Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

離婚後、再婚前後の子どものケアをもっと考えて!

最近、もっぱら赤ちゃんポストの研究にいそしんでいますが、僕の研究人生で大きなキーワードになっているのが、「離婚家庭の子どものケア」です。数年前に、翻訳本を出して、それがきっかけとなって、細々とですが、研究を続けています(といっても、中断中ですが、、、汗)

離婚家庭の子どもの援助】 Susanne Strobach

この本は、離婚に関わらざるを得ない子どもの心理を深く描くと共に、どのようにして支援・ケアしていけばよいのかが丁寧に示されている本です。凄いいい本だと今も思っています。特に最終章のパッチワークファミリーの話は、日本でほとんど明らかにされていない領域の話で、この本でしか読めない話がいっぱい詰まっています。

最近、「離婚家庭の子どものケア」という観点で、見過ごせない事件が立て続けに起こっています。

一つは、佐世保の事件。再婚家庭の子どもが、同級生を殺害した事件です。この事件については色々と語ることができると思いますが、僕の視点からすれば、「再婚家庭の出発」につまづいた家庭の悲惨な事件、と言えます。母親の死別という最も悲しい事件の後、子どもがまだ母の死を受け入れる前に、父親が再婚してしまいました。再婚というのは、子どもにとって、ただでも負担の大きなことです。それが、母親の死から半年もしないうちに起こる、というのは、本当に子どもにとって辛いことです。荒れるのも無理はないのです。「母の死」、「父の再婚」、どちらも単独でも辛いのに、それが同時期に重なる、という苦しみは、きっとほとんどの人が経験したことがないでしょうし、その苦しみを分かる人は本当に少ないと思います。(このことを指摘しているブログがありました→こちら!)

もう一つは、西東京市で起こった義理父による虐待、それを苦に自殺した中学生の事件です(詳しくはこちらを参照)。この事件もまた、再婚家庭での悲劇です。母親の連れ子が、再婚した義理父に虐待され、死に至ってしまいました。「長男は6月中旬から体調不良を理由に学校を休んでいた。一家は夫婦と長男、次男の4人暮らしで、長男は母親の前の夫との間の子だったという」(前掲)。

こうした「再婚家庭の構築」の途上で、子どもが苦しみ、その果てに悲劇が起こってしまう、ということは度々起こっています。

しかし、誰も、この「再婚家庭の構築時の子どものケア」のことを問題にしません。「子どもの病理」、「父親の暴力性」ばかりが際立っていて、「離婚後、再婚前の子どものケア」については、全くと言っていいほど、話題になりません。

理由は簡単です。こういう問題について研究している人が、本当にいないんです。「離婚研究」はまだあります。けれど、「離婚と再婚の狭間の子ども」のことを研究している人は全くといっていいほどいないんです。「ステップファミリー」のことを扱う文献はいくつかあります。が、離婚後から再婚に至るまでの間の子どもの心理等についてきちんと述べた本はないに等しいんです。

けれど、上の事件を踏まえると、やはり、「離婚後(あるいは死別後)~再婚前の子どものケア」について、真剣に考える必要がある、と改めて思いました。

そして、このことを考える上でも、シュトロバッハさんの『離婚家庭の子どもの援助』は、本当に大切なことを伝えてくれています。(ただ、値段が高いので、なかなか手に取ってもらえないのですが、、、)

結論から言えば、離婚後~再婚前、再婚後の子どもには、きちんとしたケアが必要だ、ということです。離婚という出来事は、子どもに深い悲しみを与えます。家庭が二つに引き裂かれるわけですから。その上で、さらに別の人間が、自分の「家」に入ってくるのが「再婚」です。子どもも人間です。突然、赤の他人が家にやってきたら、(あるいはその赤の他人の家で暮らすことになったら)当然、混乱します。すんなり受け入れられません。「今日から、この人がパパだよ」、と言ったところで、誰が「はい、そうですか。分かりました」なんて言えるでしょうか。

離婚も、再婚も、大人の事情です。子どもには関係ありません。(だから、子どもも何も言えないんです)

それを批難したいわけではありません。離婚も再婚も、ちゃんと子どものケアをやれるなら、うまくいきます。そういう例は、僕もいっぱい見ています。

ただ、再婚をするなら、それなりにたっぷりの時間を使って、きちんと子どもに何度も説明して、受け入れてくれるまで、我慢強く待つことも大切です。「大人の都合」ですから、それくらい、子どもに気を使ってあげてほしいのです。一番、困惑しているのは、子どもなのですから。

再婚する際、子どもは、たいてい、強い拒絶感を示します。当然です。その時に、新しいパートナーもまた、そのことをしっかりと理解して、ゆっくりと忍耐強く関係を作っていくように、配慮しなければいけません。

日本の男性を考えると、たいていの人が、「なんだよ。こっちだって、いろいろ気を使ってんだ。なのに、どうしてこいつは、こんな態度しかできないんだ。こっちの気持ちがなんで分かんないんだよ。むかつくなぁ」ってなると思います。

再婚する人向けの本も必要だろう、と思います。再婚する上で、「子どもに対して留意する点」をしっかりと述べる必要もあります。

僕は、もっともっと「再婚家庭」が増えてもいいと思っています。日本の離婚家庭のほとんどが、母子家庭です。で、その母子家庭の多くが、貧困問題を抱えています。

離婚大国欧州でも、同じような問題があり、その克服のために考えだされているのが、「再婚家庭=パッチワークファミリー」になっています。母一人で子どもを養育するのは、どの国であっても、大変です。経済的な基盤も必要となります。もちろん稼ぎのよい母親であれば、再婚する必要はありません。が、経済的に厳しい母子家庭の場合であれば、経済力のある男性と再婚することは、子どもにとってもとてもよいことになります。経済格差も是正できる可能性もでてきます。

けれど、「再婚する」、ということは、子どもにとっては、本当に大きなダメージとなります。

今後、もっともっと、日本でも、この「離婚後~再婚前後の子どものケア」について、真面目に考えなければいけないかな、と思いました。再婚家庭それ自体は、決してダメなことではないのです。ただ、それなりの知識と配慮がどうしても必要なのです(やはり難しいことをするわけですから)

そのためにも、是非、この分野に関心のある人は、シュトロバッハさんの本を読んでもらいたいです。自分がこの本を読んで、本当に新しくて、大切なことを言ってる、と思った本ですからね。(宣伝っぽいけど、違うんです。切実なんです)

PS

なお、その後、「再婚家庭の子ども」についての絵本を翻訳して、いくつかの出版社にもっていったんですよね。そうしたら、「こんな本、マニアック過ぎて、誰にも読まれない」、「暗すぎる」、「幸せそうじゃない」、と一蹴されてしまいました。これはショックでしたけど、きっと日本という国が、まだこういう問題を理解しきれていないんでしょうね。

どこか、「再婚家庭の子ども」の絵本を出してくれる出版社はないんですかね。。。 もう、問題はたくさん起きているのに…(涙)。でも、非力ながら、離婚家庭、再婚家庭の子どもをこれからも応援していきたいです。(自分の中の意思確認)

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