ラーメン食べ歩きの旅には、「出会い」があります。
予め調べた情報をもとに、目的のラーメン店に行くのも楽しいですが、
一番感動するのは、偶然、名店とめぐり合うことです。
これにまさる喜びはございません。
今回のらんちばさんとのミニ内房ツアーの最後に、
巌根駅近くの蕎麦屋さんを目ざしました。
蕎麦屋のラーメンは、ずっと僕もこだわっていた部分でもあり、
また、石神さんの蕎麦屋のラーメン再評価もあり、向かったわけです。
その途中、本当に偶然、たまたま見つけたのが、この末広食堂でした。
一瞬だったのですが、「中華そば」という文字が見えました。
その瞬間、ぼくら二人は、「ピ~ン」と感じ合っていました。
一応、二人とも(細々とですが)全国を回るラーメンフリークです。
「地方の名店」「地方の老舗」に対する感受性はそれなりには鍛えています。
なんか、そういう直感みたいなものがあったんです。
急遽、予定を変更して、末広食堂に行きました。
これは、ドキドキです。
外観からして、もうドキドキです。
昭和テイストたっぷり。老舗の風格たっぷり。
坊ちゃん嬢ちゃんには入れない崇高さあり。
入口の扉をガラガラと開けると…
薄暗い店内に、おばちゃんが一人、お客さんが来るのを待機していました。
「あら、いらっしゃい」。かなり字の詰まった小説を読んでいました。
時間帯もちょうど3時くらいだったので、先客はゼロでした。
店内は、長テーブル一つのみ、という感じ。
(本当は通常のテーブルを3,4つ並べただけ、という)
なんか、学食みたいな雰囲気でした。
そして、本当に古めかしい昭和感たっぷりのレトロな世界観。
もう、2人とも大興奮でした。
メニューをみたら、これがまた渋いんですよねー。
無駄なものが一切ない、というか、選び抜かれている感じがしました。
中華そば、チャーシューメン、焼きそば、肉丼、玉子丼、餃子、ライスのみ!
超潔いです。
おススメは?と尋ねると、「そうねー。中華そばよねー」とのこと。
きました。やはりこのお店は、紛れもない中華そば屋さんです。
この店内にあって、中華そば、もう期待せずにはいられないわけです。
おばちゃんは、本をテーブルにおいて、厨房に入っていきました。
その動きに、風格があります。落ち着きがあります。余裕さえ感じます。
そして、出てきたのが、こんな中華そばでした!
見てください!!!!
これぞ、昭和の王道、支那そば~中華そばの真の姿であります!!
これを見て、心が動かないわけがありません。
レトロ、ノスタルジック、昭和、老舗といった言葉がぴったりです。
見た感じは、なんてことない昔ながらの中華そばなんですが、
スープを飲むと、、、、
強烈な生姜醤油ラーメンだったのです!!
生姜の鮮烈な風味を確かに感じます。
生姜のみならずニンニクも入っていますが、
印象としては、まず「生姜」でした。
スープは、鶏、豚、野菜が主ですが、生姜も相当使われているように思われます。
この地にて、こんなにインパクトのある昔ながらの中華そばに出会えるとは…汗
それに、結構油も入っているので、あっさりながらもファットな味わいでした。
「数十年前のこってりラーメン」といったところでしょうか。
今のラーメン好きの人だと、「昔のラーメン」と感じてしまうでしょうが、
これこそ、昔のジャンクフード、がっつり系ラーメンだったのでしょう。
かつてのお客さんの層をおばちゃんから聞いて納得しました。
こちらの中華そばは、当時の内房の「人夫さん」に愛されてきたラーメンです。
そう、男性労働者のためのワイルドなラーメン、
肉体労働で汗水を流す男性の胃袋を満たすラーメンだったのです。
だから、お肉のお味もかなり鮮烈です。
しょっぱくて、がっつりで、噛み応え抜群でした。
これなら、チャーシューメンにすればよかった、と言いたくなるほど。
のり、ネギ、なると、ほうれん草というトッピングも神的ですね。
これぞ、中華そばであります!
麺は、文明軒の麺のようです(確認したようなしてないような…)
太くも細くもない普通の縮れ麺でした。
やはりこういう中華そばには縮れ麺ですよね。
(僕は縮れ麺好きなので、ここはスルーしてください、、、)
いずれにしても、究極の歴史的中華そば、ここにあり!ですね。
***
「きたなシュラン」で是非とも取り上げてもらいたいお店ですね。
本当に、すごいですからね。店内も。そして、中華そばも。
色んな意味で
それから、若い子たちにこのお店のラーメンを食べてもらいたいです。
もちろん、「美味しい」だの「マズイ」だのいうことはNGです。
これが、「ラーメンの原型」なんだ、と、味わってほしいです。
脂、油ギトギト、塩分たっぷり、刺激的な味に慣れた舌には、
少し物足りなさを感じるかもしれませんが、
逆に、自分の舌を見直すいい機会かもしれません
もちろん過去を無条件で肯定することも怖いことですが、
過去を知らずに、現在を語るというのは、もっと怖いことです。
50年にわたって、お店を守り、続けてきたというのは、
やはりそれだけですごいことです。
また、内房の歴史をリアルに学ぶこともできるかもしれません。
産業の変化と共に歩んできた「末広食堂」。
本当に、貴重な体験となりました。
心から、もっと多くの人に知ってもらいたい「老舗の名店」です。