2.1.2 赤ちゃんポストの目的と正当性
赤ちゃんポストの設置は、初めから設置者と支持者によって、生命保護の考えと結びけられていた。つまり、赤ちゃんポストは乳児の遺棄と殺害に対する答えを出さなければならないと考えられた。そして、赤ちゃんポストは、常時の支援提供のオルタナティブ(別の道)と考えられたわけではなく、その補完施設と考えられた。その際、とりわけ二つの根拠を確認することができる。発起人たちは、社会教育的な活動の必要性を具体化し、問題解決の緊急性と必要性の背景の前でその活動を合法化するために、その二つの根拠を見つけ出した。
赤ちゃんポスト設置の根拠の一つ目は、一般の議論で度々取り上げられている。それは、この国(ドイツ)では、もろもろのデータによると、年間の児童遺棄と児童殺害の数が合計約20~50人に達している、というものだ。だが、実際にはそれよりもはるかに高くて、その40倍の数に達する潜在的数値が出されており、それを減らすことは重要なことだ、と言われたりもしている。
赤ちゃんポスト設置の根拠の二つ目は、遺棄されたり殺されたりした新生児が、計画されている赤ちゃんポストやすでに設置された赤ちゃんポストと地理的に近い周囲で発見されたことが一般に知れわたったことにある。その結果、赤ちゃんポストの直接的な必要性が明白になった。
この二つの根拠の路線(Linie)の一部は同時に用いられる。(この二つの根拠は重なり合っている)
それに加えて、新生児の遺棄や殺害に対して設置されるこうした抽象的で特殊な避難所(Bezüge)は、「すべての子どもは救出される価値をもつ」、あるいは「そして子どもがゴミ捨て場ではなくわれわれのところに置かれたならば、赤ちゃんポストはすでに報われた」といった暗示的な言動によって完全なものになる。その道徳的内容のために推定上の設置需要を求めるこうした言説やこれに似た言説に基づいて、生命保護手段としての赤ちゃんポストの適正(Eignung;正当性)が明らかにされたのである。