Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

保護責任者遺棄か、母子保護か?(続)

こんなニュースがありました。

***

 7日午前6時20分頃、秋田県湯沢市の市中央公園で、生後1~2日とみられる女児が、園内の野外ステージ上に置き去りにされているのを、近くを散歩していた80歳代の女性が見つけ、110番した。

 女児は市内の病院に運ばれたが、健康状態は良好。県警は、保護責任者遺棄事件とみて捜査している。

 発表によると、女児は身長約50センチ、体重約3000グラムで、タオルケットにくるまれていた。捜査関係者によると、女児の近くに、「誰か育ててください」と書かれたA4判の置き手紙があったという。

2011年5月7日13時11分  読売新聞

***

また、児童遺棄がありました。

この事件は、「保護責任者遺棄事件」となり、「遺棄者」である母親が捜索されている。
じきに、「逮捕」されるだろう。そして、母は、「犯罪者」となり、罪を償うことになる。

こうした事件をみるたびに、「もし赤ちゃんポストがあったら…」と思う。

今、一番辛いのは、そして、自分を責めているのは、遺棄した母親であろう。
種をまいた男は、その事実さえ、気づいていない恐れがある。
(だいたい、妊娠~出産の事実さえしらない場合が多い)

この事件も、忘れないでおきたい小さな、けれど大きな事件だ。

PS

このように書くと、次のような批判があるかもしれない。

「そんな女、守る必要などない。その女が悪い。とっとと逮捕されればいい」

と。

そういう考え方があることは否定しない。たしかに「遺棄」は許されるものではない。
きちんと「避妊」していれば、起こらなかった事件だ。

けれど、そうした「未来への投企」ができるなら、
そうした女性はでてこないわけで、そうした事態を想像できないからこそ、
こういう事件が起こってしまうのだ。

そういう女性(ないしは男性)は、自分の行為の結果を想像することができない。
がゆえに、その結果を想像することなく、あやまちを犯すのである。

外の人間にできることは、そうした女性を撲滅することではなく、
あやまちを認め、保護し、同じ過ちを繰り返させないことだけである。
(それ以前に取り締まるとなると、とんでもない社会になってしまう)

危険そうな女性(ないしは男性)を国家(権力)が捕え、予防にはしる、というのは、
国家(権力)の暴走であり、ファシズムの再来である。

僕らにできるのは、個人の自由を尊重しながら、
その結果に対する保護や支援を明確に提示することだけである。

上の女児の母親がどんな理由で遺棄したのかは分からないが、
(赤ちゃんポストの文脈でいえば)この危機を超えて、母子が幸せに生きられるよう、
しっかり支援する、ということが最も大切なことである。

おそらく、遺棄した母親も、状況が変われば、きっと良い母になれるはずである。
そのために、何が僕らにできるのか、それをもっと議論していきたいところだ。

***

今日(5月8日)、こんなニュースが報じられた。

***

 秋田県警湯沢署は8日、県内に住む高校2年の男子生徒(16)を保護責任者遺棄の疑いで逮捕した。

 発表によると、男子生徒は7日午前2時半頃、湯沢市中央公園の野外ステージに、生後1~2日とみられる女児を遺棄した疑い。女児は同日午前6時20分頃、近くを散歩していた女性が発見し、命に別条はなかった。

 男子生徒は同日午後7時半頃、県警本部に「子どもを捨てた」と電話した後に同署に出頭。事情を聞いたところ、「交際していた女性が産んだ子どもの処置に困り、置き去りにした」と容疑を認めたため、逮捕した。同署は、男子生徒が交際していた別の高校に通う2年生の女子生徒(16)からも事情を聞く方針。

2011年5月8日19時35分  読売新聞

***

児童遺棄にせよ、嬰児殺しにせよ、特別養子縁組にせよ、いわゆる普通の若者(高校生)が対象となることがある、という話はよく聞く。

今回の事件は、高校生のカップルによるものだった。

男子生徒が勝手にやったことなのか、それとも、女性生徒が頼んだことなのか、共犯なのか、分からないが、いずれにしても、「高校生が児童遺棄をした」という事実は間違いなさそうだ。

楽しくて、ウキウキ、わくわく恋愛が、こういう悲劇に直結し得る、ということを、どう子どもたちに伝えるか、そして、そうなったときに、どうサポートし、どう支援するか。

こういうことに対して、スルーして、無視してしまうのが、今の日本だと思う。

もちろん、こういう事件が日々起こっているわけではない。けれど、実際にこういう事件がある、ということは忘れるべきではない。日本は、生まれた後、実名できちんと公的に相談できる人しか、救えないのである。匿名のまま、親にも誰にも相談せずに、こうして産んでしまう女性がいるのである。

「緊急下の女性」は、こういう身近なところにいるのである。「子どもの処理に困り」という、奇妙な言い回しに、この問題の根深さが感じられないだろうか。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「教育と保育と福祉」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事