Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

自ら生み出した化け物に復讐される「私」

「私たち」が作ったこの世界。

「私たち」が育て上げたその世界に生きる民たち。

その民たちは、従順で、大人しく、礼儀正しく、自ら服従した。

民たちは、その世界を疑わず、「私たち」を敬愛した。

「私たち」は、その民らが従順に服従している姿を見て、美しいと思った。

その美しさを、永遠に保ちたいと願った。

民たちは、勤勉で、真面目で、静かで、「私たち」によく仕えた。

一部に、「私たち」を非難する声をあげた民もいたが、従順な民たちが彼らを排斥してくれた。

「私たち」は、自分の手を汚さずに、自分たちの権力を手中に収めることが容易にできた。

「私たち」は、私たちや私たちの国によく仕える民を褒め、よく仕えない民を切り捨てた。

よく仕えない民たちを簡単に切り捨てられるように、制度を変えた。

よく仕えない民たちは、次々に切り捨てられていったが、それに異議を申し立てる者は少なかった。

「私たち」は、この世界を、この国を守るために、そして「私たち」のために、よく仕える者たちを大切にした。

よく仕える者たちは、私腹を肥やしていき、ぶくぶくと太っていった。

他方で、切り捨てられた者たちは、職を失い、安定を失い、人々たちから切り離され、孤立していった。

「私たち」は、そんな切り捨てられた者たちの存在を無視し続けた。

その後、美しい国に、「化け物」が徐々に、ゆっくりと生まれていくことになる。

切り捨てられ、排除され、何の手も差し伸べられず、孤独の末に、絶望した化け物が。

化け物は、何の希望も未来もなく、死に場所と死ぬ方法だけを考えた。

絶望した化け物の頭の中には、「死」と「復讐」の二文字だけしかなかった。

自らの死と、そして、自分を化け物にした者への復讐。

化け物の多くが狂気と化した。

そして、その復讐の対象を、「私たち」ではなく、「幸せそうにみえる通行人」や「更に弱き民たち」に向けていた。

中には、「私たち」に、その復讐の正当性を訴えてくる化け物もいた。

だが、ある化け物が気づいてしまったのだ。

自らを生み出した者が「私たち」だということに。

気づいたというよりは、「私たち」にその原因を見いだしてしまったのだ。

化け物が復讐の対象に選んだのは、「私たち」の中の中心にいた「私」だった。

「私」は、化け物に憎まれた。

化け物は、「私」を標的にし、「私」と共に、自らの生を終えることを決意した。

化け物も、かつては美しい国の善良なる民の一人であった。

その化け物を愛する者も、その化け物を「友」と慕う者もいた。

だが、一度、この国の民たちから切り捨てられた化け物は、その後、誰一人からも相手にされることはなくなった。

一人だった。

「私」は、そんな化け物に手を差し伸べることはしなかった。

というよりは、そんな化け物にかまう時間も気持ちも全くなかった。

この美しい国をさらに美しい国にするために、尽力した。

それが、「私」の使命であり、責任であると感じていた。

化け物は、そんな「私」を見て、憎悪した。

「なぜ、われわれを切り捨てたのか?」

「なぜ、われわれの存在を無視し続けるのか?」

化け物は、自分の内にある憎悪と怨念と復讐心から、武器を調達した。

化け物は、もう何も失うものはない。もう失うものはすべて失った。

未来に希望はないし、この美しい国が化け物を守る可能性もない。

化け物の未来は、完全に断たれ、閉ざされた。

化け物は、武器を手に取った。

「私」に復讐するために。

「私」にすべての憎悪と怨念をぶちまけるために。

化け物は言った。

「遂にこの日がやってきた」

と。

薄暗い病室で、「私」は今、微かに残るわずかな意識の中で、ぼやけた天井を眺めている。

その天井には、「私」を睨む「彼」の赤く恐ろしい顔があった。

 

(ただのフィクションです)

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