常に危うい状態にあった、そんな家庭で起こった大事件なのであった。
細かいことは是非本作を読んでいただきたい。実によく調べられたドキュメンタリーだ。彼女の調査にはただただ脱帽するばかり。。。だ。。。
最後に、発達障害について述べているが、そこはあまり面白みがないかもしれない。ただ知っていて欲しい事柄ではある。。。